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第403回。落語を聞いて走る
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落語を聞いている。
元々好きでついこの間もDVDを買おうと思って通販を申し込んだら何日経っても音沙汰がない。
まあお金も払ってないしと思って待っててもまだ来ない。
お店にメールしてみると、1週間から10日で入荷と書いてあるけど大本のメーカーで絶盤になってるかもしれない、どっかに在庫が無いか探してるのでもう少々お待ちを、とのこと。
細かい説明は忘れたけど、まあ忘れたころに急に落語のDVDが来たら面白いだろう、と思って待ってたけど結局来なかった。最終的にはお店の方からごめんなさいのメールが来たので、まあそれっきりだ。
普通に買おうと思っててこんなんじゃ、そりゃ違法ダウンロードも一向に無くならないよ。だからってそれでアップロードすることや、それを利用することは全然ダメだけどさ。
正しく普通に買う方が遥かにめんどくさくて、しかも手に入らないってなんだそりゃ。
とは思ったよ。お店も悪くないし、なんか仕組みがおかしいなって。
別に落語聞くのが嫌になったわけじゃないから普通にスマホに音源がずっと入ってて。
仕事柄、1時間とか長いともっと走りっぱなしのこともあるので落語ってちょうどいい。
黙って走ってると退屈だし、音楽も飽きてきちゃう。
放送があった日は伊集院光さんの深夜ラジオを録音して聞いているけど週に一度だし。
そんなわけで落語である。
好きだったのは死神と芝浜。あと目黒の秋刀魚なんてのもいいね。
基本的に江戸前の落語が好きなので、三遊亭円楽さん(6代目)のを好んで聞いていた。
笑点見てるし、やっぱり知ってる人のだととっつきやすいよね。
なんでもそうだけど。
でその師匠の5代目圓楽さんや、桂歌丸さんのも聞いてた。
桂歌丸さんの竹の水蓮ってのがまたいいんだ。
こないだミッテラに行った時はBARプカプカさんで桂米朝さんの まめだ というのを聞かせて頂いた。ちょうど三津寺周辺が舞台のお話と言うことで。最後まで聞いてみると実に人情味あふれるいい噺。
大阪弁のあったかさ、生活の手触りを感じられるようで、じんわり沁みる感じ。
ああいいものを聞いたな、と思えるね。
みんな言ってしまえばおじさんが喋ってることなのに、聞いているうちに想像力でもってこっちもお迎えに行ってるでしょ、だから演じ分けてる老若男女、宿屋の主から小さな子供、クマゴロウもキンちゃんもカツ公とその女房も全部見えてくる。
最初は、ただ面白いことを言っている、話しているというだけなのが、夢中になってるとだんだんその生活に入り込んでゆくんだ。まあ運転してるからそこまでじゃないにしても、こう、耳から入ってくる音声イメージが脳内でクッキリ浮かぶというのかな。
三人称視点というか、好きな映画の内容を思い出すときの感覚に近いかな。
それが浮かぶっていうか、浮かばされちゃう。
立川志の輔さんの死神も良かった。あのためしてガッテン、でお馴染みのガラガラ声の人なんだけど、これが妙に心地よい。
喋りのテンポとかリズムとか、言葉選びとか、ちょっとした抑揚だとか…技術の事は何もわからないけど、きっと工夫があるんだろうな。
でそういうのを全部ぶっ飛ばしてしまってるのが何と言っても五代目立川談志家元だよね。
七代目とか五代目とかいろいろあるみたいだけど…まあその辺はいいとして。
エモーションだよ、あの人の噺は。
もう亡くなって随分経つんだなあ。生きているうちにちゃんと聞いてなかったのが悔やまれる。
同じ時代に生きてたのが信じられないって人。
アンドレ・ザ・ジャイアントとかと同じで。
