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デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実
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ワニブックスより発売されたこの本の感想を以下に記します。
遅れて来て、流星群の過ぎ去った夜空を眺めながら。またあのお店に行こう、そのためにも頑張ろうと思って、日々アマチュア物書きを続けています。
デスマッチと言えば!?
そう松永光弘さんである。
90年代初頭のインディープロレスにおいて危険なデスマッチの数々に挑み、幾つもの伝説を残し、ミスターデンジャーと呼ばれるようになった男。
ミスターベースボールとか、ミスタープロレスとか、ミスターどうでしょうとか、そのジャンルや文化を代表する人に与えられる「ミスター」に、デンジャーと来た。
危険と言えば松永光弘!というわけである。
どのぐらい危険な男かといえば、
サボテン、ピラニア、火炎放射、人間焼肉、月光闇討ち、五寸釘ボード、有刺鉄線、鉄球でガラスをブチ割る、バルコニーダイブ。パッと思いつくだけでこれ全部、デスマッチに使って自分で喰らってるか飛び降りている。自分が攻める方だけじゃなく、自分で思いついたデスマッチで自分が壮絶に苦しむことさえ厭わない。だからミスターデンジャーなのだ。
そんな危険を顧みない男、松永光弘さんには、もう一つの顔がある。
それが下町の繁盛店として長らく愛されるステーキ屋さんの店主。
20年以上に渡って東京都墨田区立花、東武亀戸線・東あずま駅すぐそばで営業を続ける
「ミスターデンジャー」
は、柔らかくて美味しいステーキが安価で腹いっぱい食べられる凄いお店。
私も2度だけ行ったことがあるけど、ビックリするよ。
1ポンドどころか600グラムでもモリモリ食える。お肉が柔らかいから食べやすいし、味も抜群。さらにそのままでも美味しいお肉に色んなソースやニンニク、バターなどをつけて食べるから飽きも来ない。
実際、最初はヒヨって400グラムにしたけど、やっぱ足りない!ともう400グラムおかわりした。2回目の時は、一緒に行ってくれた人まで400グラムをペロッと平らげた。
プロレスファン、松永さんの雄姿を知る往年のファンだけじゃなく、むしろ近所のお客さんに愛され定着したお店であり、それは松永さんいわく、ちゃんとそうするために意識なさったのだとか。
そんな名店がオープン当初から今日(こんにち)まで歩んできた道のり、七転八倒の受け身の数々を赤裸々に書き記した本がコチラでした。
以前にも松永さんは書籍を出していて、その中でもステーキ屋さんについて触れてたし、長らくファンをしているとmixiやブログでも思い出話として色々と書き記しているのを読んでいると思う。
ホテルマンシリーズとか、プロデビューからの歩み、さらに趣味の熱帯魚や楽器制作に至るまで闊達な日記で、もともと何か書くのがお好きなのかも知れない…。
このデスマッチより危険な飲食店経営の真実、でもデンジャー節は健在。
先ず、過去に出版した本に書いた数字について。バツが悪そうに、でも素直にポロっと話してしまうところがまた。今までも散々、苦境を自虐で逆手に取って来た松永さんだからこそ、ファンにはむしろ好意的に受け止められるし、この本をビジネスのヒントとして手に取った人や、単に金髪おヒゲで有刺鉄線を鉢巻きにしたステーキ屋さんに興味を持った人からは「潔い」と思われるはず。
このほかにも業者とのトラブル、チェーン展開の失敗、BSEやリーマンショック、消費税増税、光熱費や仕入れ値の高騰……そしてトドメを刺すかのような昨今の情勢と。ブログなどを読んでいれば、これ以外にも頭痛の種が尽きなかったことは承前であり、それはまさに茨、いや五寸釘の道。
町から人が消え、もう店を畳もうかとすら思った松永さんは、しかし諦めなかった。
危険なアイディアでプロレス界を生き抜いた男は、危険な状況でもアイディアを惜しまなかった。
