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第14回。映画「大脱走」
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掲載日2017年 02月19日 19時40分
大脱走。
久しぶりにじっくりと映画を見ました。
いやあ良い映画だった。
出演者がスティーブ・マックイーンやらジェイムズ・コバーンやらチャールズ・ブロンソンと豪華絢爛。それでいてテンポが良く、大味にならない。
厳重な監視の中、様々な方法で脱走のための資材や情報などを集めてゆく前半。
トンネル掘りは順調で、独立記念日にはジャガイモでお酒を造って飲んでいた。
しかしその時、もっとも順調だったトンネル「トム」が発見されてしまう。
既に長年の収容所暮らしで精神が限界に達していたアイブスが狂ってしまう所なんかは、もう頭の中でやめろー!と叫んでしまいたくなるぐらいの名場面だった。
脱走に失敗し独房に放り込まれた時の、あの何とも言えない表情と目の光。良いキャラクターなんだよなあアイブス。
もう一人好きだったのはコリン。
偽造屋として長年目を酷使したせいで失明状態になってしまい、一時は脱走計画から外されそうになる。だけど、ヘンドリーが「俺が一緒なら彼は失明していない」と助ける。
そうして二人で一緒に脱走劇を繰り広げるわけだが、列車から飛び降りたり、飛行機を盗んで飛び立ったりとハラハラドキドキの連続。
ヘンドリーは典型的アメリカ人と言った感じのマッチョでイカつい男だが、根はやさしく機転が利くんだな。
最期は飛行機が墜落してしまい、コリンはドイツ兵に撃たれてヘンドリーの腕の中で息を引き取る。外に出られて良かった、ありがとう。という言葉を残して。
私はねえ、この二人には逃げ切ってほしかったんだよ。ほんと。
私の好きなチャールズ・ブロンソンも活躍してくれた。
閉所恐怖症を押し殺してトンネルを掘っていたが、度重なる落盤とアクシデントでその恐怖が蘇ってしまう。最後までダダをこねていたが親友のウィリーの助けにより無事脱走に成功する。
スティーブ・マックイーンは得意のバイクアクションで大暴れをするが、残念ながら捕まってしまう。彼が劇中で欠かさず持っていたグローブと野球ボール。
映画のラストは、このボールを壁に叩きつける音が響き渡る独房のカット。
また、逃げ出そうとするに違いない。
そう思わせる終わり方だ。
戦争、収容所、精神異常、脱走犯と陰惨極まりないテーマにもかかわらず、全体的な雰囲気はとても明るい。気のきいたセリフや序盤で早速繰り出される奇想天外な脱走術の数々も相まって娯楽大作ムードたっぷりと言ったところか。
今こういうアナログだった世界に触れると、とても新鮮な心持ちになるよな。
いつだったか現代版ホームズと言った青年がスマホを駆使して事件解決に当たるドラマを見たけど、本家ホームズは電報と手紙がメインで、電話さえようやく出たか出ないかだった。
この映画もそう。
電話や手紙はあるけど、今ほど機材の性能は高くない。
そこに隙があり味がある。
明るいだけじゃなく、予想だにしない悲劇も数多く巻き起こる。
脱走した70数名のうち50名以上が射殺され、10人以上が再び収容所送りとなる。
「大規模な脱走による後方攪乱」
という当初の作戦は成功と成るものの、犠牲もまた大きかった。
後半に繰り広げられるそれぞれの脱走劇などは、一人ずつ一本の映画に出来るぐらいの大ボリューム。これを当時スクリーンの前で見た人は幸せだ。
何がすごいって、これだけ頭数が居て長い映画なのに女性の登場人物が一人もいないという事だ。収容所だし軍人ばかりだからそれで良いのだが、これ今リメイクしたらどんな邪魔な女がしゃしゃり出てどんな余計な恋愛模様が繰り広げられるんだろう、と邪推してしまうぐらい、オトコだけで作ったオトコの映画に仕上がっている。
別に女性に関する映画は世の中にゴマンとあるのだから、これぐらい女っ気のない、しかし格段華やかな映画があったっていいと思うのだ。