最近、亡くなる前に書かれた自伝を買ったので読んでみてからまた変わるかもしれないけど、たぶん、知識や考察、哲学、感覚、全部入ってたと思うんだ。一つの噺、一席の中にぜーーーーんぶ詰め込んで、コップの中になみなみ満たして、そこから一滴だけ垂れた雫を舐めるようなもので。
これは映画マルサの女で山崎努さんが演じるところの権藤が言うんだな。
「コップに水をちょっとずつ貯めて、まだ飲まない、溢れそうになっても、まだ飲まない。ついに溢れたその一滴を舐めるんだ」
って。知識や経験もきっとそれと同じだよ。
森羅万象これプロレス論で言えば、柔道やレスリング、空手をずっとやって来て、それをプロレスラーになった時に自らのアイデンティティとして発揮する瞬間のようなもの。
空手の選手と柔道の選手が同じリング上でスパークする瞬間。
すなわち積み重ねの凄み、美しさなんだよきっと。
それが立川談志さんのは猛烈なエモーションになって伝わってくる。
聞き終わった後でスカーっとするんだ。
らくだなんか特にそうだった。
逆に死神なんか、話す人によって色んな結末があるけど談志さんのが一番ひどかった。
オイオイそりゃねえだろ!って思うくらいひどい。でも、それを受け止めざるを得ない。
そりゃねえよ!って思わされちゃう。
真っすぐに感覚に訴えてくるんだな。エモーションの落語。
だって話してる最中に他の落語家の悪口言ったり、
ここまでは誰それ、こっから誰それの…って演じ方の解説を入れちゃったりするんだ。
物凄くスマートで聞きやすく、しかも面白いのが6代目円楽さん。
その真逆にいるけど猛烈にクセになっちゃうのが談志さんだな。
この二つのアイデンティティが脳みその中で同じ演目、同じジャンルとして横に並ぶってのがとてもいい。
UWFとFMW
NIRVANAとGuns N' Roses
みたいなもんだな。
落語もプロレスも音楽も、そういうスパークする瞬間がイイのかもしれない。
元々好きでついこの間もDVDを買おうと思って通販を申し込んだら何日経っても音沙汰がない。
まあお金も払ってないしと思って待っててもまだ来ない。
お店にメールしてみると、1週間から10日で入荷と書いてあるけど大本のメーカーで絶盤になってるかもしれない、どっかに在庫が無いか探してるのでもう少々お待ちを、とのこと。
細かい説明は忘れたけど、まあ忘れたころに急に落語のDVDが来たら面白いだろう、と思って待ってたけど結局来なかった。最終的にはお店の方からごめんなさいのメールが来たので、まあそれっきりだ。
普通に買おうと思っててこんなんじゃ、そりゃ違法ダウンロードも一向に無くならないよ。だからってそれでアップロードすることや、それを利用することは全然ダメだけどさ。
正しく普通に買う方が遥かにめんどくさくて、しかも手に入らないってなんだそりゃ。
とは思ったよ。お店も悪くないし、なんか仕組みがおかしいなって。
別に落語聞くのが嫌になったわけじゃないから普通にスマホに音源がずっと入ってて。
仕事柄、1時間とか長いともっと走りっぱなしのこともあるので落語ってちょうどいい。
黙って走ってると退屈だし、音楽も飽きてきちゃう。
放送があった日は伊集院光さんの深夜ラジオを録音して聞いているけど週に一度だし。
そんなわけで落語である。
好きだったのは死神と芝浜。あと目黒の秋刀魚なんてのもいいね。
基本的に江戸前の落語が好きなので、三遊亭円楽さん(6代目)のを好んで聞いていた。
笑点見てるし、やっぱり知ってる人のだととっつきやすいよね。
なんでもそうだけど。
でその師匠の5代目圓楽さんや、桂歌丸さんのも聞いてた。
桂歌丸さんの竹の水蓮ってのがまたいいんだ。
