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かんのさんのわすれもの
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かんのさん、というラジオリスナーで小説も書いているフォロワーさんが、一年に一度アンソロジーを出している。私も前に一度書かせて頂いて、その時はラジオがテーマだった。
そして今回のテーマは忘れ物。
○○×わすれもの
(まるまるばつ、と読むシリーズの、わすれものがテーマという意味)
で届いてから少し経ってしまったけれど、沢山収録されている中から特にお気に入りだけに絞って感想を書きました。
ネタバレや、書き写し・引用みたいにならないように書くので若干フンワリしてますが、気になった方は是非かんのさんまでお問い合わせ頂ければと思います。どれもポテンシャルが高く平均点が格段に上がってて粒ぞろいのラインナップですので、買って損は無いです。少なくとも私には、読み飛ばしたりツマンネエと思ったりする作品はありませんでした。その中で、特にツボだったものをご紹介……。
・生活
ちまきさん、という方の作品。日記を付けて振り返る自分の生活。
それと、とんでもない部屋で「生活」と題して暮らしていたという話。
たまにいる変わった感じの元気な若い女性。だいたい10年ぐらいすれば何事もなかったかのように落ち着いて、だけど変わらず元気でユニークなお姉さんとして年下の男に好かれてそうな女性の話。
私もネットを使う前は日記帳に、我が家にパソコンが来てからはブログ、ミクシィ、小説家になろう、今はアルファポリスで事あるごとに日記を付けている。
行った場所、食べたもの、会った人、これまでのこと
色んなことを書き留めている。あとから自分で読み返して面白い記事があるとちょっと嬉しい。つまんないと、日記なのに自分で添削して載せ直したりする。
その日、その時期の文章のクセとか、影響が如実に出て居る。10年前の日記とか絶対に読み返したくないし、アメブロは削除して退会したしミクシィも消せるものは消した。
消すことは自分で出来るけど、忘れてしまうことは、案外どうにもならないのかも知れない。忘れたくない日々も、忘れてしまいたい過去も。
ついこの間までの生活も。それを忘れたくないからなのか、忘れてしまうことが怖いからなのか、書き記されたもの。つまりこれは、どこか遠くで暮らす知らない人の生活を追体験する日記だった。
この本でいちばん好きな作品のひとつ。是非ご紹介したかった。
・忘れたのは愛だった
ファンである梶本時代(ときよ)さんの作品。この人が書くんで買おうと思った本だった。
私は梶本さんに期待しているんじゃなく、梶本さんを信頼しているのだ。
決して長くはなく、変わったところのない懐かしい話のなかに渦巻く愛着と情緒。
とにかくこの人は「気持ち」というものを文字に起こさせたら天下一品のコッテリ描写。だけど読みづらいのではなく、ブッ刺さる。
子供の頃、確かにそうだった。ヌイグルミとかジェットガルーダみたいなわかりやすいものでもなく、ノダロンと書かれた安いゴム製のボールが何故か愛おしくて何処に行くにも抱えて行ってた時期があった。
同じものは世の中にごまんとある。だけど、自分にとってはひとつだけ。
まるで人間のようだ。擬人化した愛着なのだろうか。
指環、写真、おにぎりの形も、小さなおもちゃも、忘れたり、忘れられたりしながらも、モノに心が移り愛着を持つことから捉えてゆくと見え方が変わる。
短いけれど、この分量のなかに、そんな豊かさが見事に詰まっている。
これだけでも買う価値のある作品です。今回も素晴らしかったです。
・コトダマセンター
ふたつぎさんの作品。良質な短編小説でした。
冬に読むとあったかくていいと思います。
作中にもあるけど【言葉】の不思議さ、に触れられるいい作品です。
了解、を落とす。という発想も好きだし、落とした言葉は使えなくなっちゃうから、という理由で渋々拾いに来る人もいる、っていうのが凄くイイと思いました。
たぶん、この本の中でいちばんヒトサマにオススメしやすい作品だと思う。読む人を選ばず、誰でも読めるし面白いし、「わかる」と思えて気持ちがいい。
