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第109回。ハヤシエリさんのマンガが届いたよ!
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掲載日2017年 05月24日 01時00分
私が創作荘に参加する少し前から応援している大阪のマンガ家さん、ハヤシエリさんの新作が届きました。
東京ラプソディーズ第3集。
思えば東京ラプソディーズ第1集をどこでどう知ったのか、そもそもハヤシエリさんをどこでどう知ったのか全然覚えていないから不思議なものではあるけど、今や私の本棚になくてはならない作品ばかりです。
第1集、第2集ともに何と言うかもう
そう言う風に生きていくしかない人たちの話
が、ぎゅっと詰め込まれていて。胸の扉を開けてしまうと、口を開いてしまうと、そこから心臓が飛び出してしまいそうな。
心の中にでっかいモリが突き刺さるような作品だったり、悲しくて悲しくて冷たい雨の中に放り出されたような気分になったり。
私が大好きな「おれたちはこいびとになれない」(第1集に収録)なんか、まんま自分の事にも重なって凄く読むのが辛かった。正直いまでも読むのに凄くパワーが要る。でも、思い出してしまう。
きっと書いたハヤシさんも凄くパワーを使ったんじゃなかろうか…。
なによりタイトルがいい。
デザイナーもやっているハヤシさんの名づけと、そのタイトルを並べるセンスが凄く好きだ。
シャンバラブルーに立つ、ブルーライトアンドロメダ、そして今回のメイン作品
「ボリビアニータの鉱脈」
ときた。
意味は分からないけど、とてもいい響きだ。
内容は一風変わった武器商人の群青と、そこに銃を求めてやってきたマチルダ改め路紅(ろぐ)ちゃん。
青と紅の、おばあちゃんの日記の意味はやがて明かされる。それとなく。
キャラの背景も、言葉の意味も、イチイチ説明しすぎないけどチラっと見えるのが巧いなあといつも思う。
ついつい、カッコいい事思いついたら言いたくなるし、わかってほしいし、伝わっててほしくて不安で仕方がない。だけどハヤシさんは、背中を向けてストロングゼロをあおっているだけ。
読めばわかるし、読んでわかる以上の事に意味などないのだ。
とでも言うように。
路紅ちゃんの悲痛な叫びは、女の子にしかわからないものなのかもしれない。
私が、こんな豚骨スープ満載のタンクローリーみたいな男なりに女性を傷つけたり、裏切ったりしてきたから余計に、そういうタチ悪い男のことが書かれていて耳の痛いことはあっても、女の子がそんな身勝手な男の影を踏みながらこんな風に泣いているのだとは思ってなかった。
男が目を逸らす都合の悪い現実、身も蓋も逃げ場もない日々の暮らしを突き付けられるような描写が沢山ある。この「ボリビアニータの鉱脈」で描かれているケースは少々変わってはいるものの、やはり根底にある乙女の叫びはいつ誰のものとも違わない。
こんな想いとどうやって生きていったらいいの、という気持ちは、私にも思い当たるフシがあるし、かつて散々ぱら私に言い寄られて困った人にも言える。
つまるところ人の気持ちなんて別世界の現象なのであって、それはこっちの都合などお構いなしに踏み込んでくるものなのかもしれないな…と今コレを書いていて、この冊子の最後の語りを思い出した。
ハヤシさんの絵は一つ一つがポスターみたいな力のこもった絵で、その中に言葉にし切れない何かが詰まっている。路紅ちゃんが嘔吐しながら、涙ながらに先生を見上げる場面の、あのくっしゃくしゃの顔がそれを物語っている。あの中に、いい思い出も、嫌悪感も、後悔も、全部入っている。
自分が楽になりたいだけ、10年後に謝っても何をしても遅い、ただ一時のすれ違いが生まれてしまっただけで、この傷を一生背負っていかなくちゃならなくなった哀しみ。
だけど、路紅ちゃんも最後は笑っていた。
傷や辛さや悲しみを、むやみやたらにひけらかさない。みせびらかさない。
最後の最後に、そういうタフさがあるから、ハヤシさんの生み出した人々はみんな愛おしくて頼もしくてちょっと儚いのかもしれない。
私はハヤシさんの書く男の子の、目つきが悪くてぼんやりした顔が大好きだ。
