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鷹樹烏介さんの第四トッカンが素晴らしかったという読書録

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今回は、最近読んで面白かった小説のご紹介です。
双葉文庫から発売中の書き下ろし小説
第四トッカン
という、呪術と犯罪とアクションが入り混じった現代劇。
結構トンチンカンに感じるかもしれませんが、呪術というものの存在を認め、またその力を持つものが実在し、それが犯罪に利用されたり、逆に犯罪を防ぐことや、悪用しようとする組織と戦うために使われているとしたら…?
と考えるとコレは
ウルトラマンと科学特捜隊が怪獣と戦う
という図式に当てはまるのではないでしょうか。だからちょっと難しい言葉は出てくるけどお話そのものは結構わかりやすく、敵味方ともに一癖も二癖もあるキャラクターが跋扈し、やがて壮大なストーリーが見えて来たところでクライマックスに雪崩れ込む。この辺りの流れがあって、半分ぐらい読んじゃえばあとは激流に吞まれるがまま読み切ってしまうことが出来ます。
タイトルや表紙に惹かれてお手に取られた方も安心、血生臭いのとオカルトが平気なら全然楽しめます。自分たちと同じ世界を描いているようで、どこか違う。限りなく透明に近いヴェールが一枚かかっているような場所で巻き起こる事件と、蠢く人々。

オカルト以外にも、剣術や狙撃についての描写も臨場感たっぷり。
私はこのお話のメインキャラの一人で狙撃の名手、志茂という男が出て来て最初の狙撃を行う頃には、その最期を予見しつつ読まざるを得ないぐらい、彼にグっと惹かれていました。
それ以外にも、稀代の女詐欺師でありながら霊視が使えて、さらには管狐を使役しデジタルとオカルトを融合させた情報戦のエキスパート・御車さんと、見た目は子供・前科はヤクザ三十六人皆殺しでお馴染みの飯笹さんが登場します。特に飯笹さんが現場で刀を振るう描写は一見の価値がある、と思います。

えーまどろっこしい、とにかく面白かったと思うのでそれをそのまま書くぞ!

私は隆慶一郎さんが書く、滅茶苦茶強い傾奇者が快刀乱麻の活躍を見せる小説が大好きなんだけど、飯笹さんの出てくる場面だけは色合いがちょっと違って、剣豪小説に近い。でもそこにも、第四トッカンならではのエッセンスが散りばめられていて、要するに飽きの来ない構成に一役買っている。
ルパン三世のゴエモンとか、るろうに剣心とか、剣豪の出てくるアニメーションを見たことがあれば想像もしやすいと思う。

そして主人公の井手口は不眠症でヨレヨレの、渋面の男。呪術がテーマであり、警察や犯罪組織と戦う小説にはうってつけの男だ。映画タクシードライバーのデニーロもそうだけど、寝て無い男には狂気が宿る。この男は死にかからないと熟睡できないのだ。
その理由や、彼の能力は物語のなかで自然と発揮され、それがスムーズな進行にも繋がっている。一つ一つの説明や種明かしをすることなく、逆にどんなに隠していても彼が持つ能力によって看破されてしまうからだ。
刑事ものやアクションものだけでは物足りなさを感じている人にも面白いと思うし、一風変わった視線や常識で語られる世界は新鮮さも感じられる。

物語は主人公・井手口の一人称で進む。彼の心に渦巻いているのは復讐であり、自嘲であり、虚無だ。暗黒の渦が広がる心のなかに、志茂との友情や、ちょっとしたジョークや、飯笹さんの可愛らしさが去来する。そしてそんな井手口のことを見透かしつつも認めている御車さんに、たまに痛いところを突かれたりもする。
飯笹さんを実家に連れて行ったら、使役している霊的な存在が誤解して
ベッドを片付けて布団を敷いていた
ところなんかは、不意を突かれてこっちが驚いた。
鷹樹さん、そんなんもあるの!?
と…あんまり言ってると腐れの松井さんみたくなっちゃうからこんなもんにしておこう(ゲップ)

