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青天の霹靂
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二人が4回生になった春、それは突然起こった。
「蒼城さん、ですか」
学内では見たことのないような、上品そうな女性――年は変わらないようだ――が、紫苑に話しかけてきた。
「そーだけど…」
紫苑はくわえていた煙草を揉み消した。
「――しずと別れろ?」
近くの喫茶店に場所を移した二人。
その女性の話では、なんでも女性は静流の幼馴染で、双方の親が将来を約束した、俗に言う許婚だというのだ。
紫苑は、その真実もさることながら、静流の口から全くそんな話を聞いていないことにショックだった。
「んなこと、しずはとっくに忘れてるよ!先に静流と話し合うのがスジってもんだろ!」
紫苑はそう啖呵を切ったものの、動揺を隠せない。
でも、絶対にこっちから問いただしてなんかやらない。
「おかえり」
何も知らず、いつものようにニコニコ迎える静流を、紫苑は強引に押し倒し、乱暴に体を奪った。
「紫苑?!くっ苦しいよ…」
体を繋ぎとめておくのは簡単だ。でも、お前はいつまでたっても心は許してくれねーんだ…
「紫苑…何かあったの?」
人の気も知らず、一人大人ぶって紫苑をあやすように問う静流が、腹立たしかった。
「なんもねぇよ!」
紫苑の頭を撫でていた静流の手を払いのける。
「ごめん…」
苦笑いして謝る静流。
「あやまんなよ!悪いなんて思ってないくせに…」
静流に反撃して欲しかった。
わざと絡んで、本気になって欲しかった。
それなのに、返ってきた返事と言ったら。
「――そうだね」
「――帰る」
「あっ」
正門の前で静流の足が止まる。
「静流くん…」
恥じらいながら近づいてくる女性は、昨日紫苑に別れを迫ったあの女性。静流は一目でわかった。
「すごい…久しぶりだね」
「覚えててくれて嬉しいわ」
この二人、実に8年ぶりの再会である。この年頃で8年会わなければ、容姿はすっかり変わってしまっていて普通気づかないのではないだろうか。すぐにわかるというのはすごいことである。
「私…この春、短大を卒業して…今は花嫁修行中なの…」
静流は次第に余計なことも思い出してきた。女性――名を小夜という――が、突然自分に会いに来た理由も、見えてきた。
「静流くんのご両親も、すぐにでもと仰って…」
静流の家族には、紫苑との関係は大学に入ってからバレてしまっていた。だからこそ、早々と結婚させてしまおうという魂胆なのだろう。全て察しがついた。
「静流くん…私、今日まであなたの妻となるために暮らしてきました」
小夜がゆっくりと静流の方に歩み寄ってくる。
勝手に話が進み出したので、静流は慌てて話を止めた。
「ちょ、ちょっと待って、小夜ちゃんは今好きな人とかいないの?」
「静流くんと将来を誓ってからは、静流くん一筋で来ました」
小夜がまっすぐに静流を見ている。静流は申し訳なさそうに切り出した。
「ごめん…僕は、こんな約束取るに足り無いものだと思っていたから、今付き合っている人が…」
「蒼城さん、でしょう?お二人が愛し合っているのはわかります。けど、静流くんのご両親も大反対してらっしゃるし…男同士じゃ結局先はないんじゃないですか?蒼城さんだってこの先幸せにはなれませんよね」
「蒼城さん、ですか」
学内では見たことのないような、上品そうな女性――年は変わらないようだ――が、紫苑に話しかけてきた。
「そーだけど…」
紫苑はくわえていた煙草を揉み消した。
「――しずと別れろ?」
近くの喫茶店に場所を移した二人。
その女性の話では、なんでも女性は静流の幼馴染で、双方の親が将来を約束した、俗に言う許婚だというのだ。
紫苑は、その真実もさることながら、静流の口から全くそんな話を聞いていないことにショックだった。
「んなこと、しずはとっくに忘れてるよ!先に静流と話し合うのがスジってもんだろ!」
紫苑はそう啖呵を切ったものの、動揺を隠せない。
でも、絶対にこっちから問いただしてなんかやらない。
「おかえり」
何も知らず、いつものようにニコニコ迎える静流を、紫苑は強引に押し倒し、乱暴に体を奪った。
「紫苑?!くっ苦しいよ…」
体を繋ぎとめておくのは簡単だ。でも、お前はいつまでたっても心は許してくれねーんだ…
「紫苑…何かあったの?」
人の気も知らず、一人大人ぶって紫苑をあやすように問う静流が、腹立たしかった。
「なんもねぇよ!」
紫苑の頭を撫でていた静流の手を払いのける。
「ごめん…」
苦笑いして謝る静流。
「あやまんなよ!悪いなんて思ってないくせに…」
静流に反撃して欲しかった。
わざと絡んで、本気になって欲しかった。
それなのに、返ってきた返事と言ったら。
「――そうだね」
「――帰る」
「あっ」
正門の前で静流の足が止まる。
「静流くん…」
恥じらいながら近づいてくる女性は、昨日紫苑に別れを迫ったあの女性。静流は一目でわかった。
「すごい…久しぶりだね」
「覚えててくれて嬉しいわ」
この二人、実に8年ぶりの再会である。この年頃で8年会わなければ、容姿はすっかり変わってしまっていて普通気づかないのではないだろうか。すぐにわかるというのはすごいことである。
「私…この春、短大を卒業して…今は花嫁修行中なの…」
静流は次第に余計なことも思い出してきた。女性――名を小夜という――が、突然自分に会いに来た理由も、見えてきた。
「静流くんのご両親も、すぐにでもと仰って…」
静流の家族には、紫苑との関係は大学に入ってからバレてしまっていた。だからこそ、早々と結婚させてしまおうという魂胆なのだろう。全て察しがついた。
「静流くん…私、今日まであなたの妻となるために暮らしてきました」
小夜がゆっくりと静流の方に歩み寄ってくる。
勝手に話が進み出したので、静流は慌てて話を止めた。
「ちょ、ちょっと待って、小夜ちゃんは今好きな人とかいないの?」
「静流くんと将来を誓ってからは、静流くん一筋で来ました」
小夜がまっすぐに静流を見ている。静流は申し訳なさそうに切り出した。
「ごめん…僕は、こんな約束取るに足り無いものだと思っていたから、今付き合っている人が…」
「蒼城さん、でしょう?お二人が愛し合っているのはわかります。けど、静流くんのご両親も大反対してらっしゃるし…男同士じゃ結局先はないんじゃないですか?蒼城さんだってこの先幸せにはなれませんよね」
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