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第二章 リュータと不思議な他種族

第十三話 リュータと孤島ダンジョン、再び

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 やってまいりました、孤島。
 目の前には石碑。
 そして人影まったく見えません。

「神よ!! 俺が何をしたと言うのですクェーー!!」

 おっと、思わず野生が飛び出てしまった。

 と言う訳で、現在地、

 うん、異世界降りた当時もこんなだった。

 と言うよりも、折角前の孤島ダンジョンを突破して人里に行ったのに、何故か神の御業により孤島に戻されました。
 あー、ガルフやステファン、ジョンソンにクワトリ少佐と、色々な人に出会ったんだけどなぁ・・・。
 空飛ぶ巨大キノコの襲来とか、もう訳分かんない異世界クオリティだったけど、平和に終わったらしいし、今となったらいい思い出。


 だったんだけど、なぁ・・・。
 エルフも、獣人もいるらしいし、女の子とのラブラブライフの妄想が膨らんでいたんだけどなぁ、はぁぁぁぁ。

 あ、いや、俺が気付かなかっただけでステファンさんと言う超絶美女とお知り合いにはなったんだった。
 でもあの人、今頃人妻だろうしなぁ。そもそも宝塚か! ってくらいのイケメンだったからな。


 だが、そんなこんながあろうとも、今現在、俺の所在地は、孤島、浜辺。

 またボッチだよ!
 また孤島でゼロ円生活だよ!!

「しかし今回は勝手が分かってるから、さっさと脱出だ!」

 そしてあの街に戻るんだ!


 ちなみに砂浜から海に出ようとしたら、謎のバリアに弾かれた。
 たぶん、ダンジョンをクリアしないと出れない仕組みなのだろう。
 仕方がないので、まずはそう

「水だな。前回はこの湧き水を確保できていなかったし」

 『収納室』にえっちらほいっと放り込む。
 表示に『10,000リットル』と書かれている。
 え? いちまんりっとる?

「やばいな、ちょっとやりすぎたかも」

 謎の湧き水がストップしている。
 少し待っても湧いてこない。

「まぁ、放っておけば湧いてくるかな」

 『収納小箱』から棍を取り出して、軽く素振る。
 スピピンと今まで以上に軽快な音がする。これもクワトリ少佐の鍛錬の賜物だ。

「とは言え、不可抗力だけど途中で投げ出す形になっちゃったなぁ」

 畑仕事も途中だったし、『棒術』も教えてもらう事がまだあったんだけど、仕方がない。
 いずれ会ったらお詫びして、また教練してもらおう。

 ひとまず『消臭』『消音』を使ってから、目の前の森に入る。

 肌の青いゴブリンがいる。
 棍で突いて、焼いた。ゴブリンは死んだ。

「は?」

 ズカズカ進めば、肌の青いオークがいた。
 棍で突いて、焼いた。オークも死んだ。

「はい?」


 いや、待って。
 ちょっと待って。
 いくらパワーアップしているからって、これはないよね?

 困ったときの『鑑定』様!


 オーク(青種)
 -縄張り意識の強い魔獣の亜種。原種よりも高い身体能力を持つ。音と臭いで敵を探す。目がほとんど見えない。ダンジョンコアにより水に対する加護を得ている。火が弱点。
 ※魔獣:人型に近い魔物の呼称。完全な人型は魔人と呼ばれており知能が高い。単なる魔物は知能が低い傾向にある。


 以前よりも説明が増して、『鑑定』様がパワーアップしているな。
 そして火が弱点か。


 神様、最初にこのダンジョンに連れて来てくれれば、俺、苦戦しなかったんじゃないですかね。



「今更言っても仕方がないけど、そこはかとなく悪意を感じる」

 まぁ、サクサクっと行きましょうか。


***

 勝手知ったるなんとやらでスイスイと進んでき、植物系の採取も忘れずに様々にゲット。
 今回のキノコは何故かマイタケだった。でもこれも好きだから助かるわー。
 そして例のトイレ葉も無事にゲット。
 今度またいつ来るか分かんないし、枯れない程度にもげるだけもいでおいた。