あれは痩せてて背が高くて二枚目でいい加減でお酒と女の子の誘惑に弱くて賭け事もたばこも好きで…そういう「ダメ男の才能」に恵まれた一握りの男しか持ちえない、破滅の魅力が詰まっている顔だ。
具体例を挙げるならば吉井和哉さんと、うちの親父こと佐藤輝之(さとうてるゆき)だ。
そしてそれは全部私の理想の男だ。キッドさんの本名が佐野なのに親父が佐藤なのを説明するのはまた今度だ。
自分がどうあがいても届かない、眩しいけどロクでもない男の世界がハヤシさんのマンガのもう一つの魅力だ。この作品に出てくる群青くんは最後の最後に
「油断も隙もねえな!」
と言われているから、やっぱり色々あるんだろうな(笑)執拗に路紅ちゃんのパンツを狙っていたし…。
傷つく人も、傷つける人も、ハヤシさんのマンガは平等である。
理由、欲求、幸せ、不幸、涙、血、セックス、色んなモノを経験している人たちが、そこで交わりすれ違う瞬間が積み重なって、全部のマンガの世界が繋がっているような、でもやっぱり「別世界」の出来事なんだなと思うような。
何でもかんでも無敵で説明過多で都合よく美しく面白おかしく物事が進まない。
でも理由もなく不幸や死が続くわけじゃない。
辛い思いをして、泣いて泣いて、最後に笑って。
今までのハヤシさんのマンガはパンクでありエモだった。
Hidden in plain view
とか
Jimmy Eat World
とか
Fightstar
あとFuneral for a Friendも。
ああいう激しくて切ない音楽が似合いそうで、それだけじゃないけど思たるイメージはそういう音だった。
でも今度のは、もう少ししっかりと聞かせる音楽に近づいた気がする。
これまでと変わらず、これまで以上に気持ちに刺さる話だけど、これまで以上に陰影を増した感じがします。私は漫画も小説も音楽も書き方やルールを知らず、好きに読み書きして聞いていただけだったけど。
最後の最後、優しい男の物語でちょっと肩の力を抜いて終わるところも、その向こうに残された日記も心憎い。
良いものを見たな、と思いました。
皆さんもよろしければ。
ハヤシエリさんのマンガ、読んでみて下さいな。
私が創作荘に参加する少し前から応援している大阪のマンガ家さん、ハヤシエリさんの新作が届きました。
東京ラプソディーズ第3集。
思えば東京ラプソディーズ第1集をどこでどう知ったのか、そもそもハヤシエリさんをどこでどう知ったのか全然覚えていないから不思議なものではあるけど、今や私の本棚になくてはならない作品ばかりです。
第1集、第2集ともに何と言うかもう
そう言う風に生きていくしかない人たちの話
が、ぎゅっと詰め込まれていて。胸の扉を開けてしまうと、口を開いてしまうと、そこから心臓が飛び出してしまいそうな。
心の中にでっかいモリが突き刺さるような作品だったり、悲しくて悲しくて冷たい雨の中に放り出されたような気分になったり。
私が大好きな「おれたちはこいびとになれない」(第1集に収録)なんか、まんま自分の事にも重なって凄く読むのが辛かった。正直いまでも読むのに凄くパワーが要る。でも、思い出してしまう。
きっと書いたハヤシさんも凄くパワーを使ったんじゃなかろうか…。
なによりタイトルがいい。
デザイナーもやっているハヤシさんの名づけと、そのタイトルを並べるセンスが凄く好きだ。
シャンバラブルーに立つ、ブルーライトアンドロメダ、そして今回のメイン作品
「ボリビアニータの鉱脈」
ときた。
意味は分からないけど、とてもいい響きだ。
内容は一風変わった武器商人の群青と、そこに銃を求めてやってきたマチルダ改め路紅(ろぐ)ちゃん。
青と紅の、おばあちゃんの日記の意味はやがて明かされる。それとなく。
キャラの背景も、言葉の意味も、イチイチ説明しすぎないけどチラっと見えるのが巧いなあといつも思う。
ついつい、カッコいい事思いついたら言いたくなるし、わかってほしいし、伝わっててほしくて不安で仕方がない。だけどハヤシさんは、背中を向けてストロングゼロをあおっているだけ。
読めばわかるし、読んでわかる以上の事に意味などないのだ。
とでも言うように。
