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1.Undermine
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蛸に、犯されている。
「ぅっ、ひうっ! ひ、ひっ、ひんっ! あっ、はあああぁぁんっ……ああ、ぁぁっ……」
私は大蛸に捕らえられ、一糸纏わぬ身体をいやらしく撫で回されていた。
蛸の頭は見えない。
自在に動く赤褐色の蛸足だけが、私の視界に映る。
蛸の足が私の全身に巻き付き、絡みつき、四肢を扱くようにうねる。胸に、秘部に、背中に。二の腕に、爪先に、脇の下まで。粘液を纏った触手をずるずると擦り付けられている――。
「まって! あしっ……その足やめてえぇぇっ……。んっ、んんんっ……ああっ、んひ! んあああぁぁぁぁっ……」
逞しい触腕に持ち上げられ、吊られたままの状態では一切抵抗することができない。私は諦めに身体の力を抜いた。
軟らかい足先で、ぼうと熱を持つ両胸の先っぽをくりくりと捏ね回された後、そっと白い吸盤を押し付けられる。吸い付くものを求めてひくつくそれの動きはいやらしくて。私は間もなく襲いくるであろう快楽に、期待の吐息が漏れるのを感じた。
「あ、あっ、あ……すわれ、ちゃう……!」
ぷちゅぷちゅと音を立てながら私の乳輪にみっちりとした圧力がかかっていく。柔らかな組織が私の乳首をそっと包み込む。蛸足の生々しい感触を存分に味わわされた後、少しだけ乱暴に剥がされる。吸われるのも、剥がされるのも、どちらも堪らなく気持ちがいい。その動きを何度も繰り返されるうちに、私の乳首は腫れぼったく尖り、尚更敏感になってしまった。
「ああ、にゅぽにゅぽしないでっ! んひぃぃっ、だめぇっ……! あ、あっ、ああっ! はああぁぁんっ!」
また吸盤を押し付けられる。深い口吻をするように、じっくり時間をかけて乳首を吸引されていく。ぬめる吸盤に胸の先端を潰されながら優しく扱かれる。軟らかい蛸足の感触は舌によく似ている気がして、舐められるような粘っこい快楽に情けない声を上げ続けることしかできない。私はこの大蛸に、ひたすら感じさせられていた。
触手が私の足に巻き付く。力の入らない足を持ち上げられ、私は悲鳴を上げた。
「んやっ、まって……待って、駄目! そこはぁっ、かんじ、すぎちゃうから……!」
(ああ、どうしよう、どうしよう……)
抗えない。そこを刺激されたら、私はきっと壊れてしまう……。
「あ、あはぁ……だめ……。おねがい、はなして……ね? だめなの……」
自分が出した哀願の声はどこまでも蕩けきっていて、隠しようのない期待が滲んでいた。
私の弱々しい拒絶を嘲笑うかのように、蛸は私の両足を大きく割り広げた。
「あ、ああ……! だめって、いったのにぃ!」
見なくても分かる。擦られ続けていた秘所は泡立っていて、入り口は柔らかく解れてしまっている。
上下に擦られるだけで気持ちがよかったのに、最も敏感な場所を吸盤で吸われたら、あの自在にうねる足で疼く穴を隅々まで埋められてしまったら……。その時、私はどうなってしまうのだろう?
淫らな期待に奥からごぷりと愛液が溢れ出るのを感じ、私は身体をくねらせた。
秘部を愛撫していた蛸足は濡れそぼり、てらてらといやらしい光を放っている。垂れる雫は蛸元来のぬめりなのか、それとも私が出した蜜なのか。分かりきった答えに、顔がどっと熱くなるのを感じた。
「はあっ、はあっ、はあ……。ああ、まって……! 待って、そこはぁっ……」
ぴとり。
私の最も敏感な場所――陰核にそっと吸盤を押し付けられる。蛸は私の期待に応え弱点を責め始めた。
「んっ、にゅうぅぅっ! ひゃめっ! それだめええぇぇっ!! うぅぁぁあっ、あ、ああああああっ!!」
少し吸われただけで、私はあっという間に達してしまった。にゅぷにゅぷという粘液質な音が響き、爆発的な快楽が陰核に走る。軟らかくもしっかりとした硬さを持つ吸盤が、肉芽全体を徹底的に嬲る。重い快楽を感じる裏側から、鋭い快楽を得られる先端まで、何もかもまとめてもみくちゃにされる。吸盤が離れる度に包皮がめくれ上がり、隠されていた根元を愛撫される……。吸われ、摘まれ、撫でられる未知の動きに私はただ泣き叫んだ。
「ひん! ひん! ひいんっ! ……ひ、ああああっ! いやあああっ! いく、いくぅっ! あ、あああぁぁぁぁぁぁ! あ、はあっ……あ、またいっちゃ……! いっ……くぅぅうううぅぅ!」
蛸はどうすれば私を弱らせることができるのか、よく解っているようだった。吸うだけでなく、細い足の先で陰核を優しくなぞられる。巻き付かれながら上下に優しく扱かれる。少しだけ酷薄さを帯びた足の動きと共に、焼けてしまいそうな熱が私の陰核を襲う。
「んんんっ、ひぐぅぅっ! あっ、ついよおっ!! あつい! あっ、いやあああああっ! またっ……ひゃっ、ああああああああ……」
達する度に私の性感は高まり続けていく。穏やかな快楽に煮込まれ続けた秘所が、こんな強い責めの手に耐えられる筈がない。快感が波のように広がり、ただ震えながら体液を垂れ流すことしかできない。私は全身を支配する悦びに、泣きながらも口角を上げた。
「ああっ、はあああっ……ああ、もっと、もっとぉ……!」
相次ぐ絶頂に痙攣が止まらない。私は少しでも快楽を逃すために、必死に暴れ続けた。でもどんなに身を捩っても、蛸は私を決して放してくれなかった。むしろ私が暴れる度に足に力が込められていき、身体を強く締め上げられる。
(ああ、いい……)
被虐の悦びに翻弄される。一切の抵抗を許してくれない蛸の力強さに、私は胸が高鳴るのを感じた。
気持ちいい、気持ちいい。何度も達くのは辛いけど、達する度に私が生まれ変わっていく気がするの。絶対に私を放さないで。もっと私を嬲ってほしい。ばらばらに壊して。依存させて。もっと私を虐めて、もっと私を愛して……!
(あ……? わた、し、今何を……?)
私は自分の中から込み上げた感情に慄いた。快楽の虜になった私は、蛸に愛情を抱き始めている。
正気ではない。私は蛸相手に欲情するような女ではない筈だ!
そもそも、なぜ私はこの大蛸に犯されている……?