なりふり構わない悪戦苦闘ぶりから人気店になってゆく様は痛快で、次から次へ巻き起こる困難に立ち向かう松永さんから目が離せなくなる。
生きるヒントは特盛で用意されているし、読みやすく味付けされた絶品の一冊です。
松永さんは普段からごく僅かな例外を除いてお店にいらしてお肉を焼いている。
そして時間を見計らってお願いすれば、写真撮影やサインもしてくれる。
「松永です、どうも」
と厨房から現れた物静かな「松永さん」に、店員さんが私のスマホのカメラを構えた瞬間だけ「ミスターデンジャー」に戻ってくれた。あの無表情で相手を睨みつける、冷たい鉄面皮。これがプロレス時代の松永さんの持ち味だった。
凄んだり、顔をゆがませるのではなく、不気味にシーンとしているから怖いのだ。
自分にとってプロレスは過去だ、と松永さんは断言する。
実際に引退して十数年経っている筈だが、復帰しようだとか、現役時代を懐かしみリングを恋しく思うそぶりも見せない。
だって他にやるべきこと、やりたいことが、きっといっぱいだろうから。
自分で楽器を作ってライブで披露して、しまいにR-1ぐらんぷりアマチュア部門で優勝しているぐらいだ。そんな元プロレスラーの姿を、ずっと見続けられることなんて中々ない。
復帰しなかったプロレスラーは人目に付かなくなるだけで、復帰した人の中でそれでも需要があった人だけが生き残って今でもみんなの前に顔を見せているのであって。
引退後もステーキ屋さんとして注目され、プロレスに戻らないまま応援されている松永さんは、今日びのプロレス界では稀有な存在なのかも知れない。
決して楽観的な性格じゃないけど、暗いことばかり考えても仕方がない。
松永さんは最後にそう書いた。
「最後のダイブ」は有り得ない。自分の運や得難い経験を信じて、誰も味わったことのない未来を突き進む、と。
やっぱり私は、そんな「ミスターデンジャー」から目が離せないし、必ずまたあのデンジャーステーキを腹いっぱい食べるために、頑張って売れようと思っている。
あの危険な雄姿と絶品ステーキに勇気づけられ、励まされた人は大勢いると思う。
そしてデンジャーステーキを味わった往年のファンは心の中でお店のドアに殴り書くのだ。
またくる、(閉店したら)ゆるさん。
と。
遅れて来て、流星群の過ぎ去った夜空を眺めながら。またあのお店に行こう、そのためにも頑張ろうと思って、日々アマチュア物書きを続けています。
デスマッチと言えば!?
そう松永光弘さんである。
90年代初頭のインディープロレスにおいて危険なデスマッチの数々に挑み、幾つもの伝説を残し、ミスターデンジャーと呼ばれるようになった男。
ミスターベースボールとか、ミスタープロレスとか、ミスターどうでしょうとか、そのジャンルや文化を代表する人に与えられる「ミスター」に、デンジャーと来た。
危険と言えば松永光弘!というわけである。
どのぐらい危険な男かといえば、
サボテン、ピラニア、火炎放射、人間焼肉、月光闇討ち、五寸釘ボード、有刺鉄線、鉄球でガラスをブチ割る、バルコニーダイブ。パッと思いつくだけでこれ全部、デスマッチに使って自分で喰らってるか飛び降りている。自分が攻める方だけじゃなく、自分で思いついたデスマッチで自分が壮絶に苦しむことさえ厭わない。だからミスターデンジャーなのだ。
そんな危険を顧みない男、松永光弘さんには、もう一つの顔がある。
それが下町の繁盛店として長らく愛されるステーキ屋さんの店主。
20年以上に渡って東京都墨田区立花、東武亀戸線・東あずま駅すぐそばで営業を続ける
「ミスターデンジャー」
は、柔らかくて美味しいステーキが安価で腹いっぱい食べられる凄いお店。
私も2度だけ行ったことがあるけど、ビックリするよ。
1ポンドどころか600グラムでもモリモリ食える。お肉が柔らかいから食べやすいし、味も抜群。さらにそのままでも美味しいお肉に色んなソースやニンニク、バターなどをつけて食べるから飽きも来ない。
実際、最初はヒヨって400グラムにしたけど、やっぱ足りない!ともう400グラムおかわりした。2回目の時は、一緒に行ってくれた人まで400グラムをペロッと平らげた。
