君にすくわれた僕は。

海棠 楓

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青天の霹靂

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「紫苑ちゃん、どうだったの、静流くん…」
家に帰ると、紫龍が飛んできた。
「今もうその話してくれんな!」
かなり頭に血が上っている。
「二人ともさ、冷静に話し合った方がいいよ…」
おずおずと助言するが、やはり一喝。
「もーいんだよ!知るか!!」
いつまでもおとなしい紫龍でもなかった。
「何がもういいのよ!!ちっとも良くないくせに!その場のつまんない意地とかで一生後悔したって知らないよ!」
その言葉に一瞬はっとしたが、ゆっくりと首を横に振った。
「ダメなんだよ…俺とアイツは…」
出逢った頃から何一つ変わっていない。やっぱり独り相撲なのか…。 

 どうして昔みたいにうまく行かないんだろう。ケンカしてもすぐ仲直りして…
静流は疲れを隠せない。
僕は何も変わっていないのに――――?
変わらなきゃいけないのに変わっていないんだ。
結局紫苑の希望に応えていない、いつまでもくだらない鎧を取れないままの自分に気づいた。
こんなんじゃ、そのうち紫苑だって―― 

 「紫苑くん、今日は静流くん休みなの?」
朝から何度もされた質問に、いい加減嫌気が差していた。
「知らねぇよ」
すごんだ相手は、あの件以来すっかり改心した水原だった。
「そ、そう…」
小さくなって走り去ろうとする水原を、紫苑が呼びとめた。
「水原。―――つきあおっか」
壁に水原を追いやり、紫苑と壁で水原を挟むような形で、紫苑が迫る。
「どうして・・・?静流くんは?」
顔を、くっつきそうなほど近づける。
「あいつはもうカンケーねぇよ。俺じゃイヤ?」
「…そんなわけないじゃない…」 

 「言わなくても来てくれたんだ」
静流の部屋。紫苑が玄関に立っている。静流は奥のベッドで上半身だけ起こして、窓の外を見ている。紫苑の方を見ようとはしない。
「何ボーッと突っ立ってるんです。しに来たんでしょ」
なおも外を見たまま、静流が言った。
 紫苑はつかつかとベッドに近づき、静流の頬を殴った。
「何言ってんだよ、しず?!」
殴り返せ、昔みたいに。
そうやってほたえ合いながら、いつの間にか元に戻っていたじゃないか。
「言い過ぎましたね」
静流は殴り返してくるどころか、すまなそうに微笑んでいた。
「休んだから様子見に来てくれたの?」
頬を赤く腫らせてもなお、静流は窓の外を見つめる。
意を決したように、紫苑が言った。

 「女、できたんだ」
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