「あ、ひいっ!?」
陰核を優しく叩かれる。また甘い絶頂に追いやられ、私は思考を放り投げた。
ふと、下から新たな足が伸びてくる。
ずるりと音を立てて現れたそれに、私は唾を飲み込んだ。
「あ、あああっ……そんなの、そんなのむりよぉ……」
現れた足は他の触腕よりも一回り太く、先の方には吸盤が存在しなかった。吸盤が存在しない分、脈打つ血管から、硬い筋肉の動きまでがよく伝わる。幾つもの血管が走るそれはどくどくと脈打ち、私の中に入る時を待ち望んでいるかのように見えた。
蜜口を割り広げられる。腹の奥が期待に疼き、腰が勝手に揺れ動いてしまう。
男性器を思わせるその足が、私のぐずぐずに蕩けた膣にぴったりと当てられた。
「ひっ、だめ、あっ……! はっ、はああああぁぁぁぁぁあああんっっっっ!!」
内を一気に穿たれる。待ち望んでいた圧迫感に私は満ち足りた声を上げた。
「ああっ、あはあっ、すごいっ! ふやああっ!」
弾力のある太い触手が、淫猥な動きで奥を突き上げてくる。優しくも力強いその動きは耐え難く、私は一突きごとに絶頂を迎えさせられた。ずるりずるりと音を立て、擬似的な男性器が私の膣穴を激しく犯す。私の愛液が掻き出され、蛸足をなお淫らにぬめらせていく……。
「はひっ、あふぅっ、あ、あっ、あっ、うあああっ、あぁんっ! まって、とまって! これ、気持ちよすぎるのぉっ! あ、ああっ! あ! あああんっ!」
蛸の責めは容赦がない。触れられたらすぐに濡れてしまうざらざらとした天井や、突かれたら絶対に泣いてしまう弱いところまで。全てを手加減なしに、執拗に擦られる。この大蛸は私の弱点を徹底的に甚振るつもりのようだった。
突かれる度に乳房が淫らに揺れてしまう。私のこの姿を、蛸はどんな目で見ているのだろう。蛸も情欲を感じることがあるのだろうか? 私の痴態は、蛸を興奮させることができているのだろうか……。大蛸を誘うために、私自身も積極的に腰を動かした。
「あはぁっ、はあん、ああっ! きっ、気持ちいいよおっ! そこぉ、すごいの! あっ、いっちゃう! あくっ……あああんっ! いっ、いくうっ、またいく! ひいっ、くうっ! んひっ……おっ……はあんっ、ああああああああああっ!」
私が深く昇りつめると同時に、蛸の足が一番奥深くに押し込められる。熱く蠢く何かを子宮に放たれた気がしたが、暴力的な快楽の前に全てがどうでもいいと思ってしまった。
何もかもどうでもいい。この蛸さえいてくれたらそれでいい。
私をこんなに気持ちよくしてくれる蛸が愛おしい。好き。大好き。この蛸にずっと愛されていたい……。
「ああっ、あ、とまらなっ……まだ、いってるのおっ……! おねが、みな、いで……」
私の顔はきっと汗と涙、垂れた涎でぐちゃぐちゃになっている。そんなみっともない顔を、愛しいあなたに見せたくない。恥ずかしいの。お願い、私を見ないで……。
「あ、ああぁぁ……」
蛸足が蠢く。
ずるりずるりと這い動く足が、隠されていたものを私の前に曝け出していく。
足の先には蛸の頭ではなく、人間の男が見えた気がした。
「――リ。ラズリ! おい、ラズリ!」
肩を大きく揺さぶられる。
目の前にいる男の顔が、段々とはっきり見えてくる。
「……ルブラ?」
「どうしたんだ? ずっと呼びかけてたんだぞ?」
ルブラは私の顔を心配そうに覗き込んだ。不思議な光彩を放つ金の目と視線がかち合う。彼の瞳を見て、私は自分を支配していた興奮が少しずつ冷めていくのを感じた。
「あ、ああ……。ごめん、何でもないよ」
(まただ。また意識を持っていかれた。なんでこんな想像をしてしまうのだろう?)
近頃、ふとした瞬間に淫らな想像が込み上げてくる。
海を眺めながら異国の地に思いを馳せている時であったり、茶を飲みながら休んでいる時であったり、寝る前に一日の出来事を振り返っている時であったり。気を抜いてぼんやりと考えを巡らせている時、大蛸に犯される自分の幻視が頭を乗っ取るのだ。
(もう何度も、蛸に犯される想像をしている)
蛸と絡み合う私の顔は幸せそうに蕩けていた。
あれはただの想像、私の欲が作り出した淫らな妄想だというのに、身体には甘い痺れが残り続けている。
幻視の中の自分が羨ましい。
いっそ、目を瞑ってずっとあの想像に溺れてしまおうか――。
「ラズリ。お前やっぱり変だ」
ルブラの声が私の意識を引き戻す。
私は深く息を吸い、大蛸の姿を頭から追い出そうと努めた。
気を抜いてはならない。このままでは私の精神が侵食されてしまう……。
「声掛けても反応が悪いし、大体そんな真っ赤な顔して何でもない訳ねえだろうが。風邪でも引いたんじゃねえのか?」
「ふ、っ……本当に、大丈夫だから。呆けていてごめんなさい」
ルブラに否定の言葉を返し、私はゆっくりと立ち上がった。
ごぷりと自分の奥から大量の愛液が漏れ出るのを感じる。分厚い洋袴を履いていて良かった。そうでなければ、きっと濡れそぼった足の間をルブラに見られてしまっていただろうから。
「っん……」
「ラズリ……?」
ルブラは身動ぐ私に目を遣り、こくりと喉を鳴らした。
私の汗ばむ首筋は、この男の目にどう映っているのだろうか。この男はいつもそうだ。熱の籠もった目で私のことを見つめてくる。そんな目で見られては、また淫らな接触を思い出してしまうではないか……。
太く逞しい腕が伸ばされる。私の肩を優しく抱いて、ルブラは掠れた声を出した。
「調子が悪いなら、駐在所で休むか?」
「ううん……平気」
「気のせいかな。お前、最近ずっと物足りないって顔してる」
ルブラの野性的な顔が近づいてくる。
はっきりとした情欲を宿す金の目に、私はどくりと胸が跳ねるのを感じた。
「ラズリ……。俺の前でそんな蕩けた顔をして、一体どういうつもりなんだ? 昨日あれだけ達かせてやったのに満足できなかったのか?」
下から上へ。汗ばむ背をゆっくりと撫で上げられる。
それは幻視の中の蛸足の動きとよく似ている気がした。
「なあ、ラズリ。お前はいつ俺の女になってくれるんだろうな。仕事中に呆けちまうくらい欲求不満なら、俺に頼ればいいじゃねえか。知ってるだろ? 俺なら、お前を完璧に満たしてやれるって……」
胸の線に指を這わされ、甘い吐息が口から漏れ出る。
