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第二章

38.散らす

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 落ち着きを取り戻したレントから案内されたのは、広い広い部屋だった。揃えられた家具はそれなりに豪華なものであるのに、部屋は寒々しい。リアは無機質な灰色の石壁が冷たい印象を与えているのだと感じた。

「リアさん。先程は失礼いたしました。僕はあなたの前で取り乱してしまいました。傷付いていたあなたを、尚更不安にさせてしまいましたね」

「いえ。レントさんがご自分の話を私にしてくれなかったら、ゼルと話をしたいという望みを捨てきれなかったでしょうから」

 ゼルドリックを諦めると、リアはオリヴァーとレントに伝えた。今はまだ好きで仕方ないが、自分が原因で彼を死なせたくないから諦める努力をすると伝えれば、二人は苦い顔をしながらも頷いた。

 そしてレントはリアに、これからはこの建物の中で過ごしてほしいと伝えてきた。レントが言うには、ここは中央政府が保有する研究施設のひとつらしい。この建物を構成する石壁にはリアの存在を覆い隠す魔法が掛けられていて、ここで過ごしていればゼルドリックは手を出せないはずだとリアに言った。

「鍛冶場は下階に用意してあります。食事はこちらで用意しますし、なるべくリアさんに不便がないように取り計らいますね。ゼルドリック様からお守りする以上、リアさんお一人で自由に外に出ることは出来ませんが、どうしても外に出る必要がある時は、僕かオリヴァー様が同行します」

「ありがとうございます。ご迷惑をお掛けします」

 リアが頭を深く頭を下げると、レントが片手を上げて止めた。

「僕たちはあなたを救い出すのに、随分と時間がかかってしまいました。本当はもっともっと早く、あなたがゼルドリック様と上手くいかなくなる前に引き離したかったのですが、ゼルドリック様は非常に力が強く危険な方です」

「単にリアさんとゼルドリック様を引き離しただけでは、彼はあなたをすぐ取り戻そうとするでしょう。それでは意味がない。……ですから、ゼルドリック様でも簡単に手が出せないような避難場所を作る必要があった。その用意に数ヶ月かかってしまったのです」

「……私のために……?」

 オリヴァーは溜息を吐いた。そしてリアを作りの良いふかふかとしたベッドに座らせ、楽にするように言った。

「はあ。まさかゼルドリックが本当に貴様を飼っていたとは思わなんだ。私は貴様の口から愛玩動物ではないと聞いた時はまだ猶予があると安心したのだがな。僅かの間に、こんなことになるとは。まあ、今日はよく休め。貴様にも考えを整理する時間が必要だろう」

 リアはオリヴァーのおかっぱ頭を見た。美しい若草色の毛先がちりちりと焦げている。彼はどうやら自分の髪に誇りを抱いていたようだった。自分に掛けられた魔法を、彼は懸命に解除してくれたのだ。リアはオリヴァーに礼を言った。

「オリヴァー様。本当にありがとうございました。オリヴァー様なくしては魔法の解除は出来なかったとレントさんから聞いています。お陰で身体も随分と楽になりました」

 リアが礼を言うと、オリヴァーは大声で笑い始めた。

「ふはははっ! そうだ! あのゼルドリックの魔法を、この私以外に解除できる者はいない! このオリヴァーがいなければ叶わなかった! 綿毛女、貴様は中々素直じゃないか? もっと私に感謝しても良いのだぞ? ん?」

(ああ、オリヴァー様は多分褒められることが好きなんだな)

 リアは高らかに笑うオリヴァーを見て微笑んだ。レントはリアの顔を見て、ほっと息を吐いた。

「オリヴァー様、その辺で。……安全のためにも、常にリアさんの傍に誰かがいるようにしたいのですが。申し訳ないことに今汚職がらみの任務が立て込んでおりまして、僕もオリヴァー様も常にとはいかないのです。ですが一週間に一度、必ずここに顔を出すようにします。しばらくは自由に外に出られない生活が続きますが、どうか耐えて下さい」

「……はい。何から何までありがとうございます」

「礼には及びません。あなたの様な方を守るのは、我々中央政府の役人の仕事ですから」

 レントはリアの手を取った。そして、リアの小さな手に何かを握らせた。

「リアさん。これを……」

「これは?」

 それはタリスマンだった。淡く光るそれは、何やら不思議な力があるように感じられた。

遮蔽しゃへい魔術。ある特定のものを覆い隠す魔法のことです。そのタリスマンには、リアさんの存在を覆い隠す遮蔽魔術が施されています。後日、アンジェロと共にはずれの村に向かう予定だと聞いています。外出する際は、必ずこのタリスマンを身に着けて下さい。これを着けている限りは、ゼルドリック様はあなたの存在を認識できないはずです。彼は長期の任務に出る予定ですが、リアさんを追ってくる可能性がないとは言い切れませんからね」

「分かりました」

 リアはそっとタリスマンを握った。美しい花の意匠が施されたそれを握ると、僅かに自分の手がぼやけるのを見た。

「綿毛女、しばしの辛抱だ。もうすぐ大魔導師であるミーミス様が帰国する。彼女は私やゼルドリックの師であった方だ。ゼルドリックの暴走を止められるであろう唯一の方。彼女がいれば、貴様は自由に出歩けるようになる。その方が来るまでは耐え忍べ」

 オリヴァーはリアの首に治癒の魔法をかけた。ぽう、と温かい光がリアの首に当てられ、ゼルドリックから付けられた赤い痕がすぐに消えていく。

「あ……」

「うむ、綺麗になった。綿毛女、ここは安全だ。もう身体を強張らせる必要はない。まずはゆっくり休め」

「ありがとうございます」

 リアが頷くと、二人のエルフは微笑み、そしてそっとその場から消えた。





(受け止めきれないわ)

 リアはサイドテーブルに立てかけてある小さな鏡を手に取った。首はすっかり元通りになっている。

(駄目だ。せっかくオリヴァー様が治してくれたのに……。どこか寂しいって思ってしまう。私はおかしい。こんな調子じゃ、ゼルのことを諦められない)

 鏡を置き、リアは溜息を吐いた。

(ゼルのことが好き。大好き。……諦めるとは言ったけど、きっとこの先、諦めきれない気がする。彼は罪を犯した。もう彼とは会えない。対話もできない。関係を断ち切るべき。だからこんな気持ちを抱えていても仕方がないのに。私といては、彼に破滅が訪れてしまうのに……)

 リアは何度も何度も、頭の中で同じことを考え苦しんだ。
 熱は引いたのに、身体が苦しくて仕方がなかった。

 レントから聞いた恐ろしい未来が、ぞっと背筋を冷えさせる。リアは俯き何度も息を吐いた。

(私は結局、ゼルの抱えている悩みを聞き出せなかった……弱いな)

 リアが後悔に俯き震えていると、何かが顔の横に近づいてくるのが見えた。

 ぴとり。

 リアの頬に何か冷たいものが当てられた。それは誰かの掌だった。

「やあ、リアちゃん! 久しぶり。随分と悩んでるみたいだね?」

 リアは急いで横を見た。

 赤い唇、赤葡萄色の瞳が、じっとリアを見つめている。紫色の髪を短く刈った女のエルフ。彼女が耳に着けている、大きな葡萄葉のピアスが揺れた。

「あ、あなたは……?」

「久しぶり、あたしのこと覚えてる?」

「前にゼルのことを、おっさんって言った……」

 リアがそう言うと、女のエルフはからからと笑った。

「そ! よく覚えててくれたね? リアちゃんも大変だよね? あんなおっさんに執着されてさあ。拗らせた男ってマジでめんどくせーよ」

 女のエルフはリアの隣にどっしりと座りこみ、長くすらりとした足を組んだ。鋲が打ち込まれた派手な中央政府の制服が、じゃらじゃらと音を立てる。リアは戸惑いながら女に尋ねた。

「あの、あなたは……?」

「あたし? あたしはメルロー。中央政府諜報部隊所属、メルロー=ブラッドスター。よろしくね、リアちゃん」

 メルローは器用にウィンクをした。

「えっと……ブラッドスター、様」

「うっわ堅苦し! あたしのことはメルローちゃんって呼んで。リアちゃんの耳はちっちゃいね。こんなんじゃピアス開けられなさそー」

 メルローはリアの耳を遠慮なくぐにぐにと触った。リアは大人しく耳を触られたままメルローに向き直った。

「あの、メルロー……ちゃん?」

「なあに?」

「ここにはどこから入ったのですか? あなたの気配が、全くしなかった」

「あははっ! あたしは変幻自在なんだよ。最初っからこの部屋にいたよ。誰もあたしに気が付かなかったけどね」

 メルローは真っ赤な唇を美しく、得意げに歪めた。

「あたしね、リアちゃんのことよーく知ってるよ。ゼルドリックのおっさんと頻繁に買い物に行ってたでしょ? おっさんも情けないよね、レントに嫉妬なんかしちゃってさ。工場の管理は君に任されているが、彼女自身のことは私に任されているのでな……だって! 超笑えるわ!」

 メルローはゼルドリックの真似をした後、甲高い声で笑い出した。

「……なぜ、それを知って……?」

「リアちゃんが気が付かないだけで、あたしとリアちゃんは随分前に会ったことがあんだよ」

 メルローはいたずらそうに笑った後、ぼんと音を立てて、自分の周りに妖しげな紫色の煙を燻らせた。メルローの姿がすっかり見えなくなった後、煙の中からメルローではない誰かが出てきた。

「よっ! 赤毛の姉ちゃん!」

 煙の中から出てきたのは、オークの男だった。リアがゼルドリックと共によく野菜を買った、市場で八百屋を営むオークの男。

「へ!? えっ!? オークさん……?」

「あたしはね、化け術が得意なの。あたしはあたしが望んだ好きな姿になれるのさ。例えば……」

 またぼんと音を立てて紫色の煙が立ち込める。次に煙の中から出てきたのは、リアだった。

「こうしてリアちゃんの姿にもなれる。そっくりでしょ? 顔から声からぜーんぶ」

「すごい、信じられない……」

 リアは目の前にいる自分を見てぱちくりと目を瞬いた。メルローは大笑いをした後、煙を燻らせ元の姿に戻った。

「あー、いいねその反応。誰かを驚かせるのっていつでも楽しいよ」

「こんな魔法があるなんて。でも、どうしてオークに化けてたんですか?」

 メルローはにやりと笑った。

「情報収集だよ。諜報部隊の任務の一環でね。市場に居ると色々な情報が聞けるからオークに化けて八百屋やってたのさ。んで任務中、珍しい赤毛の女の子を連れたダークエルフが頻繁にやってくる。よくよく見ると政府で話題のエリート様じゃない? 最初はレントに嫉妬するあいつを面白おかしく見てたんだけど、リアちゃんがあたしの目の前で倒れた日、あいつ無理やりあんたを連れ去ったでしょ」

「ああ……なるほど……」

 リアは申し訳なさそうに目を瞑った。

「あの時はすみません。ろくにお礼も言えずに……」

「いや別に、気にしてねーよ」

 メルローは足を組み直した。

「そんで、あんたに対する行動を見てさ、あの男ヤバい奴じゃんって思ったの。そしたらちょうど馴染みのレントがあたしに連絡してきてさ。ゼルドリック=ブラッドスターについて探ってほしいと言ってきた。そしたら次々に出てくるわ、あの男の犯罪の形跡。あいつ、色んな書類を偽造して、色んな奴らを害してきたの。あんた一人を囲い込むためだけにね。苦笑いしちまったよ」

 ひゅ、とリアは息を呑んだ。

「リアちゃんに見せたいものがあんのよね。まずはこれ」

 メルローは魔法で掌から何かを出した。それは何枚かの紙で、リアはメルローから訝しげにそれを受け取った。

「これ、郵便記録ですか?」

「そ。ねえリアちゃん。王都に来てからお手紙って受け取った?」

「手紙ですか? いいえ、一度も……」

「ふーん。ねえ、おかしいと思わなかった? 自分が住んでた村から一通も手紙が来ないの」

 メルローは真っ赤な唇を歪め、赤葡萄色の瞳でリアをじっと覗き込んだ。

(そういえばアンジェロ様……マルが私に手紙を出したけど返事が無いって言ってた気がする……)

「リアちゃん宛の手紙の記録を追ったわけよ。リアちゃんって結構なアイドルだよね。あんたの作品にお熱な貴族とか、どっかの行商人とか、あとあんたが住んでた村の住民とか? リアちゃん宛に、いっぱいお手紙が送られてたみたいだよ」

「でも、私はこの記録の中の……一通も受け取ったことがありません」

「そっかそっか。じゃあ、ゼルドリックのおっさんがあんた宛の手紙を全部捨てちゃったのかもね。受取人はおっさんになってるから」

「……」

「大方、愛の告白が交じった手紙でも呼んで嫉妬心を燃やしたんでしょ。だからって普通他人の手紙を捨てちゃう? あのおっさんやっぱ変だわ。リアちゃんを囲い込もうと必死なんだね」

「…………」

 リアは黙りこくった。
 ゼルドリックの所業が露わになる度心が震えていく。
 ゼルドリックが何を考えているのか分からない恐怖。
 未来への不安。彼への恋情をむごく散らす度に湧き上がる悲しみ。

 だが、今一瞬顔を覗かせたこの感情は……喜び?

 とくり、とくりとリアの胸が跳ねる。

(ゼルのことは、怖い。私宛の手紙はたくさんあった、あの全てを廃棄したというの?)

(私を外部に接触させないために……? そんなのおかしい)

 とくり、とリアの胸が大きく跳ねた。

(……でも)

 自分の心を覆い尽くした恐怖。
 そしてその中に過ぎった……喜び。リアはそれを確かに感じ取った。

(おかしいのは私だ。ゼルがそれほど私に執着をしているって、形で確認して。……私は確かに、嬉しいと思った……)

(どうして? こんなことを思っては駄目なのに。ゼルを諦められなくて、苦しくなるのは私なのに)

(ゼルのやったことは犯罪よ。こんなことは決して認めてはいけないのに。なのに嬉しいだなんて。私はおかしくなってしまった。私はもう、普通じゃない……)

「……おーい。どうしたの? 急に黙りこくって、俯いちゃってさ」

 メルローが間の抜けた声でリアに問いかけた。リアははっとして、メルローに顔を向けた。

「あ、いえ……何でも……」

「そ、ならいいけど」

 メルローは赤葡萄色の目を細めた。

「あんたに伝えておきたいことがもう一つ。あんたが今着てる服から下着、それから他にあの屋敷から持ってきたものがあれば、後であたしに全部頂戴」

「……どうして、ですか?」

「あんたが身に着けてるその服に、ゼルドリックの魔力が混ざってるだろうから。そのままにしといちゃ悪影響が出る。あたしは奴の屋敷を調査した。あんたが寝てたベッドのシーツから、化粧品から、庭の薔薇から、料理に使う材料から風呂の水まで。全部が全部、あいつの魔力に汚されてた」

「特にあんたが過ごしてた部屋は魔力塗れだったよ。……異常な量だった。調査したあたしが魔力酔いを引き起こしかけるほどに。何でそんなことするかさっぱり分からなくて、気持ち悪くてしゃーないけどひとつ分かったわ。リアちゃん、あんた余程気に入られてるんだね。魔力でマーキングされるほど」