・赤を探す旅
かんのさんの作品。この本の中ではボリュームがあって、世界の広がりもあって、それが心地よくて寂しい。広く、奥行きもあるんだけど、それがゆえに物語のサイズが浮き彫りになっている。名残惜しいけれど旅に出なきゃいけなくなる。村はずれのロケットで、星から星へ。
旅に出る理由も、離れなきゃいけない故郷での暮らしも、よその星の人々も、何処か風変わりだけど懐かしい感じもするし、何処かの星に似ていることもある。
自分の世界の外側へ、外側へと向かってゆく話だけど、気持ちは自分の内側へ、内側へと食い込んでゆく。その結末から思うことは、あんた考えすぎだよ、ということと、考えてしまうこと、考えるということは、楽しくもあり、癖でもあるんだよなあという共感でした。
ココと似てるけど、どっか違う世界を書くということは大変にセンスを要する作業で。かんのさんに内包されたその世界は基本的に優しいけど、寂しさについてだけ少し彩度が高くて、だから余計に気持ちのざわつき、ふらつき、といったものが際立つのかなと思います。
・「わすれもの」のことを考えるまで
おまるさんの作品。ギャルの日記という感じで、如何にもな文章を挟みつつ笑えたり目に留まったりする名作フレーズが連発される。そのあとで最後に畳みかけるような羅列があって終わる。
彼女の中の少女が救われますように。
別れて責任のない相手に優しくすることで自分を満たし、あわよくばと思っている奴が来世、虫になりますように。リーリーコロコロ。
かんのさんの作品でこの感想を締め括りたかったけど、迷った末におまるさんのも書きました。この感じは私の好きな書き方だったし、彼女の見ている世界と全然違うところに居るのに、なんだか勝手に親近感を持ってしまったから。鬼ってタトゥーを入れて歩いたら見つけてくれるかしら。
長いものからサックリ読めてしまうものまで彩り豊かで、とてもいい本です。
皆さんも一冊ぜひ。
もし参加された方で自分のが無くて寂しい思いをされた方がいらしたらすみません、でも買って読んだ人のもの、なので、みんな書いちゃうわけにもいかないと思って…なので万が一の時は個別に改めて書きますのでお気軽にケツを蹴りに来てください。
そして今回のテーマは忘れ物。
○○×わすれもの
(まるまるばつ、と読むシリーズの、わすれものがテーマという意味)
で届いてから少し経ってしまったけれど、沢山収録されている中から特にお気に入りだけに絞って感想を書きました。
ネタバレや、書き写し・引用みたいにならないように書くので若干フンワリしてますが、気になった方は是非かんのさんまでお問い合わせ頂ければと思います。どれもポテンシャルが高く平均点が格段に上がってて粒ぞろいのラインナップですので、買って損は無いです。少なくとも私には、読み飛ばしたりツマンネエと思ったりする作品はありませんでした。その中で、特にツボだったものをご紹介……。
・生活
ちまきさん、という方の作品。日記を付けて振り返る自分の生活。
それと、とんでもない部屋で「生活」と題して暮らしていたという話。
たまにいる変わった感じの元気な若い女性。だいたい10年ぐらいすれば何事もなかったかのように落ち着いて、だけど変わらず元気でユニークなお姉さんとして年下の男に好かれてそうな女性の話。
私もネットを使う前は日記帳に、我が家にパソコンが来てからはブログ、ミクシィ、小説家になろう、今はアルファポリスで事あるごとに日記を付けている。
行った場所、食べたもの、会った人、これまでのこと
色んなことを書き留めている。あとから自分で読み返して面白い記事があるとちょっと嬉しい。つまんないと、日記なのに自分で添削して載せ直したりする。
その日、その時期の文章のクセとか、影響が如実に出て居る。10年前の日記とか絶対に読み返したくないし、アメブロは削除して退会したしミクシィも消せるものは消した。
消すことは自分で出来るけど、忘れてしまうことは、案外どうにもならないのかも知れない。忘れたくない日々も、忘れてしまいたい過去も。