ルブラは少しむさくるしい男だけど、私は彼をそれなりに気に入っている。ルブラは屈強な男だ。分厚い筋肉の鎧を纏っていて、背も平均よりずっとずっと高い。ルブラなら、私の大きな身体もすっぽりと包み込んでくれる。
「俺はお前のことをよく知ってる。お前だって俺が欲しい筈だ。寄りかかってこい、俺に落ちてしまえ。お前が持つ全てを俺に渡すんだ……。この島で頼れる奴は俺しかいねえだろう?」
思わず唾を飲み込んでしまう。
大蛸に、この男に散々気持ちよくさせられた感覚が蘇り、腹の奥がじんわりと熱を持つ。
「ラズリ、俺を選べ。俺のものになるのなら永遠の幸せを約束してやる……」
気障な台詞だ。なのに、ルブラの言葉は絡みつくような魔的な魅力があった。彼のものになりたいと強く強く思ってしまう。肯定の答えを返そうと、唇が震える。
でも私はぐっと唇を噛み締めて、ルブラから距離を取った。
「……馬鹿なことを言わないで。あなたの女にはならないと言ったでしょう」
私は深呼吸をして、ルブラの顔を真っ直ぐ見つめた。
彼の瞳にみるみる陰が宿る。相手の頭に闇を直接流し込んでくるような怖ろしい目。こちらを深淵に引きずり込んでくるような昏い目……。
美しい金色の目が、私への苛立ちに細められた。
(……そう、その目。人間のする目じゃない。この男は危険だ。信用しきってはならない……)
「私とあなたは割り切りの関係。そうでしょう? 心配してくれるのはありがたいけれど、もう私の前でそんなことを言わないでちょうだい。さあ、次の場所へ行くよ」
私はルブラから顔を背け、目的地へと向かった。
――――――――――
ラズリ。それが私の名前。
父さんも母さんも黒い目を持っていたけれど、どういう訳か私の目は青金石のように青かった。黒い髪も、見る方向によっては青みがかって見えた。宝石が好きな叔父さんからラズリという名を授けられ、私は山間の村でのんびりと育った。
猟師の父さんに獣肉をたっぷり食べさせてもらった私は、村の女の子よりも頭一つ大きく育った。加えて父さんの力仕事を手伝っていたので、男の子に負けないくらい全身にしっかりとした筋肉がついた。
田舎の結婚は早くて、十五、十六になるとぽつぽつと新たな家族が誕生し始める。でも私は、それくらいの歳になっても結婚に興味を持つことができなかった。母さんは私を心配したけれど、村の誰かとくっつく気は更々なかった。恋をしたい、それ以上のこともしてみたいという欲求は強かったけれど、村の子たちにその欲が向くことは全くなかったのだ。
村の男の子たちは親切ながらも、背が高くて筋肉質な私をちやほやすることはなかったし、私も別に彼らから特別優しくされたい訳ではなかった。彼らが私を恋愛相手として好まないように、私も貧弱な体つきの彼らが好みでなかったのだ。
女の子たちはおおらかな性格の子が多くて、ラズリちゃんのしたいようにすればいいじゃないと言ってくれた。私はその言葉に従い、父さんの仕事を手伝い続けた。
母さんや村長さんから結婚についてちくりと何か言われることはあったけど、私は小言を気にすることなく、相変わらずのんびりと山暮らしを楽しんでいた。気がつけば私は成人を迎えて、適齢期の男女は皆結婚してしまった。私の意志がやっと伝わったのか、その頃になると母さんも村長さんも、結婚について口を出すことはしなくなった。
二十二になる頃、私はふと結婚したくなかった理由に気がついた。
(なんか、この村で暮らすの飽きたな)
父さんと共に猟をしたり、木を加工する暮らしは楽しかったけれど、私は同時に酷い飽きも感じていた。
私はこの気持ちを抱いたまま歳を取っていくのだろうか? ずっと木を切って、磨いて、そんな暮らしを続けていくのだろうか……?
何だかそれが、とても嫌に感じた。
誰かと結婚して家族になってしまえば、基本的にずっとこの村で暮らすことになるだろう。
独り身は自由だけれど、家族を持ったら気軽に他の場所へ移ることはできない。
(ああ……私は結婚自体が嫌というより、村でずっと暮らしていくことが嫌だったんだな)
刺激が欲しい。外の世界を見てみたい。一日よく考えた後、私は村を出ることに決めた。
母さんはいきなり村を出ると言い出した娘に心配の目を向けたけれど、父さんは好きにしなさいと言ってくれた。
青く澄んだ海に白い砂浜。私の国は海が有名だった。
美味しい海の幸と、あらゆる場所に植えられたレモンの樹。それらが私の生まれ育った国の名物だった。両親は私の目をよく海に喩えて喜んでいたけれど、私はずっと山育ちで、海というものを実際に見たことがなかった。
海を見てみたい。
海沿いには栄えた都市がいくつかあるから、仕事はそこで探せばいい。
私は衝動のまま荷物をまとめ、住人たちに別れの挨拶をした。村の人は私に温かい言葉をくれた。少しでも楽になるようにと、服やら保存食やら色々なものを手渡してくれた。
ここでの生活に飽きてしまったけれど、この村のことは好きだ。外の世界を存分に楽しんだら、またここに戻ってくるのもいいかもしれない。
微笑む父さんと涙ぐむ母さんに手を振って、私はすっきりとした気分で外の世界へ旅立った。
********
「ここに来て、本当に良かった……」
海を初めて目にした時、私はその雄大さに圧倒された。
青い海、白い砂浜、街中に植わったレモンの樹。村で見かけることがなかった色彩が私の心を豊かにしていく。私は都市に到着してから、しばらくぼんやりと海を眺めるだけの生活を送った。
そんな生活をしていたので貯金は減っていく一方だったが、幸い仕事はすぐに見つかった。体力があって腕っぷしが強い私は、警備隊の入隊試験に一発合格することができ、晴れて都市の治安を守る警備隊員として働くことになった。
私は日々忙しく過ごした。都市部はとにかく治安が悪い。通報や犯罪者追跡の要請はたくさん入ってきて、私はゆっくり海を眺める暇もないくらいに詰まった生活を送った。
警備隊の仕事は楽しかった。体を動かすのは気持ちよかったし、その都市に住む人々の安全を守ることができたと思うとやり甲斐もあった。仕事をこなす度に中々の給金を貰うことができたので、数ヶ月に一度両親へ仕送りをした。
仕事に一生懸命取り組むうち、上司に私の働きぶりを評価してもらえるようになった。警備隊長は優秀な君にぜひ任せたい仕事があると、私に異動命令を出した。
(何これ。昇進じゃなくて、左遷の間違いじゃないの?)
