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3-D 食わず嫌い男子×3-B 世話好き男子
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食わず嫌い男子 瀬田 ナルミ
世話好き男子 飯塚 リョウ
☆知らず知らずのうちに、友達を餌付けしてました!
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昼休みのチャイムが鳴った。
リョウが階段を駆け上がり屋上に向かうと、すでにナルミの姿があった。
「おせえ!」
フェンス前。陽の当たるいつもの場所。
ふんぞり返って胡座をかいているナルミを見下ろして、リョウは言った。
「お前が早過ぎるんだ! チャイムが鳴ってすぐに来たんだぞ。まさか、お前、サボったりしてないよな?」
「チッ、バレたか」
悪びれずに言うナルミに、リョウの蹴りによる制裁が飛んだ。
「おーまーえーはぁ! 授業サボるなってあれほど言ってんのに! もう高三だぞ、ちゃんとしろ!」
「だぁってえ、腹減ってよ、授業なんて頭に入らねえんだもん」
その言い訳に、リョウは肩で息を吐いた。
「朝メシくらい、ちゃんと食えよ……」
「母ちゃんがサァ、メシ炊かずに寝ちまうんだ。そんで全然起きてこねえ」
「おばさんのせいにするな! 米の研ぎ方とタイマーのかけ方は教えただろ!」
リョウの声が屋上に響き渡る。ここが誰も来ない場所で良かった。
しかしナルミは全く意に介さず、小指で耳をほじりながら面倒くさそうに言った。
「うるせえなあ、さっさと弁当出せよ」
「お弁当ください、飯塚様だろぉ!」
「へえへえ、飯塚オカン、弁当ちょーだい」
全く反省しないナルミの顔面に、リョウは持ってきた弁当のうちのひとつをグリグリとこすりつけた。
「むっ、ほっ、ひひにほひはふふ(イイ匂いがする)……」
鼻声だが、うっとりして喜んでいるナルミの反応を見ると、リョウは今までの怒りがどうでもよくなった。
それでやっとリョウはナルミの隣に座る。
「わお! 今日は切り干し大根じゃねえか!」
もらった弁当のフタを開けて弾んだ声を出すナルミに、リョウは呆れて応えた。
「切り干し大根はメインじゃねえよ。唐揚げが見えないのか?」
「バッカ、お前! 切り干し大根だけで白米が何杯食えると思うよ? さらに唐揚げが控えてるとか、祭か? 今日は?」
「ったく、お前は大袈裟だなあ」
言いながらリョウはまんざらでもない。ナルミがこうして野菜が好きになったのも、自分の努力の賜物だと誇らしくなる。
一年前は、野菜のやの字も口にしなかったのだから。
ナルミと出会ったのは、二年生の頃。場所はこの屋上。
その日、リョウは自分の弁当が恥ずかしくなって教室を逃げ出した。
リョウには母親がいない。父親は海外を飛び回る商社マンで、家に帰らないこともある。
年の離れた妹の面倒と、家事全般はリョウの仕事だった。
父がまあまあ高給取りなので、洗濯はたまにコインランドリーで済ませるし、掃除は週に一回ハウスキーパーが来てくれる。
だが食事だけはそうもいかなかった。家計費に余裕があるから出前をとってもいいのだけれど、育ち盛りの妹の栄養を偏らせるわけにはいかない。
リョウは独学で料理を学び、就学前の妹のためにバランスのとれた食事を作っていた。
その延長上に、弁当作りがある。保育園に行く妹のために、高校に入ってからは自分にも。
最初の一年間は彩りと見映えのいい弁当を作って高校に持っていった。
通っている金犀学園は学生寮もある男子校で、生徒の食事事情はまあ悲惨なものではあった。
クラスメイトは欲望のままにパンだの肉だのを食べる。その中で、綺麗な弁当を持ってくるリョウはクラスでは羨望の眼差しを受けた。
それが、リョウの自尊心を高めてもいたのだ。
事情が変わったのは二年生に上がった時。ついに妹も小学校に通う年になった。
リョウ自慢の弁当を持って保育園に行っていた妹が、給食を食べるようになったのである。リョウの弁当はそこで意義を失った。
弁当を作らなくてもよくなり、朝も忙しくなくなったリョウの心に脱力が生まれてしまった。
自分だけのために気張った弁当を作る気力がなくなってしまったのだ。
リョウは昨夜と朝の残りを適当に弁当につめて、適当に握ったおむすびを持って登校した。
いざ、昼休み。リョウは机の上に弁当を広げるのが怖くなった。
それまで羨望の眼差しを受けていたリョウの七色弁当はそこにはない。
気づいたら、リョウは弁当を持って教室を飛び出していた。
どこをどう走ったか覚えていないが、リョウは屋上の入口まで来ていた。
立入禁止のはずのその扉が、少し開いていた。そこなら誰も来ないと思って、リョウは迷わず屋上に足を踏み入れた。
そこでリョウが見たのは、惣菜パンや菓子パンを大量に持ち込んで、まるで牛のエサのようにそれを食べまくっているナルミの姿だった。
「……ふぁ? はんは、おふぁふぇ(なんだ、お前)」
