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第305回。ポンキッキっていつまで見てた?

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というか、今これを読んでくれている平成生まれのキッズたちには、ポンキッキを見てないって人もいるのか。ガチャピン&ムックを何だと思うんだろうな。それだとすると。
私いま33ちゃい。物心ついた時にはポンキッキがあって、朝8時ぐらいからやってた。
7時半から すくすくぽん! ってのがあって、これはどこぞの保育園とか幼稚園に着ぐるみ4人衆が乗り込んで体操を始めて、それを録画して全国に放送するという今考えるとずいぶん乱暴というかダイナミックというかのどかな番組だった。で、その合間になぜか

ボーーーートレーーーーース、ガイドッ!
テケテケテケテケテーーー
っつって競艇とか競輪とかオートレースの開催情報が流れる5分ぐらいの番組が流れてた。
なんであの時間なんだろうな。しかもすくすくぽん!とポンキッキの間に。

で、はちじーはちじーはちじーはちじー、はっぷーん!って。
あ、違う。これもう8時8分だから始まってるのか。
どんなオープニングだっけなポンキッキーズ。

私、ひらけ!ポンキッキは小さすぎてよく覚えてなくてさ。
機関車トーマスを欠かさず見てたことぐらいで。
ポンキッキーズになってからもずいぶん長いこと見てたんだよね。
不登校になってから特に。
和田アキ子さんの「さあ冒険だ」を聞くと、未だにみんな学校行ってる時間に家で一人、あれ見てたのを思い出すよ。
アレさあ、わっけー頃の安室奈美恵さんが珍妙な衣装で満員電車ん中で踊ってたよな。鈴木蘭々さんと一緒に。
あ、オープニングはアレだ、斉藤和義さんの「歩いて帰ろう」だよ、そーそーそー。
その前にみんなして歌うんだよな。おはようさーーん!って。スチャダラパーのボーズさんがいて。で、「歩いて帰ろう」が流れて、あのビデオが流れてたんだっけな。
あれ今になってさ
「昔、オレ電車乗ってたらさ、安室奈美恵が金ぴかの衣装着て目の前で踊ってたんだよ」
とか言っても信じてもらえないんだろうな。アタマおかしいと思われちゃうけど、本当にあったんだもんな。すげえよな。

あの頃のイメージが強いなあ。
ってことは私たぶん小学6年ぐらいまで見てたんだよな。
ラインダンスの女の子がいつの間にか年下だった気がするもん。
あの足と手がワラワラワラッって動くのと、子供がテレビで青春してる感じが、当時は耐えられなかったなあ。今でも三十人三十一脚とか見るの大嫌いだもん。お前らはいいよな、って。

ああいう行事ってさ、一人や二人張り切るやつがいて、その腰ぎんちゃくがいて、それに酔ってる教員がいるだけのもんだろ?
冗談じゃねえよ、何が悲しくて慎吾ママのおはロックなんか踊らなくちゃならねえんだって。
それならそんな学校なんか行かねえでポンキッキーズ見るっての。
面白かったんだよなあ。小6の私が見ても。いやもう現実逃避以外の何物でもなかったけど。

学校行ってもきついし、家にも居場所がねえから、学校行くふりして近所の祖父母の家に逃げ込んでさ。
おじいちゃんに電話かけてもらって学校休んで、そんで8時になったらポンキッキーズ見てさ。

そんな小学6年生。
あの当時ですでに170センチ70キロぐらいあった図体だけはデカいガキ(悲しいかなそれ以降、タッパはパタっと伸びなくなった)が日がな一日じいちゃん家でボケーっとしてて。昼になったらラーメンとか作ってくれてさ。
昨日の話じゃないけど、スーファミもひたすらやってたな。

本もよく読んだ。
学校は行ってなかったけど、近所の公文式の教室には行ってたんだ。
行かないとイタガキ先生が家に電話かけてきて怒られるんでね。
で行くと、勉強もいいけど、せっかく佐野君は頭がいいんだから本をもっと読んだ方がいいのよ?っていろんな本を貸してくれた。
最初はマンガ日本の歴史みたいなのを読んでたけど、それが面白いんで段々とエスカレートして、織田信長の伝記とか、ナポレオンとか、そういうのを読んだな。
母親が小説が好きだったんで、椎名誠さんを勧めてくれた。
この人は世界中を探検してプロレスも好きで面白いから読んでみたら?
っていうんで素直に読んだのが「あやしい探検隊、海で笑う」と「砂の海」だった。
前者はグレートバリアリーフに潜った時のことを中心にしたもので、後者は中国奥地のタクラマカン砂漠に探検に行った話。

あとたまに学校に行っても教室に入らないで、図書室や学年室に入り浸って江戸川乱歩とかシャーロックホームズを読んでた。そういうのをじいちゃん家に持ち込んで、ゲームに飽きたら読んでた。

冬、今ぐらいの時期になると石油ストーブがじりじりあったかくてさ。
あの独特のにおいがたまらなかった。
ヤカンでお湯が沸いてて、古い団地の4階だから隙間風で窓がガタガタ揺れるんだ。
今では取り壊しが決まったんで、建物だけ残ってて誰も住んでない。
でもその団地の前をよく通るんで、歩いてたりすると不意に見上げて、その窓からじいちゃんが顔を出してくれる気がするんだ。
手を振っているのは、あの日の私なんだろうな。

じいちゃん、まだ生きてるけどな。
あの団地がなくなったら、あの日の私は居場所をなくしちゃうのだろうか。
そうしたら、私の部屋でゲームと読書ぐらいさせてやろう。
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