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第伍話.ぼろり、麻呂の魔羅

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「やみまろ~!! 今日は水遊びしたいな。ねえ、プール出してよプール。お・ね・が・い♡」

 大きな体をぎゅっと抱きしめ、尖った耳に息を吹きかける。病麻呂はでれでれと笑いながもしっかり私から距離を取った。
 
「くふふふっ、近い近い。あまり近すぎるのも考えものだぞ雛菊よ! ……して、新しいことに挑戦するのは素晴らしきことじゃ! どんなぷーるがよいのじゃ? 麻呂ならば五十めーとるぷーるも、流れるぷーるも、何なら海だって出せるでおじゃる」

「そこまで大きくなくても大丈夫。私泳いだことないから、水深があると溺れちゃうかもしれないし」

「ふむ。それならこれはどうじゃ」

 病麻呂はぱちりと指を鳴らし、庭園の中に立派なビニールプールを作ってくれた。なみなみと水が張られたプールには、なんと滑り台まで付いている! きゃあきゃあとはしゃぐ私を見遣り、病麻呂は得意そうに胸を張った。

「えっすごいすごい! ウォータースライダーがある!! 一度こういうのやってみたかったんだよね! ねえ病麻呂、ビキニも出せる? この服のままじゃ泳ぎづらいから着替えたいんだけど」

「びきに? はて、なんじゃそれは」

「ええとね。大事なところだけ隠した水着なんだけど……ああ、パソコンで出した方が早いよね」

 一度お座敷に戻って、素早くビキニの検索結果を出す。差し出されたノートパソコンを見て、病麻呂はぎょっと飛び上がった。

「ほあっ!? まっ、まままっ、まてっ、こんなのまるで下着ではないかァ!! へそが見えておる! 腋も見えておる! 斯様なものを着て泳ぐというのでおじゃるか!? やめよやめよ、あまりにも恥じらいがなさすぎる! これは駄目じゃ!」

「ええぇぇぇ~~!? これくらい普通だよ! 私の世界の女の子たちはこんな格好してました! ねえやみまろ、私のお願い聞いてよおー。私、ビキニ着たことないから着てみたいなあ。病麻呂なら私のお願い、叶えてくれると思ったのになあ……」

「んぐっ」

 俯きながらちらちらと病麻呂を見る。彼は唇を噛んで何やら悩んでいたけれど、しばらくしてからぱちりと指を鳴らしてくれた。

 着ていたワンピースがふわりと消え、胸とお尻が薄い布に包まれていく。フリルと大きな肩リボン。理想通りの白ビキニを着せてもらい、私は歓声を上げて病麻呂に駆け寄った。

「わあぁ……! かーわいいっ! ありがとう病麻呂、だーいすき!」

「ぎゃああッッ!! その格好で近くに寄るでない!!」

 病麻呂は叫び、急いで後ずさった。
 抱きつこうとしたが必死に逃げられてしまう。むっとする私を申し訳なさそうに見つめながらも、病麻呂は両手を突き出して私の接触を阻んだ。

「……ねえ、前から思ってたけどさ。私から逃げてない?」

「そっ、そそそそそそんなことないでおじゃる」

「そんなことありますー! ねえなんでよ、なんで逃げるの!? 前は抱きついたらとっても喜んでくれたじゃない! わたしのビキニ姿可愛いでしょ!? 褒めてよ!」

「ああ可愛い、世界一可愛いでおじゃる! でもそれ以上近寄るでない! とっ、とにかくその『びきに』とやらでこちらに来るなッ! 男には色々あるのでおじゃる!! ひなっ、頼むから!」

 病麻呂はノートパソコンをぱたりと閉じ、そわそわした様子で屋敷に戻ろうとした。

「あっ、帰っちゃうの? ちょっと待ってよ!」

 その重そうな公家装束を脱いで一緒に入ろうと提案したけれど、彼は尖った耳をひくひく動かしながら無理じゃ無理じゃと繰り返すばかりだった。

「ひっ、ひとりで入るのでおじゃるよ、ひな。麻呂は遠くから見守ってるから! それじゃ、麻呂は厠に行ってくるからの……」

「ええ、またトイレ!? 最近すごくない? 一日何回行くの?」

「それ以上聞くな! もっ、ももも漏れそうなのだ! というかもう漏れてる」

「えっ……」

 病麻呂は股を押さえながら素早くその場を後にした。そんなに切羽詰まっていたのだろうか? それにしても最近の病麻呂はおかしい。一日三十回はトイレに行く。いくら何でも行き過ぎだと思う。

