27 / 70
幼なじみ
第27話
しおりを挟む
翌日、母に車椅子を押された真司が、半月振りに登校した。が、あまりの豹変振りに、生徒達は声をかけるのも躊躇われた。
髪はだらしなく伸び、瞳は死んだ魚のように濁り、何も映さない。入院生活のため元より白かった肌は青白く、元より細かった肢体は摂食障害のためいっそう痩せこけていた。
「深海……?」
恐る恐る声をかける友の声にも、真司は無反応だった。
「お友達でしょ、挨拶したら?」
母の問いかけにも無視の真司が、不意に何かに反応した。
前方には、彩と並んでこちらへ向かって歩いてくる、晃司の姿があった。
「ぅ…………ああああああ――!」
突然、けたたましい叫び声が響いた。真司は全身を振るわせ、口惜しそうに車椅子を叩きつづける。
手にしていた生徒手帳を晃司に投げつける。手帳は見事晃司の頬を直撃、晃司の頬は少し切れ、血が滲んだ。
(そうだよな、怒ってるんだよな、真司……俺だけフツーに暮らしてて。……お前をそんなにしたヤツが――)
血が頬を伝うのも構わず、そんなことを晃司はぼんやり思っていた。慌てた真司の母が車椅子を移動させた。
「真司、やっぱり今日は帰ろうか……」
「いいよ母さん」
会話らしい会話を交わしたのは、意識を取り戻してから初めてだったような気がする。
「俺――学校行くよ」
女ができたから俺を捨てたんだ。
生きてやる――
一生負い目を感じさせてやる。
「深海、もう大丈夫なのか。心配したぞ。……それにしても寂しいだろ。今月いっぱいで緋砂が転校するんじゃあな」
担任の言葉に唖然とする真司。
「お……っと、うわさをすれば、だ」
鬱陶しそうな表情の担任の視線の先には、彩を連れた晃司。
「晃司! 転校するって本当なの?! 無視しないでよ晃司!!」
体中の力を振り絞って叫ぶ真司を、晃司は見ようともせず、通り過ぎた。
その後、深海真司は卒業まで保健室登校を続け、翌春には私立男子高に入学することとなる。
髪はだらしなく伸び、瞳は死んだ魚のように濁り、何も映さない。入院生活のため元より白かった肌は青白く、元より細かった肢体は摂食障害のためいっそう痩せこけていた。
「深海……?」
恐る恐る声をかける友の声にも、真司は無反応だった。
「お友達でしょ、挨拶したら?」
母の問いかけにも無視の真司が、不意に何かに反応した。
前方には、彩と並んでこちらへ向かって歩いてくる、晃司の姿があった。
「ぅ…………ああああああ――!」
突然、けたたましい叫び声が響いた。真司は全身を振るわせ、口惜しそうに車椅子を叩きつづける。
手にしていた生徒手帳を晃司に投げつける。手帳は見事晃司の頬を直撃、晃司の頬は少し切れ、血が滲んだ。
(そうだよな、怒ってるんだよな、真司……俺だけフツーに暮らしてて。……お前をそんなにしたヤツが――)
血が頬を伝うのも構わず、そんなことを晃司はぼんやり思っていた。慌てた真司の母が車椅子を移動させた。
「真司、やっぱり今日は帰ろうか……」
「いいよ母さん」
会話らしい会話を交わしたのは、意識を取り戻してから初めてだったような気がする。
「俺――学校行くよ」
女ができたから俺を捨てたんだ。
生きてやる――
一生負い目を感じさせてやる。
「深海、もう大丈夫なのか。心配したぞ。……それにしても寂しいだろ。今月いっぱいで緋砂が転校するんじゃあな」
担任の言葉に唖然とする真司。
「お……っと、うわさをすれば、だ」
鬱陶しそうな表情の担任の視線の先には、彩を連れた晃司。
「晃司! 転校するって本当なの?! 無視しないでよ晃司!!」
体中の力を振り絞って叫ぶ真司を、晃司は見ようともせず、通り過ぎた。
その後、深海真司は卒業まで保健室登校を続け、翌春には私立男子高に入学することとなる。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
ハッピーエンド
藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。
レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。
ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。
それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。
※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
九年セフレ
三雲久遠
BL
在宅でウェブデザインの仕事をしているゲイの緒方は、大学のサークル仲間だった新堂と、もう九年セフレの関係を続けていた。
元々ノンケの新堂。男同士で、いつかは必ず終わりがくる。
分かっているから、別れの言葉は言わないでほしい。
また来ると、その一言を最後にしてくれたらいい。
そしてついに、新堂が結婚すると言い出す。
(ムーンライトノベルズにて完結済み。
こちらで再掲載に当たり改稿しております。
13話から途中の展開を変えています。)
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
全校生徒の肉便器
いちみやりょう
BL
人気投票で生徒会などが選ばれる学園で肉便器に決まってしまった花倉詩音。まずは生徒会によるみそぎと開通式ということで全校生徒の前で脱糞ショー。これから始まる肉便器生活はどうなっていくのか!?
ーーーーーーーーーー
主人公は終始かわいそうな目にあいます。
自己責任で読んでください。
【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?
海里
BL
浜本流羽は、突然恋人に別れを告げられる。というよりも、浮気現場をバッチリ見てしまったのだ。
彼は流羽よりも可愛い恋人を作り、流羽に別れを告げるとそのままどこかに行ってしまった。
残された流羽は、失恋の傷を癒すために一夜限りの相手を探すことにした。
その日――桜田陸矢に出逢った。少し話をして、彼と共にホテルに向かい、一夜限りの相手をしてもらう。今までの相手とはまったく違う触れ方に流羽は戸惑ったが、『大切にされている』ような錯覚に酔いしれた。
一夜限りということで、もう二度と会うことはないと思っていた。しかし、不幸は重なるもので住んでいたところに行くと火事で起こり全焼していた。住む場所を失った流羽はショックを隠せずに職場に向かおうとするが、店長から電話が来て自身がクビになったことを告げられる。
家と職を失った流羽は公園でぼんやりとしているところを、陸矢に見つかり、話を聞いてもらう。
そして――なぜか、彼の家で『家政夫』として雇われることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる