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第243回。巻き爪のはなし。
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柔道をやっていると、どうしても足の爪がおかしなことになる。
どんなに短く切って整えても、何かの具合でベキ!と曲がったり踏みつぶされたりして、よくもまあこんな短くしたところから!と言いたいようなところからめくれてしまったりする。
短いとめくれにくいのは、足の爪より美人が手で押さえたミニスカートにしていただきたい。
あとスカートを手で押さえるのをやめていただきたい。
ついでに今私の手に手錠をかけるのもやめていただきたい。
でね、その後別になんてことなかった足の親指の爪がどうかしてしまったのは今から数年前。
最初はなんだか知らないけど足の指が痛いな、くらいだった。
だんだんと耐えがたい激痛になり、しまいには足を地面に着いたり、靴下を履くだけで転げまわるぐらい痛むようになった。恐る恐る見てみると、爪が食い込んだところから肉がはみ出して、そのまま腐っている。物凄い臭い。なんか臭い粘液がずっと出ている。
肉が腐っている。
私はその時思った。
遂に糖尿病が!!!!!!
違うっつーの。
その当時の仕事というのがゼンリンの地図の調査員。
毎日ずっと歩きっつめ。
足は巻き爪。
あんまり痛いんで公園の水道で足の指を冷やしつつ腐った血膿を洗い流す。
これですらすげえ痛い。
このまま歩き続けるなんて…しかも真夏の炎天下、固いアスファルトの上を。
足を引きずって調査した。辛かった…。団地とかホント。
結局ついに歩くこともままならず、毎日毎日、何もしていなくても痛む足を引きずって過ごすことになった。寝ていてもコツン、歩いていてもコツン、何かの拍子に足の指にちょっとでも衝撃が加わるだけで激痛が走る。
というか、もう脈打つような痛みが四六時中ゆるく続いていて、ぶつけたときだけズキン!とくる感じ。
耐えかねているところに、近所の外科医がいい、と教えてくれた人が居た。
私の友人の元彼女のお母さん、のケイコちゃん。
年齢の数倍美人で、とても綺麗で優しい人だった。
その人が教えてくれた病院に行くと、なんと手術をするという。
足の親指の指先や付け根に何本も注射をして、すっかり感覚がマヒしたところでなにやらグググ!っとやられているご様子。仰向けに寝ているので具体的に何が行われているのかはわからないが、麻酔がなかったら想像もしたくないような光景に違いない。
足の親指と爪の間に、何か鋭い医療器具が入り込んでいる。そしてゴリゴリと何かを削っている。また、ペンチみたいなので挟んでいる感じもする。
そして取り出された血膿まみれの伸びた爪。
腐った指肉に食い込んでいた爪と、その腐れ肉も取り払ってぽっかり空いた場所にガーゼを詰め込み、グルグル巻いた包帯で固定する。
麻酔が効いている間は、全然痛くない!あの人名医だ!!と感動しまくり、麻酔のお陰で飛ぼうが跳ねようが痛くもなく、さらにピンクのゾウさんは空を飛んでいるし、部屋の四隅をグルグル回る総蛍光色の大名行列に加わってタップダンスを踊っても全然平気だった(それは別のところに麻酔が効いて平気ってよりも正気じゃなくなってるぞキッドよ)。
けど麻酔が切れるとどうしたってズキズキする。お風呂でもそこだけ濡らせないってんでサランラップとビニール袋でグルグル巻きにして入ってた。おまけに毎日通ってガーゼを取り換えて、受付のエキゾチック美人の顔を見るのが楽しみになった。
突っ込まれたガーゼは思いのほか沢山あって、オイオイこんなに入ってたのかよ!
と思うぐらいの赤黒いガーゼを見た。
洋物のサイコホラー映画かゲームの小道具みてえなガーゼ。
あんなの後にも先にもこの時だけだった。
というのも、流石にこれ以降は巻き爪になっても、こんなにひどくなる前に医者にかかったから。
なんだかんだ癖になっているのか、しばらくすると痛んできて、放っておくとまた腐る。
でも最初の時はあんまりに痛いんで麻酔を打つ針が刺さる痛さも気にならないぐらいだった。
それがニンゲンというものはゲンキンなもので、2回目、3回目ともなると麻酔が痛くて嫌になる。
オマケに毎度毎度の通院も面倒だ。
そうこうしているうちに、私が小学校の頃から通っている皮膚科の先生に巻き爪の相談をしたら
「足の指の爪なんて滅多にいじるもんじゃないぞ、どうしても痛かったらペンチで引っ張ってやれ」
と。
拷問じゃん。
と思ったが実際に巻き爪になったところにマイナスドライバーやキリの先端を突っ込んで矯正してやると、最初こそ痛いけど明らかにその後ちょっと楽になる。痛む部分にかかる重圧が激減するのだ。
こうして医療行為から日曜大工に変貌した私の巻き爪治療は、力づくでねじ込んだ工具を使って爪を曲げ直す、というものになった。
嘘のような本当の話で、今のところ再発もしていない。
何度も何度も私の爪を切っては戻してくれたあの病院の院長先生は、別件で予約を入れようとしたら
院長、病気療養のため休診とさせて頂きます
と案内のテープが回るだけになってしまった。
あれから行ってないけど、院長先生は大丈夫だろうか。
どんなに短く切って整えても、何かの具合でベキ!と曲がったり踏みつぶされたりして、よくもまあこんな短くしたところから!と言いたいようなところからめくれてしまったりする。
短いとめくれにくいのは、足の爪より美人が手で押さえたミニスカートにしていただきたい。
あとスカートを手で押さえるのをやめていただきたい。
ついでに今私の手に手錠をかけるのもやめていただきたい。
でね、その後別になんてことなかった足の親指の爪がどうかしてしまったのは今から数年前。
最初はなんだか知らないけど足の指が痛いな、くらいだった。
だんだんと耐えがたい激痛になり、しまいには足を地面に着いたり、靴下を履くだけで転げまわるぐらい痛むようになった。恐る恐る見てみると、爪が食い込んだところから肉がはみ出して、そのまま腐っている。物凄い臭い。なんか臭い粘液がずっと出ている。
肉が腐っている。
私はその時思った。
遂に糖尿病が!!!!!!