「やみまろ、頻尿なのかな?」

 彼の膀胱を心配しながら、私はひとりで思う存分ウォータースライダーを楽しんだ。


 ――――****――――


 最近の病麻呂は変だ。
 前から変なところはあったけれど、ここ数ヶ月、彼はとにかく変だった。

「や~み~ま~ろ~~!! 今日こそ教えなさいよ、どうして私から逃げるの!?」

「逃げてない逃げてない! だからそう顔を近づけるな、後生じゃあ!」

 抱きつこうとしたら走って逃げられる。頬にキスをしようとしたら突っぱねられる。連日続くその行動に気を悪くした私は、病麻呂の上に伸し掛かってひたすら彼を問い詰めていた。

「おっ、おおお男を押し倒すなど恥じらいがないぞひなぎく! 胸が当たる! 太ももも当たる! 腹も腕も、何か他のものも麻呂に当たっておる! 駄目じゃ駄目じゃあ、哀れな森人をこれ以上いじめないでくりゃれ!」

「だーれが哀れな森人よ! 哀れなのはあなたに避けられっぱなしの私ですぅー。ねえ、何で私を避けるの? 前はちこうよれちこうよれって私に構ってくれたじゃない! 私がほっぺたにキスすると喜んでくれたよね? 何なの、もう私のことが嫌になっちゃったの!?」

 面倒くさい女だと分かっているが止められない。大好きなエルフに触れられないと胸がもやもやして仕方ないのだ。顔を真っ赤にして暴れる病麻呂を押さえつけ、彼の丸い眉をちょんとつつく。

「ふふっ、逃げるならこうやって捕まえちゃうもんね。さーて、覚悟しなさいよ病麻呂。今まで避けられた分、たくさんちゅーしてあげないと♡」

「はっ、はわわわわわ……」

 顔をゆっくりゆっくり近づける。すると病麻呂はうめき声を発し、がばりと起き上がった。

「きゃっ!? いきなり動かないでよ病麻呂!」

「ちょっ、ちょっとこれは本当に無理! ちぇりーの麻呂には刺激が強すぎる! さらばじゃ雛菊、また後で会おうぞ!!」

「あっ、また逃げた! 待ちなさい!」

 廊下を全力疾走する病麻呂を追いかける。追い詰めたと思ったら彼の作った魔法の結界に阻まれてしまい、私は悔しさに地団駄を踏んだ。

「卑怯よやみまろ! 魔法を使ってまで私から逃げるなんて! 絶対許さないんだからぁ!」

 結界の向こうにある厠に向かって叫ぶ。
 トントンと申し訳なさそうなノック音が返ってきて、私は尚更苛立ちが強くなるのを感じた。


 *


「やみまろのばか! 馬鹿馬鹿! インチキなんちゃって公家エルフ! あんなにあからさまに避けなくたっていいじゃない!」

 枕に顔を埋めながら悪態をつく。大好きな病麻呂に触れられないもどかしさに、私はずっといらいらしていた。

(もしかして、病麻呂に嫌われちゃった?)

 嫌われたって仕方ないかもしれない。私は次元の狭間にやって来てから随分図々しくなったし、とにかく病麻呂に対してわがまましか言ってない。毎日クレープやら何やら要求してくる人間の女に、彼はうんざりしてしまったのかもしれない……。

「うぅ、そんなのいや!! 病麻呂に言われた通り、おしとやかにした方がいいのかなあ」

 病麻呂はここに来たばかりの頃、私のことを奥ゆかしいだとか淑やかな娘だと言ってくれた。あの頃の自分に戻った方がいいのかもしれないけれど、今まで自分がどうやって振る舞ってきたのか全く思い出せないのだ。

 病麻呂とやってみたいことは次々に浮かぶし、派手な色の服だってたくさん来たい。我が強いとか淑やかじゃないと言われても、私は私の好きなように振る舞ってみたい。

(……そう考えると、今の私と前の私、別人になったんだなあ)

 生まれ変わりたいと思っていたかつての私が報われた気がする。あの時、樹海の神社を訪ねて本当によかったと、大きな烏帽子を思い浮かべながら笑った。

(でも、避けられたままなのは悲しいよね。いつ満月になるか分からない。だから離れ離れになってしまう前に、病麻呂と出来ることはしておきたいのに……!)

 枕元にある和歌の束を手に取る。
 山になった巻物や和紙を見ながら、随分と溜まったものねと独りごちた。

 病麻呂の和歌は基本的に『可愛いね ああ可愛いね 可愛いね』から始まる。体調を案じたり、私としたいことを羅列する粘着質な和歌は日毎に長くなっていき、今では巻物の形で贈られるようになった。
 
(あなただって私としたいことがたくさんあるんでしょ? こんなに長ったらしい和歌を贈るくらいなら、私に直接話してくれればいいのに! ……うーん、でも和歌を贈ってくるくらいだし、病麻呂は私のことを嫌いになった訳じゃないのかな?)

 とにかく避けられる。
 そのくせ、私のいるところに病麻呂は出没する。

 温泉から出ると必ず鉢合わせる。
 着替え終わって部屋から出ると、絶対に廊下に立っている。

 食事だって、読書だって、勉強だって、運動の時だって。いつも私の近くにカメラを構えた病麻呂がいる。試しに一度無視してみたら、病麻呂は困惑しながら私に追いすがってきた。

「はあ。私を避けたいのか避けたくないのか分からない。やみまろ、何を考えてるんだろ?」

 自分は寝る前にこんな悩んでいるのに、どうせ病麻呂は今頃『高尚なインターネット』を楽しんでいるに違いない。そう思うと彼に対する恨めしさが募った。

「ふん、どうせいかがわしい写真でも集めてるんでしょ。やみまろのおばか」

 病麻呂は近頃、頻繁に電子掲示板に入り浸っていた。何でも理想の画像がもう少しで手に入りそうで、掲示板の住人に夜な夜な熱い『じっぷ要求』を繰り返しているらしい。彼が何を言ってるのかさっぱり分からなかったけれど、どうせろくなものじゃないので放っておいた。

(病麻呂に抱きつきたい。高尚なインターネットばかりしてないで、私にちこうよれって言ってよ。そしたらすぐにでも飛びつくのに! はあ、あのほっぺたにちゅーしたいなあ。病麻呂の頬ってつるつるしてて気持ちいいんだよなあ……)

 イケメンエルフをキス責めにする酷い妄想をしながら目を閉じる。寝るにはまだ早い時間だけれど、起きてても悶々としてしまうのでもう眠ってしまうことにした。


 ――――****――――


「ひな。ほんに残念なことじゃが、麻呂は今日屋敷を空けるでおじゃる。いい子で待っているのでおじゃるよ」

 ある日のこと。
 大きなロケットランチャーを背負った病麻呂は、至極残念な様子でそう言った。彼の腰には二挺拳銃を差したベルトが、肩には弾帯が巻かれている。そんな物騒な格好をしてどうしたのと驚く私に、病麻呂はぎゅっと眉を寄せた。

「あれじゃ。あやつじゃ! 奴と決着をつけるために麻呂は行かねばならぬ」

「あやつって……。もしかして、前にやってきたUFOのこと?」

「そうじゃそうじゃ。あんなにろけっとらんちゃーを撃ち込んでやったのに、しつこくもまたやって来おった! 今度こそ森の奥にあやつを封じ込めてやるのでおじゃる! さて、死合いの時じゃ。すぐに戻るからゆるりと寛いでいるがよい。それではまたの! ああ、そうじゃ。言い忘れておった」

 ……麻呂がいない隙に逃げようだなんて思うなよ。

「えっ、えっ、一体なに?」

 聞きたいことがたくさんあったのに、病麻呂は言いたいことだけ言ってその場からぱっと消えてしまった。彼の名前を呼んでも何の返事もない。どうやら本当に出かけてしまったようだ。

 今日は何をしよう。何をするにしても、病麻呂がいないと退屈だ。ひとり残された私は、仕方なく暇つぶしを求めてお屋敷の中を歩くことにした。

「はあ、今日はどうしよっかなあ」

 病麻呂が魔法で創り上げたこのお屋敷はとにかく広い。一年以上住んでいるけれど、知っている部屋よりも知らない部屋の方がずっと多かった。せっかくだからこの機会にお屋敷の中を探検してみようと、行ったことのない部屋に向かう。

「んふふっ、探検だと思うとわくわくしちゃう! さあてと。何があるかな~?」

 ここには色々なお座敷がある。スポーツジムのお座敷にシアタールームのお座敷、ビリヤード専用のお座敷から図書室まで。至れり尽くせりなそれらの部屋を通り過ぎてまず行き着いたのは、薄暗い漫画部屋だった。

(凄い、天井までぎっしりだ。崩れてこないのかな?)

 聳え立つ本棚の中には大量の漫画が押し込められていた。マイナーなものからメジャーなものまで、新旧問わず綺麗に収納されている。病麻呂の漫画好きに感心しながら、自分の好みに合いそうな漫画を探すことにした。

「うっわ、グロテスク! 内臓がこんにちはしちゃってるよ。やみまろってこういう漫画が好きなのかな?」

 揃えられた漫画は中々ハードなものばかりだ。侍同士の斬り合い、裏稼業にデスゲーム、借金返済もの。病麻呂がこのお座敷を紹介しなかった理由が何となく分かった気がする。ここに私が読める漫画はなさそうだ……。

 そろそろ出ようかと思った時、視界にある一角が飛び込んできた。

「ん? あれってもしかして――」

 ピンクのハートが放つ淫靡な雰囲気、いかがわしいタイトル、そしてでかでかと印刷された女体。

 ……こ、これはもしかして、俗に言うエロ漫画というやつではないだろうか!?

 目に捉えて一秒、そして即決。
 私はそのアダルトコーナーに飛び込むことにした。

(意外。病麻呂も性欲あったんだね)

 病麻呂は男性だけれど、彼から性的なものを感じることは一切なかった。彼は好みの女の子のことも、性交渉の経験も、その他いやらしい話も私の前でしたことがない。かつてガールズバーで働いていた時に男性たちから向けられた、性の臭いのようなものが全くしないのだ。

 私に気を遣ってうまく隠してくれていたのかもしれない。そう考えると彼の秘密を暴くのに罪悪感があったけれど、興味の方が強くて足を止められなかった。

 やった。わくわくしてきた。これはチャンスだ。この機会を逃したらもう、病麻呂の性癖を知ることはないかもしれない。あのエルフが性的にどんなものを好むのか、どんな女の子がタイプなのか確認しなければ!

 いそいそとショッキングピンクの一角を曲がる。初めて目にするアダルトな品々に、私は圧倒されるばかりだった。

「きゃぁぁぁっ! めっ、目が焼ける! 刺激が強い!」

 大量のエロ漫画にDVD、何に使うか分からないロケット弾型のアダルトグッズ。そしてガラスケースの中には美少女フィギュアが所狭しと並べられている。薄暗い部屋の中で、それはぎらぎらした輝きを放っているように見えた。

 漫画の表紙に写る女の子たちも、美少女フィギュアも、みんな長い黒髪の子ばかりだ。
 ……これが病麻呂の好みなのだろうか?

 私はドキドキしながらエロ漫画を一冊手に取った。初めて目にする男体と女体の激しいぶつかり合いに、鼻血が出そうになってしまう。

「あっ、あわわわわ……えっちすぎない? 世の中の男女はこんなことしてるの!? まひるちゃんと観たドラマよりも遥かにえげつないことしてる!」

 驚きつつもページを捲る手が止まらない。こういうのに興味がない訳ではなかった。むしろ興味はあったけれど、今までの生活でこういったものに触れる機会は全く無かったのだ。まひるちゃんの部屋には大量のティーンズラブ雑誌が置いてあったけれど、「ひなにはまだ早い」と言って読ませてもらえなかった。

「えっえっ、亀甲縛り? それに背面観音縛り!? なるほどね、そういう縄の使い方もあるんだ」

「おっ、女の子がこんなはしたない顔をしてしまっていいの? でも、そんな顔をしてしまうくらいすごいのかな……?」

「うわあ、男の人って興奮したらこうなるんだ♡」

 ……これは、詳しく調べる必要がある。

 いつの間にか病麻呂の好みを知るというミッションは忘れ、私は知的探究心のままひたすらエロ本を読み漁った。数時間に渡る物色の末、厳選したものを数冊手に取って部屋に持ち帰ることにする。

 布団の上に寝転がりながら、私は存分に研究を重ねた。
 病麻呂はどうやら黒髪に姫カット、そして白い肌の子が堪らなく好きらしい。どの漫画を読んでも女の子がそんな感じの外見だった。漫画を読み進めるうちに耐え難い疼きがこみ上げてきて、なんだかいやらしい気分になってしまう。

 いけないことだと知りつつ、そっと秘部を指でなぞってみる。

「は、あっ……♡やっ、なにこれぇ♡おっ、おんなのこがこんなことしちゃいけないのにぃ……♡♡」

 初めての自慰はあまりにも甘くて、指を止めることができなかった。くせになるようなむずむずした快楽が秘部に走る。繰り広げられる男女の絡み合いに病麻呂と自分の姿を重ねながら、私は大胆に指を動かした。

「は、あっ♡きもちいい♡♡やみまろぉ……♡♡」

 足を開き、敏感な尖りをそっと弾く。下着はもう履いている意味をなさないほど濡れそぼってしまっている。自分に起きた変化に驚きながら、私は目を閉じて淫らな妄想に耽った。

 漫画の女の子みたいに、大切なところを丁寧に愛撫されたい。病麻呂の骨ばった手で胸を優しく揉んでほしい。あの艷やかな唇でキスしてほしい。装束越しじゃなくて、その中にある肉体に直接触れてみたい。

「ふあんっ!ゆび、とまらないっ♡♡やみまろっ、やみまろ♡♡もっとしてぇッ……♡♡」

 クリトリスを優しく扱き続ける。そうしているうちにむずむずした快感が波のように広がって、私は初めての甘い絶頂に溺れた。

「ふっ、ああぁぁぁっ!♡♡……あっ、あはぁっ♡♡これ、すご……♡♡」

 これは凄い。くせになってしまう。
 病麻呂に触れられない寂しさが、なんだか自慰によって満たされた気がする。

(よし、明日もやろう。これはルーチンワークにしよう)

 すっかり快楽の虜になった私は、それからも妄想の中で病麻呂と絡み合いながらひたすら自分を愛撫した。ひとしきりオナニーを楽しんだ後は、バレないように病麻呂のコレクションを押入れに仕舞う。

 こんなにすっきりしたのは久しぶりだ。心の中で素晴らしいエロ漫画たちに拝み倒しながら、私は晴れ晴れとした気分で温泉に入った。


 *


 すぐ戻ると言っていたのに、病麻呂が帰ってきたのは深夜だった。

 烏帽子は折れ、立派な公家装束は煤けてしまっている。そんなにぼろぼろになって一体どうしたのかと聞くと、病麻呂は顔を赤くしたり青くしたりしながら、「想定外のことが起きて引き分けに持ち込んだのじゃ」と呟いた。

「ひ、ひな。あの、麻呂が留守の間に……。いや、何でもない」

「ん? なあに、はっきり言ってよ」

「とっ、とにかく何でもないのじゃ! 麻呂は厠に行ってくる、それじゃあの! 夜は冷えるから暖かくして寝るのでおじゃるよっ!」

「あっ、またトイレ!? 信じられない!!」

 病麻呂は全力疾走しながらトイレへと向かった。彼の叫び声が廊下の奥から聞こえてくる。よほど切羽詰まっていたらしい。

 頻尿って大変だ。病麻呂の膀胱を案じつつ、私は明日もこっそりとあのお座敷に行こうと決めた。なんてったって、あの本棚には数え切れないほどのコレクションが並べられている。あの漫画たちは、きっと私の素晴らしい妄想の助けになってくれるに違いない。

 鼻歌まじりに部屋へ向かう。

 寝る前に病麻呂の名を呼びながらもう一度自慰をする。鬱憤を解放したお陰で、その日はとてもいい気分で眠りにつくことができた。


 ――――****――――


「やみまろ~。おーい、やみまろってば! 私の話聞いてた?」

「聞いとる聞いとる……。そちが食べたいのは団子でおじゃったな」

「違う違うお好み焼き! かすってもいないよ! ねえあなた、一体どうしちゃったの?」

 病麻呂が光り輝くUFOを討ちに行ったあの日から、およそ一ヶ月。

 彼は前にも増しておかしくなってしまった。目元には白粉で誤魔化せないほどのくっきりした隈が浮かび上がり、睡眠不足なのかずっとぼんやりしている。口を半開きにしながら船を漕ぐエルフに、喝を入れてやろうと勢いよく抱きつく。

「やーみーまーろー。そんな眠いなら寝た方がいいよ。私と一緒にお昼寝する?」

 首に腕を回し、滑らかな頬に唇を寄せる。すると病麻呂は情けない声を上げて私を引き剥がそうとした。しかしもうその手には乗らない。病麻呂の妨害から素早く逃れ、畳の上に彼を押し倒す。

「ねえ、なんちゃって公家エルフさん。いい加減私から逃げないでよ。どうして病麻呂はいつも私から距離を取ろうとするの?」

「ひぃっ!? まっ、麻呂の上から退くのじゃ雛菊! この体勢はあまりにも危ういでおじゃ――」

 拒絶の言葉を人差し指で塞ぐ。艷やかな唇をなぞりながら、私は潤む朱色の瞳を覗き込んだ。

「ふうん? 何が危ういのか分からないけど、まだ私から逃げようとするんだね。ねえやみまろ、あなたって私が近づいたら距離取るくせに、いつも私のことじっと見てるよね? なんでそんな行動をするのか知りたいなあ」

「んぐぅっ……は、離れよ……!」

「いーや! やみまろって私が温泉に入ってる間いつも更衣所にいるし、着替えの間も廊下にいるよね? ふふっ。見守りのついでに、私の裸を覗いてたりして……♡やだやみまろってば、いやらしっ♡人間のことを事あるごとに見下すくせに、人間の女の子には興味があったの?♡♡」

 病麻呂の尖った耳にちゅっとキスを落とす。
 一際大きな呻き声が聞こえた後、隣でぽたぽたと何かが滴る音がした。

「え? やっ、やみまろ!? 鼻血出てる! だいじょうぶ!?」

 病麻呂の高い鼻から赤い雫が滴り落ちていく。彼は私を優しく起き上がらせた後、厠に行くと言って涙目のまま消えてしまった。

「また逃げられちゃった。悪いことしたかな? まさか鼻血出すなんて思わなかった」

 なぜ病麻呂はああも自分を避けるのだろう。
 私は抱きつきたくて、キスしたくて仕方ないのに。

「はあ、何でだろう? ……あっ」

 しばらく考えた後、ぴこんと頭の中の電球が点灯する。

(も、もしかして。病麻呂は私に性的に興奮してるんじゃない!?)

 彼のエロコレクションを思い出す。黒髪、姫カット、白い肌の女の子ばかり並んでいた。

 どうして気が付かなかったのだろう。
 黒髪、姫カット、白い肌。完全に私に当て嵌まっているじゃないか!!