「──は?」
パンを咥えながら言う間抜けな姿に、リョウは呆気に取られてしまった。
「ごくっ。お前、何入ってんだよ、立入禁止だぞ」
大量のパンを飲み込んでから、そう言うナルミの風貌はだらしない不良のようだった。
「ド、ドアが開いてたんだ! キミだって入ってるじゃないか」
「俺はいーんだよ、いつものことだ」
あ。こいつはルールを無視する不良なんだ、とリョウは思った。
立ったままのリョウを見上げて、ナルミはリョウが抱えている弁当を指さしながら言った。
「お前もメシ食いに来たのか」
「あ、うん……」
「チッ、しゃあねえな。黙っててやるから、その辺で食っていいぜ」
何なんだ、こいつは。まるでここが自分の領域のような物言い。
あ、でも、不良は確かに縄張り意識が強そう。
変なところで納得したリョウは、昼休み時間も残り少ないことだし、ナルミから少し離れて座って、弁当を広げた。
「……なんだ、お前の弁当、茶色いな」
しかし一瞬で距離をつめたナルミは、リョウの肩に手をかけてその弁当を覗き込んだ。
「み、見るなよ!」
最悪だ。あんなに映える弁当を作っていたオレが、そんな評価をされるなんて。
リョウは泣きたくなってしまった。
「なんで? すげえイイ匂いするじゃん、ウマそう」
「え……」
リョウは驚いた。
自分の弁当は、今までは「綺麗だね」とか「可愛いね」としか言われてこなかった。
「美味しそう」だとは、初めて言われた気がする。
「まあね。オレが作るものがマズイわけないじゃん……」
照れ隠しで、リョウは悪態をつきながら弁当を食べ進める。
「へえ、お前、自分で弁当作ってんのか」
「うん、まあ……」
「そりゃすげえや、ウチは母ちゃんも俺も料理できねえからさ。メシはいつも散々なもんだ」
図々しく隣に座り込んで、ナルミは聞いてもいないのに喋り続ける。
「父ちゃんがいねえからさ、母ちゃんは夜勤の仕事でよ。朝は起きれねえから、朝メシねえしな」
「ええ!?」
リョウは仰け反るほど驚いた。栄養管理が趣味のような自分には考えられないことだった。
「だからさ、昼メシは購買でパンをしこたま買って食うんだ。午前中はマジ貧血で死ぬかと思うぜ」
はっはは、と笑いながら言うナルミに、リョウは思わず怒鳴っていた。
「朝ご飯を食べずに、昼は菓子パンをドカ食い!? ふざけてるのか、キミは!!」
そんなリョウの剣幕に、ナルミも少し怯んで言い返す。
「な、なんだよ。別にいいだろ」
「良くない! 無理ぃ! そんな破茶滅茶な食生活、絶対無理ぃいい!」
「お前、落ち着けよ……」
これが落ち着いていられるか。目の前の、栄養のなんたるかも知らない男。
なのにヘラヘラ笑ってる。リョウはそれに心底ムカついた。
「もういい、わかった! キミには明日からオレが弁当作ってきてやる! その歪んだ食生活、叩き直してやるからな!」
今思えば、とんだお節介だった。
なのに、ナルミはそれを嬉々として受け入れた。
「え、マジ? いいの? ハンバーグ入れてくれよ、唐揚げもいいなあ」
「いいとも! このオレが栄養満点の弁当を作ってやろう!」
「やったあ! あ、でも野菜いらねえ。嫌いだから」
その発言が、リョウの心にますます火をつけた。
「ふ、ざ、け、る、な! 野菜を食べないヤツは死んでしまえ! ついでにキミの食わず嫌いも全部直してやる!」
「お、おお……」
「オレは二年の飯塚リョウ! キミは!?」
「瀬田ナルミ……二年」
こうしてリョウは新たな自己顕示欲を満たしてくれる存在を手に入れた。
そんな風に屋上で始まった奇妙な出会いから、一年が経とうとしている。
「あー、うめえ! 切り干しサイコー。もっと切り干し大根に場所とってくれよ」
リョウの手製の弁当をかっこみながら、ナルミは上機嫌で言った。
「あのなあ、ちゃんとよく噛んで食べろ。野菜の量はそれがベストだ、タンパク質もちゃんと取らないとダメなんだぞ」
リョウがそう言い返すと、ナルミは箸で切り干し大根を摘んだまま、さらに言い返す。
「わかってるけどさあ、俺を野菜の道に引きずり込んだのはお前だろ。責任とってくんねえと」
「怪しい言い方をするな! それに濃い味付けした野菜しか未だに食べないくせに、生意気言うな」
「ええー」
少し不貞腐れながらも、弁当を食べる手が止まらないナルミの様子を、リョウは満足して眺める。
白米に合うように味付けされたもの限定とは言え、よくぞここまで野菜を食べるようになったと、リョウは自分の功績に酔いしれた。
「ほら、今夜のおかず」
リョウが更に取り出したいくつかのタッパーを見て、ナルミは弾んだ声を出した。
「今日はナニ?」
「きんぴらゴボウと、生姜焼き。それからコールスロー」
「うひょー! 今夜も祭じゃあん!」
リョウにすれば大したことないラインナップだが、ナルミは両手をあげて喜んだ。
とても、自尊心が刺激される。
「ちゃんとご飯炊いて食べろよ。それからインスタントでいいから味噌汁も飲め」
「うんうん、わかってる。悪いな、母ちゃんの分まで作ってもらっちゃって」
