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星野藍さんの極東ロシア放浪記が素晴らしかったという読書録
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前に旧共産遺産という写真集を買って、物凄く良かったので、写真家の星野藍さんのTwitterをフォローして色んな写真を拝見している。一日一旧ソビエトとか、日本に居ながらこんなもん滅多に見れるもんじゃないって感じの写真がワンサカ。
食べ物は美味しそうで、街並みは寒そうで、朽ち果てた建物や飛行機は寂しそうだ。
そうしたら今回、極東ロシア放浪記という本を出されるという事で、早速予約していた。
それが届いたので、早速拝見しました。
2020年の年末から2021年初頭にかけて、ロシア各地を旅した記録。
写真と日記でつづられた、その日々の様子。
詰め込まれているかのような文章と日常が、一緒に載っている風景の中で流れている。
廃墟、市場、料理、そして人々。確かに文中にあるようにマスクをしていない人も結構な数いるっぽい。
疫病禍のフライト、そしてロシアでの束の間の日々。
とにかく食べ物がおいしそうだ。
けどこの肉料理の写真も、星野さんの大好物だというグルジア料理のヒンカリも、かなりボリュームがありそうで…さすが極寒の地を旅する人はタフで、このぐらいモリモリ食べるんだろうか。だとしたら素晴らしいな…けどやっぱ凄いな。カロリー要るだろうしなあ。
北朝鮮料理のお店もあるようで、そこで食べたという冷麺もおいしそうだった。
九十九里浜でハマガソを食べたというのも流石だ…なんというかバイタリティーが羨ましく、眩しい。椎名誠さんを初めて知ったときのような憧憬に似ている。
料理も地名も目や耳になじまないものばかりだが、考えてみれば私が束の間を過ごしたメキシコだってスペイン語バリバリだから、人名地名料理名もルチャ・リブレの技の名前も馴染みがなく新鮮な響きだったのを思い出した。
極寒のロシアで、何だかよくわからない言葉の中で、目指す建物や場所を見て、往来に難儀し、新鮮な響きの食べ物をモリモリ食べている。字だけでは全然想像もつかないが、写真を見てなんとなくコレかな、確かに美味そうだな、と思ってみたり。
さっき書いた椎名さんの本にもあったが、冬のロシアはマイナス20℃とか、もっと寒くなる。そしてあまりに寒すぎると雪が降らなくなるんだそうな。
極寒の曇天でマイナス10℃なのに、現地の運転手さんが
「今日は暖かくていい天気だ」
と言って驚いた、という話が、シベリア追跡かニタリノフの便座に書いてあった気がする。
(そーゆー本が出ているのだ)
寒い寒い!二度と冬には来ない!
と言いつつも楽しそうで、現地の人の暖かさや優しさにも触れ、星野さんはロシアを満喫しているようだ(一人お下品なことをいう青年も居たようだが…)。そして様々な写真で彩られたり、巨大な氷柱の見開き写真(これを見に行くエピソードが絶品だった)を用いて掲載された日記が、帰国して自主隔離となってからは真っ白に。
これがなんともやるせなく、ああ、帰ってきちゃったんだな、って感じがして、構成としてはとてもいいし、心象風景を表してるのかな、とも思うけど。
星野さんが帰りたい場所は、一体どこなのかな、と、少し思う。別に愛国心だとか日本人なら日本にとかは、私も思わない。
私だって、一度は飛び出して、またスンスン泣きながら帰ってきちゃって、でも、まだやっぱり見知らぬ国や場所に憧れってあるから…こう、じっとしてられないのかなあとか。
目にする耳にするニュースや映像、お知らせなんかが、やっぱ楽しくないし。今は特に。
だから、ああ帰ってきちゃった、という気持ちの表れが、あの写真のない、単なる日記の羅列として表現されているのかも知れない。味気なくて、空虚で、でもどっか冷たさのなかに、目の死んでいない星野さんの表情が浮かぶような(顔はよく知らないけど、カメラを構えてまた次の旅や作品のことを考えてそうだな、ってくらいの意味)
是非、ハサンでのこともまとめて頂いて欲しいです、すぐに予約しますので…!