私は新たな警備隊長に任命されると共に、都市部から遠く離れた寒村へと赴任を命じられてしまった。
都市部で経験を積んだ隊員を、他の地域に遣ることはよくあることだった。けれど、私は自分が住む都市から離れたくなかった。ここは交通の便も良く、海の眺めも綺麗で、何より料理が美味しかったから。上司に抗議をしようと思ったが、釣り上げられた給金に魅力を感じてしまい、結局その命令を飲むことにした。
気がつけば、村を出てから十年が経っていた。
両親に心配をかけた分、稼げるだけ稼いで彼らに楽をさせてやりたかった。
都市の港から船で十日。
遠い離島にある、ただひとつの寒村。外から立ち寄る者は殆どいない村……。
私はその村の、唯一の警備隊員として働くことになった。
********
村の印象は最悪だった。
私は島に到着した際、住民からいきなり汚物を投げつけられた。
島民は排他的で、外から来た私に対して強い警戒心を抱いていた。皆、一様にぎょろりと突き出た目を私に向け、槍やら弓やらで私を脅して追い出そうとした。
敵意の籠もった目を向けられ、罵声を浴びせられながら自己紹介をするのは、中々きついことだった。汚物を投げつけてきた住民をひとり残らず殴ってしまいたかったが、私は給金のために必死に耐えた。
どんな地域にも、最低一人は警備隊員を置かなければならないのだとこの国の法律で定められている。国から目をつけられたくないならば、大人しく私を受け入れてほしい。一生懸命そう説明し、何とか村に駐在することができた。
私の日々の仕事は島全域の巡視だった。
それほど広くはない島なので巡視に苦労をすることはなかったが、私は強い緊張感の中で仕事をしなければならなかった。
(……つけられている)
村の男数人が、一定の距離を保って私を監視している。
私が移動すれば同じように移動して、私が立ち止まれば同じように立ち止まる。
(私を追い出すための嫌がらせか。それとも……何か見られたくないものでもあるのだろうか?)
圧迫感を与えるその行動に何か言ってやりたかったが、私は気付かないふりをすることを選んだ。閉塞的なこの環境下で、島に住む者たちをいたずらに刺激してはどうなるか分からないという怖ろしさを感じていたからだ。
私が駐在する村は、とにかく奇妙だった。
島全域に夥しい数の石碑が建てられている。村人たちの手によって赤い顔料で彩色された石碑には、魚に似た怪物の絵や、理解することが出来ない文字が刻まれていた。
私は巡視の際、どこかの神殿の絵を頻繁に目にした。家の壁に、岩に、地面に、そして樹の幹にまでその絵が描かれているのだ。烏賊や蛸が暮らす水中都市の様子や、奇怪で異様な建造物を描いた絵は、見ていると背筋が冷え、頭痛がした。私はなるべくその絵を見ないようにして仕事をこなした。
島に住む者たちは、誰もが生臭かった。魚によく似た臭いに最初は吐き気を催すこともあったが、暮らす内に段々と慣れてしまった。彼らは魚臭いだけではなく、独特の顔つきをしていた。ぎょろりと突き出た目、たるんだ唇、広い顔に平らな鼻、引っ込んだ顎。その顔つきは、数多の人々が暮らす都市部でも全く見かけたことがないものだった。
そして島民たちは、熱心に何かを崇めているようだった。
一日四度、彼らは総出で浜に集まり、海に向かって祈りを捧げた。
「xxxxx様! xxxxx様!」
村人たちの声が、今日も浜から聞こえてくる。
「今こそ復活の時! 我らに永遠なる祝福を! 忠実なる下僕を新世界へとお導きください!」
彼らの祈りは波となって、島全域に響き渡っていく。
心をざわつかせるその呼びかけに、私は耳を塞ぎたくなった。
彼らが口にする何かの名は、私には決して発音することが出来ず、理解することも叶わなかった。私が知らない、異なる世界の響き。ぞわぞわとした恐怖を呼び起こすその名を聞いていると、意識が侵食されていくような気がした。
彼らの葬儀もまた独特だった。私が暮らしていた村や都市部では一般的に火葬が選ばれたが、彼らは亡くなった者を水葬に付した。死者を石の棺に入れ、浮かび上がらないように処置を施した後、沖に出てその棺を海へと沈める。それが彼らのやり方らしかった。
死者が出た日、村は熱狂に包まれる。
誰一人として悲しむことなく、まるで祭りを行う時のように笑顔で葬儀を進める。私は舟に棺を乗せる島民たちを物陰から覗いたことがあったが、彼らの横顔には歓喜が滲んでいた。
進化、適合、祝福、栄光。
葬儀とは何ら関係のないような言葉が島民たちの口から飛び出す。そして彼らは、また海に向かって崇める者の名を呼んだ。その葬儀は死者のためというよりも、崇める何かのためにあるらしかった。
あなた方が信仰するものは、一体何なのか。
私はそれを聞こうとして、慌てて口を噤んだ。
(彼らに、この島に深入りをしてはならない)
私は、島民たちが外からやって来た者に対してなぜあれほど敵対心を向けるのか不思議に思い、かつてこの島にやって来た前任者たちをこっそり調べたことがあった。すると、以前この島に駐在していた警備隊員たちは発狂したり酷い怪我を負ったりして、全員三ヶ月経たずに仕事を辞めているということが分かった。
(おそらく前任者たちは、島民に何かされたんだ。上司はこれを知って私を送り出したのか……)
呆れと怒りに私は拳を握りしめた。常識が通用しない世界に送り出されてしまったという恐怖が、心の底からじわじわと込み上げてくる。
何があったのかは分からないが、きっと彼らはこの島で触れてはならないものに触れてしまい、島民たちの怒りを買ったのだ。警備隊員としての信念と正義感が揺らぐ。私は唇を噛み締め、自分に言い聞かせた。
私は両親のために金さえ稼げればそれでいい。彼らの信仰に興味はない。島に住む者を刺激せず、淡々と仕事をすればいい。やり甲斐を感じられなくても、私は与えられた任務をこなすだけ……。
(……陰気な島よね)
青い海、白い砂浜。それは都市部で目にしたものと変わらない。何も知らない者は、この島の景色を見て綺麗だと口にするだろう。けれど、私にとってはくすみ、色褪せて見えた。
