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第二章 リュータと不思議な他種族

第二十二話 リュータの機転と結末と

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「これで、最後だ!」
「ギャウン!」

 恐るべし、納豆パワー。

「ほんたらリュータは、恐ろしげなもんを考えるさな」

 褒めても何も出ませんよ?

「いやいや、これは悪魔の所業じゃて。落とし穴掘って、下にはくっさいナットー。落ちてきたサーベルタイガーがあれほど哀れに見えた事は、なか」
「んだんだ」
「リュータは敵に回しちゃなんねーべ」

 おういえ。それ、褒めていませんよね?
 と言う訳で、最後のサーベルタイガーも無事に討伐したのですが、何をしたかと言えば簡単です。
 獣人王国側から上に向かって穴をL字に掘ってもらう。そして落ちてきたサーベルタイガーを一匹ずつ処理。
 穴に落ちた仲間を確認したいのかいちいち覗いて、一匹ずつ落ちてくるんだよね。

「以上」
「どうした、リュータ」
「ケントさん、まだここにいたの!? いいから早くミレイさんの所に行ってあげなさい!」
「あ、ああ。すまない。それと、感謝する。里を救ってくれたことも、あの時俺を止めてくれた事も」
「いいよいいよ。でも、思いが色あせないうちに、早く言うべきだよ?」
「そうだな。俺の思い、伝えてくる!」

 本当にもう、世話がやけるんだから。

「あどっこいしょういちっとな」
「手を貸そう」
「ありが・・・なんでミレイさん、ここにいんの?」

 穴から這い出てきたら、ミレイさんが待ち構えておりました。
 いや待って、さっきケントさん、向こう行っちゃったよ!?
 折角キメ顔で走り去っていったのに、これは切ない。

「今回、皆が無事だったのは、君のお陰だって聞いてね。いてもたってもいられなくなったんだ」

 やめて! その乙女な表情、やめて!!
 ケントさん、泣いちゃうよ!
 俺ももらい泣きする、絶対する!

「ほっほ。さすがリュータじゃ。ワシが見込んだだけの事はあるのぉ」
「シルちゃん! 無事だったんだね!」
「おうおう、無事じゃよ。腰がちょっと痛いがのぉ」

 いや、こんな所でお年寄りっぽさを発揮されても困るわー。

「でも良かった。誰も犠牲にならなく・・・」

 待て。待てよ俺。

「ちょっと待って。まだ何かあるかもしれない。警戒して!!」
「何を言っているんだ。もう全部終わっただろう?」
「リュータよ、まだ何かあるか?」

 分からない。
 でも、あの石碑がここにある。
 もしここが、オープン型のダンジョンだとしたら・・・


 絶対に、最後に性悪な事が起こる!


「全力引く1の、『調査』!!」

 周囲のマッピングがされる。
 いや、その機能、知らないんだけど。
 普段『鑑定』ばかりしているからすっかり存在を忘れかけていたし、ロクに検証もしていなかったけど、これはすごい。忍者、もういらない。

「って、いた! 最後の一匹!」

 森の中の一角に、おそらく魔人の生き残り。

「なんじゃと! 全員、追撃じゃ! 魔人を討ち倒すのじゃ!」
「「「う、うおおおおおおお!!」」」


 しゅぱんしゅぱんしゅぱん、ガンガンガンガン・・・・・・



 キャウーン。




 なお使用した納豆はきちんと袋に入れていたので、後でおいしくいただきました。


***

 さすがに狩猟民族の方々は違いました。
 1 対 200くらいの数の暴力で蹂躙です。
 一切の手加減なく魂を込めた一撃一撃でした。

「自分含めて、犠牲無しで乗り切ったのは初めてかも」

 思わずそんな事を呟いてしまった。

「そうかそうか。リュータは若いのに、思いのほか、多くの修羅場をくぐってきておるようじゃのぉ」
「シルちゃん、頭撫でるの、恥ずかしいんですけど」

 でも、もっとやって!!
 美少女だけど、おばあちゃんのナデナデ。最高じゃん!!