途中、急に心霊現象や星野さんの家系、ご家族のことにも少し触れていて。
私も実父に随分と酷い目に遭わされたし、あれで色々狂ったなと思うので、なんか、そういう事情のある人には、そういう現象が起こりやすいのかも知れない。
ホラー小説を書いている者の末席の末端としても、ちょっと気になる部分でした。
面白いと言うと語弊があるけど、それはそれで読みごたえがあったというか興味を惹いたというか…。
日本に居てもロシアの事は気になるようで、ネットニュースを見ていると極寒の中でも水浴びをする教会の行事があったり。ウラジオストクでデモがあったとの知らせがあったり。淡々と文字になって過ぎてゆくニュースを目で追うだけの部分が、なんだか乾いて実感を伴わなくて、遠い場所の話なんだなあと。
ぼそっと相方って言葉が出ていたから、星野さんにも暖かい帰る場所があるのだろうと思うし、そこからまた、わざわざ遠くへ行って、星野さんの目指す景色や見たい場所を探して撮って来るんだろうな。そういう人ってかっこいいし、自分もそうなりたかった。
このところ買った本に旅のものが重なってて。
その一つが星野さんの、この本だった。
自分もまた旅をしたい、どこかへ出かけたい。
そう思ってるだけで虚しくて悲しくて見るのも億劫だったのが、今は素直に憧れて、オレも行きたい、と思えている。
写真に閉じ込められた生きる力や念のようなものが、私にも良い方に作用してくれたのかも知れない。これは勝手な感謝だけれど、星野藍さん有難う御座います、お陰様で良い者を見せて頂けましたし、ちょっと元気が出ました。
次も良い旅になりますように。
また御本が出るのを楽しみにしています。
オマケのブツもありがとうございます。例のお店で並んでたもののうちの一つでしょうか?
旧共産遺産、何度も何度も読み返して、私の心の中を旅する時にも携えています。
いつかイリンデンモニュメントのでっかいやつが、私の心の何処かに聳え立つように。
食べ物は美味しそうで、街並みは寒そうで、朽ち果てた建物や飛行機は寂しそうだ。
そうしたら今回、極東ロシア放浪記という本を出されるという事で、早速予約していた。
それが届いたので、早速拝見しました。
2020年の年末から2021年初頭にかけて、ロシア各地を旅した記録。
写真と日記でつづられた、その日々の様子。
詰め込まれているかのような文章と日常が、一緒に載っている風景の中で流れている。
廃墟、市場、料理、そして人々。確かに文中にあるようにマスクをしていない人も結構な数いるっぽい。
疫病禍のフライト、そしてロシアでの束の間の日々。
とにかく食べ物がおいしそうだ。
けどこの肉料理の写真も、星野さんの大好物だというグルジア料理のヒンカリも、かなりボリュームがありそうで…さすが極寒の地を旅する人はタフで、このぐらいモリモリ食べるんだろうか。だとしたら素晴らしいな…けどやっぱ凄いな。カロリー要るだろうしなあ。
北朝鮮料理のお店もあるようで、そこで食べたという冷麺もおいしそうだった。
九十九里浜でハマガソを食べたというのも流石だ…なんというかバイタリティーが羨ましく、眩しい。椎名誠さんを初めて知ったときのような憧憬に似ている。
料理も地名も目や耳になじまないものばかりだが、考えてみれば私が束の間を過ごしたメキシコだってスペイン語バリバリだから、人名地名料理名もルチャ・リブレの技の名前も馴染みがなく新鮮な響きだったのを思い出した。
極寒のロシアで、何だかよくわからない言葉の中で、目指す建物や場所を見て、往来に難儀し、新鮮な響きの食べ物をモリモリ食べている。字だけでは全然想像もつかないが、写真を見てなんとなくコレかな、確かに美味そうだな、と思ってみたり。
さっき書いた椎名さんの本にもあったが、冬のロシアはマイナス20℃とか、もっと寒くなる。そしてあまりに寒すぎると雪が降らなくなるんだそうな。
極寒の曇天でマイナス10℃なのに、現地の運転手さんが
「今日は暖かくていい天気だ」
と言って驚いた、という話が、シベリア追跡かニタリノフの便座に書いてあった気がする。
(そーゆー本が出ているのだ)
寒い寒い!二度と冬には来ない!