「……」


 リアは自分を叱咤しながらも、また感じてしまった確かな喜びに目を潤ませた。
 むごく散らした恋の花が、また咲いていく。ゼルドリックは自分のことが好きなのではないかという淡い期待を、また持ってしまう。

(だめ、私、おかしい……。こんなことで、嬉しいなんて思っちゃ、だめ……。この恋は諦めないといけないのに……)

 リアはメルローから顔を逸らした。顔を赤らめ、目を潤ませるリアを見てメルローは何を思ったのか。リアの顔を両手でがっしりと掴み、メルローは自分の方に勢い良く顔を向けさせた。赤葡萄色の切れ長の瞳が、リアの心を見透かすように見つめてくる。リアは驚きに目を見開いた。

「め、メルローちゃ、何をっ……」

「不安だわ、あんた」

 メルローはリアを見つめながらぼそっと呟いた。

「ねえ、念の為言っておくけどさ。あんた、もしゼルドリックのおっさんが追ってきたらどうする?」

「どうする、って……」

「リアちゃん、レントから聞いた未来のことなんてお構いなしに、あの男にのこのこついていきそうだよね。本当に不安だわ」

 メルローは吐き捨てた。

「顔真っ赤にして、目もうるうるさせちゃってさ。エロい表情すんじゃない。おっさんがあんたに狂っていった理由も分かる気がする。ねえリアちゃん、あたしの話を聞いて嬉しいって思ったでしょ。自分のことをこんなに束縛してくれて嬉しいって」

 メルローに自分の心の内を見抜かれている。リアは唇を戦慄かせた。

「あたし、あんたのこと度々見てたけどさ。ゼルドリックのおっさんに触られた時、口では窘めつついつもエロい顔してたよね。肩やら腰やら触られて、嫌って言ってるくせに、もっとしてって期待するような顔をしてた」

「い、いや、違う……」

 リアは頭を振った。だがメルローは、リアが顔を逸らすのを許さなかった。

「そういうのがきっとあの男を煽ったんだ、もっと苛めてやりたいって。リアちゃん、ゼルドリックのおっさんがやらかしてきたことを聞いてるのに、まだ好きで堪らないって顔してるもん。あの男を怖がってるくせに、あの男から執着されることを喜んでもいる。ねえ、マゾっ気たっぷりのリアちゃん、あんたその調子で、本当にゼルドリックのおっさんを諦められんの?」

「そ、そんなこと……思ってなっ」

「思ったでしょ? ねえ、あの男は絶対に止めな。別にあいつ、リアちゃんのことを愛してる訳じゃないと思うよ? 単にあんたのでかい胸と尻に惹かれて、自分専用の性奴隷を作ろうとしてるのかもしれないよ? あんた、ただの便利で性的なお友達として使い潰されるのかもしれないよ? それでもいいの?」

 メルローはあけすけな言い方で強く言った。リアはその言葉になお目を潤ませた。

「ねえ? リアちゃんとあの男を一緒にさせてたらさ、いっぱい死人が出るわけよ。あんたも死ぬし、あんたの好きな男だって狂って死ぬの! レントもオリヴァーのおっさんもあたしも皆死ぬ! こんな状態だもん、もし、あの男と遭遇したらあんたは簡単に靡くよね? あんたをゼルドリックのおっさんから引き離すためにさ、レントの奴も、オリヴァーのおっさんも、あたしも必死で動いてきた訳!」

「この建物全体に遮蔽魔術を施すのだって何ヶ月もかかった。ゼルドリックのおっさんにバレないように神経使いながら手回ししてきたの。あのぞっとする未来を避けるために! でも肝心のあんたがそんな調子じゃ、あの未来が近づいてくるかもしれないんだよ。それ分かってんの?」

