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おおかみ書房(かわいい)さんから全身編集者が届きました!
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続々と寄せられる読後報告に遅れること数日。
最初の予約をしくじってしまい改めてクレジット決済で購入して到着を待っておりました。
しかし、読むにあたってのハードルはもう一つ。
みんなの、そして劇画狼さんのツイートにもあったような内容のため、結構な覚悟がいるのではないか。相当に重たい話なのではないか、と思っていたので、少し体調を整えてから読むことにしました。
ツイッターも三日ぐらいやめたら随分時間に余裕が出来たし、自分の作品を書きながらその合間に何気なくパラっと開いたが最後。
11章までノンストップでした。
手が空くと、本に手が伸びる。
何か用を済ませて、また読んで。
その繰り返しでした。
初めは白取さんの生い立ちからガロ編集部へ。
長井さんや奥様との出会い、そしてガロとの別れ。
この辺りの部分は熱い昭和の日本で育まれた様々なカルチャーの最前線であり中心でもあったガロにおけるまさに白取さんの青春時代。
序文からその思いは強く強く響いてきて、自分も友達の中川ノリ君から教えてもらって読んでいたガロの世界、制作の現場が目の前に広がってくる。
想像するしかないけど、充分に想像させてもらえる。古い建物の二階の狭い事務所。それは私が前に勤めてた会社が似たような感じだったから、それをもう少し古くて狭くした感じかな、と思った。
そこに、若き日の白取さんと、長井さん、そして編集者の皆さんがいた。
ガロ。子供のころ、私にラジオやサブカルチャーを教えてくれた中川君が教えてくれた漫画雑誌。あの子は小学校3年とか4年でもうコミックボンボンを卒業したんだか並行していたんだかでガロを読んでた。ラジオの深夜放送も早くから聞いていた。
初めは地域のローカルFMで、その次はAMの深夜放送。オールナイトニッポンとか松村邦洋さんの本気汁(マジル)とかタングショーとか。野球のオフシーズンには松山千春さんの番組が面白いと教えてくれた。
私がガロを教えてもらった時、既に事件が起こる直前だった。
家庭はボロボロ、学校にも行き場がなく、気が付けば中川君とも疎遠になってしまっていた。それはまあ自分のせいなので謝るしかないけど、そういう行き場のない時期にあんまりみんなが読んでなくて、明るすぎたり楽しすぎたりしなくて、ちょっとグロテスクだったりシュールだったりする漫画があったのはとても幸運なことだった。フツーにそういう漫画も読んでたけど、周囲にそれを見られると
「お前は俺たちと同じものなんか読むな見るな歌うな学校に来るな」
と色々言われるので(その原因は自分の方にあるのだけれど)まわりから理解されない方がかえって気楽だったし、何よりフツーに面白かった。
そういえば、ねこぢる先生の漫画も中川君から教わったんだった。近所のレンタル屋さんにアニメのビデオもあったし、本も大きいお店なら新品が手に入った。そしてそのすぐあとぐらいにねこぢる先生は亡くなってしまって、ガロも分裂事件が起きた。
そんな私の心の拠り所の一つだった漫画雑誌を実際に編集して、他にも様々な業務を行って全国に、そして私の手元にも届けてくれた人が残した一冊の本。
それがまさか、ネットで偶然見つけた面白い本を出したり、イベントを行ったり、遂には画廊まで立ち上げてしまった劇画狼さんの手によって世に生み出されるとは。運命とは面白いもので、そして残酷なものだった。
11章に差し掛かってからは、度々ページをめくる手が止まりました。あんまり辛くて、読んでいるこっちも一緒に戦っているような、最後の時を過ごしているような、静かでありながら圧倒的な力のこもったページの連なりでした。紙の本で、自分の手でそれを持って読み進めていくってことをこんなに思い知らされるなんて。
そんな11章の最後はたった三行でした。この三行に行き着くまでに、白取さんは様々な言葉を残してくれました。赤の他人同士である、生まれも育ちも何もかも違う男女が性愛を超えた愛情、真顔で生まれ変わってもまた一緒になろう、と言えるまで。可愛らしかったのは、他の人が白取さんを呼ぶときは
千夏雄
なのに、奥様は
ちかお
と呼んでいたこと。あったかくて柔らかい、ちょっとくすぐったいようなニュアンス。
そして、その別れから第12章へ。
もう挿絵で堪えていたものがあふれてきてしまった。
奥様であり漫画家・やまだ紫さんの作品を残そうと、さらには漫画と言うものの在り方、男の矜持と女性を愛する責任まで話は広がる。しかしそこには、自らも病を背負ってなお生きると腹をくくった一人の男がいた。
そんな生涯一編集者・白取千夏雄さんの前に一人の男が現れる。
それが第13章。
劇画狼さんだ。紆余曲折の末、白取さんに弟子が出来た。
ここだけはまるで昔のカンフー映画みたいに時に面白おかしくふざけあい、時に実務に関しては全くの素人であった劇画狼さんに編集魂を叩きこむ師弟の姿があって再びホッコリする。
私が劇画狼さんの存在を知ったのは中川ホメオパシー先生の
もっと!抱かれたい道場
だったから、まさか本当に全くの素人だったとは思いもよらなかった。
そうして編集魂を受け継いだ劇画狼さんの前から、そして現世から、白取さんが去っていった。
1000部でもいい本を作りまくれ!
