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第699回。黒田“最高”哲広
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黒田哲広選手。
私が最も愛したプロレス団体、かつてのFMWで長く活躍したプロレスラーだ。
ここんとこちゃんと書いておかないと、今でもFMWの看板で商売してる人が居るので紛らわしいですからね。
色々言われている、というか当時のファンも関係者も選手も散々な事を言っているエンタメ期と呼ばれる時期のFMW。ハッキリ言っておくけどな、じゃあこのサイテーサイアクの日本じゃ早すぎた路線だとかWWEもどきだとか言われるエンタメ期のFMWがなかったら、当時中学生だった私には他に何も残らないんだぞ。そのぐらい、この団体が好きだったし、田舎住まいで東京で起こっていることなんて全然伝わってこない私にはそれでも楽しめた。いや、この団体が、FMWの選手の皆さんが好きであるならば楽しむしかなかったのだ。
で黒田選手。
私がFMWを見始めたころにはすでに頭角を現していて、リング内外を縦横無尽に暴れ回るFMWらしい激しい試合からエンタメ路線の芝居がかったものまで何でもこなしていた。
筋骨隆々のハンサムで会場人気も高く、黒田選手が出てくると会場が一際大きく湧き上がるほど人気も高かった。
私が初めて見に行ったプロレスが地元で開催されたFMWで、その日も黒田選手は大活躍だった。
既に週刊誌やビデオで予習を済ませていた私も、会場のコアなファンと一緒になって
黒田、最高!
と叫んでいた。黒田選手は最強ではなく、自らを「最高!」と称し、実際その通り黒田選手は試合もマイクも最高!だった。
またその試合も分かりやすく、初めて見に来た人でもすぐに熱中できた。黒田選手のお得意ムーブは場外に降りて相手の足をリングの外から掴み、そのままリングを支える鉄柱に叩き付けるというもの。
この時、一発お見舞いするたびにお客さんから
「もう一丁!」
と掛け声が飛ぶ。黒田選手も一緒になって
「もう一丁!」
と叫びながら叩き付ける。さらに2回、3回と繰り返すと見せかけて膝にエルボーをお見舞いしてまた大喝采。この時、たまにリングサイドの小さなお子さんと一緒に足を引っ張ったり、お客さんの事をいつもよく見ていた。
さらにトップロープから場外に向かって自分が飛び降りながら相手の首に大ダメージを与える哲っちゃんカッターを繰り出す際も
「This is 哲っちゃんカッター!」
と叫んで飛び上がる。もちろん哲っちゃんカッター!はお客さんも唱和する。
最後は豪快なラリアットをブチかまして〆る。もしくは哲ちゃんバスターという必殺技を繰り出すこともあった。もちろん技を繰り出す前には技名をみんなで叫ぶのだ。
試合中ずっとそうやってお客さんとコンタクトをし、また相手に対してガンガン向かっていく・相手の技もガンガン受ける黒田選手はカッコよかった。
書いているだけだとキザったらしく思えるかもしれないけど、実際の黒田選手は実に気さくで愛され系の選手だった。みんな黒田選手のことが大好きで、だから応援したくなっちゃう。
最高!と叫びたくなるのも、黒田選手が楽しそうだから。
善玉陣営に居るときはもちろん、悪党になってもそれは変わらなかった。黒田選手が出てきたら、もうそれは最高の試合が約束されていたのだ。
そして何より、黒田選手がお客さんに愛されていたのはファンサービスが最高だったから。入場時にハイタッチをしたり、小さなお子さんを抱っこしたり。
会場の売店でサインをしているときもお客さんと話をしたり。
その時のにこやかで爽やかなスマイルがまた素敵で、そこが人気の秘訣でもあった。
私もFMWやその後継団体のWEWが豊橋に来たとき、会場でサインをしてもらったことがある。パンフレットやグッズを持っていくと豪快に握手してくれて、そしていそいそとサインを書き始める黒田選手。
中学生の太ったガキこと私が売店の前で緊張していると、色々と話しかけてくれた。他のお客さんと同じように、みんなに同じように接してくれているんだと思ったら嬉しくって、私も夢中で話をした。あんまり夢中だったんで、まとめて買ったパンフレットのバックナンバーそれぞれの自分のページにサインをしつつ笑っている黒田選手の顔以外あまり記憶がない。最後の最後にありがとうございました!と何度もお礼を言って、売店から立ち去ろうとする際に黒田選手が椅子から立ち上がって
「あっ、くっ付いちゃうよ!」
と、パンフレットを閉じようとする私をとめてくれたことだけを、何故か今日まで鮮明に覚えている。次のお客さんの番が来て、また黒田選手は最高の笑顔でサインを書き始めた。
今でも、その時のWEWのパンフレットが手元に三冊キッチリ残っている。銀色の太いマジックペンで書かれたサインは引っ付いて剥がれることなく、綺麗なままだ。
最近では流石に若いころと同じような活躍は見られなくなってしまったが、たまに出場しているのを見ると元気そうで嬉しい。そういえば松山座にも出てくれていたっけな。
怪我や病気などなく、元気で最高な黒田選手で居てほしいものだ。
ジャスト日本さんがポール・ローマと黒田選手について素晴らしい記事を書いていたので、触発されて書いてみました。在りし日の、最高の思い出話。
私が最も愛したプロレス団体、かつてのFMWで長く活躍したプロレスラーだ。
ここんとこちゃんと書いておかないと、今でもFMWの看板で商売してる人が居るので紛らわしいですからね。
色々言われている、というか当時のファンも関係者も選手も散々な事を言っているエンタメ期と呼ばれる時期のFMW。ハッキリ言っておくけどな、じゃあこのサイテーサイアクの日本じゃ早すぎた路線だとかWWEもどきだとか言われるエンタメ期のFMWがなかったら、当時中学生だった私には他に何も残らないんだぞ。そのぐらい、この団体が好きだったし、田舎住まいで東京で起こっていることなんて全然伝わってこない私にはそれでも楽しめた。いや、この団体が、FMWの選手の皆さんが好きであるならば楽しむしかなかったのだ。
で黒田選手。
私がFMWを見始めたころにはすでに頭角を現していて、リング内外を縦横無尽に暴れ回るFMWらしい激しい試合からエンタメ路線の芝居がかったものまで何でもこなしていた。
筋骨隆々のハンサムで会場人気も高く、黒田選手が出てくると会場が一際大きく湧き上がるほど人気も高かった。
私が初めて見に行ったプロレスが地元で開催されたFMWで、その日も黒田選手は大活躍だった。
既に週刊誌やビデオで予習を済ませていた私も、会場のコアなファンと一緒になって
黒田、最高!
