蒼い炎

海棠 楓

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幼なじみ

第27話

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 翌日、母に車椅子を押された真司が、半月振りに登校した。が、あまりの豹変振りに、生徒達は声をかけるのも躊躇われた。
 髪はだらしなく伸び、瞳は死んだ魚のように濁り、何も映さない。入院生活のため元より白かった肌は青白く、元より細かった肢体は摂食障害のためいっそう痩せこけていた。
「深海……?」
 恐る恐る声をかける友の声にも、真司は無反応だった。
「お友達でしょ、挨拶したら?」
 母の問いかけにも無視の真司が、不意に何かに反応した。
 前方には、彩と並んでこちらへ向かって歩いてくる、晃司の姿があった。
「ぅ…………ああああああ――!」
 突然、けたたましい叫び声が響いた。真司は全身を振るわせ、口惜しそうに車椅子を叩きつづける。
 手にしていた生徒手帳を晃司に投げつける。手帳は見事晃司の頬を直撃、晃司の頬は少し切れ、血が滲んだ。
(そうだよな、怒ってるんだよな、真司……俺だけフツーに暮らしてて。……お前をそんなにしたヤツが――)
 血が頬を伝うのも構わず、そんなことを晃司はぼんやり思っていた。慌てた真司の母が車椅子を移動させた。
「真司、やっぱり今日は帰ろうか……」
「いいよ母さん」
 会話らしい会話を交わしたのは、意識を取り戻してから初めてだったような気がする。
「俺――学校行くよ」

    女ができたから俺を捨てたんだ。
    生きてやる――
    一生負い目を感じさせてやる。

「深海、もう大丈夫なのか。心配したぞ。……それにしても寂しいだろ。今月いっぱいで緋砂が転校するんじゃあな」
 担任の言葉に唖然とする真司。
「お……っと、うわさをすれば、だ」
 鬱陶しそうな表情の担任の視線の先には、彩を連れた晃司。
「晃司! 転校するって本当なの?! 無視しないでよ晃司!!」
 体中の力を振り絞って叫ぶ真司を、晃司は見ようともせず、通り過ぎた。


 その後、深海真司は卒業まで保健室登校を続け、翌春には私立男子高に入学することとなる。

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