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第358回。お刺身とコロッケは日曜の夜に
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数年前まですぐ近所の県営団地に祖父母が住んでいた。
大きめの国道を隔ててホントにすぐなので、良く遊びに行っていた。
歩いて5分くらいなのでいつでも行けるんだけど、やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんの家というのは特別な空間だった。
あと伯父さんも住んでいたけど、物静かな人でわりと忙しいのであまり家に居なかった。
で、子供のころは週末になると泊りにも行っていた。
金曜の学校が終わってお風呂に入って、そのままテクテク歩いていく。
祖父母の家はゲームもマンガも沢山あったしお菓子もふんだんにあった。
というか用意してくれていた。
お菓子やジュースは近所にあったココストアまで一緒に買いに行った。
毎回必ずと言っていいほど2千円ぐらい買わせてくれて。
それは現金じゃなくて、あの頃のココストアでやってた
ココストアスタンプ
っていう、切手くらいの大きさの小さな紙を専用のシートに貼って集めると2千円のお買い物が出来たんだ。それを持って行って、私のほしいものを何でも買わせてもらった。
お店も顔見知りだったので気安いもので、私はいつもこれでアイスクリームや午後の紅茶レモンティーのペットボトル、そして
さきいか
や
バターピーナッツ
などをたんまり買い込んだ。
何故か昔からお酒のつまみみたいなものが好きで。
それを食いながらゲームをしたりマンガを読むのが楽しみだった。
あと夜中も起きててよかったので深夜放送も見られた。真夜中って急に映画やってたり海外ドラマやってたりして、それでAKIRAもバンド・オブ・ブラザースも女教師6もギルガメッシュないと、も初めて見たんだった。もちろんワールドプロレスリングも欠かさず見ていた。
小学校高学年になると学校にも家にも居場所がなくてよくこの団地の部屋でおじいちゃんに電話かけてもらって学校休んでたんだけど、それとは別にやっぱり泊りに行くことは続けていて。
家の中での居場所のなさが本当に辛かっただけでなく、離婚した両親から板挟みに遭い(出ていった方の実父と我が家にやって来た新しいお父さんこと輝(テル)さん&母親)どこに居ても気が休まらなかった私にとってこの祖父母の家は最後の逃げ場だったのだ。
月に4週か5週ある土日はすべて実父の家に泊まらされ(親権なんかカケラもなかったはずだ)、そのうちの1週が祖父母の家だった。つまり実父側の祖父母なわけだが、都合良く祖父母とは縁を切らないで今日まで過ごしている。
祖父母の家に居るときは居心地の悪い思いをしなくてもいいし、好きなことを好きなだけして過ごすことが出来た。
だけど無情にも月曜日は刻一刻と近づいてくる。日曜の晩御飯を食べて9時ぐらいになったら帰ることになっていたので、その時間帯が憂鬱で仕方がない。
笑点が始まって、暴れん坊将軍とか、こち亀とか、日曜の終わりにやってる番組が次々に流れてきて。
土曜の夜は料理が得意な(というか祖母が家事をひとつもしなかったので)祖父が作ってくれる晩御飯が楽しみで。日曜の夜は近所のスーパーで買ってきたものが多かった。
その中で一番多かったのがマグロのお刺身とコロッケだった。
何故かマグロのお刺身。コロッケは普通のジャガイモにひき肉がちょっと入ったやつ。
ちょっと前に書いたけどこの当時は近所にお惣菜屋さんもあったので、コロッケはそこで買うこともあった。
この熱々のコロッケと、元はお魚屋さんだったことから魚の鮮度と味には特に定評とこだわりのあるスーパーのマグロ。美味しいんだ、美味しくないわけがないんだ。
でも、食べたくなかった。
食べたら帰らなくちゃならない。あの家に、あの家族に、あの学校に、汚れ放題で一切片付けというものを放棄してた自分の部屋に。
帰らなくちゃならない。
嫌で嫌で仕方がないけど、おじいちゃんは私がマグロのお刺身もコロッケも大好物だということは知っているから、どんどん食べろと沢山買ってきてくれる。
マグロもコロッケも味がしない。ご飯も白い炊き立てのお米が、まるで砂のように感じる。
口に入れても喉を通らない。
ある日、ぽそっと祖父に嘘をついた。
もうコロッケは食べ飽きてしまった。何か他のものがいい。
祖父はワンタンが得意だった。
自分で皮を買ってきて餡を作って器用に包んで、これまたダシから作ったスープに入れて食べる。
ワンタンにしてくれ、と頼んだ。
だけど何回か出てきて、またマグロとコロッケに戻ってしまった。
なぜだかは覚えていない。
あれ以来、実はマグロの赤身とじゃがいものコロッケはあまり食べてない。
嫌いじゃないけど進んで食おうとはしないもの、って感じに落ち着いた。
もっと明るい、思い出の味ってやつになってたかもしれないのにな。
祖母は数年前に他界した。
県営団地も取り壊しが決まって今は無人になった。
伯父と祖父はこれまた近くの新しい県営住宅に引っ越した。
