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第690回。粘土のじかん。
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粘土、面白いよな。
なんであんな好きだったんだろう粘土。
粘土板ってなんかわけわかんない材質の板からはみ出て机についたりしたらぶっ殺されるってぐらいビビってるくせに、粘土こねてると我を忘れちゃうくらい好きだった。
図工の時間が粘土だとガッツポーズだったもんな。
何しろこのキッドさん、今でもブラインドタッチなんかそう大して出来やしないし、不器用さで言えば雑誌の付録やちょっとしたねじ止め、組み立て、ガンプラはおろか紙ヒコーキすらマトモに折れないし作れないくらい。
死ぬほど不器用なくせに粘土は大好きときて、毎回なにか作ろうとしても思い通りの1割にも満たない出来栄えにもかかわらず。
粘土遊びだけはそれはそれとして好きだった。
あの深緑色というか、田舎の公民館のトイレのタイルみてえな色した油粘土。
アイツをとにかく時間いっぱいこねくり回してしまう。
どうせ何か課題があって作ったところでロクな出来栄えじゃないことは百も承知だった。なのでとにかく課題をやっつける前にどれだけ遊べるか、がキモだったのだと今になってみると思う。
油粘土だと何度でも遊べるかわりに、粘土は粘土でしかない。
だけど紙粘土ならどうだ!?固めて色を塗ればかなりリアルなケーキや果物、自動車に電車なんかも作れる。私以外のみんなは。
私はと言えば想像上の京浜東北線やブルートレイン、ロックマンXとは似ても似つかない出来上がりに心臓が高鳴ってケツの座りが悪くって、消えてしまいたいぐらい恥ずかしくってもう意味わかんなくなっていた。紙粘土は嫌いだ。
油粘土って小さくていつも物足りなかったけど、あの少なさを工夫してどうにかやりくりして作ってたんだよな。城とか。
今考えたら2時間も粘り気の強い土をひたすらこねくり回していられたんだから凄い。子供のヘンな集中力って面白いよな。
宿題とかもちゃんと集中出来てたんだろうな。みんな。
いまだにサッパリ想像がつかないけど、フツーに目の前の勉強を一生懸命こなしてれば、それが集中して勉強してるってことだし、そうしてりゃ嫌でも頭の中に色んな数式とか漢字とか底辺×高さ÷2とかが刷り込まれていくんだろうな。
私だって集中してウルトラ怪獣大百科決定版とか僕らの乗り物大図鑑JR特急とか読みまくってたから、今でも頭の中で地底怪獣テレスドンが京浜東北線(根岸線直通)に噛みついてる地獄絵図がすぐ浮かんだりするもん。それはそれで、まあ何かお話を書く時にちょっと役に立つこともあるけど…。
粘土で作った林檎とかケーキって粘土だってわかってるんだけど、噛みついてみたくならない?
だって粘土だぜ、みんな一度は食ってるだろ。
んで油粘土っていうぐらいだから、あの感触と味と匂いに悶絶したことがあるはずだ…!もうみんな絶対あると決めつけて先へ進むけども、あれ凄い味なんだよな。味って言うか多分、味覚じゃないよな。本来味覚として味わうはずのない物質が口ん中に入って来ちゃった、って感じで。
あのほら、本来そっちには入れないはずのところに積極的に入れたがる人いるじゃん。私。それに近いかもな。
私の同級生で小中と大の仲良しだったカワサキ君はもっと凄いぞ。
不登校とか色んなことで孤立してた時期も数少ない友達でいてくれたカワサキ君。彼は天然ボケというか天真爛漫というか天衣無縫というか、なんかこう、大変美しい心の持ち主だったのだが、それがたまに天使のイタズラを招いてしまうというか、愛せるタイプのおバカさんだったときもあって。
よく私と一緒にでんぷんノリとか油粘土とかアイスクリームの匂いつきティッシュなんか食ってたな。
彼は手先も器用だったしセンスもいいんで、粘土でも上手に果物やケーキを作ってた。そのあまりの出来栄えの良さのせいで、おそらく自らの脳も騙されちゃったんだろうな…。
カズヤ!この粘土、ケーキの味がする!
って。
二度ビックリだよ。食ったの!?
え、味も!?