 ギヴったから、もちろんテイクも忘れなかったさ。ふふふ。


 しかし、登っていたかと思いきや、少し下り始めた。
 そうしたら、目の前にぽっかりと空いた、穴。それも水で満たされている不可思議な状況。
 その穴の手前にはご丁寧にも石で出来た階段が設置されており、いいから降りろと自己主張していらっしゃいます。
 しかしその目前には、三つ又の槍を持った魚男。
 サハギンとかマーマンとか言われる種族だと思う。


 さて、どうしよう。
 たぶん、こいつがこの先にあるダンジョンコアを守っているボスなんだろうけど・・・

 以前オーガを鑑定しようとしたら見つかった事を思い出す。
 ヤツもたぶん、魔力感知的なスキルを持っているのだろう。
 『鑑定』した瞬間、やんのかゴルァと襲い掛かってくる可能性、大。
 どうしたものか・・・。

「ま、なるようになるか!」

 今の俺は、スーパーリュータだ。以前の俺とは違う。
 そう

 いけるいける!


 そう思っていた時期が、僕にもありました。


***

「ひえーー! こんな手練れだなんて、聞いてないって!!」

 はい、絶賛逃亡中です。
 サハギンさん、滅茶苦茶槍の使いがうまかったです。
 先端に火が付いた棍棒なんかチョチョイのチョイって感じでいなしてあっさりへし折って、そのままエイヤヤヤって突き連打。
 途中でやけくそ気味に色々投げたけど、回した槍で叩き落とすの、ちょっとカッコよかった。
 しかしまぁ、君どこのゲームのキャラ? と見惚れるくらいの槍力であっという間に大ピンチ。
 今ココ。

 チキキキキキと鳴き声なのか違う音なのか、とにかく訳の変わらない甲高い音を発しながら迫ってくる魚男に、俺氏、ガン泣きですよ。

「うびゃーーー! お助けーーー!」

 叫んでも誰も助けに来てくれません。
 サハギンさんも見逃してはくれません。

 どっどっど、どうするのさーーー!


 走っていたら拠点の近くまで来ていた。
 これ以上は逃げられない!

「毎度毎度、懲りないな、俺!」

 しかし今度は棍が一切効かない相手。
 さて、どうする、って悩む時間もねーし!?

「って、どぁぁぁ!! こ、こけたぁぁあ・・・」

 こけました。それはもう、盛大に顔からズゴーンです。
 漏れた、何かが漏れたよ。どこぞが濡れた。

 もう無理だ。
 
「チキチキうるさささ、うるっさいんだよ!! 俺だって、俺だってなぁ!!」

 やはり以前のオーガ同様に悪い笑みを浮かべて、槍の後ろ側で小突いてくる性悪なボスに、もう自棄だ!!

「俺だって、うるさくできるんだよ! 『虫よけ』!!」

 ィィィイイイイイイン。

 するとサハギンが槍を落として、頭を抱え出した。
 そう思ったら徐々に身体を畳みはじめ、しまいには正座の状態から前屈をしたような状態になった。
 焼き土下座した人みたいになっている。

「お、おい。大丈夫か?」

 先ほどまで襲われてたんだけど、あまりの変化に心配になって近寄ってみた。
 すると、サハギンがビクンビクンし始めた!?

 あれ!?