プロレスファン、松永さんの雄姿を知る往年のファンだけじゃなく、むしろ近所のお客さんに愛され定着したお店であり、それは松永さんいわく、ちゃんとそうするために意識なさったのだとか。
そんな名店がオープン当初から今日(こんにち)まで歩んできた道のり、七転八倒の受け身の数々を赤裸々に書き記した本がコチラでした。
以前にも松永さんは書籍を出していて、その中でもステーキ屋さんについて触れてたし、長らくファンをしているとmixiやブログでも思い出話として色々と書き記しているのを読んでいると思う。
ホテルマンシリーズとか、プロデビューからの歩み、さらに趣味の熱帯魚や楽器制作に至るまで闊達な日記で、もともと何か書くのがお好きなのかも知れない…。
このデスマッチより危険な飲食店経営の真実、でもデンジャー節は健在。
先ず、過去に出版した本に書いた数字について。バツが悪そうに、でも素直にポロっと話してしまうところがまた。今までも散々、苦境を自虐で逆手に取って来た松永さんだからこそ、ファンにはむしろ好意的に受け止められるし、この本をビジネスのヒントとして手に取った人や、単に金髪おヒゲで有刺鉄線を鉢巻きにしたステーキ屋さんに興味を持った人からは「潔い」と思われるはず。
このほかにも業者とのトラブル、チェーン展開の失敗、BSEやリーマンショック、消費税増税、光熱費や仕入れ値の高騰……そしてトドメを刺すかのような昨今の情勢と。ブログなどを読んでいれば、これ以外にも頭痛の種が尽きなかったことは承前であり、それはまさに茨、いや五寸釘の道。
町から人が消え、もう店を畳もうかとすら思った松永さんは、しかし諦めなかった。
危険なアイディアでプロレス界を生き抜いた男は、危険な状況でもアイディアを惜しまなかった。
なりふり構わない悪戦苦闘ぶりから人気店になってゆく様は痛快で、次から次へ巻き起こる困難に立ち向かう松永さんから目が離せなくなる。
生きるヒントは特盛で用意されているし、読みやすく味付けされた絶品の一冊です。
松永さんは普段からごく僅かな例外を除いてお店にいらしてお肉を焼いている。
そして時間を見計らってお願いすれば、写真撮影やサインもしてくれる。
「松永です、どうも」
と厨房から現れた物静かな「松永さん」に、店員さんが私のスマホのカメラを構えた瞬間だけ「ミスターデンジャー」に戻ってくれた。あの無表情で相手を睨みつける、冷たい鉄面皮。これがプロレス時代の松永さんの持ち味だった。
凄んだり、顔をゆがませるのではなく、不気味にシーンとしているから怖いのだ。
自分にとってプロレスは過去だ、と松永さんは断言する。
実際に引退して十数年経っている筈だが、復帰しようだとか、現役時代を懐かしみリングを恋しく思うそぶりも見せない。
だって他にやるべきこと、やりたいことが、きっといっぱいだろうから。
自分で楽器を作ってライブで披露して、しまいにR-1ぐらんぷりアマチュア部門で優勝しているぐらいだ。そんな元プロレスラーの姿を、ずっと見続けられることなんて中々ない。
復帰しなかったプロレスラーは人目に付かなくなるだけで、復帰した人の中でそれでも需要があった人だけが生き残って今でもみんなの前に顔を見せているのであって。
引退後もステーキ屋さんとして注目され、プロレスに戻らないまま応援されている松永さんは、今日びのプロレス界では稀有な存在なのかも知れない。
決して楽観的な性格じゃないけど、暗いことばかり考えても仕方がない。
松永さんは最後にそう書いた。
「最後のダイブ」は有り得ない。自分の運や得難い経験を信じて、誰も味わったことのない未来を突き進む、と。
やっぱり私は、そんな「ミスターデンジャー」から目が離せないし、必ずまたあのデンジャーステーキを腹いっぱい食べるために、頑張って売れようと思っている。
あの危険な雄姿と絶品ステーキに勇気づけられ、励まされた人は大勢いると思う。
そしてデンジャーステーキを味わった往年のファンは心の中でお店のドアに殴り書くのだ。
またくる、(閉店したら)ゆるさん。
と。
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