上 下
6 / 117
第一章

1-5 お調子者

しおりを挟む
 高紫市たかむらさきしという駅に到着した三人が改札を出ると、ピンクブロンドの髪を無造作に括り、柄シャツ短パンという派手な格好の男が手を上げながら近づいてきた。雨都うと梢賢しょうけんである。以前会った時はただの金髪だったが、さらに派手に染めてきた様子に、三人は面食らった。
 
「おおーい、こっちや!」
 
「おお……」
 
 はるか蕾生らいおはこのチンピラの風体に引きながらも向かっていったが、鈴心すずねは些かの嫌悪感を抱き、自然と歩みが遅くなった。
 
「いやー長旅お疲れさん!やっと来てくれて嬉しいわあ」
 
「はあ、どうも……」
 
 馴れ馴れしく永の両手を握って歓待を示す姿は、親愛を表してくれているように見えなくもない。永は愛想笑いで一定の心の距離を保とうとした。
 
「ライオンくんもありがとなあ」
 
「ライオンじゃない、蕾生だ」
 
 蕾生が少し憮然となって訂正すると、梢賢は一際明るい声で蕾生の背中を叩きながら笑った。
 
「あだ名やん!どうせ地元でもそう呼ばれとるんやろ?」
 
「──あだ名で呼ばれたことはない」
 
「えっ!ああ……ごめんな、寂しい子やったんやねえ、堪忍やで」
 
 蕾生がさらに不機嫌になって答えると、梢賢は大袈裟に後ずさって、急にしんみりした態度になった。が、どう見てもおちょくっているようだった。
 
「永、こいつ殴りたい」
 
「ダメダメ、死んじゃうでしょ!」
 
「大人になりなさい、ライ」
 
 常人ならざる怪力を持つ蕾生に殴られたら、おそらくこのチンピラはひとたまりもない。永も鈴心も焦って止めに入った。もちろん冗談ではあるけれど。
 
「なんか物騒な話してんね……。ま、まあええわ!ハル坊にライオンくん、それから──」
 
 身の危険を感じた梢賢は慌てて話題を変えようと鈴心に向き直った。
 
御堂みどう鈴心すずねです」
 
「おっ、ちいこいのに礼儀正しいお嬢ちゃんやね。よろしゅうな、鈴心ちゃん」
 
 あきらかに男女で呼び名の差をつける様は、かえって清々しくもあるなと永は思った。
 
「坊、とか呼ぶけど、あんた幾つなんだ?」
 
 だが蕾生の方は、永を子ども扱いされて面白くない。そんな感情を素直に態度に出すと、梢賢はまた大袈裟な手振りで言った。
 
「ええー?見た目によらず細かいこと気にするなあ、ライオンくんは。まあええ、オレは十九歳!大学一年生や!」
 
「──そっスか」
 
 思っていたよりも年齢差があって、蕾生は意気消沈するしかなかった。
 
「おお?年上だって認めてくれたんやねえ!素直な子は好きやでえ!」
 
 そんな蕾生の白旗を敏感に感じ取って子ども扱いに拍車をかける梢賢に、また殴りたい衝動に駆られる。
 
「ライくん、ステイ、ステーイ!」







===============================
お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...