島全体に漂う魚の臭い、そして狂気と邪教の気配が、景色の美しさを損ねているように思えた。
「ぅっ、ひうっ! ひ、ひっ、ひんっ! あっ、はあああぁぁんっ……ああ、ぁぁっ……」
私は大蛸に捕らえられ、一糸纏わぬ身体をいやらしく撫で回されていた。
蛸の頭は見えない。
自在に動く赤褐色の蛸足だけが、私の視界に映る。
蛸の足が私の全身に巻き付き、絡みつき、四肢を扱くようにうねる。胸に、秘部に、背中に。二の腕に、爪先に、脇の下まで。粘液を纏った触手をずるずると擦り付けられている――。
「まって! あしっ……その足やめてえぇぇっ……。んっ、んんんっ……ああっ、んひ! んあああぁぁぁぁっ……」
逞しい触腕に持ち上げられ、吊られたままの状態では一切抵抗することができない。私は諦めに身体の力を抜いた。
軟らかい足先で、ぼうと熱を持つ両胸の先っぽをくりくりと捏ね回された後、そっと白い吸盤を押し付けられる。吸い付くものを求めてひくつくそれの動きはいやらしくて。私は間もなく襲いくるであろう快楽に、期待の吐息が漏れるのを感じた。
「あ、あっ、あ……すわれ、ちゃう……!」
ぷちゅぷちゅと音を立てながら私の乳輪にみっちりとした圧力がかかっていく。柔らかな組織が私の乳首をそっと包み込む。蛸足の生々しい感触を存分に味わわされた後、少しだけ乱暴に剥がされる。吸われるのも、剥がされるのも、どちらも堪らなく気持ちがいい。その動きを何度も繰り返されるうちに、私の乳首は腫れぼったく尖り、尚更敏感になってしまった。
「ああ、にゅぽにゅぽしないでっ! んひぃぃっ、だめぇっ……! あ、あっ、ああっ! はああぁぁんっ!」
また吸盤を押し付けられる。深い口吻をするように、じっくり時間をかけて乳首を吸引されていく。ぬめる吸盤に胸の先端を潰されながら優しく扱かれる。軟らかい蛸足の感触は舌によく似ている気がして、舐められるような粘っこい快楽に情けない声を上げ続けることしかできない。私はこの大蛸に、ひたすら感じさせられていた。
触手が私の足に巻き付く。力の入らない足を持ち上げられ、私は悲鳴を上げた。
「んやっ、まって……待って、駄目! そこはぁっ、かんじ、すぎちゃうから……!」
(ああ、どうしよう、どうしよう……)
抗えない。そこを刺激されたら、私はきっと壊れてしまう……。
「あ、あはぁ……だめ……。おねがい、はなして……ね? だめなの……」
自分が出した哀願の声はどこまでも蕩けきっていて、隠しようのない期待が滲んでいた。
私の弱々しい拒絶を嘲笑うかのように、蛸は私の両足を大きく割り広げた。
「あ、ああ……! だめって、いったのにぃ!」
見なくても分かる。擦られ続けていた秘所は泡立っていて、入り口は柔らかく解れてしまっている。
上下に擦られるだけで気持ちがよかったのに、最も敏感な場所を吸盤で吸われたら、あの自在にうねる足で疼く穴を隅々まで埋められてしまったら……。その時、私はどうなってしまうのだろう?
淫らな期待に奥からごぷりと愛液が溢れ出るのを感じ、私は身体をくねらせた。
秘部を愛撫していた蛸足は濡れそぼり、てらてらといやらしい光を放っている。垂れる雫は蛸元来のぬめりなのか、それとも私が出した蜜なのか。分かりきった答えに、顔がどっと熱くなるのを感じた。
「はあっ、はあっ、はあ……。ああ、まって……! 待って、そこはぁっ……」
ぴとり。
私の最も敏感な場所――陰核にそっと吸盤を押し付けられる。蛸は私の期待に応え弱点を責め始めた。
「んっ、にゅうぅぅっ! ひゃめっ! それだめええぇぇっ!! うぅぁぁあっ、あ、ああああああっ!!」
少し吸われただけで、私はあっという間に達してしまった。にゅぷにゅぷという粘液質な音が響き、爆発的な快楽が陰核に走る。軟らかくもしっかりとした硬さを持つ吸盤が、肉芽全体を徹底的に嬲る。重い快楽を感じる裏側から、鋭い快楽を得られる先端まで、何もかもまとめてもみくちゃにされる。吸盤が離れる度に包皮がめくれ上がり、隠されていた根元を愛撫される……。吸われ、摘まれ、撫でられる未知の動きに私はただ泣き叫んだ。
「ひん! ひん! ひいんっ! ……ひ、ああああっ! いやあああっ! いく、いくぅっ! あ、あああぁぁぁぁぁぁ! あ、はあっ……あ、またいっちゃ……! いっ……くぅぅうううぅぅ!」
蛸はどうすれば私を弱らせることができるのか、よく解っているようだった。吸うだけでなく、細い足の先で陰核を優しくなぞられる。巻き付かれながら上下に優しく扱かれる。少しだけ酷薄さを帯びた足の動きと共に、焼けてしまいそうな熱が私の陰核を襲う。
「んんんっ、ひぐぅぅっ! あっ、ついよおっ!! あつい! あっ、いやあああああっ! またっ……ひゃっ、ああああああああ……」
達する度に私の性感は高まり続けていく。穏やかな快楽に煮込まれ続けた秘所が、こんな強い責めの手に耐えられる筈がない。快感が波のように広がり、ただ震えながら体液を垂れ流すことしかできない。私は全身を支配する悦びに、泣きながらも口角を上げた。
「ああっ、はあああっ……ああ、もっと、もっとぉ……!」
相次ぐ絶頂に痙攣が止まらない。私は少しでも快楽を逃すために、必死に暴れ続けた。でもどんなに身を捩っても、蛸は私を決して放してくれなかった。むしろ私が暴れる度に足に力が込められていき、身体を強く締め上げられる。
(ああ、いい……)
被虐の悦びに翻弄される。一切の抵抗を許してくれない蛸の力強さに、私は胸が高鳴るのを感じた。
気持ちいい、気持ちいい。何度も達くのは辛いけど、達する度に私が生まれ変わっていく気がするの。絶対に私を放さないで。もっと私を嬲ってほしい。ばらばらに壊して。依存させて。もっと私を虐めて、もっと私を愛して……!
(あ……? わた、し、今何を……?)
私は自分の中から込み上げた感情に慄いた。快楽の虜になった私は、蛸に愛情を抱き始めている。
正気ではない。私は蛸相手に欲情するような女ではない筈だ!
そもそも、なぜ私はこの大蛸に犯されている……?