ほんと、久しぶりに名作映画を見て満足いたしました。
大脱走。
久しぶりにじっくりと映画を見ました。
いやあ良い映画だった。
出演者がスティーブ・マックイーンやらジェイムズ・コバーンやらチャールズ・ブロンソンと豪華絢爛。それでいてテンポが良く、大味にならない。
厳重な監視の中、様々な方法で脱走のための資材や情報などを集めてゆく前半。
トンネル掘りは順調で、独立記念日にはジャガイモでお酒を造って飲んでいた。
しかしその時、もっとも順調だったトンネル「トム」が発見されてしまう。
既に長年の収容所暮らしで精神が限界に達していたアイブスが狂ってしまう所なんかは、もう頭の中でやめろー!と叫んでしまいたくなるぐらいの名場面だった。
脱走に失敗し独房に放り込まれた時の、あの何とも言えない表情と目の光。良いキャラクターなんだよなあアイブス。
もう一人好きだったのはコリン。
偽造屋として長年目を酷使したせいで失明状態になってしまい、一時は脱走計画から外されそうになる。だけど、ヘンドリーが「俺が一緒なら彼は失明していない」と助ける。
そうして二人で一緒に脱走劇を繰り広げるわけだが、列車から飛び降りたり、飛行機を盗んで飛び立ったりとハラハラドキドキの連続。
ヘンドリーは典型的アメリカ人と言った感じのマッチョでイカつい男だが、根はやさしく機転が利くんだな。
最期は飛行機が墜落してしまい、コリンはドイツ兵に撃たれてヘンドリーの腕の中で息を引き取る。外に出られて良かった、ありがとう。という言葉を残して。
私はねえ、この二人には逃げ切ってほしかったんだよ。ほんと。
私の好きなチャールズ・ブロンソンも活躍してくれた。
閉所恐怖症を押し殺してトンネルを掘っていたが、度重なる落盤とアクシデントでその恐怖が蘇ってしまう。最後までダダをこねていたが親友のウィリーの助けにより無事脱走に成功する。
スティーブ・マックイーンは得意のバイクアクションで大暴れをするが、残念ながら捕まってしまう。彼が劇中で欠かさず持っていたグローブと野球ボール。
映画のラストは、このボールを壁に叩きつける音が響き渡る独房のカット。
また、逃げ出そうとするに違いない。
そう思わせる終わり方だ。
戦争、収容所、精神異常、脱走犯と陰惨極まりないテーマにもかかわらず、全体的な雰囲気はとても明るい。気のきいたセリフや序盤で早速繰り出される奇想天外な脱走術の数々も相まって娯楽大作ムードたっぷりと言ったところか。
今こういうアナログだった世界に触れると、とても新鮮な心持ちになるよな。
いつだったか現代版ホームズと言った青年がスマホを駆使して事件解決に当たるドラマを見たけど、本家ホームズは電報と手紙がメインで、電話さえようやく出たか出ないかだった。
この映画もそう。
電話や手紙はあるけど、今ほど機材の性能は高くない。
そこに隙があり味がある。
明るいだけじゃなく、予想だにしない悲劇も数多く巻き起こる。
脱走した70数名のうち50名以上が射殺され、10人以上が再び収容所送りとなる。
「大規模な脱走による後方攪乱」
という当初の作戦は成功と成るものの、犠牲もまた大きかった。
後半に繰り広げられるそれぞれの脱走劇などは、一人ずつ一本の映画に出来るぐらいの大ボリューム。これを当時スクリーンの前で見た人は幸せだ。
何がすごいって、これだけ頭数が居て長い映画なのに女性の登場人物が一人もいないという事だ。収容所だし軍人ばかりだからそれで良いのだが、これ今リメイクしたらどんな邪魔な女がしゃしゃり出てどんな余計な恋愛模様が繰り広げられるんだろう、と邪推してしまうぐらい、オトコだけで作ったオトコの映画に仕上がっている。
別に女性に関する映画は世の中にゴマンとあるのだから、これぐらい女っ気のない、しかし格段華やかな映画があったっていいと思うのだ。
ほんと、久しぶりに名作映画を見て満足いたしました。
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