でもほんとに、この草臥れた井手口と美少女剣士飯笹さんのコンビは良く出来ていて、加齢と経験と能力とで世の中を知り過ぎてしまっている井手口と、子供の頃から剣術と復讐と収監とで世間を知らず地下鉄にも乗れない(でもフラペチーノ大好き)な飯笹さんが並んで歩くと好対照で、そこに頼れる志茂さんと御車さんが居る。さらには辣腕官僚であり事務方のエキスパートである八十島さんが控えている。読者に安心感を与えつつも、でも実際のところ少数精鋭と言えば聞こえはいいが、日本における呪術戦の最後の砦はギリギリのところで陣容を整えられたことになる。このギリギリさが、物語に緊張を与え、また無情な死の臭いを漂わせ続けている。

私、物語の内容について全然触れてないね。
でも、知らない小説を読むのにいちばん難しいのは、やっぱり
どんな奴が出て来て、どんな表情を見せるか
だと思う。だから、この第四トッカンに出てくる愛すべきチームを紹介しました。
敵や、事件や、最後の事件で起こる意外な結末は、是非ご覧になって確かめてください。

鷹樹烏介さんの第四トッカン、双葉文庫です。
オススメします。マジで


さて。
数年前。私の書いていた小説を宝島社さんが拾ってくださって、アンソロジーに収録されることになった。
喜び勇んで発売後も何度となくエゴサをしては、
怖い話bot
だとか
意味が分かると怖い話
みてえなクソアカウントの十年一日が如きパクツイだとか
こっちのことは全然カンケーなく、ただフツーに廃墟絡みの怪談やホラー映画について話している人のツイートを搔い潜って、お買い上げ下さった方を見つけては片っ端からお礼を述べて回っていた。
反応は様々で、お返事をくれる人、そのままフォローしてくれる人、私の作品についての感想をリプライで伝えてくれる人などもいれば、ふぁぼだけつくこともあったり、なしのつぶてだったりもした。

その中に鷹樹烏介さんも居た。
丁寧にお返事を下さって、私のエゴサ&リプライ巡礼を
営業努力
と書いてくれたことを覚えている。

その鷹樹さんは
ガーディアン 新宿警察署特殊事案対策課 シリーズ
そして警視庁特任捜査官グール シリーズ(ともに宝島社)
を発表し現在に至ります。第四トッカンで
ハードな外殻に包まれた、冷たく血生臭いドロッとした世界
を描く鷹樹ワールドにハマった方は、ぜひそちらもご覧になってはいかがでしょうか。私もガーディアンが出た時、すぐに買ってました。
で読んでました。でも、感想を書いたり、続きも買ったまま読んだりが出来なくなっていて。

正直、今回の第四トッカンも、買おうと思ったまま月日が経ってて。
もっと言えば、もう私は本屋さんに行くのが嫌になっていて。

これはもう小説の内容とかカンケーなく私の個人的な事情なのですが、私にとって本屋さんは楽しい場所でもありながら、文庫や小説のコーナーだけは
劣等感が並んでいる場所
でしかなかったのです。自分が絶対に面白いと思わないものが、可愛い、ありきたりな、あのタッチのイラストと、長ったらしいタイトルと、なんかヌルいやりとりと出来の良い感動を連想させるものが目について。
自分の欲しい本も、実は通販で買うことが殆どでした。
欲しい本があっても買う金もなく、ベイダーの自伝やウルティモ・ドラゴン校長の本も欲しいけど、見ると虚しくなるので、それで足が遠のいていたんですが。

ふと、それもクルマで入ると出にくくて豊橋市内で一番行きたくない本屋さんに気まぐれに入ったら、出入り口からすぐの目立つ、良い場所に第四トッカンが平積みで並べてあったのです。

あっ、第四トッカンだ!
と思ったら手に取ってレジに並んでいました。いま買わなきゃ、もう買わないし買えない、と。たまたま別の事で文房具を買いに来てたはずが、コレだけ買って帰りました。

それでいて、すぐ読むかと言えば、それも無く。
もう本を読んだり、映画を見る余裕も全然なくて。
マンガとかなら、まだそれなりに読めるんですが、ガッツリ何かを浴びるという事が全然出来なくなっていました。
何度も転職して、そのたびに色んな理由があって、でもじりじりと生活は貧しくなって。
心は痩せて、体は浮腫んで。
第四トッカンも半分ぐらい読んで、また止まってしまっていました。

