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第二話『幽野怜と表の世界』
【1】
しおりを挟む幽野怜は高校生である。
え? ゴーストバスターなんじゃないの? もう既に社会人ではなかったの? と思われた方もいるだろう。
それは不正解だ。
彼は確かにゴーストバスターである。だが、それと同時に一般の……普通の高校生でもあるのだ。
列記とした高校2年生である。
まだまだ普通の、ケツの青白い少年である。
そんな少年が、学校に通わず、山奥の廃校舎で幽霊退治の依頼待ちの為に引き篭ったり等してみよ、人格が歪む所の騒ぎではなくなるし、社交性も培われない。
確実に人間不信になると言っても過言ではない。
幾ら依頼人が来る事があるとはいえ……そんなしょっちゅう、ホイホイとやって来る事はあまりない。むしろ依頼が来る方が珍しい程だ。
本人が、依頼人が来ない事を前提に考えている為、廃校舎のすぐ横に設置されたプール場のシャワールームでシャワーを浴びた後、全裸のまま保健室に戻ろうとして、珍しくやって来た女性の依頼人と全裸で初コンタクトを取ってしまうくらいだ。
それ程に、珍しいのだ。
更に、このゴーストバスター業界の人間ーーいわゆる同業者にも、あまり良い人格を持つ者は少ない……と、言われている。
幽霊を相手取る仕事は、常人並のメンタルでは通用しないーーといった所だろう。
特に、怜クラスのゴーストバスターになると、当然、絡みのある同業者もそれ相応のレベルとなる。ゴーストバスターとしてのレベルが高ければ高い程、相手取る幽霊は強敵となるし……危険度も高くなる。
だからゴーストバスターとしての怜の周りには、言葉を濁すと、癖のある人間が多い。
そんな場所で、社交性など学べる筈もない。
むしろ怜が教えなくてはならないレベルだ。
だから怜は高校に通っている。
一人の人間として、大切な事を学ぶ為に。
「あー……学校行くの、めんどくさいなー……」
しかし、当の本人である怜はこんな感じである。
「ねぇー…… 姉さーん、今日学校休んじゃだめー?」
「駄目です! ちゃんと学校へは行きなさい! ゴーストバスターにばかりかまけていたらダメ人間になっちゃいますよ!!」
「あーもー、めーんーどーくーさーいーよー!」
察する方もいるだろう。
上記で語った事は全て、怜、本人の意思ではない。
姉であるーー幽野冥《ゆうのめい》の意思である。
そう、ブラコンで有名な冥の意思なのである。
ある意味では、これを過保護と捉える人もいるだろうが、冥本人としては優しさで上記の理由を加味した上で「高校には行っときなさい」と言っている。
冥は、ブラコンモードに入った際には平気で弟の頬を舐め回す変態さんだが、普段はしっかりとした、ゴーストバスター界では稀少な常識人なのである。
あくまで、ゴーストバスター界では、の基準ではあるが……
兎にも角にも、そんな冥の背中押しもあって、怜は学生服を着て、廃校舎を飛び出し、山を下りる。
「社交性……ねぇー、姉さんさー、それってさぁー、通う高校が、まともであれば、の話じゃないのかなー?」
彼は山を下りながら考える。
今向かっている高校の事を考える。
「あんな不良達から、社交性なんて学べんのかなー?」
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