ついこの間までの生活も。それを忘れたくないからなのか、忘れてしまうことが怖いからなのか、書き記されたもの。つまりこれは、どこか遠くで暮らす知らない人の生活を追体験する日記だった。
この本でいちばん好きな作品のひとつ。是非ご紹介したかった。
・忘れたのは愛だった
ファンである梶本時代(ときよ)さんの作品。この人が書くんで買おうと思った本だった。
私は梶本さんに期待しているんじゃなく、梶本さんを信頼しているのだ。
決して長くはなく、変わったところのない懐かしい話のなかに渦巻く愛着と情緒。
とにかくこの人は「気持ち」というものを文字に起こさせたら天下一品のコッテリ描写。だけど読みづらいのではなく、ブッ刺さる。
子供の頃、確かにそうだった。ヌイグルミとかジェットガルーダみたいなわかりやすいものでもなく、ノダロンと書かれた安いゴム製のボールが何故か愛おしくて何処に行くにも抱えて行ってた時期があった。
同じものは世の中にごまんとある。だけど、自分にとってはひとつだけ。
まるで人間のようだ。擬人化した愛着なのだろうか。
指環、写真、おにぎりの形も、小さなおもちゃも、忘れたり、忘れられたりしながらも、モノに心が移り愛着を持つことから捉えてゆくと見え方が変わる。
短いけれど、この分量のなかに、そんな豊かさが見事に詰まっている。
これだけでも買う価値のある作品です。今回も素晴らしかったです。
・コトダマセンター
ふたつぎさんの作品。良質な短編小説でした。
冬に読むとあったかくていいと思います。
作中にもあるけど【言葉】の不思議さ、に触れられるいい作品です。
了解、を落とす。という発想も好きだし、落とした言葉は使えなくなっちゃうから、という理由で渋々拾いに来る人もいる、っていうのが凄くイイと思いました。
たぶん、この本の中でいちばんヒトサマにオススメしやすい作品だと思う。読む人を選ばず、誰でも読めるし面白いし、「わかる」と思えて気持ちがいい。
・赤を探す旅
かんのさんの作品。この本の中ではボリュームがあって、世界の広がりもあって、それが心地よくて寂しい。広く、奥行きもあるんだけど、それがゆえに物語のサイズが浮き彫りになっている。名残惜しいけれど旅に出なきゃいけなくなる。村はずれのロケットで、星から星へ。
旅に出る理由も、離れなきゃいけない故郷での暮らしも、よその星の人々も、何処か風変わりだけど懐かしい感じもするし、何処かの星に似ていることもある。
自分の世界の外側へ、外側へと向かってゆく話だけど、気持ちは自分の内側へ、内側へと食い込んでゆく。その結末から思うことは、あんた考えすぎだよ、ということと、考えてしまうこと、考えるということは、楽しくもあり、癖でもあるんだよなあという共感でした。
ココと似てるけど、どっか違う世界を書くということは大変にセンスを要する作業で。かんのさんに内包されたその世界は基本的に優しいけど、寂しさについてだけ少し彩度が高くて、だから余計に気持ちのざわつき、ふらつき、といったものが際立つのかなと思います。
・「わすれもの」のことを考えるまで
おまるさんの作品。ギャルの日記という感じで、如何にもな文章を挟みつつ笑えたり目に留まったりする名作フレーズが連発される。そのあとで最後に畳みかけるような羅列があって終わる。
彼女の中の少女が救われますように。
別れて責任のない相手に優しくすることで自分を満たし、あわよくばと思っている奴が来世、虫になりますように。リーリーコロコロ。
かんのさんの作品でこの感想を締め括りたかったけど、迷った末におまるさんのも書きました。この感じは私の好きな書き方だったし、彼女の見ている世界と全然違うところに居るのに、なんだか勝手に親近感を持ってしまったから。鬼ってタトゥーを入れて歩いたら見つけてくれるかしら。
長いものからサックリ読めてしまうものまで彩り豊かで、とてもいい本です。
皆さんも一冊ぜひ。
もし参加された方で自分のが無くて寂しい思いをされた方がいらしたらすみません、でも買って読んだ人のもの、なので、みんな書いちゃうわけにもいかないと思って…なので万が一の時は個別に改めて書きますのでお気軽にケツを蹴りに来てください。
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