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第一話『ゴーストバスター幽野怜』
【6】
しおりを挟む対峙するゴーストバスター幽野怜と、霊……いや、悪霊といって差し支えない、老婆のような手。
老婆のような手は、ギロりと怜を睨み付ける。
片や怜は余裕綽々といった表情。
「……ヨユウカ? ナメヤガリヨッテ」
「え? 何てー? 幽霊のカタコト言葉ってすっごい聞き難いんだよねー、もっとちゃんと喋ってくれないかなー?」
「コロス!」
「やってみなよー」
老婆のような手が動く、目にも止まらぬ速さで怜へ向かって突進する。
まるでスケールの大きい掌底だ。
しかし、幽野怜はそれを避けようとしない。真正面から受け止めるつもりの様子。
「バカメ! アナドッタナ!!」
「はぁ? 侮る? そんなランクまで至ってないよー? 君はー」
怜は、自らの額に御札を貼る。
例の、ありがたい御札、と書かれている御札を。
すると、怜の髪の毛が逆立ち、白い蒸気のようなものが身体中から溢れ出る。
「はい、カモーン」
「ナメオッテェー!!」
ぶつかり合う怜と老婆のような手。
いとも容易く――怜は左手一本で、老婆のような手の突進を止めた。
間近で観戦している数端と友人も目を丸くした。
「ナッ!? ナニィ!?」
「ね? こんなもんだよー、だから舐めるも糞もないよねー?」
ニッコリと微笑みながら言う怜。
その微笑みが癪に障った、老婆のような手。
「ナ、メルナァァアーー!!」
老婆のような手の前腕辺りから、四本ほどの腕が生えた。その四本がそれぞれ怜へと襲いかかる。
しかし、怜の視線は増えた四本腕ではなく、背後にいる数端と友人のに向いている。
そんな様子の怜を見て、数端は「幽野さん 前見てください! 来てます!!」と、心配の声を上げる。
「うーん……ここだと巻き添いにしちゃうかもなー」
怜はそんな事をぶつぶつ呟きながら、考えながら、まるで片手間のように、空いている右手で四本の腕――全てを破壊した。
ただのジャブのような四発のパンチで。
「すご……」
背後で数端は唖然としている。
「……り……ぇ……」
ここで友人が口を開いた。
「友人! 大丈夫!? 無理して喋らなくていいよ!?」
「……か、れは……な……に、もの……な、んだ……?」
友人の視線は怜へと向いている。
数端の顔が綻ぶ。彼女は目を潤わせながら、胸を張って答える。
「彼は、ゴーストバスター!
私達にとってのーーヒーローだよ!!」
そして怜が動き出す。
「ちょっと離れた位置で仕留めちゃおーっと」
老婆のような手を大遠投した怜。
全長5m程もある老婆のような手を軽々と投げた。
ここは真っ暗な地獄――上か下か、右か左か、立っているのか座っているのか分からない漆黒の闇の中。
今、この瞬間、間違いなく、老婆のような手は地獄の宙に浮いていた。
充分に、数端達と距離を取った所で……
「さぁ、これでお終いだねー」
怜の全身に溢れる白い蒸気が、全て右手に集まる。すると、黄金の光を放ち出した。
白い蒸気が――黄金の光へと変貌した。
漆黒の闇を照らす光へと。
宙を舞いながら、その光を目にした老婆のような手は……
「ソ、ソノヒカリハ!! マ、マサカキサマ! 『チュウオウ』ノ――」
「ご名答、そしてさようならー」
怜は足元に設置している茶色の御札の上で、強く踏ん張り、攻撃を放つ。
「チョッ! マッ……」
黄金の光を纏う右腕を、アッパーのように振るうと、その光は闇を切り裂くかの如く猛スピードで老婆のような手の元へと距離を詰めていく――
そして、数端は見た。
放たれた光が、老婆のような手に直撃する瞬間には、まるで、手のような形になっていたのを目撃した。
それは、細く、か細い、老婆のような手ではなく。
怜の腕でもない。
そう、あれはまるで……怪獣の……龍の爪のような形だった。
そんな黄金の龍の爪のような光が――
「ギィィヤァァァアァァァアアァァァァァアアアアァァァァァァアアァァァアアアァァァァァアアァァァァァァァァァァアアアアアアァァァアア!!!」
老婆のような手を粉々に砕いたのだった。
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