「うっ……」

 リアはとうとうメルローを見ながら涙を流した。ぽろぽろと痛ましい雫が流れていく。
 メルローは潤んだ赤い瞳を見て、眉を下げた。

「ごめん。強く言い過ぎたわ。……あたし、別にリアちゃんを泣かせたい訳じゃない」

 メルローは強さを引っ込めた、静かな声を出した。

「ねえ。今日の今日で今まで好きだった奴を諦めろって、無茶なことを言ってるのは分かるよ。でもさ、頑張って……忘れてよ。あんたはあんたなりにゼルドリックのおっさんと話そうとしてきたんだろ? でも、おっさんはあんたの話に耳を傾けることはなかったんだよな?」

「あたしは、度々あんたたちを見てきたけど、いつもおっさんは何だか一方的だった。そんで結局リアちゃんは閉じ込められちまった。あたしたちが介入してなかったら、あんたはずっと監禁されてた。それを忘れないで。おっさんとリアちゃんを、もう会わせる訳にはいかないんだ」

「……う、ううっ……」

 メルローはぐしゃぐしゃとリアの頭を撫でた。

「優しいリアちゃんはさ、まだあいつと未来について話せないかって思ってんだろうね。可哀想だけど、おんなじことを繰り返して終わると思うよ。あんたは監禁され、今度こそ外に出してもらえない。バッドエンドだ。あんたとおっさんは、上手くいかなかった。もうそれで終わり」

「なあ、そんな顔すんなよ、もっといい男はたくさんいるよ。今は苦しいだろうけどその内忘れるさ。安心してこれからも生きていきたけりゃ、ゼルドリックのおっさんのことはさっさと頭のどっかに追いやった方がいい。……分かった?」

 リアが泣きながらもゆっくり頷くと、メルローは優しくリアの涙を拭った。

「ま、ここにいりゃゼルドリックのおっさんが襲ってくる心配はまずねーだろ」

 メルローはベッドからすくっと立ちあがると、こつこつとブーツの踵を鳴らした。

「あたしとレントの奴、オリヴァーのおっさんの三人がリアちゃんを守ってる。いずれミーミスの姐さんもやってくる。それでも油断できねえのがゼルドリックだ。あたしたちの手を掻い潜って、リアちゃんに接触を図ろうとしてくるかもしれない」

「ねえ、よく聞いて。あいつに対して絶対に隙を見せないで。あいつはその隙に付け込んでくる。最後の砦はリアちゃん自身だ。あんたから徹底的に突き放されりゃ、あいつも取り付く島ねーだろ」

 リアははらはらと涙を流して、そして無理やりまたひとつ頷いた。

「うん、いい子だよ。厳しいことを言ってごめん……だけど、あたしが言ったことは忘れないでね。皆で頑張れば、あの未来を変えられるかもしれないんだ。いい? ゼルドリックに、自分を諦めさせるんだよ。……それじゃ、そろそろあたしは行くわ。おやすみ」

 ひとつ風が吹き、メルローはその場からすぐさま消え去った。


 リアは手で顔を覆った。誰もいなくなった部屋で、ゼルドリックを想ってひたすら涙を流し続けた。
 咲き誇った恋の花を無理やりむごく散らすのは、痛くて仕方のないことだった。

(くるしい。くる、しい……ゼルに、ゼルに……好きだって言いたかったな。勇気を出して、好きだって言えば良かった。こんなことになる前に。そしたら、私の望んだ関係が手に入ったかもしれないのに)

(あ、でも駄目か、……いずれにしても、彼と共にいたらあの未来がやってくるのかもしれないから……離れるしかないんだ。……なんだ、私とゼルって、どうしても幸せになることは出来ないじゃない。馬鹿みたいだな……)

 次々に涙が溢れてくる。リアは寒い石壁の部屋の中で震えながら泣いた。

(私は弱い。ゼルときっちり対話をしたかった。ゼルを救えなかった。彼の抱えているものを聞きたかった。怖いのに、助けてって望んだのに、離れたいって思ったのは私なのに)