 顔を地面に投げ出して、口から泡出して、舌を出して、白目向いて・・・

 動かなくなりました。


 『鑑定』様により、サハギン氏、HP0により殉職なされたのが判明。



「まじかー」

 サハギン、超音波、苦手だってさ。


***

「この展開は、笑うしかないでしょ」

 あれから水になったサハギンに手を合わせてから拠点に戻り、はい、いつも通りの洗濯です。
 相変わらず湧き水が復活していないので、『収納室』に入れた水でお洗濯。

 え? なんで魔法水で洗わないのかって?
 いや、洗濯って結構水を使うのよね。
 だからMPが足りないのさ。フッ。

 いやいや、前に使おうとして気絶して、服にまみれて窒息死しかけたなんて、ないよ?


「それにしても、この『洗濯』の魔法は便利だなー」

 正確には俺の脳内にある洗濯機を模倣した魔法っぽいんだけど、これまた『生活魔法』らしい。
 現状で『生活魔法』で出来ない生活関連って、料理くらいなんじゃないだろうか。

「しまったな。結局ババビアルカで『魔力操作』とかその手の魔法について聞きそびれてたわ」

 今頃思い出しても遅いんですよね。
 なんかこう、メモとか取りたいな。


- 魔力操作について聞く を記録しました-


「おういえ」

 何事ですかー!?
 って、ああ、『メモ』の『生活魔法』か。
 え?

「まじかー」

 そんな事まで出来るのか。さすがは神様お勧めの『生活魔法』だな。
 あの神様、かなり気まぐれと言うか、軽いと言うか、お調子者な性格だけど、それでもやっぱり神様だな。
 はー、やっぱり言う事聞いとくか。

「確か、次の場所で布教活動だったっけ? でもそもそも神様の名前すら知らないんだけど」

 それに、八百万か! ってくらい神様いるらしいし。
 っと、MP満タン!!
 服も乾いた。

「さって、あの洞窟に行きますかね」


***

「聞いてないよ」

 まだあれから一時間経っていないのに、山の穴の前には、二匹のサハギンがいました。
 てーことは、あいつがボスじゃなかったの!?

「まじかー」

 神様のしれん、ちょうつらいっす。

 なーんて、ね。

「お前ら弱点なんて、分かってるんだよ!!」

 いざ発動、『虫よけ』。
 おら、おらおら。お前の嫌いなキーン音、出てるぞ。どうだ? 怖いか! 苦しいかぁ!!


 ぶ、ぶも、ぶもももも。ふごふご。

「え?」

 ぶももおおおおおおおおお!!!
 チキキキキキ!!

「えええええええ!?」

 いや、それ、まじ勘弁!!

「オークとサハギンのハイブリットは、らめぇえええ!!」

 力の一号と技の二号が俺を追いつめる。


 走った、こけた。
 あ、もうだめ。

「何かないか何かないか・・・、あ!!」

 前のダンジョンコアからもらった魔石!
 頼む、お前が頼りなんだ!!

「助けてくれ、お前だけが頼りなんどっせい!!」

 魔石が思ったより重かった!!
 てんてんてん・・・とオークとサハギンの足元に転がる。
 それを見て、首をかしげているお二人の隙を突いて・・・逃げれるか、ばか!!

「も、もうだめ・・・」

 なんて思っていたら、魔石から煙が出てきた。

 なにそれ。聞いてない。

「呼ばれて飛び出てじゃんじゃかじゃーん! ダンジョン界のアイドル、原初の赤いダンジョンコアとはアタイの事だよ! 分体だけどね!」

 え!? なにそれ!! ほんと、聞いてないよ!?
 てか、誰様?

 宙に浮かんだちっこい妖精? みたいな子がオークとサハギンの間でふんぞり返っていた。

「ほらあんたら、さっさと向こういきな。やり直しだよ」

 ちっこいのがしっしと手で追い払うようにすれば、しゃーねーなぁと言う調子で帰っていくオークとサハギン。

 なにそれ!?

「じゃ、願いは叶えたから。死なないでね!」

 しゅぴん、と言う効果音と共に魔石の中に帰っていった妖精、妖精? うーん、良く分からん。

「でも、とにかく助かったのか」


 腰が抜けて立てない。
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