「あ、ひいっ!?」
陰核を優しく叩かれる。また甘い絶頂に追いやられ、私は思考を放り投げた。
ふと、下から新たな足が伸びてくる。
ずるりと音を立てて現れたそれに、私は唾を飲み込んだ。
「あ、あああっ……そんなの、そんなのむりよぉ……」
現れた足は他の触腕よりも一回り太く、先の方には吸盤が存在しなかった。吸盤が存在しない分、脈打つ血管から、硬い筋肉の動きまでがよく伝わる。幾つもの血管が走るそれはどくどくと脈打ち、私の中に入る時を待ち望んでいるかのように見えた。
蜜口を割り広げられる。腹の奥が期待に疼き、腰が勝手に揺れ動いてしまう。
男性器を思わせるその足が、私のぐずぐずに蕩けた膣にぴったりと当てられた。
「ひっ、だめ、あっ……! はっ、はああああぁぁぁぁぁあああんっっっっ!!」
内を一気に穿たれる。待ち望んでいた圧迫感に私は満ち足りた声を上げた。
「ああっ、あはあっ、すごいっ! ふやああっ!」
弾力のある太い触手が、淫猥な動きで奥を突き上げてくる。優しくも力強いその動きは耐え難く、私は一突きごとに絶頂を迎えさせられた。ずるりずるりと音を立て、擬似的な男性器が私の膣穴を激しく犯す。私の愛液が掻き出され、蛸足をなお淫らにぬめらせていく……。
「はひっ、あふぅっ、あ、あっ、あっ、うあああっ、あぁんっ! まって、とまって! これ、気持ちよすぎるのぉっ! あ、ああっ! あ! あああんっ!」
蛸の責めは容赦がない。触れられたらすぐに濡れてしまうざらざらとした天井や、突かれたら絶対に泣いてしまう弱いところまで。全てを手加減なしに、執拗に擦られる。この大蛸は私の弱点を徹底的に甚振るつもりのようだった。
突かれる度に乳房が淫らに揺れてしまう。私のこの姿を、蛸はどんな目で見ているのだろう。蛸も情欲を感じることがあるのだろうか? 私の痴態は、蛸を興奮させることができているのだろうか……。大蛸を誘うために、私自身も積極的に腰を動かした。
「あはぁっ、はあん、ああっ! きっ、気持ちいいよおっ! そこぉ、すごいの! あっ、いっちゃう! あくっ……あああんっ! いっ、いくうっ、またいく! ひいっ、くうっ! んひっ……おっ……はあんっ、ああああああああああっ!」
私が深く昇りつめると同時に、蛸の足が一番奥深くに押し込められる。熱く蠢く何かを子宮に放たれた気がしたが、暴力的な快楽の前に全てがどうでもいいと思ってしまった。
何もかもどうでもいい。この蛸さえいてくれたらそれでいい。
私をこんなに気持ちよくしてくれる蛸が愛おしい。好き。大好き。この蛸にずっと愛されていたい……。
「ああっ、あ、とまらなっ……まだ、いってるのおっ……! おねが、みな、いで……」
私の顔はきっと汗と涙、垂れた涎でぐちゃぐちゃになっている。そんなみっともない顔を、愛しいあなたに見せたくない。恥ずかしいの。お願い、私を見ないで……。
「あ、ああぁぁ……」
蛸足が蠢く。
ずるりずるりと這い動く足が、隠されていたものを私の前に曝け出していく。
足の先には蛸の頭ではなく、人間の男が見えた気がした。
「――リ。ラズリ! おい、ラズリ!」
肩を大きく揺さぶられる。
目の前にいる男の顔が、段々とはっきり見えてくる。
「……ルブラ?」
「どうしたんだ? ずっと呼びかけてたんだぞ?」
ルブラは私の顔を心配そうに覗き込んだ。不思議な光彩を放つ金の目と視線がかち合う。彼の瞳を見て、私は自分を支配していた興奮が少しずつ冷めていくのを感じた。
「あ、ああ……。ごめん、何でもないよ」
(まただ。また意識を持っていかれた。なんでこんな想像をしてしまうのだろう?)
近頃、ふとした瞬間に淫らな想像が込み上げてくる。
海を眺めながら異国の地に思いを馳せている時であったり、茶を飲みながら休んでいる時であったり、寝る前に一日の出来事を振り返っている時であったり。気を抜いてぼんやりと考えを巡らせている時、大蛸に犯される自分の幻視が頭を乗っ取るのだ。
(もう何度も、蛸に犯される想像をしている)
蛸と絡み合う私の顔は幸せそうに蕩けていた。
あれはただの想像、私の欲が作り出した淫らな妄想だというのに、身体には甘い痺れが残り続けている。
幻視の中の自分が羨ましい。
いっそ、目を瞑ってずっとあの想像に溺れてしまおうか――。
「ラズリ。お前やっぱり変だ」
ルブラの声が私の意識を引き戻す。
私は深く息を吸い、大蛸の姿を頭から追い出そうと努めた。
気を抜いてはならない。このままでは私の精神が侵食されてしまう……。
「声掛けても反応が悪いし、大体そんな真っ赤な顔して何でもない訳ねえだろうが。風邪でも引いたんじゃねえのか?」
「ふ、っ……本当に、大丈夫だから。呆けていてごめんなさい」
ルブラに否定の言葉を返し、私はゆっくりと立ち上がった。
ごぷりと自分の奥から大量の愛液が漏れ出るのを感じる。分厚い洋袴を履いていて良かった。そうでなければ、きっと濡れそぼった足の間をルブラに見られてしまっていただろうから。
「っん……」
「ラズリ……?」
ルブラは身動ぐ私に目を遣り、こくりと喉を鳴らした。
私の汗ばむ首筋は、この男の目にどう映っているのだろうか。この男はいつもそうだ。熱の籠もった目で私のことを見つめてくる。そんな目で見られては、また淫らな接触を思い出してしまうではないか……。
太く逞しい腕が伸ばされる。私の肩を優しく抱いて、ルブラは掠れた声を出した。
「調子が悪いなら、駐在所で休むか?」
「ううん……平気」
「気のせいかな。お前、最近ずっと物足りないって顔してる」
ルブラの野性的な顔が近づいてくる。
はっきりとした情欲を宿す金の目に、私はどくりと胸が跳ねるのを感じた。
「ラズリ……。俺の前でそんな蕩けた顔をして、一体どういうつもりなんだ? 昨日あれだけ達かせてやったのに満足できなかったのか?」
下から上へ。汗ばむ背をゆっくりと撫で上げられる。
それは幻視の中の蛸足の動きとよく似ている気がした。
「なあ、ラズリ。お前はいつ俺の女になってくれるんだろうな。仕事中に呆けちまうくらい欲求不満なら、俺に頼ればいいじゃねえか。知ってるだろ? 俺なら、お前を完璧に満たしてやれるって……」
胸の線に指を這わされ、甘い吐息が口から漏れ出る。