 ……今まで私はこう思っていた。エルフである病麻呂が私を可愛がるのは、人間がペットを可愛がるようなものなのだと。彼は何かにつけて私のことを「人間の娘」と呼ぶし、そもそも人間のことを魔法も使えない脆弱な種族だと見下しているところがある。

 だから病麻呂は、きっと私のことをひとりの女性として見てくれない。そう思っていた。

 ……けれど。

 彼が私にエロスを見出しているのだとしたら話は変わってくる。

 ビキニを着たら逃げる。ショートパンツで抱きついたら顔を真っ赤にする。キスをしようとしたら距離を取る。不自然な病麻呂の行動がどんどん繋がっていく。
 
 彼はこの花条雛菊はなじょうひなぎくを、とっくにひとりの女として意識しているのではないだろうか?

「そっかそっか……んふふっ! 病麻呂ってば、だから私から逃げてたんだね……♡」

 嬉しさが込み上げてくる。私はにやにやと笑いながらちゃぶ台に突っ伏した。

 心の中のまひるちゃんが「これはワンチャンあるよ」と囁いてくる。ワンチャンどころかフルチャンあるかもしれない。

 病麻呂から贈られた力強い言葉を思い出す。
 
 ――やりたいことをやり、思うがまま振る舞ってみよ。

 私は病麻呂と、ヤりたい。

(だって、いつ満月になるか分からないじゃない! 心残りがないように、病麻呂とできることは全てやっておくべきだよ。次元の狭間を出たら二度と病麻呂には会えない。私の世界にはあんなイケメンエルフはいない! ならここにいるうちにヤるしかないじゃない!)

 浅ましい欲望がむくむくと込み上げてくる。
 ここまで来たらもう止められない。

 私もエロ漫画みたいに、あんなことやこんなことを病麻呂としてみたい。私は病麻呂に欲情しているし、病麻呂も私に欲情している可能性が高い。ならば一発ヤらなきゃ損じゃないか?

 自分から明け透けに誘うのはさすがに恥ずかしい。だからここは病麻呂に優しく襲ってもらいたい。今までの言動から考えるに、彼は性交渉の経験が無いはずだ。処女の私でも上手く誘惑すれば、病麻呂をその気にさせることはできるんじゃないだろうか……。

 ――童貞なのはお前らも一緒でおじゃろうが! いいから早う画像の詳細を麻呂に教えろッ!

 ――ちょっ、ちょっとこれは本当に無理! ちぇりーの麻呂には刺激が強すぎる!

「ふっ、童貞か……」

 にまにまと笑いながら病麻呂の顔を思い浮かべる。童貞なんちゃって公家エルフ、なんて甘美な存在だろうか。

 病麻呂の童貞は私がもらう。
 何としても、絶対に!

 私は決意を胸に、病麻呂を狼にする作戦を立てた。


 *


 次の日から、私は徹底的に病麻呂を追い詰めた。

 逃げようとする彼を追いかけ、耳や頬にキスの雨を降らせる。ミニスカートとニーハイソックスの間をちらちら見せながらそこら辺を歩く。湯上がりにわざわざ病麻呂のお座敷を訪ねる。首に腕を回し押し倒す。ビキニで迫る。ショートパンツで攻め込む。股間を押さえながら涙目になる病麻呂を必死に誘惑する。

 なんちゃって公家エルフの性癖は徹底的に頭に叩き込んだ。ミニスカ、ニーハイ、ショートパンツ、そして女性上位。何よりも黒髪、姫カット、白い肌! 

 私は隙あらば性的な接触を図った。太ももを見せつけ、控えめな胸を押し付け、とにかく病麻呂に甘え倒すことを心がけた。
 
 私のプランは完璧だ。
 このまま追い詰めていけば、いずれ彼は獣となってくれるに違いない。

(襲え、襲え……。私を襲いなさいよ病麻呂! こっちは襲ってくれるのをずっと待ってるのよ! 早う、早う!)

 けれど、病麻呂は全然私に手を出してくれなかった。ここまでしているのに彼は全く欲望を曝け出してくれない。一週間、二週間。成果が得られないままどんどんと日々が過ぎていく。

 私は悶々とした気持ちのまま自慰に耽り、そしてまた同じことを繰り返した。


 ――――****――――


(もうすぐで満月になっちゃいそう。またいつも通り三日月に戻ってくれたら嬉しいんだけど)

 赤い月を見上げる。
 後少しで満ちそうな月に不安が込み上げてきて、わざと大きな溜息を吐いた。

(お願い、お月さま。もう少しだけ待ってよ。私まだ病麻呂と夜を共にしてないの)

 月に祈る。今度こそ帰りの道が拓いてしまうかもしれないと思うと眠れなくて、私は縁側に腰掛けながら、ずっと夜風に吹かれていた。

(ん? 何か声が聞こえる)