二人分のおかずが入っている特大タッパーを、ウキウキして見ながらナルミは笑っていた。
「気にすんなよ。業務スーパーで安く大量に食材買ってるからさ」
リョウがそう答えると、ナルミは少し躊躇いながら何かを言おうとしていた。
「あ、あのさ、リョウ……」
「うん?」
「実はさ、ウチの母ちゃん、今度夜勤から日勤になったんだ」
「そうなの? 良かったね!」
昼夜逆転で働いているナルミの母のことはリョウも心配していた。
だからこそ、二人分の完璧なおかずを作って支えていたつもりだ。
朝ちゃんと起きて、ご飯が食べられる生活になることはかなりの朗報だ。
「そしたら、母ちゃん、ヤケに張り切っちまって。これからは俺に弁当も作るし、夕飯だってきちんと作るって言い出して……」
「え……」
リョウはその言葉に体の力が抜けた。
親が食事を作れるようになったのは、本当に喜ばしいことなのに。
リョウの心には突然穴が開いて、冷たい風が吹き抜けるようだった。
「今までロクに料理したことねえんだから、無理すんなよって言ったんだけどさ。でも母ちゃんがやる気を出したなら、どこまでやれるかわかんねえけど、見守ってやりてえなって思ってさ」
「うん……そうだね。ナルミだって、ご飯炊くくらいは出来るしね……」
泣きそうだ。
お門違いは充分わかっているのに。
自分の「役目」を取られて、リョウは視界が暗くなってしまった。
「で、でもさ!」
明らかに意気消沈したリョウを見て、ナルミは慌てる。
「俺はリョウの弁当が好きなんだよ、これからも食べたいって思ってる。母ちゃんだって急に毎食用意するなんて絶対無理だ!」
「うん……?」
早口のナルミの言葉は、ショックも相まってリョウにはよく聞こえなかった。首を傾げていると、ナルミは耳まで真っ赤にして言った。
「だ、だからぁ! 母ちゃんには、昼メシはいらねえって言った。リョウに弁当作ってもらうからって!」
「え──」
まだオレは、必要とされている?
そんな期待を込めた目で、リョウはナルミを見る。
「勝手に決めて悪いとは思うけど……それでいいだろ?」
「オレ、まだお前に弁当作って……いいの?」
「俺はお前の弁当じゃないとヤなんだよっ!」
照れながら言うナルミの顔が、リョウにはとても愛おしかった。
「うん! 良かった」
ナルミに必要とされていることが、こんなにも嬉しい。
「……あのさあ」
「ん?」
ふと、ナルミの顔が近づいた。その目は熱っぽくリョウを見つめている。
「俺がお前の弁当が好きなのは、お前のことが好きだから。なんだけど?」
「えっ……」
ナルミの指が、リョウの頬を撫でた。
リョウは視線で縫い留められて動けなくなる。
心臓が、とてつもなく早く動き始めた。
「ここに引きずり込んだのはお前なんだから、お前が責任とってくれるんだよな?」
「え、あ……」
「俺が本当に食べたいのは、お前なんだよ」
そう言いながら、ナルミはリョウに口付けた。
「あ、ふ……っ」
唇を何度も喰まれて、リョウは体の力が抜けていく。
そんな願望はあった。
ナルミに、弁当じゃなくて自分を食べて欲しいって。
「ん、うぅ……」
ナルミの舌が、リョウの舌と絡められる。
食べたい、と宣言した通り、ナルミはリョウの呼吸まで飲み込んだ。
「あ……ん、ナル、ミ……」
リョウの下腹部をまさぐって、ナルミは「ああ、腹、減ったな」と微笑んだ。
「今日の昼メシは、お前だ……」
青空の下、ランチタイムを延長した二人は午後の授業をサボってしまった。
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☆ BONUS TRACK ☆
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「ん……う、ふっ……」
ナルミのキスは温かく、リョウはそれを受けながら頭が蕩けていく。
体に力が入らなくて、ナルミの背に両手を回し懸命に抱きついた。
「あっ……」
ナルミの唇はリョウの顎をなぞった後、首筋を這う。
ちゅっと吸い上げる音が、リョウの体をいっそう震わせた。
「やっ、ダメ……」
リョウのブレザーをあっという間に剥ぎ、襟とネクタイをナルミの手が緩める。
そのまま鎖骨に吸いついてくる彼に、リョウはみじろいで甘い声を漏らした。
「あ、ん……」
「言っただろ? 今日の俺の昼メシはお前だ……って」
ナルミはフェンスにリョウの背中を押しつけて、シャツのボタンを外していった。
露わになったリョウの肌は、少し冷たい風に触れて、ピクンと震える。
「や、待って……こんな、トコで……」
数分前は弁当を食べながらふざけ合っていたのに、急に牙を剥いたナルミの雄にリョウは混乱していた。
「待たない。ずっとお前が食べたかった」
ナルミはリョウの胸に熱い指を這わせ、勃ち始めている胸の突起をキュッと摘んだ。
「アッ……!」
そこを弄びながら、ナルミはリョウの首筋に歯を立てる。
本当に食べられる、とリョウは実感して歓喜に震えた。
「あ、あ……ナルミ……好きぃ」