ルブラは少しむさくるしい男だけど、私は彼をそれなりに気に入っている。ルブラは屈強な男だ。分厚い筋肉の鎧を纏っていて、背も平均よりずっとずっと高い。ルブラなら、私の大きな身体もすっぽりと包み込んでくれる。
「俺はお前のことをよく知ってる。お前だって俺が欲しい筈だ。寄りかかってこい、俺に落ちてしまえ。お前が持つ全てを俺に渡すんだ……。この島で頼れる奴は俺しかいねえだろう?」
思わず唾を飲み込んでしまう。
大蛸に、この男に散々気持ちよくさせられた感覚が蘇り、腹の奥がじんわりと熱を持つ。
「ラズリ、俺を選べ。俺のものになるのなら永遠の幸せを約束してやる……」
気障な台詞だ。なのに、ルブラの言葉は絡みつくような魔的な魅力があった。彼のものになりたいと強く強く思ってしまう。肯定の答えを返そうと、唇が震える。
でも私はぐっと唇を噛み締めて、ルブラから距離を取った。
「……馬鹿なことを言わないで。あなたの女にはならないと言ったでしょう」
私は深呼吸をして、ルブラの顔を真っ直ぐ見つめた。
彼の瞳にみるみる陰が宿る。相手の頭に闇を直接流し込んでくるような怖ろしい目。こちらを深淵に引きずり込んでくるような昏い目……。
美しい金色の目が、私への苛立ちに細められた。
(……そう、その目。人間のする目じゃない。この男は危険だ。信用しきってはならない……)
「私とあなたは割り切りの関係。そうでしょう? 心配してくれるのはありがたいけれど、もう私の前でそんなことを言わないでちょうだい。さあ、次の場所へ行くよ」
私はルブラから顔を背け、目的地へと向かった。
――――――――――
ラズリ。それが私の名前。
父さんも母さんも黒い目を持っていたけれど、どういう訳か私の目は青金石のように青かった。黒い髪も、見る方向によっては青みがかって見えた。宝石が好きな叔父さんからラズリという名を授けられ、私は山間の村でのんびりと育った。
猟師の父さんに獣肉をたっぷり食べさせてもらった私は、村の女の子よりも頭一つ大きく育った。加えて父さんの力仕事を手伝っていたので、男の子に負けないくらい全身にしっかりとした筋肉がついた。
田舎の結婚は早くて、十五、十六になるとぽつぽつと新たな家族が誕生し始める。でも私は、それくらいの歳になっても結婚に興味を持つことができなかった。母さんは私を心配したけれど、村の誰かとくっつく気は更々なかった。恋をしたい、それ以上のこともしてみたいという欲求は強かったけれど、村の子たちにその欲が向くことは全くなかったのだ。
村の男の子たちは親切ながらも、背が高くて筋肉質な私をちやほやすることはなかったし、私も別に彼らから特別優しくされたい訳ではなかった。彼らが私を恋愛相手として好まないように、私も貧弱な体つきの彼らが好みでなかったのだ。
女の子たちはおおらかな性格の子が多くて、ラズリちゃんのしたいようにすればいいじゃないと言ってくれた。私はその言葉に従い、父さんの仕事を手伝い続けた。
母さんや村長さんから結婚についてちくりと何か言われることはあったけど、私は小言を気にすることなく、相変わらずのんびりと山暮らしを楽しんでいた。気がつけば私は成人を迎えて、適齢期の男女は皆結婚してしまった。私の意志がやっと伝わったのか、その頃になると母さんも村長さんも、結婚について口を出すことはしなくなった。
二十二になる頃、私はふと結婚したくなかった理由に気がついた。
(なんか、この村で暮らすの飽きたな)
父さんと共に猟をしたり、木を加工する暮らしは楽しかったけれど、私は同時に酷い飽きも感じていた。
私はこの気持ちを抱いたまま歳を取っていくのだろうか? ずっと木を切って、磨いて、そんな暮らしを続けていくのだろうか……?
何だかそれが、とても嫌に感じた。
誰かと結婚して家族になってしまえば、基本的にずっとこの村で暮らすことになるだろう。
独り身は自由だけれど、家族を持ったら気軽に他の場所へ移ることはできない。
(ああ……私は結婚自体が嫌というより、村でずっと暮らしていくことが嫌だったんだな)
刺激が欲しい。外の世界を見てみたい。一日よく考えた後、私は村を出ることに決めた。
母さんはいきなり村を出ると言い出した娘に心配の目を向けたけれど、父さんは好きにしなさいと言ってくれた。
青く澄んだ海に白い砂浜。私の国は海が有名だった。
美味しい海の幸と、あらゆる場所に植えられたレモンの樹。それらが私の生まれ育った国の名物だった。両親は私の目をよく海に喩えて喜んでいたけれど、私はずっと山育ちで、海というものを実際に見たことがなかった。
海を見てみたい。
海沿いには栄えた都市がいくつかあるから、仕事はそこで探せばいい。
私は衝動のまま荷物をまとめ、住人たちに別れの挨拶をした。村の人は私に温かい言葉をくれた。少しでも楽になるようにと、服やら保存食やら色々なものを手渡してくれた。
ここでの生活に飽きてしまったけれど、この村のことは好きだ。外の世界を存分に楽しんだら、またここに戻ってくるのもいいかもしれない。
微笑む父さんと涙ぐむ母さんに手を振って、私はすっきりとした気分で外の世界へ旅立った。
********
「ここに来て、本当に良かった……」
海を初めて目にした時、私はその雄大さに圧倒された。
青い海、白い砂浜、街中に植わったレモンの樹。村で見かけることがなかった色彩が私の心を豊かにしていく。私は都市に到着してから、しばらくぼんやりと海を眺めるだけの生活を送った。
そんな生活をしていたので貯金は減っていく一方だったが、幸い仕事はすぐに見つかった。体力があって腕っぷしが強い私は、警備隊の入隊試験に一発合格することができ、晴れて都市の治安を守る警備隊員として働くことになった。
私は日々忙しく過ごした。都市部はとにかく治安が悪い。通報や犯罪者追跡の要請はたくさん入ってきて、私はゆっくり海を眺める暇もないくらいに詰まった生活を送った。
警備隊の仕事は楽しかった。体を動かすのは気持ちよかったし、その都市に住む人々の安全を守ることができたと思うとやり甲斐もあった。仕事をこなす度に中々の給金を貰うことができたので、数ヶ月に一度両親へ仕送りをした。
仕事に一生懸命取り組むうち、上司に私の働きぶりを評価してもらえるようになった。警備隊長は優秀な君にぜひ任せたい仕事があると、私に異動命令を出した。
(何これ。昇進じゃなくて、左遷の間違いじゃないの?)
