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第499回。怪獣使いと許されざるいのちとプリズ魔
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帰ってきたウルトラマン大好き!
昭和ウルトラシリーズで何が一番好きかと聞かれたら、それはもうウルトラマンレオなんだけども。
じゃあ二位は、ったらウルトラセブンで。
三位がセブンと帰りマンの同率。ほぼ。
初代マンもエースも80も好きだしそれぞれ素晴らしい。
そしてそれぞれ独特のムードと魅力をはらんでいる。
今日は、そのなかでも最も前衛的で、かつ泥臭く人間味あふれる意欲作。
帰ってきたウルトラマン。
ウルトラシリーズの魅力、見せどころの一つに番組のオープニングがある。
これから不思議なお話が始まるよ!
というイントロダクションで、テレビ画面と自分とのあいだに流れる現実と空想の境目を取り払ってしまうための儀式のようなものでもある。
初代ウルトラマンやウルトラセブンは、カラフルな模様がグニャ~~~ッっとしたかと思えばドーン!とタイトルが表れてそのまま有無を言わさず引きずり込まれる感じ。
セブンの後期バージョン好きだなあ。
このイントロでいえばタロウが一番好き。
ヒューーーーーーーーン……!
と走る火花が一つに集積され
ポチョン
と水滴になってほのかに青白く光る。
そこで
タローーーーウッ!ウルトラマン、ナンバーシックス!
と始まる。あれって、なんか八十八ヶ所巡礼の歌みたいで、なんつーかサイケというかトリップ感あるっていうか。
この持っていかれる感覚にちょっと近いのが帰ってきたウルトラマン。
琥珀色をしたキラキラの背景に白い火花がシューっと燃えて、それがタイトル文字になって
パパッパッパー、デーン
と始まる。この琥珀色のキラキラがクルクル回っているのがすげえ好き。
あれだけずーっと見てられないのかね。
DVDとか沢山出てるけど、おまけの特典とかであそこだけ耐久60分とか入れといてくれないかな…。
そしてもう一つ、オープニングといえば影絵。
ウルトラマンエースまではオープニングテーマの背景が影絵なのだ。
怪獣、飛行機、ウルトラマン、自動車。そして劇中の怪獣攻撃隊MATのめんめん。
このMAT隊員が直立不動から
バラバララッ
と5人ぐらいでポーズを構えるやつ。あれ大好き。
ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンときて一旦間の空いたぶんだけ帰ってきたウルトラマンでは様々な路線変更や要素の強化が行われている。
ウルトラ兄弟、ウルトラファミリーに繋がる世界観の共有がなされたのも今作だし、かつてウルトラマンに登場したバルタン星人の息子が復讐にやってきたり、セブンと初代マンが帰ってきたウルトラマンの救援に駆け付けたりもする。
この帰ってきたウルトラマン、実は暫く固有名称が存在しなかった。
ウルトラマンの種族の別人が来た、ということではあったのだが、劇中では単にウルトラマンと呼ばれ、次回作ウルトラマンエースではウルトラマン二世、タロウでは新マンなどと呼ばれていた。確か80年代の終わりごろ、ウルトラマン物語でジャックという名前が付いたはずだ。
以後ジャックと呼ぶけれど、それだとこの作品中の70年代の耽美で退廃的な、爛熟期に向かう日本のサブカルチャーの雰囲気がどうにも出てこないから困りもの。
これも大きな路線変更のひとつで、初代、セブンと劇中の世界は
近未来
であって、無国籍・非現実の雰囲気を大事にしていたと言われている。
あの有名なモロボシ・ダン隊員とメトロン星人がボロアパートでちゃぶ台を挟んで向かい合うシーンも、あとでこっぴどく怒られたとか。
要するに「お前これじゃすっげえ日本ぽいじゃん!」っていうことらしいんだけど。