と言いつつも楽しそうで、現地の人の暖かさや優しさにも触れ、星野さんはロシアを満喫しているようだ(一人お下品なことをいう青年も居たようだが…)。そして様々な写真で彩られたり、巨大な氷柱の見開き写真(これを見に行くエピソードが絶品だった)を用いて掲載された日記が、帰国して自主隔離となってからは真っ白に。
これがなんともやるせなく、ああ、帰ってきちゃったんだな、って感じがして、構成としてはとてもいいし、心象風景を表してるのかな、とも思うけど。
星野さんが帰りたい場所は、一体どこなのかな、と、少し思う。別に愛国心だとか日本人なら日本にとかは、私も思わない。
私だって、一度は飛び出して、またスンスン泣きながら帰ってきちゃって、でも、まだやっぱり見知らぬ国や場所に憧れってあるから…こう、じっとしてられないのかなあとか。
目にする耳にするニュースや映像、お知らせなんかが、やっぱ楽しくないし。今は特に。
だから、ああ帰ってきちゃった、という気持ちの表れが、あの写真のない、単なる日記の羅列として表現されているのかも知れない。味気なくて、空虚で、でもどっか冷たさのなかに、目の死んでいない星野さんの表情が浮かぶような(顔はよく知らないけど、カメラを構えてまた次の旅や作品のことを考えてそうだな、ってくらいの意味)
是非、ハサンでのこともまとめて頂いて欲しいです、すぐに予約しますので…!
途中、急に心霊現象や星野さんの家系、ご家族のことにも少し触れていて。
私も実父に随分と酷い目に遭わされたし、あれで色々狂ったなと思うので、なんか、そういう事情のある人には、そういう現象が起こりやすいのかも知れない。
ホラー小説を書いている者の末席の末端としても、ちょっと気になる部分でした。
面白いと言うと語弊があるけど、それはそれで読みごたえがあったというか興味を惹いたというか…。
日本に居てもロシアの事は気になるようで、ネットニュースを見ていると極寒の中でも水浴びをする教会の行事があったり。ウラジオストクでデモがあったとの知らせがあったり。淡々と文字になって過ぎてゆくニュースを目で追うだけの部分が、なんだか乾いて実感を伴わなくて、遠い場所の話なんだなあと。
ぼそっと相方って言葉が出ていたから、星野さんにも暖かい帰る場所があるのだろうと思うし、そこからまた、わざわざ遠くへ行って、星野さんの目指す景色や見たい場所を探して撮って来るんだろうな。そういう人ってかっこいいし、自分もそうなりたかった。
このところ買った本に旅のものが重なってて。
その一つが星野さんの、この本だった。
自分もまた旅をしたい、どこかへ出かけたい。
そう思ってるだけで虚しくて悲しくて見るのも億劫だったのが、今は素直に憧れて、オレも行きたい、と思えている。
写真に閉じ込められた生きる力や念のようなものが、私にも良い方に作用してくれたのかも知れない。これは勝手な感謝だけれど、星野藍さん有難う御座います、お陰様で良い者を見せて頂けましたし、ちょっと元気が出ました。
次も良い旅になりますように。
また御本が出るのを楽しみにしています。
オマケのブツもありがとうございます。例のお店で並んでたもののうちの一つでしょうか?
旧共産遺産、何度も何度も読み返して、私の心の中を旅する時にも携えています。
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