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粘膜EL.DORADO 11.

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 それからこれは流動砂式焼却銃、サンドストーム13っちゅうやつや。13はワシのおった十三にちなんで……それはどうでもええわい。こいつは補給が途絶えてもタマ切れに悩まされんと戦えるように造ったんや。中身は砂。どこにでもある砂でエエんよ。そいつをタンクに充填したら……ノズル内部のコイルで超高温にして吹き付ける。すると、赤熱した砂にまかれた相手は一瞬で完全燃焼させる……主に虫系のバイオテクノロイドに使ったな。普通の銃や火炎放射器じゃ的は小さいし焼かれへん。せやけど、コレやったら半径数メートルは一網打尽や。
 
「前に、マノがオタロで使った技に似てるね」
「ああ。アレか」
「歩く超兵器やな、ブラウンが一目置くだけのことはあるわナ」

 その後もポンバシ博士ことドクトル・アマリージョによる自身が発明した超兵器の紹介が続いたが、中にはイチゴ味のグルメな豆腐が無限に錬成されるマシンや、雲を固めてちょっとした塊にするガス、ゼンマイ仕掛けでまるで生きているかのように動き回る木彫りのネズミなど、よくわからないものも沢山あった。

「とにかく、アンタと知事が竹馬の友だというのはよくわかった。それで、租界であるココと知事の名前が同じなのは……どういうわけだ?」
「それは、モチャモチャ……これもまあモッチャ話せば、長いんや」
「ポンバシ博士が余計なものまで説明してるからでしょ。もうっ、イチゴとうふ食べてる場合じゃないわよ!」
「モッチャモッチャなかなかオツなモンやけどなあ。売れへんかってんやなー」
「まあまあ、おいおい聞いて行けばいいじゃないか」
 サンガネがそう言って、一先ずこの場を収めようとしたその時。

「ごめんくださーーい」
「あら、お客さんね?」
「ほんまや。ほな商売、商売」
 歌うようにしてアマリージョ博士がトントンと階段を下りてゆく。
 ボクとサンガネは部屋に残って、引き続き思案を巡らせていた。あぶくちゃんはコーヒーとクッキーの後始末をしてオカモチを持ち上げると、またお店に戻ると言って階段を降りて行った。

「つまるところ、向こうが手出しをしなきゃコッチも攻めようがねえってわけだな」
「そういうことになるね。何しろコチラから攻撃しようものなら、まんまと文化粛清の口実を与えることになる」
「文化粛清か、くだらんな」
「そうだね。くだらない……くだらないことぐらいにしか、躍起になれない奴等なのさ」

 O.C.P、つまりオーサカシティプレジデントは旧市政で言うところの市長のポジションだが、それよりもさらに権限を強く持ち、それを議会のみならず市民に働きかけることが出来る。常に活発な議論を行い、オーサカの健全かつ躍進的な発展を願う善良な市民に対し、O.C.P自らの意志で強く願うことにより市民の理解と協力を求める。というものだ。

「早い話が脅迫さ」
「議論だの躍進だの健全だの言ってりゃ、暗に脅してると言ってるようなもんだ」
「実際、議論どころか彼の意見に口を挟んだり、ちょっと言い直したりするだけでも大変なことになるみたいだね。だからみんな戦々恐々、言いたいことも言えずに、どうにか本音を悟られまいとビクビクしてるって話さ」
「ヤダねえインテリどもの腹の探り合いは。腹を探られるならカワイ子ちゃんがいいや。腹の下がいいな。なあサンガネ」
「ボクは遠慮しておくよ」

「それにしても、おーしーぴー、ってか……フン。どういう奴なんだか」
「こういう奴さ」
 ボクは手に持った端末の液晶画面にニュース映像を映してマノに見せた。

「このォ、オーサカの街もォ、グローバリゼーションの渦中にあってェ、包括的なァ抜本的構造改革におけるゥ、第二次消費者生活向上計画推進委員会の開催をもちましてェ」
 なんだかよくわからない横文字と造語を、マイクを引っ掴み真っ赤にした顔で得意になって並べ立て捲し立てている背広姿の男が映し出された。
「噂のおーしーぴー様だよ」
「ほぅ、随分と若く見えるがこりゃ実物はだいぶ老けてるな」
「映像を見ただけでわかるのかい?」
「顔と手首の皺の数が合わねえや」

「我々ェ、オーサカ一心会にとって今度のォ、オーサカ自由民主大選挙は世紀の決戦でありィ、皆様のォ、御支持の元ォ、今日までオーサカの繁栄と進歩の為ニィ……」
「え、選挙なんかすんの?」
「まあカタチだけはね」
「市長がハリボテなら選挙も茶番か」
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