「ほっほ。良きかな良きかな」
「ま、そうですね。無事に終わってよかったですよ」

 見れば、エルフの男女が抱き合って生還を喜び合っている。
 そうだよね、あれだけの事態だったんだ。誰もが必死で、誰もがあがいて、誰もが大切な人の顔を思い浮かべたはずだ。
 それはポっと出の俺じゃなくて、もっと身近にいた、大切な人。
 あの戦いは、そんな思いを呼び起こしてくれたんだ。

「リュータ、ミレイを・・・見なかったか・・・?」
「え? ミレイさんならあそこにいるでしょ」
「おお、そうか・・・里を一周しても見当たらなかったのでな・・・」

 な、なんて間の悪い。
 ケントさん、がんばれ、超がんばれ!!


***

「行ってしまうのかぇ」
「ええ、俺には帰りを待つ人たちが、たぶん、それなりに、きっと、うーん、いると、思う?」
「なんじゃ、歯切れが悪いのぉ」
「どちらかと言うと俺が詫びないといけない人たちなんで」

 サーベルタイガー襲撃から一週間経ち、獣人王国のジュークの街とエルフの里との共同祭みたいなものも終了し、そのタイミングで俺は旅に出る決意をした。
 ワーム車もシルちゃんが格安で用意してくれた。お値段なんと50万円。稼ぎがほぼ全部消えました。

「もう行ってしまうのか?」
「ミレイさん」
「気を付けてな」
「ケントさんも! 改めて、おめでとうございます。お二人とも、お幸せに」
「「ありがとう!」」

 ケントさんと握手を交わす。
 細いけど、しっかりとした働き者の手だった。
 顔がいかにイケていても、スラっと八頭身でも、やはり土をいじる人は強い。
 そう感じさせる、力強い握手だった。T〇KIOっぽい。

「カリーナさんも、旦那さんとヨリを戻せて良かったですね」
「まったくね。今度こそ離さないわ。胃袋を掴んだから、ね」
「ははは、そうなっては逃げられませんよ」

 そう、あれからエルフの女性たちは料理の大切さを学び、実践してきた。
 まだ一週間やそこらなので、完全にモノに出来た人はいないけど、それでも今までとは異なりすごい進歩を遂げている。
 その一つに、獣人王国との国交を開いたのも理由に挙げられるだろう。
 その橋渡しとなったのは、当然、男性エルフたち。

「俺たちも、今までのような軟弱者と言われないように、得意分野で頑張るからな!」
「ええ、ない物ねだりするよりもずっといいです。そして、お互いのいいところを認め合う。いいですね、夫婦って」
「まぁ、な」

 鼻の頭をポリポリと掻く姿も、やだ、イケメン。
 エルフって、生まれながらの勝ち組だわー。

「間に合ったか! リュータよ、これを持っていけ!」
「え? あ、棍!?」
「サーベルタイガーの大牙から削り出したんだ。特注さ!」

 すごい。

 見事な円柱だ!


「いや、これ原形留めていませんよね?」
「大変だったんだぞ。熱して叩くことで形を整えて」
「削ってない!?」
「尖った部分を丸くするのに苦労してな」

 異世界の鍛冶屋パワー恐るべし。
 まさか牙を鍛冶して形を変えるとは・・・、ゲームじゃないんだからさ!

 でも

「ありがとう! 大事にします」
「おうよ。また、落ち着いたら来いよ?」
「はい!」

 名も知らぬ鍛冶屋の人、本当にありがとう!!

「出発しまーす」
「はい。それでは皆さん」

 シルちゃん、ミレイさん、ケントさん

 以下略。

「お達者で!!」

 そして俺を乗せたワーム車は走り出した。

 超、高速で。

「あびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ちなみにワーム車とは、ワームが引く馬車のようなものではなく、四つ足のトカゲのようなものが引く馬車のようなものです。
 何故ワーム車なのかと言えば、地中と言えばワームだろうと言う考えだそうです。訳分からん。

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