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第二話『幽野怜と表の世界』
【5】
しおりを挟む時刻ーー23時ジャスト。
「よーっし! 皆集まったわねぇ! それでは、肝試しにレッツゴーよ!」
「おお!」
「おおー!」
白目を剥くほど怠そうな怜の目の前で、能天気三人組が楽しそうに声を上げた。
「ほぉーら! 怜っちも声出して!」
「オー」
「やる気のない声ねぇ、全く……もっと明るくいきましょうよぉ、空気が読めない人ねぇ」
「あれれー? ひょっとして怜さん、お化け怖いんっすかー?」
「意外な一面を発見したっす! そんな旦那もカッコイイっす!」
「怖いのは君達の能天気さだよー」
「え?」
「え?」
「今何か言ったのかしら?」
「……もう良いよー、さっさと行こう、そんでさっさと帰ろー……」
都合のいい難聴さにため息を吐き、自ら歩を進める怜。
残りの三人も後を追うように続いて歩き出す。
山道を登る四人。
先頭を歩く怜に末代は走って追い付く。
「ねぇねぇ怜っちぃ、お化けが怖いならぁ、今からでも予定変更して、怜っちの家でお酒飲んでもいいよ?」
「お化けは怖くないしー、それに高校生がお酒飲んじゃダメでしょー」
そもそも、今向かっている廃校舎こそが怜の家なのだ。
「うはっ、怜っち真面目だねぇー。お酒飲まないのー?」
「未成年の飲酒は禁止されてるからねー、当然飲まないよー」
「じゃあコレはぁ?」
末代がポケットから出したのはタバコ。
それを見た怜が目を細める。
「コレ、吸ってもいいかしら?」
「……別に良いけど、タバコは身体によくないよー、特に未成年の喫煙はー………やめた方が良いと思うけどー?」
「んー、そうなんだけどねぇ、それって影響出るのは人生の中盤からあとぐらいでしょう?」
「よく分かんないけどー、多分そうなんじゃない? ……ん?」
怜は再び気付いた。
またしても末代の肩に大量の霊が取り憑いている事に。
昼間除霊した筈なのだが……
この子もしかしたらーー降霊体質なのか? そう考えを巡らせる怜。
「ーーだとしたら、イロノには関係が……」
「はーい、末代さんにこれをプレゼントしてあげるよー」
「え? 何これぇ?」
怜が手渡したのは昼間使った小型の御札。
その御札に末代が触れた瞬間、彼女に取り憑いていた幽霊達が一気に消滅した。
「あら? また何か肩が軽くなった気がするわぁー?」
「それ、御守りみたいなもんだからー、肌身離さずに持ってた方がいいよー、効果抜群だってさー」
「そうなんだぁ……ありがとぉー……嬉しいわ」
その小型の御札を、ぎゅっと握り締める末代。
「さ、とっと行くよー、ここからだと、廃校舎までもうすぐだからさー」
「……詳しいのねぇ、私でもその廃校舎の場所までは知らないのに」
鋭い指摘をする末代。
しかし怜は狼狽える事なく、冷静に対処した。
「まぁー、ボクも、聞いた事あったからねー、その山奥にある廃校舎の事ー……前にスマホでちょちょっと調べた事があったからねー、それだけの話だよー」
冷たく……
静かに……
冷静に答えた。
「……ふぅん……そうなんだぁ」
「うん、だから気にせず行こー」
暗い山なので、足元をスマホのライトで照らしながら四人は歩く。
すると……
「ぎゃー! 落ちるー!!」
「た、大変っす! リーゼントが崖から落ちそうっす! 怜の旦那! 助けてやって欲しいっす!!」
「あー……もう……仕方ないなぁー……」
そんな事がありつつも、ついに御一行は目的地に辿り着いた。
山奥の廃校舎へ。
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