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本編

14:依頼を達成したら何か始まった

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〈これまでの行動から技能《考古知識》を獲得しました〉
〈称号【本の虫】を獲得しました。空きスロットがある為、自動で称号がセットされます〉


 資料室で最後の未読本となっていた、ある冒険家の伴侶探しの日記を読み終わったところで、いくつかの通知が来た。

 《考古知識》は他の知識系と同じように、遺物や遺跡関連の情報を得る際により詳細になる補正が入るようだ。

 …………冒険家の日記読了のタイミングで《考古知識》を得たんだがそれは……。まぁ、いいか。

 ちなみに日記の内容はというと、ある冒険家が己の伴侶を探す旅に出ていたらしく、訪れる先々で『積極的に』伴侶を探し求める為、大体最後は修羅場になって大変だったというエピソードがほとんどだ。道中は普通に冒険譚があったり、時に切ないエピソードがあったりと読み物としては中々面白かった。

 最後はこれぞという人を見つけた的な内容が書かれていたところで日記は終わっていた。その後が気になる……。


 それはさておき。
 自動でセットされてしまったらしい称号だが、まぁ、これは名前だけで大体分かるな。

 アルストの称号はとくにステータス補正があるわけではなく、本当にただの称号という仕様だ。ただし、この世界の住民からは得た称号を元にした認識や接し方をされるらしい。

 【本の虫】とはこれ以上ない程僕の性質を表していると思うので、獲得出来て非常に満足だ。


「トウノさん、ギルさんから依頼についてのお話が……って、まさか、ここにある資料や本全部読まれたんですか……?」
「ああ、見逃しが無ければ多分」
「うわぁ、本当に読書がお好きなんですねぇ」

 どうやってか分からないが、称号に反応したと思しきカーラの反応。もしかしたらカーラに無類の読書好きと認識されたことで称号を得たのかもしれない。

「それで、ギルから話があるとか」
「あ、そうでした。今からお越しいただく時間はありますか?」
「ああ、問題ない」
「分かりました。ご案内しますね」

 そしてカーラに案内されたのは、資料室と同じ階の奥にある他より少し豪華な造りの扉の前だった。
 カーラがその扉をノックすると、中から「どうぞ」と返答があり、扉を開ける。

「トウノさんをお連れしました」
「うん、ご苦労様。やぁ、トウノ君。中に入って好きなところに座ってくれ」

 ギルに促されて中に入る。奥に大きなデスクがあり、手前には応対用と思われるテーブルとソファがあった。
 僕が右側のソファに腰を下ろすと、反対側のソファにギルが座った。

 カーラは……あれ、いない。

「早速だけど、情報をまとめてくれたお礼を言わせてもらおう。そして、予想を遥かに越えた素晴らしい資料だったよ! もちろん依頼は達成だ」
「そんなに大したことはしてないと思うが……、受け取っておく」
「ふふ、謙虚だね。まずは報酬を渡そう。こっちがゴールドだ。資料の価値を鑑みて追加しておいたよ」

 まずは?……まぁ、良いか。
 クエスト達成の通知も視界の端で流れたが、後で確認するとしてゴールドを確認。……ええ、50000G?

「依頼にあったゴールドの5倍は貰いすぎでは?」
「それくらいの価値があったってことだから是非受け取って欲しい」
「……そういうことなら」

 ニコニコしているが、有無を言わせないような謎の圧力があったので素直に受け取る。

「そして報酬通り君のギルドランクを1つ上げたよ。……あとは、うちの者達が君に通り名を付けたがってね。そんな変なものでは無いから受け取って欲しいな」

〈職業ギルドランクがEになりました〉
〈称号【森碧しんぺき】を獲得しました。空きスロットがある為、自動で称号がセットされます〉

 言われると同時に称号獲得の通知が流れた。これがギルの言っていた通り名なのだろうか。

「変なものじゃなさ過ぎてむず痒いな……」
「ああ、異人はただちに確認が出来るんだったね。由来は君の眼の色と『ジャスパー』という鉱物をかけたらしいから、今後本名を隠したかったらそっちを名乗るのもありだね」
「それは、ちょっと……」

 真っ黒な歴史が刻まれてしまうので勘弁して欲しい。

「そうかい? 通り名を使う者は結構多いんだけどね。……さて、次は『資料室の資料の限定的貸出許可』だが、資料室の資料は全て読んでしまったみたいだね?」
「ああ、つい先ほど」
「ふーむ、それだとこれはあまり必要ないか。じゃあ、代わりにギルドの所有している古い倉庫に古過ぎて誰も読めない書物があるんだけど……それの閲覧許可はどうだろう?」
「是非、それで!!」

 食い気味に前のめりに勢い良く即答した。そんなの読みたいに決まっている。資料室の方を全部読み終わってて良かった。

「多分全く読めないと思うし、持ち出し許可も出せないんだけど良いかな?」
「全然かまいません」

 本当にかまわない。それに《言語知識》があるから、もしかしたらすぐに読めるようになるかもしれない。

「あはは、ゴールドよりも嬉しそうだね……。それでは、これがその倉庫の鍵だ。満足したら返してね」

 苦笑い気味のギルから鍵を受け取り、場所も教えてもらう。マップにも場所が反映され、倉庫に向かうまでの道が通行可能表示になっていた。


「さて、君への報酬はこんなところかな」

 ギルが区切るように言う。
 まだ何かあるのだろう。

「最後に君の考察にあった、この町の存亡に関わる事態が起こる可能性についての話をしたい」
「存亡に関わる……。あれはあくまで僕の1つの予想に過ぎないんだが……」
「いや、これは可能性がある時点ですぐ対処すべき重大な案件だ。この段階で異変を認識出来て本当に良かった。この後速やかに町全体は勿論、近郊の町とも連携して行動を起こすことになる」

 まぁ、もし起こってしまって「何の対処もしていなくて被害甚大です。」なんてことになったら目も当てられないだろうし、対策はしすぎなくらいが良いのだろう。


 ────ギルが町の存亡に関わる、と言った僕の考察とは、過去の記録と現在の魔物分布から起こりうる可能性の1つとして出した<魔物の大量発生による人種族集落への大規模襲撃の可能性>のことだ。


『ある異人が始まりの町『ユヌ』への魔物による大規模襲撃の可能性を指摘したことで、住民が町の存亡に関わる非常事態を認識しました。これにより【ワールドクエスト:始まりの町『ユヌ』防衛戦】が発生しました』

『【ワールドクエスト】はプレイヤー全員参加型クエストとなります。それぞれのスタイルでクエスト達成に貢献しましょう。また、特設クエストページから各項目毎の貢献度を確認出来ます。貢献度に応じて報酬が用意されています』

『町の「防衛力」「近郊安全度」ランクが解放されました。各町のランクはワールドマップからご確認ください』


 ………突然アナウンス音声的なものが大量に流れ出した。ギルの反応は……ギルには聞こえてなさそうだ。

 そして、ワールドクエストなるものとしてユヌ防衛戦が強制受注されたらしい。……ということは、魔物襲撃は確定なのか。

 まぁ、起きてしまうことは仕方ない、早めに問題を認識出来て良かったと気持ちを切り替えていこう。
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