それが、ちょっと事情があって暫く仕事に出れないかもしれないとなった時に、ふと手に取って続きを読み始めたら、まあ面白い。
前半も面白かったし、続きも滅茶苦茶楽しみだったはずが手に取れなかったのを取り戻すように、あっという間に読み終わってしまいました。
そしてこれも勝手なことですが、あのイケ好かないラインナップをやっかむよりも、やっぱり自分の世界で勝負したいと、本屋さんには色んな世界が綴じて並べてあるのだから、まずそこに、もう一度、今度は自分一人の世界を並べたいと。

疲れて余裕を失ってた心に、この第四トッカンの物語とキャラクターが、冷たい雨水のようにしみ込んで来て。長尾の餌食にならずに済んだな、と(ちょっとネタバレ)
私も頑張ろう。コツコツチマチマでもいいから、死ぬまで書き続けよう。
そんなことも、実は思っていました。
でもそれと同じぐらい、私は私の読んだり見たり聞いたり感じたものを、みんなに
こうだったよ!
とお伝えするのが好きなのです。コレが良かった、あれが面白かった、こんなことを感じた。それを読んでもらって、本人やそれが好きな人のみならず、全然知らなかった人にも届くのが嬉しい。
Facebookでプロレスの話をすると、プロレスが大好きな人が読んでくれる。それで自分の感想を述べてくれる。そういうのと同じで、本が好きな人、読むのが好きな人に、コレが届くといいなと思っています。

以下ネタバレを含む感想を幾つか。

まずラストシーン、これが絶妙だな!と思ったのは、呪術であるからしてしきたりがある、それは悪の組織であっても同じで、決められた手順があり、歩みを止めたり、時間をずらしたり出来ない。
最後の装置を持って目的地に向かう、その標的を軸に戦闘が行われている。そしてここだけ敵のリーダーである吉田と井手口、双方の視点から同じ場面が描かれ、最後に
あっ!飯笹さん!まさか!!!
と思ったところで吉田側から井手口目線に切り替わって、同じ場面から飯笹さんが敵の呪術を喰らったところまでが描かれ、その続きで彼女の無事と、今回の物語の結末が描かれる。

何事も無かったかのように見えて、実はオープニングと同じで、世間からは見えないけれど物凄い大事なところで大事件が起きてしまっていたことが明かされ、この話が世間の暗部で人知れず起こっている戦争なのだという事を思い出させる。

このラストもさることながら、もう途中まで来て敵の正体が判明し、巨大な黒幕の影がチラ付いた時点で
あっコレはこの本だけじゃ終わらんな、続きがあるな
と思って、ちょっと安心するような、でも油断が出来ない、この4人には誰にも死んでほしくなかったから。
古地図、水の流れと照らし合わせることをひらめくシーンも痺れました。あれはわかってる人には当然かもしれないけれど、物語に集中し過ぎていると見失いがちな視線で、この辺がフィクションと実際の街並みを行ったり来たりする快感に繋がっていました。
タモリ俱楽部で散々見てただろう、古地図とか坂道とか…と自分の発想の貧困さを恥じました(笑)

私は十代の終わりごろに住宅地図の調査員のバイトをやった事があったのもあるし、祖父が物知りで郷土史や地図が好きだったこともあり、色んな話を聞いていました。
豊橋市内の、お城の近くの街並みや地名の由来、それに場所と場所を繋ぎ縦横無尽に広がる道路、線路のこと。それもあって、今でもそういうものを追い掛けるのが、美人のお尻を追いかけることの次に好きなのです(ゲップ)
なので、ここで地脈、水脈を用いる展開になったのはアツかったです。美人のほうは御車さんと飯笹さんがいるので一石二鳥、日石三菱ですね(なんのこっちゃ)

他にも書きたいことは矢鱈とあるのですが、とにかく面白かったです。
もし最後の最後まで、ここまで読んでくださった辛抱強く活字を読むのが得意な方なら
双葉文庫の第四トッカン(鷹樹烏介 著)
是非ご覧になってください。
フォロワーだから、とか、自分の本を読んでくれたから、とかそういうの一切ナシで、マジでオススメしています。

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