 荒い息遣いと共に、布が擦れあうような音がどこからか聞こえてくる。足音を立てないようにしながら、私は声の出どころを探った。

 ……病麻呂が過ごすお座敷だ。
 障子の向こう側からほのかな灯りがこぼれている。柱に隠れながら、私は聞こえてくる声に耳を傾けた。

「――な。ひなぁっ♡そちはほんに悪い子じゃ♡♡そんなことをしては駄目だと言ったじゃろうにっ♡も、もう麻呂の魔羅が――」

(ん? これってもしかして)

 色気のある声で紡がれる私の名前。しゅっ、しゅっと何かを擦るような音、荒い息遣い。

 ……これはチャンスだ。フルチャンだ。
 ある確信を持った私は、ぱぁんと勢いよく障子を開けた。

「たのもーー!!」

「へぁっ!?」

 そこには座卓の前で胡座をかく病麻呂がいた。片手に私のパンツを持ち、もう片方の手で自分の陰茎を握っている。公家装束に隠れて肝心なところは見えないが、この状況から言い逃れはできない。

 病麻呂は確かに、私でオナニーをしていた。

「みっ、みみみみみ、……見た?」

「見た。しっかり見た。病麻呂が私の名前呼んでるの聞いちゃった」

「……あぁ……なんて、ことだ……。ひっ、ひなに見られるなんて最悪だ……!」

 病麻呂はしんなりと耳を下げた。彼は動揺のあまりおじゃる口調を忘れてしまっている。私は緩む唇を噛み締めながらつかつかと病麻呂に近寄り、座卓の上のノートパソコンを覗き込んだ。

 開かれたままの電子掲示板、デスクトップに置かれた圧縮ファイル、そして解凍されたフォルダの中にある画像。それは私によく似た外見の女の子が、そそり勃つ男根を足で扱く漫画だった。

 状況を察する。
 病麻呂が日々『じっぷ要求』をしていたのは、きっとこのファイルだったのだろう……。

「ふ、ふうん。病麻呂ってば、こういうのが好きなんだ♡女の子の足で大事なところをいじられるのが好きなんて、やみまろってばへんたーい……♡♡」

 如何にも初めて知ったという様子で口にする。病麻呂がこういった女性上位もののシチュエーションを好むということはとっくに知っていたけれど、涙目でふるふると震えるエルフを見ていたら嗜虐心が湧き上がってきて、ちょっとだけいじめさせてもらうことにした。

「んふふっ♡♡やみまろって人間のことを弱っちい種族だって見下すくせに、人間の女の子には興奮しちゃうんだね……♡♡ねえ、それ私のパンツだよね?♡私にこうされることを想像してこんないやらしいことしてたの?♡♡やだぁっ、信じらんない!♡このすけべエルフ♡♡きっと私のお風呂も覗いてたんでしょ♡♡」

「んぐうぅっ」

 病麻呂の耳がひくりと震える。興奮と羞恥が混ざった顔で私を見上げるエルフが愛おしい。

 ……彼は確か言葉責めも大好きだったはずだ。男性を言葉で責めるだなんて初めてだけれど、期待に添えるよう頑張らなければ。大丈夫、できる。日々病麻呂のエロコレクションを読み込んだ私にならできるはず!

「んふふぅっ♡えっちなことなんて興味ないですみたいな綺麗な顔して、こーんなどぎついエロ漫画読んでたんだぁっ♡♡ねえ、パソコンの女の子って私にそっくりだよね?♡♡この画像を手に入れるために夜な夜な頑張ってたの?♡♡病麻呂ってばさいってえ♡♡この生臭エルフ♡♡♡私のことをやらしい目で見ながらしこってたんだぁっ♡♡♡♡」

「まっ、まて! ひなぎくっ、それ以上はやめよ……!」

 座卓を退かし、病麻呂の上に乗っかる。次元が違うとはいえ他の女の子を見るのは許さない。せっかく目の前に黒髪姫カットの女の子がいるんだから私だけを見てほしい。

 首に腕を回し、耳にねっとりと息を吹きかける。硬い陰茎に太ももを擦りつけると、布越しに生温かいものがじんわりと広がるのを感じた。

「あっ♡やだぁ♡なんか濡れてきた♡♡それにえっちな臭いもする♡♡やみまろってば、私に乗っかられて出しちゃったの?♡♡♡いくら何でもざこすぎない?♡♡エルフのおちんちんよわーい♡♡♡♡高貴な精子無駄撃ち♡♡♡ねえっ、見下してた人間の娘に馬鹿にされる気持ちはどう?♡♡♡興奮しちゃう?♡♡♡」

「ん、ぐぅ……。やめよと言ってるだろうに……!」

 病麻呂が低い声を出す。
 
 いいぞいいぞ、獣になれ。
 そのまま私を襲ってしまえ! 優しく私をリードしてくれ!