もちろん間髪入れずヒョイっと食った彼の油粘土ケーキは、キッチリ油粘土の味がしました。
懐かしいなー元気かなカワサキ君。
彼の家は庭が広いんで、そこでよく赤土を掘って粘土を採掘したり、それを集めて泥んこになって遊んだっけな。
赤土とガツガツ掘ってくと粘土が出てくるんで、庭を掘って張り巡らした無駄水路を補強するのにペタペタ貼り付けて、水を流して…水道民営化でバカみてえな料金になった日にゃ張り倒されるだろうなって遊び方だけど、当時はあれも日が暮れるまでやってたな。
スケールのデカい粘土遊びってことになるのかね。泥とか土があれば子供は無敵だよな。
粘土はそれを学校の机の上でやれるんで興奮してたのかも知れない。
そういえば家でわざわざ粘土買ってきて遊んだりはしなかったもんな…。
しかしまあ小学6年の私には何しろ友達が少ない。
休みでも行くところがない。そして訳あって土日、特に土曜の昼間なんか家に居たくなかった私と毎週のように遊んでくれたなあカワサキ君。
あの時はありがとう。
君の家の裏庭で無心で土くれを掘り返したり、粘土で水路を補強したり、飼い犬のミッキーを撫でていた時間が今でも懐かしいよ。
なんであんな好きだったんだろう粘土。
粘土板ってなんかわけわかんない材質の板からはみ出て机についたりしたらぶっ殺されるってぐらいビビってるくせに、粘土こねてると我を忘れちゃうくらい好きだった。
図工の時間が粘土だとガッツポーズだったもんな。
何しろこのキッドさん、今でもブラインドタッチなんかそう大して出来やしないし、不器用さで言えば雑誌の付録やちょっとしたねじ止め、組み立て、ガンプラはおろか紙ヒコーキすらマトモに折れないし作れないくらい。
死ぬほど不器用なくせに粘土は大好きときて、毎回なにか作ろうとしても思い通りの1割にも満たない出来栄えにもかかわらず。
粘土遊びだけはそれはそれとして好きだった。
あの深緑色というか、田舎の公民館のトイレのタイルみてえな色した油粘土。
アイツをとにかく時間いっぱいこねくり回してしまう。
どうせ何か課題があって作ったところでロクな出来栄えじゃないことは百も承知だった。なのでとにかく課題をやっつける前にどれだけ遊べるか、がキモだったのだと今になってみると思う。
油粘土だと何度でも遊べるかわりに、粘土は粘土でしかない。
だけど紙粘土ならどうだ!?固めて色を塗ればかなりリアルなケーキや果物、自動車に電車なんかも作れる。私以外のみんなは。
私はと言えば想像上の京浜東北線やブルートレイン、ロックマンXとは似ても似つかない出来上がりに心臓が高鳴ってケツの座りが悪くって、消えてしまいたいぐらい恥ずかしくってもう意味わかんなくなっていた。紙粘土は嫌いだ。
油粘土って小さくていつも物足りなかったけど、あの少なさを工夫してどうにかやりくりして作ってたんだよな。城とか。
今考えたら2時間も粘り気の強い土をひたすらこねくり回していられたんだから凄い。子供のヘンな集中力って面白いよな。
宿題とかもちゃんと集中出来てたんだろうな。みんな。
いまだにサッパリ想像がつかないけど、フツーに目の前の勉強を一生懸命こなしてれば、それが集中して勉強してるってことだし、そうしてりゃ嫌でも頭の中に色んな数式とか漢字とか底辺×高さ÷2とかが刷り込まれていくんだろうな。
私だって集中してウルトラ怪獣大百科決定版とか僕らの乗り物大図鑑JR特急とか読みまくってたから、今でも頭の中で地底怪獣テレスドンが京浜東北線(根岸線直通)に噛みついてる地獄絵図がすぐ浮かんだりするもん。それはそれで、まあ何かお話を書く時にちょっと役に立つこともあるけど…。
粘土で作った林檎とかケーキって粘土だってわかってるんだけど、噛みついてみたくならない?
だって粘土だぜ、みんな一度は食ってるだろ。
んで油粘土っていうぐらいだから、あの感触と味と匂いに悶絶したことがあるはずだ…!もうみんな絶対あると決めつけて先へ進むけども、あれ凄い味なんだよな。味って言うか多分、味覚じゃないよな。本来味覚として味わうはずのない物質が口ん中に入って来ちゃった、って感じで。
あのほら、本来そっちには入れないはずのところに積極的に入れたがる人いるじゃん。私。それに近いかもな。
私の同級生で小中と大の仲良しだったカワサキ君はもっと凄いぞ。
不登校とか色んなことで孤立してた時期も数少ない友達でいてくれたカワサキ君。彼は天然ボケというか天真爛漫というか天衣無縫というか、なんかこう、大変美しい心の持ち主だったのだが、それがたまに天使のイタズラを招いてしまうというか、愛せるタイプのおバカさんだったときもあって。
よく私と一緒にでんぷんノリとか油粘土とかアイスクリームの匂いつきティッシュなんか食ってたな。
彼は手先も器用だったしセンスもいいんで、粘土でも上手に果物やケーキを作ってた。そのあまりの出来栄えの良さのせいで、おそらく自らの脳も騙されちゃったんだろうな…。
カズヤ!この粘土、ケーキの味がする!
って。
二度ビックリだよ。食ったの!?
え、味も!?
もちろん間髪入れずヒョイっと食った彼の油粘土ケーキは、キッチリ油粘土の味がしました。
懐かしいなー元気かなカワサキ君。
彼の家は庭が広いんで、そこでよく赤土を掘って粘土を採掘したり、それを集めて泥んこになって遊んだっけな。
赤土とガツガツ掘ってくと粘土が出てくるんで、庭を掘って張り巡らした無駄水路を補強するのにペタペタ貼り付けて、水を流して…水道民営化でバカみてえな料金になった日にゃ張り倒されるだろうなって遊び方だけど、当時はあれも日が暮れるまでやってたな。
スケールのデカい粘土遊びってことになるのかね。泥とか土があれば子供は無敵だよな。
粘土はそれを学校の机の上でやれるんで興奮してたのかも知れない。
そういえば家でわざわざ粘土買ってきて遊んだりはしなかったもんな…。
しかしまあ小学6年の私には何しろ友達が少ない。
休みでも行くところがない。そして訳あって土日、特に土曜の昼間なんか家に居たくなかった私と毎週のように遊んでくれたなあカワサキ君。
あの時はありがとう。
君の家の裏庭で無心で土くれを掘り返したり、粘土で水路を補強したり、飼い犬のミッキーを撫でていた時間が今でも懐かしいよ。
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