上 下
749 / 1,299

怪談「橙色の街灯」

しおりを挟む
私の住んでいる町内の交差点に新しく橙色の街灯が設置されたのは三年ほど前でした
それまでも往来には白色の街灯が等間隔で立っていて、この交差点の周囲も結構明るかったのですが静かな住宅街の事、物影も多く物騒なご時世でもあるため追加で設置されたようです
この橙色の街灯というのがたいそう明るくて、交差点の見通しも非常によくなりました

が、それから三ヶ月もしないうちから、その交差点では事故が続発
それも決まって真夜中でした

私も何度となく急ブレーキや衝撃音で起こされました
近所の人たちとみんなで
おかしいねえ、せっかく明るくなったのにね
などと話すこともありました

そんなある夜、ちょうど今ぐらいの春先の出来事です
私は駅前のお店で友達と飲んでいて、遅くに帰宅しました
夜中の一時ぐらいだったでしょうか。例の交差点で赤信号に捕まってしまい、酔い覚ましのつもりで夜風を浴びつつぼけーっとしていると……私の目の前に物凄い音を立てて赤い軽自動車が突っ込んできて、電柱に激突したのです

一瞬で酔いも覚め、慌てて駆け寄りました
その時にチラっと、橙色の街灯の下に人影が見えました
よかった! 他にも目撃者が居た! 
と思って助けを求めようとすると、もう誰も居ませんでした
結局、同じ音を聞いた近所のおばさんが警察を呼んでくれて、私は運転手の若い男性(幸い軽傷でした)といっしょに警官の到着を待ちながら話を聞きました

いわく、急に橙色の街灯の下から人影が飛び出してきて、咄嗟にハンドルを切った
とのこと
私はその時ずっと交差点に居ましたが誰も通ってはいません
おかしいなあ、と思いつつその日は家に帰りました

翌朝、警察を呼んでくれたおばさんに会ったので事故の話をしました
すると、おばさんは前にもいくつかの事故を通報したり運転手や同乗者の話を聞いているようでした
井戸端事情聴取は
あの街灯が出来てから、事故が増えてねえ……
から始まって、人死にが出てないのが幸いで、ときて
しまいに
「みんな言うのよ、あの街灯の下に誰か居た」
って……と薄気味悪そうな顔をして、うーむと二人して唸っておわりました

結局、そのまま暫くして街灯は設置こそされていますが点灯しなくなりました
そしてハッキリと、あの交差点(我が家の南側の窓からすぐ見えます)での交通事故が減ったのです

これ以上の事は何もわかりません
なのでこれは私の推測なのですが、今も
「見えてないだけ」
なんじゃないかなと思います
あの街灯のせいで「見えすぎていた」のではないか、と

今でも、もしかしたら私が産まれるずっと前から、あの影はあそこにずっと立っていたのではないか
そんなことも考えてたりします

橙色の街灯は今日も点灯しないまま、交差点にぽつりと立っています
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猫を讃えよ

毛蟹葵葉
エッセイ・ノンフィクション
うちの歯折れの黒猫の写メを勝手に載せてく

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

個人的な呟き

岐阜の人
エッセイ・ノンフィクション
私の呟きには何れくらいの影響力と価値が有るのだろうか? まあ要は其の実験場が此である

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

親ガチャ 子ガチャ 夫ガチャ失敗しました

未来ミキ
エッセイ・ノンフィクション
親ガチャ失敗したってさ、そういうあんた達の方が子ガチャ失敗だよ!! 親ガチャ失敗は、遺伝するかもね? 家族の為に尽くした人生。 自分を犠牲にした人生。 反面教師。 フォトやイラストお題のポエム。 現在、過去、未来を行ったり来たりします。 西暦を題名に入れます。

一人っ子の人生

長谷川 ゆう
エッセイ・ノンフィクション
兄弟、姉弟がいるとよく 「一人っ子は、いいね。服も新品だし、親から甘やかされて」と言われます。 中には、そんな一人っ子もいるかもしれません。 でも、私の親は、子供の優秀さや親の言うことを聞く正確さを求め 私の交遊関係、どんな気持ちでいるのかなんて無関心な親でした 私の友人の名前すら知らない 逆に、親は自分の事をよく話す 「私は、親にとって何なの?」と聞いた時、親は「私達の子供だよ」と言って終わり 人が帰る場所は、家ではなく人だとよく言われる言葉、私には、その場所はありませんでした

(完)そこの妊婦は誰ですか?

青空一夏
恋愛
 私と夫は恋愛結婚。ラブラブなはずだった生活は3年目で壊れ始めた。 「イーサ伯爵夫人とし全く役立たずだよね? 子供ができないのはなぜなんだ! 爵位を継ぐ子供を産むことこそが女の役目なのに!」    今まで子供は例え産まれなくても、この愛にはなんの支障もない、と言っていた夫が豹変してきた。月の半分を領地の屋敷で過ごすようになった夫は、感謝祭に領地の屋敷に来るなと言う。感謝祭は親戚が集まり一族で祝いご馳走を食べる大事な行事とされているのに。  来るなと言われたものの私は王都の屋敷から領地に戻ってみた。・・・・・・そこで見たものは・・・・・・お腹の大きな妊婦だった!  これって・・・・・・ ※人によっては気分を害する表現がでてきます。不快に感じられましたら深くお詫びいたします。

処理中です...