(それでも、ゼルのことが好きで好きで仕方がない。ゼルからの執着が嬉しいって思ってしまった。私はおかしい。ゼルのことを考え続けて、おかしくなってしまった……忘れられる訳ない。こんな好きになれる男性ひと、これから先に出逢えるはずがない。ゼル……)

 上から目線で、いつも嫌味な言い方をしてきたダークエルフ。

 でも、自分の作業量を気遣って村人に忠告をしてくれた。村へ視察にやって来た際は、何かしらの素晴らしい品を手渡してくれた。熱を出した自分を治療してくれた。

 青く綺麗な瞳。
 大きな手。
 艷やかな黒い肌。
 高い鼻筋。
 筋肉質の硬い腕。
 広い背中。
 美しい字。
 膨大な知識量。
 頭の回転の速さ。
 照れるとひくつく長い耳。
 甘い微笑み。
 低くも優しい声。
 赤く長い舌。
 ミントの香り。
 夕焼けに照らされて黄金色に輝く横顔。
 毎日共にした食事。
 薔薇咲き誇る庭園での散歩。
 共に見た黄金の塔。
 共に行った菓子屋。
 春に見ることを約束した大樹。
 雪の日に贈られた魔法の薔薇。
 そして、肌を寄せ合ったあの夜。

 ゼルドリックにかかわる記憶が、リアの中で次々に花開く。

 全部大切な記憶だ。どこを切り取っても愛おしくて堪らない思い出だ。

 リアはしゃくり上げた。ぼたぼたと涙が膝に落ちていく。

(私は……いつまでも好きよ、ゼルのことが……でも、あなたの破滅の原因が私であって欲しくないから。あなたに生きていてほしいから……)

(私はあなたのことを忘れる努力をするね。私、頑張るから……。だからゼル。あなたも、あなたも……私のことを忘れて……)

 ゼルドリックは、手に入らない自分のことをいずれ忘れて、誰か他の手を取るのだろうか。
 自分はこの痛みを抱えたまま、静かに朽ちていくのだろうか……。

 リアはベッドに潜り込み涙を流し続けた。

 胸が酷く痛む。

 これから先、この苦痛を抱えて生きていかなければならないのだ。癒える日など来ない気がした。
 リアは胸を引き裂かれるような痛みに、擦り切れた泣き声を上げ続けた。


 ――――――――――


「オリヴァー様。リアさんは、受け止められるでしょうか。僕は彼女に酷いことを言ってしまった、あんなに泣いて……」

 レントは沈んだ顔で呟いた。前を歩くオリヴァーもまた苦い顔で溜息を吐いた。

「酷な話だが、受け止めてもらわねば困る。綿毛女のみならず我々の命も掛かっているのだからな。まあ、綿毛女は聞き分けが良さそうだ。大人しくあの避難所の中に居てくれるだろう」

「……ええ」

「レント、そんな顔をするのではない。我々が責任を持って綿毛女を保護せねば、誰があの女を気がおかしくなった役人から守る? 我々しか守れる者はいない。我々は正しいことをしている。前を向け、不安を見せるな」

 オリヴァーは艶のある若草色のおかっぱ頭を揺らし、レントに向かって強く言い切った。だが、オリヴァー自身もその後、弱々しげな声で呟いた。

「守る、か。守るというよりも……。我々はただ耐え忍ぶことしか出来ぬ。あの避難所が、綿毛女が、ゼルドリックに見つからないように祈ることしか出来ぬ。ミーミス様が到着すればその心配をせずとも良くなるが、彼女の到着が一週間後になるか、一ヶ月後になるかは分からない。……ミーミス様は激戦地にいる。予定が狂うことはあり得る。あちら側の事態の収拾が付けば良いのだがな」