と叫んでいた。黒田選手は最強ではなく、自らを「最高!」と称し、実際その通り黒田選手は試合もマイクも最高!だった。
またその試合も分かりやすく、初めて見に来た人でもすぐに熱中できた。黒田選手のお得意ムーブは場外に降りて相手の足をリングの外から掴み、そのままリングを支える鉄柱に叩き付けるというもの。
この時、一発お見舞いするたびにお客さんから
「もう一丁!」
と掛け声が飛ぶ。黒田選手も一緒になって
「もう一丁!」
と叫びながら叩き付ける。さらに2回、3回と繰り返すと見せかけて膝にエルボーをお見舞いしてまた大喝采。この時、たまにリングサイドの小さなお子さんと一緒に足を引っ張ったり、お客さんの事をいつもよく見ていた。
さらにトップロープから場外に向かって自分が飛び降りながら相手の首に大ダメージを与える哲っちゃんカッターを繰り出す際も
「This is 哲っちゃんカッター!」
と叫んで飛び上がる。もちろん哲っちゃんカッター!はお客さんも唱和する。
最後は豪快なラリアットをブチかまして〆る。もしくは哲ちゃんバスターという必殺技を繰り出すこともあった。もちろん技を繰り出す前には技名をみんなで叫ぶのだ。
試合中ずっとそうやってお客さんとコンタクトをし、また相手に対してガンガン向かっていく・相手の技もガンガン受ける黒田選手はカッコよかった。
書いているだけだとキザったらしく思えるかもしれないけど、実際の黒田選手は実に気さくで愛され系の選手だった。みんな黒田選手のことが大好きで、だから応援したくなっちゃう。
最高!と叫びたくなるのも、黒田選手が楽しそうだから。
善玉陣営に居るときはもちろん、悪党になってもそれは変わらなかった。黒田選手が出てきたら、もうそれは最高の試合が約束されていたのだ。
そして何より、黒田選手がお客さんに愛されていたのはファンサービスが最高だったから。入場時にハイタッチをしたり、小さなお子さんを抱っこしたり。
会場の売店でサインをしているときもお客さんと話をしたり。
その時のにこやかで爽やかなスマイルがまた素敵で、そこが人気の秘訣でもあった。
私もFMWやその後継団体のWEWが豊橋に来たとき、会場でサインをしてもらったことがある。パンフレットやグッズを持っていくと豪快に握手してくれて、そしていそいそとサインを書き始める黒田選手。
中学生の太ったガキこと私が売店の前で緊張していると、色々と話しかけてくれた。他のお客さんと同じように、みんなに同じように接してくれているんだと思ったら嬉しくって、私も夢中で話をした。あんまり夢中だったんで、まとめて買ったパンフレットのバックナンバーそれぞれの自分のページにサインをしつつ笑っている黒田選手の顔以外あまり記憶がない。最後の最後にありがとうございました!と何度もお礼を言って、売店から立ち去ろうとする際に黒田選手が椅子から立ち上がって
「あっ、くっ付いちゃうよ!」
と、パンフレットを閉じようとする私をとめてくれたことだけを、何故か今日まで鮮明に覚えている。次のお客さんの番が来て、また黒田選手は最高の笑顔でサインを書き始めた。
今でも、その時のWEWのパンフレットが手元に三冊キッチリ残っている。銀色の太いマジックペンで書かれたサインは引っ付いて剥がれることなく、綺麗なままだ。
最近では流石に若いころと同じような活躍は見られなくなってしまったが、たまに出場しているのを見ると元気そうで嬉しい。そういえば松山座にも出てくれていたっけな。
怪我や病気などなく、元気で最高な黒田選手で居てほしいものだ。
ジャスト日本さんがポール・ローマと黒田選手について素晴らしい記事を書いていたので、触発されて書いてみました。在りし日の、最高の思い出話。
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