こんな風にされるのを、ずっと待っていたのかもしれない。
自分の体の隅々を弄るナルミの手を受け入れるリョウは、ナルミの制服の端をぎゅっと握った。
「すげえ、うまい……リョウ」
「あっ、ああ……っ!」
乳首に吸いつき、舌で転がしながら、ナルミはリョウをじっくり味わっていく。
ついにはリョウのベルトも緩め、制服のズボンをずり下げた。
その中には、固く主張し始めたリョウ自身が布の向こうで窮屈そうにしている。
「や、やだあ……見ちゃ、ダメぇ……」
「なんで? すげえうまそうじゃん……」
ナルミは舌をペロと出して、リョウの腰に手を回す。
するとゾクゾクとリョウは腰を震わせた。
「ああん……っ!」
丁寧にその布を取り除けば、しとどに濡れたリョウ自身がそこで可愛らしく震えていた。
「やば……」
ナルミは荒い息とともに、己もズボンを緩めて猛ったそれを取り出す。
「あ、すご……」
まさかこんな風に友達のモノを見ることになるとは。リョウもそれから目が離せなくなった。
「一緒に擦ろうぜ」
「え、ちょ、待っ……」
「お前は俺の肩に手を回せよ」
「あ、うん……」
リョウは言われるままにナルミの肩に両腕を回す。密着した肌が擦れて、それだけでリョウはまた腰を震わせた。
ナルミは己自身とリョウを握って、擦り始めた。グチュ、と卑猥な音が二人の耳にこだまする。
「あっ、あ……っ!」
擦られる感触が気持ち良すぎて、リョウは声が止まらなかった。
熱い吐息をナルミの耳に吹きかける。
「お前、すげえエロイ声出すじゃん……」
「だって、あ、すご……っ! あっ、ん!」
ナルミに握られ、弄られている。そんな事実と感触が、リョウをどんどんと昂めていった。
そしてその熱に呼応するように、ナルミの指遣いは激しくなっていく。
「あっ! ダメ、出ちゃう! ナルミ……ィ!」
「お前、マジやばい……ッ、可愛すぎだろ……」
「んんぅ、ふぅ……んっ!」
大きく口を開けて、噛みつくようなキスがリョウに与えられた。
下半身を弄られながら、舌に歯を立てられて、リョウはその刺激で熱い汁を吐き出した。
「ン──! ふぅ……ううんっ」
ビクビクと腰が震え、リョウはもちろん、ナルミのモノもその体液で濡らす。
触れているナルミは、さらに固く、熱くなっていった。
「先にイクなよ……ったく」
「あ、ごめ……」
ずぶ濡れになったお互いの下半身を見て、リョウが言いかけた言葉をナルミはキスで塞いだ。
「んぅ……」
甘くて、蕩けてしまう。リョウはもう、何も考えられなくなっていた。
「リョウ……ちょっと、向こうむけよ」
「え、あ……やっ……!」
ナルミはリョウをフェンスに捕まらせ、後ろからリョウの腰を持った。
「やだ……! 恥ずかしい……ッ!」
空に向かって下半身を放り出しているようで、リョウは羞恥に震える。
それなのに、またリョウ自身は熱くなっていた。
「男同士ってさ、ここ、使うんだろ……?」
言いながらナルミはリョウの尻を少し広げて、その奥に触れる。
「ああっ! ダメェ! 怖いよ……」
リョウの腰は緊張を帯びて、その奥をキュッと締めてしまった。心臓が跳ね上がる。
「わかってるよ、今日はそこまでしねえ。でもさ……」
言いながら、ナルミは猛り続ける自身を、リョウの尻に擦りつけた。
熱くて硬い感触が、リョウの後ろにあてがわれて、興奮で悶える。
「ああ……っ、あ、あ……」
「ここで、擦らせてくれよ……」
「ひあっ、はっ、ああ……ッ!」
腰を両手で支えられて、ナルミのモノを尻に擦り付けられながら揺すられる。
セックスしているのと同じような感覚に、リョウの胸は打ち震えていた。
「あ、ああっ! ナル、ナルミィ……!」
「リョウ……すげ、いい……ッ!」
「あっ! ああ、ああんっ」
尻に当たる熱さと、濡れた感覚。リョウ自身もまた、勢いよく反って、ナルミからの揺さぶりに応えていた。
「あ、ああ、また、イク……ッ!」
「俺も、イク……」
ナルミは腰を振りながら、リョウの前に手を伸ばしてそれを握った。
「あああ、ダメェ、もうイッちゃう!」
「リョウ……ッ!」
ナルミは解放される直前、リョウのうなじを齧った。
「はぁああ……ッ」
その刺激でリョウはまた熱く吐き出し、ナルミもまた締まるリョウの尻の間で果てた。
「あ、あ……ん……」
「はっ、はぁ……リョウ……」
弛緩していくリョウの体を、ナルミがきつく抱き留める。
その温もりが、気が遠くなるほど気持ち良かった。
「ナルミ……」
涙で瞳を滲ませながら、リョウはナルミを振り返った。
「次は、ちゃんと挿れるからな……」
にやりと笑う顔は、ふざけ合っていた友達のものでは、もうなかった。
「バカァ……」
好きが溢れて、リョウの後ろはキュンと震えていた。
「ごちそーさん……」
またランチタイムしような。
そんな囁きがリョウの耳に、いつまでも響いていた。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
世話好き男子 飯塚 リョウ
☆知らず知らずのうちに、友達を餌付けしてました!