 オリヴァーの言葉に、レントは頷いた。

「そうですね。ミーミス様の到着を待つまで、僕たちは耐えるしかない。ゼルドリック様の魔力を弾く遮蔽魔術を避難所全域に施し、リアさんにタリスマンを渡したとはいえ、ゼルドリック様に見つからないとは言い切れない」

「認識出来ないリアさんを、あらゆる手を使って追ってくる可能性がないとも言い切れない。僕たちはゼルドリック様に敵わない。もしリアさんを守りきれなかったら。……オリヴァー様。僕はその想像をして、どうしようもなく怖くなるのです」

 震える部下の声は、オリヴァーの耳にやたらに響いて聞こえた。自分の内に抱える不安と共鳴するように。

「その不安は一旦置いておこう。我々が何ヶ月もかけて遮蔽魔術を施したのだ、ミーミス様が到着するまではゼルドリックの目は欺けるはず。奴の魔力操作の妙は、魔力で鳥を創り上げ索敵や攻撃を行わせることだ。いくら鳥を飛ばそうとも綿毛女が認識出来ない。それに気が付き、いずれ奴が綿毛女を諦めてくれればいい」

「あの男の執着は強いとはいえ、あやつもエルフだ。手に入らない女を追い続けるまでの熱量は持ち続けられないと思う。ミーミス様が帰ってくれば、綿毛女に恒久的な遮蔽魔術を施せる。そうすればゼルドリックは二度と綿毛女に接触できない。ゼルドリックに対する処罰も決定されるだろう。上手くいくはずだ。我々がここまで苦労したのだがらな。過度の不安は自らをいたずらに苦しめる」

「……はい。そうですね、オリヴァー様がいるのならきっと大丈夫だ、きっとあの未来は避けられる」

 レントが微笑みを向けてオリヴァーを褒めると、オリヴァーは眉を下げてレントの金髪をぐしゃぐしゃと撫でた。

「レント。タリスマンは持っているな? 我々自身もゼルドリックに見つかる訳にはいかない。ゼルドリックは綿毛女を保護したのが私だと気がついているはずだ。姿を見られれば襲われる。常に遮蔽魔術を展開して自らの身を守る必要がある。分かるな?」

「はい、オリヴァー様」

「メルローもいる。あやつは驚くほどがさつで明け透けだが、まあ、あの明るさは……綿毛女の気持ちを切り替えさせるには適任だろう。私とレントとメルロー。三人がいれば上手くいく。ミーミス様が到着するまで絶対に堪え忍べる。落ち着いてやっていくぞ」

「はい」

「よろしい。レント、そろそろ休め。これから気を張らなかればいけない生活が始まる、休める時にしっかり休んでおくことだ」

「はい。オリヴァー様、おやすみなさい」

「お休み」

 二人のエルフは挨拶を交わし、各々の家に向かっていった。





 オリヴァーもレントも、メルローも見誤っていた。
 ゼルドリックのリアに対する執着の強さを。

 ゼルドリックはリアのことを心から愛している。心から愛し、そしてそれなくしては生きている価値などないと思うほどに依存している。彼は、自分がリアの存在を認識出来なくなったからといって絶対に諦めるようなことをしない。どこまでもどこまでも執拗に獲物を追いかけ、我が手に取り戻そうと動き続ける。罪に罪を重ねても、何を賭しても、リア以外に得たいものなどゼルドリックにはない。

 無垢で善良なレントは知らなかった、変えようのない未来もあることを。自分が視てきた未来。それは何らかの行動を起こせば、今まではそれを避けることが出来ていた。今回も、ゼルドリックとリアを引き離せば、あの悍ましい未来は避けられるのだとレントは思っていた。


 自分たちの選択こそが怖れていた未来を近づかせることになるとは、レントは思っていなかった。

 彼らがリアに対して言ったゼルドリックを突き放せという忠告が、どれほどにゼルドリックを狂わせ、そしてリアを苦しめることになるのか、今は誰も知らなかった。
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