違うっつーの。
その当時の仕事というのがゼンリンの地図の調査員。
毎日ずっと歩きっつめ。
足は巻き爪。
あんまり痛いんで公園の水道で足の指を冷やしつつ腐った血膿を洗い流す。
これですらすげえ痛い。
このまま歩き続けるなんて…しかも真夏の炎天下、固いアスファルトの上を。
足を引きずって調査した。辛かった…。団地とかホント。
結局ついに歩くこともままならず、毎日毎日、何もしていなくても痛む足を引きずって過ごすことになった。寝ていてもコツン、歩いていてもコツン、何かの拍子に足の指にちょっとでも衝撃が加わるだけで激痛が走る。
というか、もう脈打つような痛みが四六時中ゆるく続いていて、ぶつけたときだけズキン!とくる感じ。
耐えかねているところに、近所の外科医がいい、と教えてくれた人が居た。
私の友人の元彼女のお母さん、のケイコちゃん。
年齢の数倍美人で、とても綺麗で優しい人だった。
その人が教えてくれた病院に行くと、なんと手術をするという。
足の親指の指先や付け根に何本も注射をして、すっかり感覚がマヒしたところでなにやらグググ!っとやられているご様子。仰向けに寝ているので具体的に何が行われているのかはわからないが、麻酔がなかったら想像もしたくないような光景に違いない。
足の親指と爪の間に、何か鋭い医療器具が入り込んでいる。そしてゴリゴリと何かを削っている。また、ペンチみたいなので挟んでいる感じもする。
そして取り出された血膿まみれの伸びた爪。
腐った指肉に食い込んでいた爪と、その腐れ肉も取り払ってぽっかり空いた場所にガーゼを詰め込み、グルグル巻いた包帯で固定する。
麻酔が効いている間は、全然痛くない!あの人名医だ!!と感動しまくり、麻酔のお陰で飛ぼうが跳ねようが痛くもなく、さらにピンクのゾウさんは空を飛んでいるし、部屋の四隅をグルグル回る総蛍光色の大名行列に加わってタップダンスを踊っても全然平気だった(それは別のところに麻酔が効いて平気ってよりも正気じゃなくなってるぞキッドよ)。
けど麻酔が切れるとどうしたってズキズキする。お風呂でもそこだけ濡らせないってんでサランラップとビニール袋でグルグル巻きにして入ってた。おまけに毎日通ってガーゼを取り換えて、受付のエキゾチック美人の顔を見るのが楽しみになった。
突っ込まれたガーゼは思いのほか沢山あって、オイオイこんなに入ってたのかよ!
と思うぐらいの赤黒いガーゼを見た。
洋物のサイコホラー映画かゲームの小道具みてえなガーゼ。
あんなの後にも先にもこの時だけだった。
というのも、流石にこれ以降は巻き爪になっても、こんなにひどくなる前に医者にかかったから。
なんだかんだ癖になっているのか、しばらくすると痛んできて、放っておくとまた腐る。
でも最初の時はあんまりに痛いんで麻酔を打つ針が刺さる痛さも気にならないぐらいだった。
それがニンゲンというものはゲンキンなもので、2回目、3回目ともなると麻酔が痛くて嫌になる。
オマケに毎度毎度の通院も面倒だ。
そうこうしているうちに、私が小学校の頃から通っている皮膚科の先生に巻き爪の相談をしたら
「足の指の爪なんて滅多にいじるもんじゃないぞ、どうしても痛かったらペンチで引っ張ってやれ」
と。
拷問じゃん。
と思ったが実際に巻き爪になったところにマイナスドライバーやキリの先端を突っ込んで矯正してやると、最初こそ痛いけど明らかにその後ちょっと楽になる。痛む部分にかかる重圧が激減するのだ。
こうして医療行為から日曜大工に変貌した私の巻き爪治療は、力づくでねじ込んだ工具を使って爪を曲げ直す、というものになった。
嘘のような本当の話で、今のところ再発もしていない。
何度も何度も私の爪を切っては戻してくれたあの病院の院長先生は、別件で予約を入れようとしたら
院長、病気療養のため休診とさせて頂きます
と案内のテープが回るだけになってしまった。
あれから行ってないけど、院長先生は大丈夫だろうか。
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