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昼休みのチャイムが鳴った。
リョウが階段を駆け上がり屋上に向かうと、すでにナルミの姿があった。
「おせえ!」
フェンス前。陽の当たるいつもの場所。
ふんぞり返って胡座をかいているナルミを見下ろして、リョウは言った。
「お前が早過ぎるんだ! チャイムが鳴ってすぐに来たんだぞ。まさか、お前、サボったりしてないよな?」
「チッ、バレたか」
悪びれずに言うナルミに、リョウの蹴りによる制裁が飛んだ。
「おーまーえーはぁ! 授業サボるなってあれほど言ってんのに! もう高三だぞ、ちゃんとしろ!」
「だぁってえ、腹減ってよ、授業なんて頭に入らねえんだもん」
その言い訳に、リョウは肩で息を吐いた。
「朝メシくらい、ちゃんと食えよ……」
「母ちゃんがサァ、メシ炊かずに寝ちまうんだ。そんで全然起きてこねえ」
「おばさんのせいにするな! 米の研ぎ方とタイマーのかけ方は教えただろ!」
リョウの声が屋上に響き渡る。ここが誰も来ない場所で良かった。
しかしナルミは全く意に介さず、小指で耳をほじりながら面倒くさそうに言った。
「うるせえなあ、さっさと弁当出せよ」
「お弁当ください、飯塚様だろぉ!」
「へえへえ、飯塚オカン、弁当ちょーだい」
全く反省しないナルミの顔面に、リョウは持ってきた弁当のうちのひとつをグリグリとこすりつけた。
「むっ、ほっ、ひひにほひはふふ(イイ匂いがする)……」
鼻声だが、うっとりして喜んでいるナルミの反応を見ると、リョウは今までの怒りがどうでもよくなった。
それでやっとリョウはナルミの隣に座る。
「わお! 今日は切り干し大根じゃねえか!」
もらった弁当のフタを開けて弾んだ声を出すナルミに、リョウは呆れて応えた。
「切り干し大根はメインじゃねえよ。唐揚げが見えないのか?」
「バッカ、お前! 切り干し大根だけで白米が何杯食えると思うよ? さらに唐揚げが控えてるとか、祭か? 今日は?」
「ったく、お前は大袈裟だなあ」
言いながらリョウはまんざらでもない。ナルミがこうして野菜が好きになったのも、自分の努力の賜物だと誇らしくなる。
一年前は、野菜のやの字も口にしなかったのだから。
ナルミと出会ったのは、二年生の頃。場所はこの屋上。
その日、リョウは自分の弁当が恥ずかしくなって教室を逃げ出した。
リョウには母親がいない。父親は海外を飛び回る商社マンで、家に帰らないこともある。
年の離れた妹の面倒と、家事全般はリョウの仕事だった。
父がまあまあ高給取りなので、洗濯はたまにコインランドリーで済ませるし、掃除は週に一回ハウスキーパーが来てくれる。
だが食事だけはそうもいかなかった。家計費に余裕があるから出前をとってもいいのだけれど、育ち盛りの妹の栄養を偏らせるわけにはいかない。
リョウは独学で料理を学び、就学前の妹のためにバランスのとれた食事を作っていた。
その延長上に、弁当作りがある。保育園に行く妹のために、高校に入ってからは自分にも。
最初の一年間は彩りと見映えのいい弁当を作って高校に持っていった。
通っている金犀学園は学生寮もある男子校で、生徒の食事事情はまあ悲惨なものではあった。
クラスメイトは欲望のままにパンだの肉だのを食べる。その中で、綺麗な弁当を持ってくるリョウはクラスでは羨望の眼差しを受けた。
それが、リョウの自尊心を高めてもいたのだ。
事情が変わったのは二年生に上がった時。ついに妹も小学校に通う年になった。
リョウ自慢の弁当を持って保育園に行っていた妹が、給食を食べるようになったのである。リョウの弁当はそこで意義を失った。
弁当を作らなくてもよくなり、朝も忙しくなくなったリョウの心に脱力が生まれてしまった。
自分だけのために気張った弁当を作る気力がなくなってしまったのだ。
リョウは昨夜と朝の残りを適当に弁当につめて、適当に握ったおむすびを持って登校した。
いざ、昼休み。リョウは机の上に弁当を広げるのが怖くなった。
それまで羨望の眼差しを受けていたリョウの七色弁当はそこにはない。
気づいたら、リョウは弁当を持って教室を飛び出していた。
どこをどう走ったか覚えていないが、リョウは屋上の入口まで来ていた。
立入禁止のはずのその扉が、少し開いていた。そこなら誰も来ないと思って、リョウは迷わず屋上に足を踏み入れた。
そこでリョウが見たのは、惣菜パンや菓子パンを大量に持ち込んで、まるで牛のエサのようにそれを食べまくっているナルミの姿だった。
「……ふぁ? はんは、おふぁふぇ(なんだ、お前)」
「──は?」
パンを咥えながら言う間抜けな姿に、リョウは呆気に取られてしまった。
「ごくっ。お前、何入ってんだよ、立入禁止だぞ」
大量のパンを飲み込んでから、そう言うナルミの風貌はだらしない不良のようだった。
「ド、ドアが開いてたんだ! キミだって入ってるじゃないか」