こないだミッテラに行った時はBARプカプカさんで桂米朝さんの まめだ というのを聞かせて頂いた。ちょうど三津寺周辺が舞台のお話と言うことで。最後まで聞いてみると実に人情味あふれるいい噺。
大阪弁のあったかさ、生活の手触りを感じられるようで、じんわり沁みる感じ。
ああいいものを聞いたな、と思えるね。
みんな言ってしまえばおじさんが喋ってることなのに、聞いているうちに想像力でもってこっちもお迎えに行ってるでしょ、だから演じ分けてる老若男女、宿屋の主から小さな子供、クマゴロウもキンちゃんもカツ公とその女房も全部見えてくる。
最初は、ただ面白いことを言っている、話しているというだけなのが、夢中になってるとだんだんその生活に入り込んでゆくんだ。まあ運転してるからそこまでじゃないにしても、こう、耳から入ってくる音声イメージが脳内でクッキリ浮かぶというのかな。
三人称視点というか、好きな映画の内容を思い出すときの感覚に近いかな。
それが浮かぶっていうか、浮かばされちゃう。
立川志の輔さんの死神も良かった。あのためしてガッテン、でお馴染みのガラガラ声の人なんだけど、これが妙に心地よい。
喋りのテンポとかリズムとか、言葉選びとか、ちょっとした抑揚だとか…技術の事は何もわからないけど、きっと工夫があるんだろうな。
でそういうのを全部ぶっ飛ばしてしまってるのが何と言っても五代目立川談志家元だよね。
七代目とか五代目とかいろいろあるみたいだけど…まあその辺はいいとして。
エモーションだよ、あの人の噺は。
もう亡くなって随分経つんだなあ。生きているうちにちゃんと聞いてなかったのが悔やまれる。
同じ時代に生きてたのが信じられないって人。
アンドレ・ザ・ジャイアントとかと同じで。
最近、亡くなる前に書かれた自伝を買ったので読んでみてからまた変わるかもしれないけど、たぶん、知識や考察、哲学、感覚、全部入ってたと思うんだ。一つの噺、一席の中にぜーーーーんぶ詰め込んで、コップの中になみなみ満たして、そこから一滴だけ垂れた雫を舐めるようなもので。
これは映画マルサの女で山崎努さんが演じるところの権藤が言うんだな。
「コップに水をちょっとずつ貯めて、まだ飲まない、溢れそうになっても、まだ飲まない。ついに溢れたその一滴を舐めるんだ」
って。知識や経験もきっとそれと同じだよ。
森羅万象これプロレス論で言えば、柔道やレスリング、空手をずっとやって来て、それをプロレスラーになった時に自らのアイデンティティとして発揮する瞬間のようなもの。
空手の選手と柔道の選手が同じリング上でスパークする瞬間。
すなわち積み重ねの凄み、美しさなんだよきっと。
それが立川談志さんのは猛烈なエモーションになって伝わってくる。
聞き終わった後でスカーっとするんだ。
らくだなんか特にそうだった。
逆に死神なんか、話す人によって色んな結末があるけど談志さんのが一番ひどかった。
オイオイそりゃねえだろ!って思うくらいひどい。でも、それを受け止めざるを得ない。
そりゃねえよ!って思わされちゃう。
真っすぐに感覚に訴えてくるんだな。エモーションの落語。
だって話してる最中に他の落語家の悪口言ったり、
ここまでは誰それ、こっから誰それの…って演じ方の解説を入れちゃったりするんだ。
物凄くスマートで聞きやすく、しかも面白いのが6代目円楽さん。
その真逆にいるけど猛烈にクセになっちゃうのが談志さんだな。
この二つのアイデンティティが脳みその中で同じ演目、同じジャンルとして横に並ぶってのがとてもいい。
UWFとFMW
NIRVANAとGuns N' Roses
みたいなもんだな。
落語もプロレスも音楽も、そういうスパークする瞬間がイイのかもしれない。
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