「やみまろってばどうせ童貞なんでしょ♡♡♡だからこんなよわよわおちんちんなんだぁっ♡♡♡♡ねえ童貞エルフさん♡私のふわふわおっぱい、ちょっとだけ触らせてあげよっか?♡♡こんな次元の狭間に閉じ込められてたら年頃の女の子と接する機会なんてそうないもんね?♡♡♡あ、でもやみまろには刺激が強すぎるかなあっ?♡♡♡ほーら擦り付けてあげる♡あ、また硬くなってきたあっ♡♡」

「…………こ、の……」

 あとひと押しだ。
 頑張れ雛菊。病麻呂の童貞を何としても手に入れろ!

「ここまでこけにされてもなーんにも言い返せないだなんて♡♡やみまろってば本当にざこなんだから♡♡♡童貞ざこエルフ♡♡♡ほらほらぁ、悔しいなら何か言ってみなさいよ!♡♡♡♡やーいよわよわおちんちん♡♡♡帰るまでずっとからかってあげる♡♡♡♡ねーえ、女の子にここまで言わせて恥ずかしくないのおっ?♡♡病麻呂が望むならえっちなことしてあげたっていいんだよ?♡♡お公家さまのえっちなところ、見てみたいなあ……♡♡♡♡」

「こんのッ、悪い女子おなごがあああぁぁぁ!!」

「きゃっ!?」

 視界が反転する。何が起きたのか分からず目を瞬くと、病麻呂が荒い息を吐きながら私に覆い被さってきた。どうやら私は押し倒されたらしい。

 ふぅー、ふぅーと息を吐く彼の顔は完全にキレてしまっている。真っ赤に染まった頬に噛み締められた唇、見開かれた目は私に食らいつかんとばかりにぎらぎら光っている。欲望丸出しのその表情に、私は自分の奥がきゅんと疼くのを感じた。

「この高貴な森人をここまで馬鹿にしおってっ! こんな、こんなっ……! ただで済むと思うなよ雛菊! わざと薄着で出歩きおってぇ! しょーとぱんつ? みにすか? それににーはいじゃと? 堪らん格好で男に抱きつくな!! ふざけるなよ人間の娘がァ、麻呂が何度厠でしこったと思っておる!! あんな淫らな服で出歩く奴がおるか!!」

「なっ、自分を解放しろって言ったのは病麻呂じゃない! 私は私のしたい格好をしただけだよ!」

「それでも一定の淑やかさは必要じゃろうが!! 近頃はもう完全に麻呂を誘っていたでおじゃろうっ!? いたいけな人間の娘だからと必死に我慢すれば、それを嘲笑うように麻呂を煽りおってぇぇぇ……! 毎夜毎夜切なげに名を呼ばれる麻呂の気持ちを考えたことがあるか!? お陰で昂りが収まらぬ! そちのせいで麻呂はすっかり不眠じゃあ!!」

「わ、私がしてたの知ってたの?」

「とっくに知っとるわ! 森人は耳が良いんじゃ! そちのあんな声もこんな声も可愛い寝言も全部聞こえておる!! あーもう、我慢ならぬ!! 悪いのはそちじゃぞ雛菊! 絶対に絶対に許さぬ! 童貞を馬鹿にした責任を取れ!!」

 病麻呂は私を姫抱きにし、布団の上に優しく下ろした。長い黒髪が帳のように下りてきて、凄まじく整った顔がぐっと近づけられる。彼が指を鳴らすと、近くにある香炉からピンク色の煙がもくもくと立ち上った。

「えっなにこれ」

「くふふふっ、媚薬香じゃ。ひと吸いしたら男も女も大変なことになる劇物じゃ! そちは麻呂と共にこれから組んず解れつするのでおじゃる、どろっどろのぐっちょぐちょにして蕩かしてやる! たんと公家竿を食わせてやるから覚悟しろよ雛菊……!」

「あ……♡やみまろの顔、こわぁっ……♡♡」

 私に伸し掛かる病麻呂は完全に怒っている。
 優しく抱いてもらいたいという私の計画にヒビが入る。何か、良からぬスイッチを押してしまったかもしれない。

「あの、あんまりなご無体は控えていただけると……♡」

「だまりゃ、大人しくするでおじゃる!♡♡もう麻呂は止まらんぞ♡♡謝られても縋られてもそちを可愛がり抜くと決めたでおじゃる♡♡」

 私の前に病麻呂の男根が突き出される。ぼろりと音を立てて現れたそれは赤黒い蛇のようで、私はそのグロテスクさに息を呑んだ。

「さーて……♡ひなよ、麻呂の魔羅を存分に味わうがよい♡♡」

 病麻呂はにぃっと笑い、私の服に手をかけた。
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