「俺はいーんだよ、いつものことだ」
あ。こいつはルールを無視する不良なんだ、とリョウは思った。
立ったままのリョウを見上げて、ナルミはリョウが抱えている弁当を指さしながら言った。
「お前もメシ食いに来たのか」
「あ、うん……」
「チッ、しゃあねえな。黙っててやるから、その辺で食っていいぜ」
何なんだ、こいつは。まるでここが自分の領域のような物言い。
あ、でも、不良は確かに縄張り意識が強そう。
変なところで納得したリョウは、昼休み時間も残り少ないことだし、ナルミから少し離れて座って、弁当を広げた。
「……なんだ、お前の弁当、茶色いな」
しかし一瞬で距離をつめたナルミは、リョウの肩に手をかけてその弁当を覗き込んだ。
「み、見るなよ!」
最悪だ。あんなに映える弁当を作っていたオレが、そんな評価をされるなんて。
リョウは泣きたくなってしまった。
「なんで? すげえイイ匂いするじゃん、ウマそう」
「え……」
リョウは驚いた。
自分の弁当は、今までは「綺麗だね」とか「可愛いね」としか言われてこなかった。
「美味しそう」だとは、初めて言われた気がする。
「まあね。オレが作るものがマズイわけないじゃん……」
照れ隠しで、リョウは悪態をつきながら弁当を食べ進める。
「へえ、お前、自分で弁当作ってんのか」
「うん、まあ……」
「そりゃすげえや、ウチは母ちゃんも俺も料理できねえからさ。メシはいつも散々なもんだ」
図々しく隣に座り込んで、ナルミは聞いてもいないのに喋り続ける。
「父ちゃんがいねえからさ、母ちゃんは夜勤の仕事でよ。朝は起きれねえから、朝メシねえしな」
「ええ!?」
リョウは仰け反るほど驚いた。栄養管理が趣味のような自分には考えられないことだった。
「だからさ、昼メシは購買でパンをしこたま買って食うんだ。午前中はマジ貧血で死ぬかと思うぜ」
はっはは、と笑いながら言うナルミに、リョウは思わず怒鳴っていた。
「朝ご飯を食べずに、昼は菓子パンをドカ食い!? ふざけてるのか、キミは!!」
そんなリョウの剣幕に、ナルミも少し怯んで言い返す。
「な、なんだよ。別にいいだろ」
「良くない! 無理ぃ! そんな破茶滅茶な食生活、絶対無理ぃいい!」
「お前、落ち着けよ……」
これが落ち着いていられるか。目の前の、栄養のなんたるかも知らない男。
なのにヘラヘラ笑ってる。リョウはそれに心底ムカついた。
「もういい、わかった! キミには明日からオレが弁当作ってきてやる! その歪んだ食生活、叩き直してやるからな!」
今思えば、とんだお節介だった。
なのに、ナルミはそれを嬉々として受け入れた。
「え、マジ? いいの? ハンバーグ入れてくれよ、唐揚げもいいなあ」
「いいとも! このオレが栄養満点の弁当を作ってやろう!」
「やったあ! あ、でも野菜いらねえ。嫌いだから」
その発言が、リョウの心にますます火をつけた。
「ふ、ざ、け、る、な! 野菜を食べないヤツは死んでしまえ! ついでにキミの食わず嫌いも全部直してやる!」
「お、おお……」
「オレは二年の飯塚リョウ! キミは!?」
「瀬田ナルミ……二年」
こうしてリョウは新たな自己顕示欲を満たしてくれる存在を手に入れた。
そんな風に屋上で始まった奇妙な出会いから、一年が経とうとしている。
「あー、うめえ! 切り干しサイコー。もっと切り干し大根に場所とってくれよ」
リョウの手製の弁当をかっこみながら、ナルミは上機嫌で言った。
「あのなあ、ちゃんとよく噛んで食べろ。野菜の量はそれがベストだ、タンパク質もちゃんと取らないとダメなんだぞ」
リョウがそう言い返すと、ナルミは箸で切り干し大根を摘んだまま、さらに言い返す。
「わかってるけどさあ、俺を野菜の道に引きずり込んだのはお前だろ。責任とってくんねえと」
「怪しい言い方をするな! それに濃い味付けした野菜しか未だに食べないくせに、生意気言うな」
「ええー」
少し不貞腐れながらも、弁当を食べる手が止まらないナルミの様子を、リョウは満足して眺める。
白米に合うように味付けされたもの限定とは言え、よくぞここまで野菜を食べるようになったと、リョウは自分の功績に酔いしれた。
「ほら、今夜のおかず」
リョウが更に取り出したいくつかのタッパーを見て、ナルミは弾んだ声を出した。
「今日はナニ?」
「きんぴらゴボウと、生姜焼き。それからコールスロー」
「うひょー! 今夜も祭じゃあん!」
リョウにすれば大したことないラインナップだが、ナルミは両手をあげて喜んだ。
とても、自尊心が刺激される。
「ちゃんとご飯炊いて食べろよ。それからインスタントでいいから味噌汁も飲め」
「うんうん、わかってる。悪いな、母ちゃんの分まで作ってもらっちゃって」
二人分のおかずが入っている特大タッパーを、ウキウキして見ながらナルミは笑っていた。
「気にすんなよ。業務スーパーで安く大量に食材買ってるからさ」