私は新たな警備隊長に任命されると共に、都市部から遠く離れた寒村へと赴任を命じられてしまった。
都市部で経験を積んだ隊員を、他の地域に遣ることはよくあることだった。けれど、私は自分が住む都市から離れたくなかった。ここは交通の便も良く、海の眺めも綺麗で、何より料理が美味しかったから。上司に抗議をしようと思ったが、釣り上げられた給金に魅力を感じてしまい、結局その命令を飲むことにした。
気がつけば、村を出てから十年が経っていた。
両親に心配をかけた分、稼げるだけ稼いで彼らに楽をさせてやりたかった。
都市の港から船で十日。
遠い離島にある、ただひとつの寒村。外から立ち寄る者は殆どいない村……。
私はその村の、唯一の警備隊員として働くことになった。
********
村の印象は最悪だった。
私は島に到着した際、住民からいきなり汚物を投げつけられた。
島民は排他的で、外から来た私に対して強い警戒心を抱いていた。皆、一様にぎょろりと突き出た目を私に向け、槍やら弓やらで私を脅して追い出そうとした。
敵意の籠もった目を向けられ、罵声を浴びせられながら自己紹介をするのは、中々きついことだった。汚物を投げつけてきた住民をひとり残らず殴ってしまいたかったが、私は給金のために必死に耐えた。
どんな地域にも、最低一人は警備隊員を置かなければならないのだとこの国の法律で定められている。国から目をつけられたくないならば、大人しく私を受け入れてほしい。一生懸命そう説明し、何とか村に駐在することができた。
私の日々の仕事は島全域の巡視だった。
それほど広くはない島なので巡視に苦労をすることはなかったが、私は強い緊張感の中で仕事をしなければならなかった。
(……つけられている)
村の男数人が、一定の距離を保って私を監視している。
私が移動すれば同じように移動して、私が立ち止まれば同じように立ち止まる。
(私を追い出すための嫌がらせか。それとも……何か見られたくないものでもあるのだろうか?)
圧迫感を与えるその行動に何か言ってやりたかったが、私は気付かないふりをすることを選んだ。閉塞的なこの環境下で、島に住む者たちをいたずらに刺激してはどうなるか分からないという怖ろしさを感じていたからだ。
私が駐在する村は、とにかく奇妙だった。
島全域に夥しい数の石碑が建てられている。村人たちの手によって赤い顔料で彩色された石碑には、魚に似た怪物の絵や、理解することが出来ない文字が刻まれていた。
私は巡視の際、どこかの神殿の絵を頻繁に目にした。家の壁に、岩に、地面に、そして樹の幹にまでその絵が描かれているのだ。烏賊や蛸が暮らす水中都市の様子や、奇怪で異様な建造物を描いた絵は、見ていると背筋が冷え、頭痛がした。私はなるべくその絵を見ないようにして仕事をこなした。
島に住む者たちは、誰もが生臭かった。魚によく似た臭いに最初は吐き気を催すこともあったが、暮らす内に段々と慣れてしまった。彼らは魚臭いだけではなく、独特の顔つきをしていた。ぎょろりと突き出た目、たるんだ唇、広い顔に平らな鼻、引っ込んだ顎。その顔つきは、数多の人々が暮らす都市部でも全く見かけたことがないものだった。
そして島民たちは、熱心に何かを崇めているようだった。
一日四度、彼らは総出で浜に集まり、海に向かって祈りを捧げた。
「xxxxx様! xxxxx様!」
村人たちの声が、今日も浜から聞こえてくる。
「今こそ復活の時! 我らに永遠なる祝福を! 忠実なる下僕を新世界へとお導きください!」
彼らの祈りは波となって、島全域に響き渡っていく。
心をざわつかせるその呼びかけに、私は耳を塞ぎたくなった。
彼らが口にする何かの名は、私には決して発音することが出来ず、理解することも叶わなかった。私が知らない、異なる世界の響き。ぞわぞわとした恐怖を呼び起こすその名を聞いていると、意識が侵食されていくような気がした。
彼らの葬儀もまた独特だった。私が暮らしていた村や都市部では一般的に火葬が選ばれたが、彼らは亡くなった者を水葬に付した。死者を石の棺に入れ、浮かび上がらないように処置を施した後、沖に出てその棺を海へと沈める。それが彼らのやり方らしかった。
死者が出た日、村は熱狂に包まれる。
誰一人として悲しむことなく、まるで祭りを行う時のように笑顔で葬儀を進める。私は舟に棺を乗せる島民たちを物陰から覗いたことがあったが、彼らの横顔には歓喜が滲んでいた。
進化、適合、祝福、栄光。
葬儀とは何ら関係のないような言葉が島民たちの口から飛び出す。そして彼らは、また海に向かって崇める者の名を呼んだ。その葬儀は死者のためというよりも、崇める何かのためにあるらしかった。
あなた方が信仰するものは、一体何なのか。
私はそれを聞こうとして、慌てて口を噤んだ。
(彼らに、この島に深入りをしてはならない)
私は、島民たちが外からやって来た者に対してなぜあれほど敵対心を向けるのか不思議に思い、かつてこの島にやって来た前任者たちをこっそり調べたことがあった。すると、以前この島に駐在していた警備隊員たちは発狂したり酷い怪我を負ったりして、全員三ヶ月経たずに仕事を辞めているということが分かった。
(おそらく前任者たちは、島民に何かされたんだ。上司はこれを知って私を送り出したのか……)
呆れと怒りに私は拳を握りしめた。常識が通用しない世界に送り出されてしまったという恐怖が、心の底からじわじわと込み上げてくる。
何があったのかは分からないが、きっと彼らはこの島で触れてはならないものに触れてしまい、島民たちの怒りを買ったのだ。警備隊員としての信念と正義感が揺らぐ。私は唇を噛み締め、自分に言い聞かせた。
私は両親のために金さえ稼げればそれでいい。彼らの信仰に興味はない。島に住む者を刺激せず、淡々と仕事をすればいい。やり甲斐を感じられなくても、私は与えられた任務をこなすだけ……。
(……陰気な島よね)
青い海、白い砂浜。それは都市部で目にしたものと変わらない。何も知らない者は、この島の景色を見て綺麗だと口にするだろう。けれど、私にとってはくすみ、色褪せて見えた。
島全体に漂う魚の臭い、そして狂気と邪教の気配が、景色の美しさを損ねているように思えた。
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