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第254回。カワサキ君の思い出
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同じ中学の野球部の連中に嫌いな奴が多かった。
奴ら、野球ができない、野球が下手、野球を知らない人を人間だとすら思っていない。平家にあらずは人にあらず、を21世紀も間近な1999年ごろになってやっていた野蛮な連中だ。
私が居た中学の野球部の連中どもは9割9分こんなだった。
ヤな奴、浅井。
私のエロ本を貸してほしいと連絡網まで使ってコンタクトしてきて、いざ渡したらその日のうちに親に見つかったと言ってバックレたチビの萩本。
私が死ぬほど好きだったMさんを指して「アイツ気持ち悪(わり)い、オレぜってー遊ばんし」とのたまったイトウ。お前も気持ち悪(わり)いし死にざまは夏の終わりのゴキブリより無様だゾ。あの日、私は確かに呪ったからな。今頃ポコチン腐ってるか?
この3匹が主に嫌いだったし、向こうも私が嫌いだった。特に浅井は。
だが、そんな映画「七人の侍」の野武士どもよりタチの悪い集団にもヒトは居る。
小学校の頃、大の仲良しだったカワサキ君である。
カワサキ君は天真爛漫、小学校まではひょろっとしていたが中学で野球部に入ってからメキメキごっつくなっていった。が、顔と頭の中身がずっと一緒だったので、なんつーか初登場時の仮面ライダーアマゾンみたいだった。
小学校のころ、しょっちゅう遊びに行っていた。カワサキ君の家は工場をやっていて、敷地のすぐ裏が緑地公園に密接していたので、わざわざ金網のフェンスを乗り越えて公園に侵入したり、フェンスの外側の10メートルぐらいある法面の上をダッシュしたりしていた。理由?ない。
彼の家の裏庭には、おじいちゃんが趣味でやっている家庭菜園と、猟犬ミッキーの犬小屋、あとちょっとした土の壁があった。緑地公園の敷地との高低差がそのまま剥き出しの赤土の急斜面になっていて、そこに小さなシャベルやツルハシで足場を作ってよじ登るのがお気に入りだった。理由?ない。そういう遊びだったのだ。
夏休みになると弁当持参で、一日じゅう土くれを掘り返したり埋めたりしていた。ホースで水路を作って、勝手に公園で集めた種をまいたりして。翌年そこにビッシリとオシロイバナが生えてきて流石におじいちゃんに全部引っこ抜かれてしまったそうな。
カワサキ君の天然はお母さん譲りだったのか、いつも私をサトー君と呼んでいた(キッドさんの本名は佐野)。
カワサキ君は私が小学校の同学年の中で孤立していっても、周囲から何を言われても変わらず遊んでくれた数少ない友達だった。小学4年の時に、廊下でつかみ合いの喧嘩をしてたら当時の担任に
「お前ら、そんなにやりたきゃ外でやれ!」
とアントニオ猪木ばりのカツを注入されたことがあった。当然仲良く下駄箱で靴を履き、運動場で第2ラウンドのゴングが鳴った。気が付くと彼の後頭部にガッツンガッツン頭突きを入れて血がにじんでいるのに気が付いたところで映画ブルースブラザーズのラストシーンさながらの人数に取り囲まれて引き離された。
そんなことがあっても、カワサキ君は友達でいてくれた。
今でのあの坂道を登って工場の前を通ると、元気かな、と思い出す。
この思い出話には誇張も脚色もある。
でも、私は、彼がずっと友達でいてくれたことは本当だったと思っている。
2019年10月補足。
彼の工場は取り壊して、その敷地に今は建売住宅が建っている。
カワサキ君の自宅らしき建物は残っている。今も元気で暮らしているだろうか。
奴ら、野球ができない、野球が下手、野球を知らない人を人間だとすら思っていない。平家にあらずは人にあらず、を21世紀も間近な1999年ごろになってやっていた野蛮な連中だ。
私が居た中学の野球部の連中どもは9割9分こんなだった。
ヤな奴、浅井。
私のエロ本を貸してほしいと連絡網まで使ってコンタクトしてきて、いざ渡したらその日のうちに親に見つかったと言ってバックレたチビの萩本。
私が死ぬほど好きだったMさんを指して「アイツ気持ち悪(わり)い、オレぜってー遊ばんし」とのたまったイトウ。お前も気持ち悪(わり)いし死にざまは夏の終わりのゴキブリより無様だゾ。あの日、私は確かに呪ったからな。今頃ポコチン腐ってるか?
この3匹が主に嫌いだったし、向こうも私が嫌いだった。特に浅井は。
だが、そんな映画「七人の侍」の野武士どもよりタチの悪い集団にもヒトは居る。
小学校の頃、大の仲良しだったカワサキ君である。
カワサキ君は天真爛漫、小学校まではひょろっとしていたが中学で野球部に入ってからメキメキごっつくなっていった。が、顔と頭の中身がずっと一緒だったので、なんつーか初登場時の仮面ライダーアマゾンみたいだった。
小学校のころ、しょっちゅう遊びに行っていた。カワサキ君の家は工場をやっていて、敷地のすぐ裏が緑地公園に密接していたので、わざわざ金網のフェンスを乗り越えて公園に侵入したり、フェンスの外側の10メートルぐらいある法面の上をダッシュしたりしていた。理由?ない。
彼の家の裏庭には、おじいちゃんが趣味でやっている家庭菜園と、猟犬ミッキーの犬小屋、あとちょっとした土の壁があった。緑地公園の敷地との高低差がそのまま剥き出しの赤土の急斜面になっていて、そこに小さなシャベルやツルハシで足場を作ってよじ登るのがお気に入りだった。理由?ない。そういう遊びだったのだ。
夏休みになると弁当持参で、一日じゅう土くれを掘り返したり埋めたりしていた。ホースで水路を作って、勝手に公園で集めた種をまいたりして。翌年そこにビッシリとオシロイバナが生えてきて流石におじいちゃんに全部引っこ抜かれてしまったそうな。
カワサキ君の天然はお母さん譲りだったのか、いつも私をサトー君と呼んでいた(キッドさんの本名は佐野)。
カワサキ君は私が小学校の同学年の中で孤立していっても、周囲から何を言われても変わらず遊んでくれた数少ない友達だった。小学4年の時に、廊下でつかみ合いの喧嘩をしてたら当時の担任に
「お前ら、そんなにやりたきゃ外でやれ!」
とアントニオ猪木ばりのカツを注入されたことがあった。当然仲良く下駄箱で靴を履き、運動場で第2ラウンドのゴングが鳴った。気が付くと彼の後頭部にガッツンガッツン頭突きを入れて血がにじんでいるのに気が付いたところで映画ブルースブラザーズのラストシーンさながらの人数に取り囲まれて引き離された。
そんなことがあっても、カワサキ君は友達でいてくれた。
今でのあの坂道を登って工場の前を通ると、元気かな、と思い出す。
この思い出話には誇張も脚色もある。
でも、私は、彼がずっと友達でいてくれたことは本当だったと思っている。
2019年10月補足。
彼の工場は取り壊して、その敷地に今は建売住宅が建っている。
カワサキ君の自宅らしき建物は残っている。今も元気で暮らしているだろうか。
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