リョウがそう答えると、ナルミは少し躊躇いながら何かを言おうとしていた。
「あ、あのさ、リョウ……」
「うん?」
「実はさ、ウチの母ちゃん、今度夜勤から日勤になったんだ」
「そうなの? 良かったね!」
昼夜逆転で働いているナルミの母のことはリョウも心配していた。
だからこそ、二人分の完璧なおかずを作って支えていたつもりだ。
朝ちゃんと起きて、ご飯が食べられる生活になることはかなりの朗報だ。
「そしたら、母ちゃん、ヤケに張り切っちまって。これからは俺に弁当も作るし、夕飯だってきちんと作るって言い出して……」
「え……」
リョウはその言葉に体の力が抜けた。
親が食事を作れるようになったのは、本当に喜ばしいことなのに。
リョウの心には突然穴が開いて、冷たい風が吹き抜けるようだった。
「今までロクに料理したことねえんだから、無理すんなよって言ったんだけどさ。でも母ちゃんがやる気を出したなら、どこまでやれるかわかんねえけど、見守ってやりてえなって思ってさ」
「うん……そうだね。ナルミだって、ご飯炊くくらいは出来るしね……」
泣きそうだ。
お門違いは充分わかっているのに。
自分の「役目」を取られて、リョウは視界が暗くなってしまった。
「で、でもさ!」
明らかに意気消沈したリョウを見て、ナルミは慌てる。
「俺はリョウの弁当が好きなんだよ、これからも食べたいって思ってる。母ちゃんだって急に毎食用意するなんて絶対無理だ!」
「うん……?」
早口のナルミの言葉は、ショックも相まってリョウにはよく聞こえなかった。首を傾げていると、ナルミは耳まで真っ赤にして言った。
「だ、だからぁ! 母ちゃんには、昼メシはいらねえって言った。リョウに弁当作ってもらうからって!」
「え──」
まだオレは、必要とされている?
そんな期待を込めた目で、リョウはナルミを見る。
「勝手に決めて悪いとは思うけど……それでいいだろ?」
「オレ、まだお前に弁当作って……いいの?」
「俺はお前の弁当じゃないとヤなんだよっ!」
照れながら言うナルミの顔が、リョウにはとても愛おしかった。
「うん! 良かった」
ナルミに必要とされていることが、こんなにも嬉しい。
「……あのさあ」
「ん?」
ふと、ナルミの顔が近づいた。その目は熱っぽくリョウを見つめている。
「俺がお前の弁当が好きなのは、お前のことが好きだから。なんだけど?」
「えっ……」
ナルミの指が、リョウの頬を撫でた。
リョウは視線で縫い留められて動けなくなる。
心臓が、とてつもなく早く動き始めた。
「ここに引きずり込んだのはお前なんだから、お前が責任とってくれるんだよな?」
「え、あ……」
「俺が本当に食べたいのは、お前なんだよ」
そう言いながら、ナルミはリョウに口付けた。
「あ、ふ……っ」
唇を何度も喰まれて、リョウは体の力が抜けていく。
そんな願望はあった。
ナルミに、弁当じゃなくて自分を食べて欲しいって。
「ん、うぅ……」
ナルミの舌が、リョウの舌と絡められる。
食べたい、と宣言した通り、ナルミはリョウの呼吸まで飲み込んだ。
「あ……ん、ナル、ミ……」
リョウの下腹部をまさぐって、ナルミは「ああ、腹、減ったな」と微笑んだ。
「今日の昼メシは、お前だ……」
青空の下、ランチタイムを延長した二人は午後の授業をサボってしまった。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
☆ BONUS TRACK ☆
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
「ん……う、ふっ……」
ナルミのキスは温かく、リョウはそれを受けながら頭が蕩けていく。
体に力が入らなくて、ナルミの背に両手を回し懸命に抱きついた。
「あっ……」
ナルミの唇はリョウの顎をなぞった後、首筋を這う。
ちゅっと吸い上げる音が、リョウの体をいっそう震わせた。
「やっ、ダメ……」
リョウのブレザーをあっという間に剥ぎ、襟とネクタイをナルミの手が緩める。
そのまま鎖骨に吸いついてくる彼に、リョウはみじろいで甘い声を漏らした。
「あ、ん……」
「言っただろ? 今日の俺の昼メシはお前だ……って」
ナルミはフェンスにリョウの背中を押しつけて、シャツのボタンを外していった。
露わになったリョウの肌は、少し冷たい風に触れて、ピクンと震える。
「や、待って……こんな、トコで……」
数分前は弁当を食べながらふざけ合っていたのに、急に牙を剥いたナルミの雄にリョウは混乱していた。
「待たない。ずっとお前が食べたかった」
ナルミはリョウの胸に熱い指を這わせ、勃ち始めている胸の突起をキュッと摘んだ。
「アッ……!」
そこを弄びながら、ナルミはリョウの首筋に歯を立てる。
本当に食べられる、とリョウは実感して歓喜に震えた。
「あ、あ……ナルミ……好きぃ」
こんな風にされるのを、ずっと待っていたのかもしれない。