と白取さんは言った。
その1000部のうちの一冊を自分も持っているということが、どれだけ誇らしかったか。
全然カンケーない赤の他人なのに、思わず白取さんに感謝の言葉を念じていた。
白取さん、僕が子供のころに大好きだった漫画雑誌や作品を世に送り出してくれてありがとう。
劇画狼さん、素晴らしい作品をいつもありがとう!
そしてさようなら、とは、もう言えない気がする。あなたがいなくなったら次の編集魂は、本を作って送り出す職人は誰なんですか。
モモモグラで一度だけ、ちょっとだけお会いできた劇画狼さんは白取さんの言う通り筋肉質でむちむちの、加えて言うならば背中のハリ、背筋のシルエットが非常に美しい人です。
でも逆に演技悪いこと言ってゲンを担ぐってこともあるか。
やっぱりさようなら!!!
そして中川ノリユキ君は、この本の事を知っているのだろうか。
あの頃、僕の友達になってくれたばっかりに、僕の理不尽や暴力に見舞われてしまった中川君。ごめんよ、あの時は本当にゴメン。
それで、いまこんな面白い本が出たんだ。知ってるかな。
君が僕に教えてくれた、ガロを作った人の本なんだ。
もしよかったら読んでごらんよ。凄く面白かった。泣けるよ。
僕の心の奥で閉じていたガロが、本棚にきちんと戻されたような。
そんな気がしました。
劇画狼さん、白取さん、ありがとうございました。
最初の予約をしくじってしまい改めてクレジット決済で購入して到着を待っておりました。
しかし、読むにあたってのハードルはもう一つ。
みんなの、そして劇画狼さんのツイートにもあったような内容のため、結構な覚悟がいるのではないか。相当に重たい話なのではないか、と思っていたので、少し体調を整えてから読むことにしました。
ツイッターも三日ぐらいやめたら随分時間に余裕が出来たし、自分の作品を書きながらその合間に何気なくパラっと開いたが最後。
11章までノンストップでした。
手が空くと、本に手が伸びる。
何か用を済ませて、また読んで。
その繰り返しでした。
初めは白取さんの生い立ちからガロ編集部へ。
長井さんや奥様との出会い、そしてガロとの別れ。
この辺りの部分は熱い昭和の日本で育まれた様々なカルチャーの最前線であり中心でもあったガロにおけるまさに白取さんの青春時代。
序文からその思いは強く強く響いてきて、自分も友達の中川ノリ君から教えてもらって読んでいたガロの世界、制作の現場が目の前に広がってくる。
想像するしかないけど、充分に想像させてもらえる。古い建物の二階の狭い事務所。それは私が前に勤めてた会社が似たような感じだったから、それをもう少し古くて狭くした感じかな、と思った。
そこに、若き日の白取さんと、長井さん、そして編集者の皆さんがいた。
ガロ。子供のころ、私にラジオやサブカルチャーを教えてくれた中川君が教えてくれた漫画雑誌。あの子は小学校3年とか4年でもうコミックボンボンを卒業したんだか並行していたんだかでガロを読んでた。ラジオの深夜放送も早くから聞いていた。
初めは地域のローカルFMで、その次はAMの深夜放送。オールナイトニッポンとか松村邦洋さんの本気汁(マジル)とかタングショーとか。野球のオフシーズンには松山千春さんの番組が面白いと教えてくれた。
私がガロを教えてもらった時、既に事件が起こる直前だった。
家庭はボロボロ、学校にも行き場がなく、気が付けば中川君とも疎遠になってしまっていた。それはまあ自分のせいなので謝るしかないけど、そういう行き場のない時期にあんまりみんなが読んでなくて、明るすぎたり楽しすぎたりしなくて、ちょっとグロテスクだったりシュールだったりする漫画があったのはとても幸運なことだった。フツーにそういう漫画も読んでたけど、周囲にそれを見られると
「お前は俺たちと同じものなんか読むな見るな歌うな学校に来るな」
と色々言われるので(その原因は自分の方にあるのだけれど)まわりから理解されない方がかえって気楽だったし、何よりフツーに面白かった。