お惣菜屋さんもなくなってしまった。
最近食べてないな、またワンタンをリクエストしてみようか。
大きめの国道を隔ててホントにすぐなので、良く遊びに行っていた。
歩いて5分くらいなのでいつでも行けるんだけど、やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんの家というのは特別な空間だった。
あと伯父さんも住んでいたけど、物静かな人でわりと忙しいのであまり家に居なかった。
で、子供のころは週末になると泊りにも行っていた。
金曜の学校が終わってお風呂に入って、そのままテクテク歩いていく。
祖父母の家はゲームもマンガも沢山あったしお菓子もふんだんにあった。
というか用意してくれていた。
お菓子やジュースは近所にあったココストアまで一緒に買いに行った。
毎回必ずと言っていいほど2千円ぐらい買わせてくれて。
それは現金じゃなくて、あの頃のココストアでやってた
ココストアスタンプ
っていう、切手くらいの大きさの小さな紙を専用のシートに貼って集めると2千円のお買い物が出来たんだ。それを持って行って、私のほしいものを何でも買わせてもらった。
お店も顔見知りだったので気安いもので、私はいつもこれでアイスクリームや午後の紅茶レモンティーのペットボトル、そして
さきいか
や
バターピーナッツ
などをたんまり買い込んだ。
何故か昔からお酒のつまみみたいなものが好きで。
それを食いながらゲームをしたりマンガを読むのが楽しみだった。
あと夜中も起きててよかったので深夜放送も見られた。真夜中って急に映画やってたり海外ドラマやってたりして、それでAKIRAもバンド・オブ・ブラザースも女教師6もギルガメッシュないと、も初めて見たんだった。もちろんワールドプロレスリングも欠かさず見ていた。
小学校高学年になると学校にも家にも居場所がなくてよくこの団地の部屋でおじいちゃんに電話かけてもらって学校休んでたんだけど、それとは別にやっぱり泊りに行くことは続けていて。
家の中での居場所のなさが本当に辛かっただけでなく、離婚した両親から板挟みに遭い(出ていった方の実父と我が家にやって来た新しいお父さんこと輝(テル)さん&母親)どこに居ても気が休まらなかった私にとってこの祖父母の家は最後の逃げ場だったのだ。
月に4週か5週ある土日はすべて実父の家に泊まらされ(親権なんかカケラもなかったはずだ)、そのうちの1週が祖父母の家だった。つまり実父側の祖父母なわけだが、都合良く祖父母とは縁を切らないで今日まで過ごしている。
祖父母の家に居るときは居心地の悪い思いをしなくてもいいし、好きなことを好きなだけして過ごすことが出来た。
だけど無情にも月曜日は刻一刻と近づいてくる。日曜の晩御飯を食べて9時ぐらいになったら帰ることになっていたので、その時間帯が憂鬱で仕方がない。
笑点が始まって、暴れん坊将軍とか、こち亀とか、日曜の終わりにやってる番組が次々に流れてきて。
土曜の夜は料理が得意な(というか祖母が家事をひとつもしなかったので)祖父が作ってくれる晩御飯が楽しみで。日曜の夜は近所のスーパーで買ってきたものが多かった。
その中で一番多かったのがマグロのお刺身とコロッケだった。
何故かマグロのお刺身。コロッケは普通のジャガイモにひき肉がちょっと入ったやつ。
ちょっと前に書いたけどこの当時は近所にお惣菜屋さんもあったので、コロッケはそこで買うこともあった。
この熱々のコロッケと、元はお魚屋さんだったことから魚の鮮度と味には特に定評とこだわりのあるスーパーのマグロ。美味しいんだ、美味しくないわけがないんだ。
でも、食べたくなかった。
食べたら帰らなくちゃならない。あの家に、あの家族に、あの学校に、汚れ放題で一切片付けというものを放棄してた自分の部屋に。
帰らなくちゃならない。
嫌で嫌で仕方がないけど、おじいちゃんは私がマグロのお刺身もコロッケも大好物だということは知っているから、どんどん食べろと沢山買ってきてくれる。
マグロもコロッケも味がしない。ご飯も白い炊き立てのお米が、まるで砂のように感じる。
口に入れても喉を通らない。
ある日、ぽそっと祖父に嘘をついた。
もうコロッケは食べ飽きてしまった。何か他のものがいい。
祖父はワンタンが得意だった。
自分で皮を買ってきて餡を作って器用に包んで、これまたダシから作ったスープに入れて食べる。
ワンタンにしてくれ、と頼んだ。
だけど何回か出てきて、またマグロとコロッケに戻ってしまった。
なぜだかは覚えていない。
あれ以来、実はマグロの赤身とじゃがいものコロッケはあまり食べてない。
嫌いじゃないけど進んで食おうとはしないもの、って感じに落ち着いた。
もっと明るい、思い出の味ってやつになってたかもしれないのにな。
祖母は数年前に他界した。
県営団地も取り壊しが決まって今は無人になった。
伯父と祖父はこれまた近くの新しい県営住宅に引っ越した。
お惣菜屋さんもなくなってしまった。
最近食べてないな、またワンタンをリクエストしてみようか。
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