自分の体の隅々を弄るナルミの手を受け入れるリョウは、ナルミの制服の端をぎゅっと握った。
「すげえ、うまい……リョウ」
「あっ、ああ……っ!」
乳首に吸いつき、舌で転がしながら、ナルミはリョウをじっくり味わっていく。
ついにはリョウのベルトも緩め、制服のズボンをずり下げた。
その中には、固く主張し始めたリョウ自身が布の向こうで窮屈そうにしている。
「や、やだあ……見ちゃ、ダメぇ……」
「なんで? すげえうまそうじゃん……」
ナルミは舌をペロと出して、リョウの腰に手を回す。
するとゾクゾクとリョウは腰を震わせた。
「ああん……っ!」
丁寧にその布を取り除けば、しとどに濡れたリョウ自身がそこで可愛らしく震えていた。
「やば……」
ナルミは荒い息とともに、己もズボンを緩めて猛ったそれを取り出す。
「あ、すご……」
まさかこんな風に友達のモノを見ることになるとは。リョウもそれから目が離せなくなった。
「一緒に擦ろうぜ」
「え、ちょ、待っ……」
「お前は俺の肩に手を回せよ」
「あ、うん……」
リョウは言われるままにナルミの肩に両腕を回す。密着した肌が擦れて、それだけでリョウはまた腰を震わせた。
ナルミは己自身とリョウを握って、擦り始めた。グチュ、と卑猥な音が二人の耳にこだまする。
「あっ、あ……っ!」
擦られる感触が気持ち良すぎて、リョウは声が止まらなかった。
熱い吐息をナルミの耳に吹きかける。
「お前、すげえエロイ声出すじゃん……」
「だって、あ、すご……っ! あっ、ん!」
ナルミに握られ、弄られている。そんな事実と感触が、リョウをどんどんと昂めていった。
そしてその熱に呼応するように、ナルミの指遣いは激しくなっていく。
「あっ! ダメ、出ちゃう! ナルミ……ィ!」
「お前、マジやばい……ッ、可愛すぎだろ……」
「んんぅ、ふぅ……んっ!」
大きく口を開けて、噛みつくようなキスがリョウに与えられた。
下半身を弄られながら、舌に歯を立てられて、リョウはその刺激で熱い汁を吐き出した。
「ン──! ふぅ……ううんっ」
ビクビクと腰が震え、リョウはもちろん、ナルミのモノもその体液で濡らす。
触れているナルミは、さらに固く、熱くなっていった。
「先にイクなよ……ったく」
「あ、ごめ……」
ずぶ濡れになったお互いの下半身を見て、リョウが言いかけた言葉をナルミはキスで塞いだ。
「んぅ……」
甘くて、蕩けてしまう。リョウはもう、何も考えられなくなっていた。
「リョウ……ちょっと、向こうむけよ」
「え、あ……やっ……!」
ナルミはリョウをフェンスに捕まらせ、後ろからリョウの腰を持った。
「やだ……! 恥ずかしい……ッ!」
空に向かって下半身を放り出しているようで、リョウは羞恥に震える。
それなのに、またリョウ自身は熱くなっていた。
「男同士ってさ、ここ、使うんだろ……?」
言いながらナルミはリョウの尻を少し広げて、その奥に触れる。
「ああっ! ダメェ! 怖いよ……」
リョウの腰は緊張を帯びて、その奥をキュッと締めてしまった。心臓が跳ね上がる。
「わかってるよ、今日はそこまでしねえ。でもさ……」
言いながら、ナルミは猛り続ける自身を、リョウの尻に擦りつけた。
熱くて硬い感触が、リョウの後ろにあてがわれて、興奮で悶える。
「ああ……っ、あ、あ……」
「ここで、擦らせてくれよ……」
「ひあっ、はっ、ああ……ッ!」
腰を両手で支えられて、ナルミのモノを尻に擦り付けられながら揺すられる。
セックスしているのと同じような感覚に、リョウの胸は打ち震えていた。
「あ、ああっ! ナル、ナルミィ……!」
「リョウ……すげ、いい……ッ!」
「あっ! ああ、ああんっ」
尻に当たる熱さと、濡れた感覚。リョウ自身もまた、勢いよく反って、ナルミからの揺さぶりに応えていた。
「あ、ああ、また、イク……ッ!」
「俺も、イク……」
ナルミは腰を振りながら、リョウの前に手を伸ばしてそれを握った。
「あああ、ダメェ、もうイッちゃう!」
「リョウ……ッ!」
ナルミは解放される直前、リョウのうなじを齧った。
「はぁああ……ッ」
その刺激でリョウはまた熱く吐き出し、ナルミもまた締まるリョウの尻の間で果てた。
「あ、あ……ん……」
「はっ、はぁ……リョウ……」
弛緩していくリョウの体を、ナルミがきつく抱き留める。
その温もりが、気が遠くなるほど気持ち良かった。
「ナルミ……」
涙で瞳を滲ませながら、リョウはナルミを振り返った。
「次は、ちゃんと挿れるからな……」
にやりと笑う顔は、ふざけ合っていた友達のものでは、もうなかった。
「バカァ……」
好きが溢れて、リョウの後ろはキュンと震えていた。
「ごちそーさん……」
またランチタイムしような。
そんな囁きがリョウの耳に、いつまでも響いていた。
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