路紅ちゃんの悲痛な叫びは、女の子にしかわからないものなのかもしれない。
私が、こんな豚骨スープ満載のタンクローリーみたいな男なりに女性を傷つけたり、裏切ったりしてきたから余計に、そういうタチ悪い男のことが書かれていて耳の痛いことはあっても、女の子がそんな身勝手な男の影を踏みながらこんな風に泣いているのだとは思ってなかった。
男が目を逸らす都合の悪い現実、身も蓋も逃げ場もない日々の暮らしを突き付けられるような描写が沢山ある。この「ボリビアニータの鉱脈」で描かれているケースは少々変わってはいるものの、やはり根底にある乙女の叫びはいつ誰のものとも違わない。
こんな想いとどうやって生きていったらいいの、という気持ちは、私にも思い当たるフシがあるし、かつて散々ぱら私に言い寄られて困った人にも言える。
つまるところ人の気持ちなんて別世界の現象なのであって、それはこっちの都合などお構いなしに踏み込んでくるものなのかもしれないな…と今コレを書いていて、この冊子の最後の語りを思い出した。
ハヤシさんの絵は一つ一つがポスターみたいな力のこもった絵で、その中に言葉にし切れない何かが詰まっている。路紅ちゃんが嘔吐しながら、涙ながらに先生を見上げる場面の、あのくっしゃくしゃの顔がそれを物語っている。あの中に、いい思い出も、嫌悪感も、後悔も、全部入っている。
自分が楽になりたいだけ、10年後に謝っても何をしても遅い、ただ一時のすれ違いが生まれてしまっただけで、この傷を一生背負っていかなくちゃならなくなった哀しみ。
だけど、路紅ちゃんも最後は笑っていた。
傷や辛さや悲しみを、むやみやたらにひけらかさない。みせびらかさない。
最後の最後に、そういうタフさがあるから、ハヤシさんの生み出した人々はみんな愛おしくて頼もしくてちょっと儚いのかもしれない。
私はハヤシさんの書く男の子の、目つきが悪くてぼんやりした顔が大好きだ。
あれは痩せてて背が高くて二枚目でいい加減でお酒と女の子の誘惑に弱くて賭け事もたばこも好きで…そういう「ダメ男の才能」に恵まれた一握りの男しか持ちえない、破滅の魅力が詰まっている顔だ。
具体例を挙げるならば吉井和哉さんと、うちの親父こと佐藤輝之(さとうてるゆき)だ。
そしてそれは全部私の理想の男だ。キッドさんの本名が佐野なのに親父が佐藤なのを説明するのはまた今度だ。
自分がどうあがいても届かない、眩しいけどロクでもない男の世界がハヤシさんのマンガのもう一つの魅力だ。この作品に出てくる群青くんは最後の最後に
「油断も隙もねえな!」
と言われているから、やっぱり色々あるんだろうな(笑)執拗に路紅ちゃんのパンツを狙っていたし…。
傷つく人も、傷つける人も、ハヤシさんのマンガは平等である。
理由、欲求、幸せ、不幸、涙、血、セックス、色んなモノを経験している人たちが、そこで交わりすれ違う瞬間が積み重なって、全部のマンガの世界が繋がっているような、でもやっぱり「別世界」の出来事なんだなと思うような。
何でもかんでも無敵で説明過多で都合よく美しく面白おかしく物事が進まない。
でも理由もなく不幸や死が続くわけじゃない。
辛い思いをして、泣いて泣いて、最後に笑って。
今までのハヤシさんのマンガはパンクでありエモだった。
Hidden in plain view
とか
Jimmy Eat World
とか
Fightstar
あとFuneral for a Friendも。
ああいう激しくて切ない音楽が似合いそうで、それだけじゃないけど思たるイメージはそういう音だった。
でも今度のは、もう少ししっかりと聞かせる音楽に近づいた気がする。
これまでと変わらず、これまで以上に気持ちに刺さる話だけど、これまで以上に陰影を増した感じがします。私は漫画も小説も音楽も書き方やルールを知らず、好きに読み書きして聞いていただけだったけど。
最後の最後、優しい男の物語でちょっと肩の力を抜いて終わるところも、その向こうに残された日記も心憎い。
良いものを見たな、と思いました。
皆さんもよろしければ。
ハヤシエリさんのマンガ、読んでみて下さいな。
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