それが帰ってきたウルトラマンでは、70年代の日本が舞台であると明言され、ぐっと生活に寄り添った物語になっている。自動車整備工場で働く一人の青年、ごく普通の人間がウルトラマンとして新しい命を授かり戦いに身を投じる。
悲劇も、苦しみも、残酷な運命も乗り越えて成長し、最後にはウルトラマンと人格が一体化して宇宙へと旅立つ。
このドラマがキモなのだが、よく考えたら怖いよな。
宇宙人と怪獣の戦いに巻き込まれて命を落とし、体を乗っ取られ、しまいには人間・郷秀樹の人格と宇宙人ウルトラマンジャックの人格が融合して、宇宙人の方が勝ったわけだ。
公害や大気汚染、不安定な社会情勢、子供たち同士のいじめ、さらには差別問題まで様々な時代背景を含む物語は時に滑稽で、時に真剣で、時に残酷だ。
植物と動物を掛け合わせた人工生物の研究に没入するあまり、遂に正気を失ってしまった郷秀樹の幼馴染の水野という男が登場する
「許されざるいのち」
遠い宇宙からやってきて怪獣ムルチを封印し、己の命と引き換えに街を守り続けたものの、その街の住民に射殺されてしまう宇宙人と、その宇宙人と暮らす身寄りのない少年が主人公の
「怪獣使いと少年」
これまでの怪獣の概念を覆す芸術的なモンスター、極限まで凝縮されついに質量を持った光そのものが怪獣となった
「残酷!光怪獣プリズ魔」
などなど、今回のサブタイトルにもなったこの3つのエピソードは私のお気に入りなのだが、どれも見るのに凄くパワーが要る。特に怪獣使いと少年は、よっぽど余裕のある時じゃないと33歳の今でもキツイ。というか、33歳の今の方がキツイ。子供のころならウルトラマンっていうだけで見れちゃうし、特に気にしない。だけど今ならわかる。警察官はあそこで金山老人を撃ってしまうだろうし、少年に対しても分け隔てなくパンを売ってくれる店員の優しさ・明るさが如何に尊いものであるか、そして郷秀樹のやり切れない思い。全部が込められた豪雨と炎の中で咆哮する怪獣ムルチ。
この炎がまたどす黒い、どんよりと曇った空と街を焦がすような色をしていて。
左から右へじーっと移動するカメラの前で戦い続けるジャックとムルチ。そのBGMもいつもの爽快なマーチではなく、ワンダバコーラスの愛称で知られるMATのテーマ。
誰だったか、つまりこれはウルトラマンではなく、人間・郷秀樹の戦いなんだ。だからあそこでワンダバコーラスだったんだ、と言っていた。なるほどなと思った。
このように独特の雰囲気と魅力が詰まった帰ってきたウルトラマン。
まだあと「狙われた女」や怪獣ヤメタランス、キングボックルの話なんかもしたいところではあるけれど、今日はここまで。
昭和ウルトラシリーズで何が一番好きかと聞かれたら、それはもうウルトラマンレオなんだけども。
じゃあ二位は、ったらウルトラセブンで。
三位がセブンと帰りマンの同率。ほぼ。
初代マンもエースも80も好きだしそれぞれ素晴らしい。
そしてそれぞれ独特のムードと魅力をはらんでいる。
今日は、そのなかでも最も前衛的で、かつ泥臭く人間味あふれる意欲作。
帰ってきたウルトラマン。
ウルトラシリーズの魅力、見せどころの一つに番組のオープニングがある。
これから不思議なお話が始まるよ!
というイントロダクションで、テレビ画面と自分とのあいだに流れる現実と空想の境目を取り払ってしまうための儀式のようなものでもある。
初代ウルトラマンやウルトラセブンは、カラフルな模様がグニャ~~~ッっとしたかと思えばドーン!とタイトルが表れてそのまま有無を言わさず引きずり込まれる感じ。
セブンの後期バージョン好きだなあ。
このイントロでいえばタロウが一番好き。
ヒューーーーーーーーン……!
と走る火花が一つに集積され
ポチョン
と水滴になってほのかに青白く光る。
そこで
タローーーーウッ!ウルトラマン、ナンバーシックス!