そういえば、ねこぢる先生の漫画も中川君から教わったんだった。近所のレンタル屋さんにアニメのビデオもあったし、本も大きいお店なら新品が手に入った。そしてそのすぐあとぐらいにねこぢる先生は亡くなってしまって、ガロも分裂事件が起きた。
そんな私の心の拠り所の一つだった漫画雑誌を実際に編集して、他にも様々な業務を行って全国に、そして私の手元にも届けてくれた人が残した一冊の本。
それがまさか、ネットで偶然見つけた面白い本を出したり、イベントを行ったり、遂には画廊まで立ち上げてしまった劇画狼さんの手によって世に生み出されるとは。運命とは面白いもので、そして残酷なものだった。
11章に差し掛かってからは、度々ページをめくる手が止まりました。あんまり辛くて、読んでいるこっちも一緒に戦っているような、最後の時を過ごしているような、静かでありながら圧倒的な力のこもったページの連なりでした。紙の本で、自分の手でそれを持って読み進めていくってことをこんなに思い知らされるなんて。
そんな11章の最後はたった三行でした。この三行に行き着くまでに、白取さんは様々な言葉を残してくれました。赤の他人同士である、生まれも育ちも何もかも違う男女が性愛を超えた愛情、真顔で生まれ変わってもまた一緒になろう、と言えるまで。可愛らしかったのは、他の人が白取さんを呼ぶときは
千夏雄
なのに、奥様は
ちかお
と呼んでいたこと。あったかくて柔らかい、ちょっとくすぐったいようなニュアンス。
そして、その別れから第12章へ。
もう挿絵で堪えていたものがあふれてきてしまった。
奥様であり漫画家・やまだ紫さんの作品を残そうと、さらには漫画と言うものの在り方、男の矜持と女性を愛する責任まで話は広がる。しかしそこには、自らも病を背負ってなお生きると腹をくくった一人の男がいた。
そんな生涯一編集者・白取千夏雄さんの前に一人の男が現れる。
それが第13章。
劇画狼さんだ。紆余曲折の末、白取さんに弟子が出来た。
ここだけはまるで昔のカンフー映画みたいに時に面白おかしくふざけあい、時に実務に関しては全くの素人であった劇画狼さんに編集魂を叩きこむ師弟の姿があって再びホッコリする。
私が劇画狼さんの存在を知ったのは中川ホメオパシー先生の
もっと!抱かれたい道場
だったから、まさか本当に全くの素人だったとは思いもよらなかった。
そうして編集魂を受け継いだ劇画狼さんの前から、そして現世から、白取さんが去っていった。
1000部でもいい本を作りまくれ!
と白取さんは言った。
その1000部のうちの一冊を自分も持っているということが、どれだけ誇らしかったか。
全然カンケーない赤の他人なのに、思わず白取さんに感謝の言葉を念じていた。
白取さん、僕が子供のころに大好きだった漫画雑誌や作品を世に送り出してくれてありがとう。
劇画狼さん、素晴らしい作品をいつもありがとう!
そしてさようなら、とは、もう言えない気がする。あなたがいなくなったら次の編集魂は、本を作って送り出す職人は誰なんですか。
モモモグラで一度だけ、ちょっとだけお会いできた劇画狼さんは白取さんの言う通り筋肉質でむちむちの、加えて言うならば背中のハリ、背筋のシルエットが非常に美しい人です。
でも逆に演技悪いこと言ってゲンを担ぐってこともあるか。
やっぱりさようなら!!!
そして中川ノリユキ君は、この本の事を知っているのだろうか。
あの頃、僕の友達になってくれたばっかりに、僕の理不尽や暴力に見舞われてしまった中川君。ごめんよ、あの時は本当にゴメン。
それで、いまこんな面白い本が出たんだ。知ってるかな。
君が僕に教えてくれた、ガロを作った人の本なんだ。
もしよかったら読んでごらんよ。凄く面白かった。泣けるよ。
僕の心の奥で閉じていたガロが、本棚にきちんと戻されたような。
そんな気がしました。
劇画狼さん、白取さん、ありがとうございました。
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