不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第９９６回。松山座「田上百花繚乱」第六試合

第六試合めいんいべんと
６人タッグマッチ６０分１本勝負
怨霊選手
ビッグ・ＴＨＥ・良寛選手
松山ポンポン選手
VS
松山勘十郎座長
シマ重野選手
スペル・シーサー選手

遂にやってきためいんいべんと。
松山勘十郎座長の十五周年を祝い、自身の率いる大衆プロレス松山座として新潟県南蒲原郡田上町に凱旋する晴れ舞台。
５年前の田上プロレス祭にも出場したシマ重野選手はメインイベントに登場。堂々たる佇まい、かなりの男前なのに加えてズバ抜けた華やかさを持つ新潟プロレスのエースである。チームカラーのオレンジが眩しい。
田上プロレス祭との違いは何といっても、その時は新潟プロレスによるカード提供に近かった試合だったのに比べて今回は座長のパートナーにシマ重野選手が。
そして対角線上には同じく新潟プロレスからビッグ・ＴＨＥ・良寛選手がラインナップされているところだと思います。同じ新潟の同士から、盟友に。
特にシマ重野選手は大阪での試合にも出場するなど座長との繋がりはあれ以来ずっと続き、また近頃では各地の団体が新潟で共に試合を行うまでになった新潟プロレスは今や日本各地のご当地団体を代表するチームであるともいえるのではないでしょうか。

時刻は１７時１０分。
新潟県南蒲原郡田上町、田上町民体育館に
松山勘十郎選手が
松山勘十郎座長となって入場してきた。
公演は無事に開催され、天候も回復し、メインイベントが始まった。
しずしずと歩いてくる姿が体育館のライトに照らされて白く、そしてきらきらと光る。
５年前の田上プロレス祭終了後。
座長から届いたメールを今でも覚えています。
「これからも、プロレスと一緒に生きていこう！拙者たちは、ずっとウルティモ・ドラゴン校長の生徒だ」
そして僕は５年間、座長と共にプロレスを見た。座長のプロレスを見ていた。
公演ごとに手を変え品を変え、お客さんを楽しませてくれてきた。そして自身はいつも通り過ぎるほど、いつどこで試合を見ても
松山勘十郎は、松山勘十郎です！
と日ごろから公言する通り、松山勘十郎であり続けていた。
そして１５年が経った。僕の下のベッドで寝ていた先輩が、自身の公演でメインイベンターとして舞台に立つ。
実は松山座においては、座長がメインイベントに出場しない試合も幾つかある。だけどやっぱり「松山勘十郎の世界」を表現するにおいて、松山勘十郎不在のメインイベントは減っていった。だけどその後、
「松山勘十郎の世界」
の多様さ、奥深さは回を追うごとに増していった。
それは遠く大阪で芽吹き、故郷・新潟までも侵し始めた。
松山みゆき選手の時に見たサビついたメガホンと赤い海の見える廃村、打ち捨てられた斜面の集落と落陽の幻視がより深く、より実感を伴ってよみがえる。

これが、松山勘十郎だ！
これが、大衆プロレス松山座だ！
今回の新潟における座長の戦いが佳境を迎えようとしている。

そして、最後のお一方はスペル・シーサー選手。白き琉球の神獣。
闘龍門に入門した座長を神戸で鍛え、月日を超えたいま自らの一座を率いた大一番の晴れ舞台。そのタッグパートナーの一角に立つのはかつてのコーチ。
なんという巡りあわせ、なんという運命の一致。
新潟、神戸、メキシコ。
座長のルーツと原点がリングの上で点と線を繋いで星座になる。
三人そろっての記念撮影で、まさに三位一体のチームが完成した。

しかしてこの大一番の対角線上には、先述の新潟プロレスよりビッグ・ＴＨＥ・良寛選手。松山座にて大阪初登場も果たした禅僧サイボーグ。
筋骨隆々のマッチョバディに随一のパワーを誇る大型ファイター。
とにかくこの人に捕まって締め上げられたら敵わない、というわかりやすい選手で地元ファンの人気も高い。良寛マスクをかぶって写真を撮ってるフォロワーさんもいます。
さらに今や暗黒プロレス組織６６６の象徴でもあり、インディージュニアの生きる伝説…いや死んでるのか、とにかくレジェンドである怨霊選手。
初登場時のインパクトから現在までビジュアルが全然変わらないのも凄い。ちなみにブレイク当初は全くしゃべらないどころか完全に無表情だったのが最近では藁人形にクギを打つのに自分の指を叩いたり、死ね、とつぶやくなど少しずつバージョンアップされている模様。
しかし動きの軽さと流れるような身のこなし、そして試合開始直後の大量のエクトプラズム（ベビーパウダーのような香り付き）は健在。私はＦＭＷに登場し中川浩二選手と呪いのベルトを押し付けあったり、ついに中川さんを呪い倒してしまった頃からのファンです。自宅に貼ってある当時のポスターにも
霊界の貴公子
のキャッチフレーズとともに写真が載っています。
そして三人目。私の松山座最推しメンバーであり松山座の最高傑作、今回の公演では女性人気ナンバーワンでそこいらじゅうから
可愛い！
と呼ばれた松山ポンポン選手。座長の後輩で私の先輩の闘龍門１４期生。
東京は北区王子のベースメントモンスターでの試合以来、松山座向きであると太鼓判を押され転生した異界の申し子。
毒々しいコスチュームに愛らしい表情、そして素早く力強い戦いぶり。
今回も張り切っております。

さあ！メインイベントが始まる！
続きは次回！！お楽しみに。