と始まる。あれって、なんか八十八ヶ所巡礼の歌みたいで、なんつーかサイケというかトリップ感あるっていうか。
この持っていかれる感覚にちょっと近いのが帰ってきたウルトラマン。
琥珀色をしたキラキラの背景に白い火花がシューっと燃えて、それがタイトル文字になって
パパッパッパー、デーン
と始まる。この琥珀色のキラキラがクルクル回っているのがすげえ好き。
あれだけずーっと見てられないのかね。
DVDとか沢山出てるけど、おまけの特典とかであそこだけ耐久60分とか入れといてくれないかな…。
そしてもう一つ、オープニングといえば影絵。
ウルトラマンエースまではオープニングテーマの背景が影絵なのだ。
怪獣、飛行機、ウルトラマン、自動車。そして劇中の怪獣攻撃隊MATのめんめん。
このMAT隊員が直立不動から
バラバララッ
と5人ぐらいでポーズを構えるやつ。あれ大好き。
ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンときて一旦間の空いたぶんだけ帰ってきたウルトラマンでは様々な路線変更や要素の強化が行われている。
ウルトラ兄弟、ウルトラファミリーに繋がる世界観の共有がなされたのも今作だし、かつてウルトラマンに登場したバルタン星人の息子が復讐にやってきたり、セブンと初代マンが帰ってきたウルトラマンの救援に駆け付けたりもする。
この帰ってきたウルトラマン、実は暫く固有名称が存在しなかった。
ウルトラマンの種族の別人が来た、ということではあったのだが、劇中では単にウルトラマンと呼ばれ、次回作ウルトラマンエースではウルトラマン二世、タロウでは新マンなどと呼ばれていた。確か80年代の終わりごろ、ウルトラマン物語でジャックという名前が付いたはずだ。
以後ジャックと呼ぶけれど、それだとこの作品中の70年代の耽美で退廃的な、爛熟期に向かう日本のサブカルチャーの雰囲気がどうにも出てこないから困りもの。
これも大きな路線変更のひとつで、初代、セブンと劇中の世界は
近未来
であって、無国籍・非現実の雰囲気を大事にしていたと言われている。
あの有名なモロボシ・ダン隊員とメトロン星人がボロアパートでちゃぶ台を挟んで向かい合うシーンも、あとでこっぴどく怒られたとか。
要するに「お前これじゃすっげえ日本ぽいじゃん!」っていうことらしいんだけど。
それが帰ってきたウルトラマンでは、70年代の日本が舞台であると明言され、ぐっと生活に寄り添った物語になっている。自動車整備工場で働く一人の青年、ごく普通の人間がウルトラマンとして新しい命を授かり戦いに身を投じる。
悲劇も、苦しみも、残酷な運命も乗り越えて成長し、最後にはウルトラマンと人格が一体化して宇宙へと旅立つ。
このドラマがキモなのだが、よく考えたら怖いよな。
宇宙人と怪獣の戦いに巻き込まれて命を落とし、体を乗っ取られ、しまいには人間・郷秀樹の人格と宇宙人ウルトラマンジャックの人格が融合して、宇宙人の方が勝ったわけだ。
公害や大気汚染、不安定な社会情勢、子供たち同士のいじめ、さらには差別問題まで様々な時代背景を含む物語は時に滑稽で、時に真剣で、時に残酷だ。
植物と動物を掛け合わせた人工生物の研究に没入するあまり、遂に正気を失ってしまった郷秀樹の幼馴染の水野という男が登場する
「許されざるいのち」
遠い宇宙からやってきて怪獣ムルチを封印し、己の命と引き換えに街を守り続けたものの、その街の住民に射殺されてしまう宇宙人と、その宇宙人と暮らす身寄りのない少年が主人公の
「怪獣使いと少年」
これまでの怪獣の概念を覆す芸術的なモンスター、極限まで凝縮されついに質量を持った光そのものが怪獣となった
「残酷!光怪獣プリズ魔」
などなど、今回のサブタイトルにもなったこの3つのエピソードは私のお気に入りなのだが、どれも見るのに凄くパワーが要る。特に怪獣使いと少年は、よっぽど余裕のある時じゃないと33歳の今でもキツイ。というか、33歳の今の方がキツイ。子供のころならウルトラマンっていうだけで見れちゃうし、特に気にしない。だけど今ならわかる。警察官はあそこで金山老人を撃ってしまうだろうし、少年に対しても分け隔てなくパンを売ってくれる店員の優しさ・明るさが如何に尊いものであるか、そして郷秀樹のやり切れない思い。全部が込められた豪雨と炎の中で咆哮する怪獣ムルチ。
この炎がまたどす黒い、どんよりと曇った空と街を焦がすような色をしていて。
左から右へじーっと移動するカメラの前で戦い続けるジャックとムルチ。そのBGMもいつもの爽快なマーチではなく、ワンダバコーラスの愛称で知られるMATのテーマ。
誰だったか、つまりこれはウルトラマンではなく、人間・郷秀樹の戦いなんだ。だからあそこでワンダバコーラスだったんだ、と言っていた。なるほどなと思った。
このように独特の雰囲気と魅力が詰まった帰ってきたウルトラマン。
まだあと「狙われた女」や怪獣ヤメタランス、キングボックルの話なんかもしたいところではあるけれど、今日はここまで。
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