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#松山座 2023年8月公演 第6試合

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#松山座 2023年8月公演 第6試合

清水 来人選手
VS
岡崎 恭也選手
VS
鈴木敬喜選手

この日の試合開始前、松山勘十郎座長が登場し二つの残念なニュースを告げた。
そのうちの一つが、まあ衝撃的な……この第6試合、もといセミファイナルに出場予定だった初登場のガイジンレスラー、フランコ・ヴァルガが会場に不着、どころか音信不通のオマケ付き。
思わずW★INGかよ!と突っ込んだが、もしかしたら流石のW★INGでもガイジンレスラーは案外ちゃんと来てたかもしれない……。

そんな90年代初期のズンドコエピソードの宝庫たる流れ星に匹敵するレベルの大事件にもかかわらず、訓練されたお客たちは気持ちを切り替え、むしろ座長を励まし温かい拍手で勇気づける。そして、もうひとつの発表で、未知のガイジンの不着騒動は良くも悪くもすっかり霞んでしまったのだった。

どういう理由があったにせよ、良くも悪くも未知の選手で全くの無名であったがゆえに諦めもついたし、割り切ってこの状況を楽しむしかなかった。
そうして急遽決定した三つ巴戦は、座長曰く
運動部員の弁当箱
みたいな、肉々しい褐色の塊が凝縮された見ごたえ抜群の一戦だった。

三人が三人とも、各地方、各団体の期待の選手にして力自慢のパワーファイター。
新潟プロレスの鈴木選手は2019年に新潟で試合を見て、その時が確かデビュー直後だった気がする。
あれから数年。少年だった鈴木選手は垢抜けて、色気が増して、ふた回りぐらいデカくなっていた。

清水選手は東京から、松山座でも最近お馴染みの選手で、もう漫画に出て来るようなマッチョマン。超兄貴とかドラゴンボールとか北斗の拳とか、ああいう世界観だ。
堂々たる体躯にモヒカン、鋭い眼光。でも愛妻家。
そこがまた応援したくなるところでもある…。

私が今公演で最も期待していた岡崎選手は九州・大分のFTOより参戦。
前回の試合を写真で見ていて、その他の投稿も見るにコレは凄い!と。
何より笑顔が可愛い。強い男は優しいのだ。

試合は当初タッグを組むはずだった清水選手と岡崎選手が結託するも、鈴木選手はそれを打ち破って八面六臂の大暴れ。岡崎選手も清水選手も、負けじと相手をぶっ飛ばして投げまくる。チョップや肘打ちが肉を打つ音が檀上席まで響いてきて、ボディスラムやスープレックスでリングがこんなに揺れるのも珍しい。それこそ2メートルを超える巨体や、規格外のパワーを持つガイジンレスラーの仕業ではない。
みんなの地元で頑張っている、身近なエストレージャがリングを揺らして戦っているのだ。

これは、なんとも夢のある光景ではないか。
これは、とても素晴らしいことではないか。

重く鈍い打撃を喰らうたびに苦悶の表情を浮かべながらも、どこか満足げでエンジンに火が点いて加速してゆくのがわかる清水選手。
場所柄、彼の試合を見るのは久しぶりか初めてというお客さんが多数を占めるであろう中で抜きん出た戦いぶりを見せる鈴木選手。
そして試合が、全身のぶつけ合いが楽しくて仕方なさそうな岡崎選手。
三者三様の筋肉の塊が躍動する極上の肉弾戦。骨と肉のぶつかり合うオーケストラだ。

試合は全体重をマトモに浴びせたラリアットで鈴木選手の勝利だった。
が、戦いが済んで並び立てば、みんなボロボロだし、みんなカッコ良かった。
こんな男になりたくてプロレスラーに憧れたし、こんな試合をするところを日々思い描いていた頃に立ち返ると、なんだか居ても立っても居られなくなる。
が、まだメインイベントがあるので、いい子で檀上席に座っているのだ。

物販でTシャツを買った時に少しお話してくださった岡崎選手は、気は優しくて力持ちを地で行く爽やかな青年だった。とても頼もしく、これからもプロレスを面白くしてくれる選手の一人だと思うし、もっとデカくて強くなっていく筈だ。今後とも楽しみにしております。


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