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第745回。松山座観戦記 第五試合

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第五試合
男子タッグマッチ30分1本勝負
クワイエット・ストーム選手
ブルアーマーTAKUYA選手
VS
ロブ・スターダム選手
ALLマイティ井上選手

肉、肉、筋肉の渦。
超ヘビー級がぶつかり合うド迫力の肉弾戦はプロレスの原点にして華。
そんな試合が松山座でも実現。
この試合の数日前にプロレスリングノアさんでGHCタッグ王座を獲得したクワイエット・ストーム選手が王者として松山座に登場するという嬉しいサプライズ。
クワイエット・ストーム選手は元々は軽量級の選手だったのだが、今や剛腕を唸らせ当たるを幸い蹴散らしてしまうスーパーヘビー級に変貌。鋭い眼光、鋼鉄の塊みたいな肉体、怪獣のような雄叫び。しかし素顔は優しく、福祉施設を訪問し表彰状をもらったりする一面も。またツイッターの文章もなんだか可愛らしく、そこかしこからにじみ出るいい人オーラで誰からも愛される選手だ。

パートナーは世界一のリング屋さん、ブルアーマーリングサービスさんを率いるブルアーマーTAKUYA選手。その名の通りの日焼けした巨体で暴れまわるが試合中はコミカルな一面も。
松山座で使用するリングもブルアーマーリングサービスさんのもので、その他にも各地で各団体にリングをレンタルし、自らも選手としてファイト。さらには心斎橋でバーも経営するというマルチファイター。

対戦相手にはカナダからやって来た刺客。ロブ・スターダム選手。
パワー、テクニック、ラフファイトとバランス型の選手だ。
今回はパワーファイターに囲まれたがパワーでも引けを取らないし、たぶん技術なら負けっこない。
降ってわいたGHCタッグ王者との対決に期待が集まっていた。
私も初来日以来、彼の試合が楽しみでならない。
なんというか昭和のガイジンレスラーのにおいがする。
オーバーなリアクションをはじめとする身振り手振りでお客さんを楽しませるが、試合では要所でテクニックを炸裂させる。油断のならない選手だ。
物販では丁寧なファンサービスにも余念がないナイスガイで、現在も日本語絶賛特訓中とのこと。確かに来日するたびに上達している。私もポートレートにサインをもらったけど、物腰の柔らかなジェントルマンでした。

そして注目の初登場、ALLマイティ井上選手。
いかつい顔に分厚い肉体、でも背丈はそんなに高くないのでまるで豆タンクのような印象。
パンチパーマに黄色と黒のシューズ、黒いタイツ。
天龍源一郎さんをイメージしているのだろうか。
宣材写真もチョップのポーズだったし。
恐竜の卵でも入っているみたいな胴回りで、この濃すぎて半分固形物みたいになりそうなメンバーのなかでも決して埋もれることがない。しかし実力のほうは如何ともしがたくどこまで食らいついていけるかがキモと思われる。
しかし試合ではブルアーマーTAKUYA選手と激しく激突したり、互いに体重を叫びあってボディスラムを仕掛けるなど活躍。スピードのなさを体重とパワーで補っているなどロマンあふれる選手だった。
社会人プロレスで活動中とのことで、要するに会社なりお店なりで働きながらトレーニングをし試合をしているわけで。そういう人と、GHC王者がぶつかり合うというのも面白い。
賛否両論あるだろうが、リングに上がるに値する選手だと判断されたうえで試合をしているのであればあとはそういう時代や風潮という言葉だけで十把一絡げの評価を下すのは簡単だし、出来る限り選手個人の魅力や実力を知ったうえで個別に評価を下すべきだ。ALLマイティ井上選手に関しては、私は合格ラインに届いていると思う。これからも見てみないとわからない部分も多いけど、少なくとも初見で見切ってしまうほど底の浅い選手ではないと思うし、あの頑固な座長が認めて松山座に上げているのだから相応の実力があるはずだ。
正直、相手が悪すぎたとも言える。それでも臆することなく向かって行ったし、他のお客さんからも声援が飛んでいたことを鑑みれば私の判断は間違ってなかったと思う。まだまだこれからに期待だ。

リングではコミカルな動きを交えた試合をし、物販などでも陽気な座長。
だけどその奥底でいつも燃えているプロレスへの想いは一途で、絶対に譲れない一線がある。
実はとても頑固なのだ。であるがゆえにどんな団体や立場の選手でも実力を素直に認めて試合を組むし、ご自身の試合や大会にも細心のこだわりを持ち続けている。
兼業で選手を続けることや、プロレスという文化に対するスタンス、またレスラーの在り方などについては様々な意見があると思う。
他者や新しいものを認めない、自分から譲らない人は大抵何も考えない。だってそれが一番ラクだから。
極度の肩凝りって動かすと痛いからじっとしてるじゃん?それと一緒。
もう痛いのもしんどいのも嫌だけど悪いのは自分以外の連中、っていう。
そういう奴らに限って言うことだけは偉そうで大袈裟だ。
変わって行くことはしんどいし怖い。でも、変えていく真っ最中の人たちはそんなこと考えない。
無我夢中とはそういう状態を言う。
自我に縋り付き今に固執し続けた結果プロレス業界が一時期どうなったか、それを思えば答えは自ずと見えてくる。そしてその極寒の地獄のど真ん中にいた人が言っていたじゃないか。

危ぶむなかれ、危ぶめば道は無し。

いやもうちょっと危ぶんで欲しかったけど。
今はそうしたリスクやその先の事も考えて色んなことを決める時代だ。
この試合には、そんな21世紀、平成の次の時代のプロレスについて考えるきっかけが沢山転がっていたと思う。
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