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第四章 喧嘩中の少年の慌ただしい訪問
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Ⅰ
祈李は本日、紫雲に呼ばれたらしい。というのも、元々前もって呼ばれていたわけではなかったからである。
学校から帰宅し、部屋に入れば、すでに狛犬がベットの上にちょこんと待機していたからである。一枚の紙が飾りの部分に挟まれており、それを読んでみれば、どうやら今日は人間の相談者が来るようであった。
祈李はため息をつく。できれば、当日ではなく、前日までには伝えて欲しいとは思うのである。基本的に予定があるわけではないが、それとこれとは別であった。できれば、できればでいい、前もって連絡が欲しいと思うのである。
だが、目の前にいる狛犬に罪はない。狛犬はきょとんとして、見つめてくるだけであった。
祈李はわしゃわしゃと狛犬を撫でた。狛犬は嬉しそうにされるがままとなっていた。むしろ、ベットの上でころんと転がって、お腹を見せてくる。「もっと撫でて」、そう言っているかのようであった。
祈李はその姿にきゅんとして、さらに撫でる。だが、ずっとこうしていたいものの、そうもいかない。きっと、紫雲は今か今かと首を長くして待っているのであろう。紫雲は意外と祈李が来たのを見ると、ふわりと微笑むのである。それが嬉しいような、恥ずかしいようななんとも言えない気持ちになるのであった。
祈李は着替えを手にし、さっさと着替えを済ませる。狛犬はそれを大人しく待っていた。
祈李は制服のポケットにしまっていた、紫の組紐を手にし、狛犬と共に妖怪の世界へと向かうのであった。
Ⅱ
「来たね、祈李」
ほら、やっぱり。
祈李の姿を目にして、紫雲はふわりと笑った。祈李はそれを見ながら、すぐに話題を切り出す。
「紫雲、お願いがあるんだけど」
紫雲は煙管を片手に、首を傾げた。スノーホワイトの髪がさらりと揺れる。今日は、緑青色の着物に、濡羽色の羽織を肩に羽織っていた。珍しく、黒に近い色の羽織を肩にかけていて、祈李は少しだけいつもより目を惹かれた。
だが、それに触れることはなく、祈李は紫雲の瞳をじっと見ながら告げる。
「できれば、前日までに連絡が欲しいんだけど」
「すまないね。私は予言はできないのだよ。当日にそんな予感がしているだけだからね」
紫雲はにこりと微笑んだ。有無を言わせない雰囲気に、祈李は静かに肩を落とす。残念ながら、聞き入れてもらえないようである。
紫雲はくすくすと笑った。煙管を口に運び、少しして煙をはきだす。
「そう不貞腐れないでくれ、祈李。本日はまた変わったお客さんのようだからね」
「……変わった?」
「ふふ、私も祈李も手を焼きそうな相手、ということだよ」
「……帰っていいかな?」
「駄目、だよ」
祈李は話を聞いて顔を顰めた。すごく嫌である。特に、そんな話をその相手が来る前に聞いてしまったおかげで、余計に帰りたい気持ちが強まってしまった。
だが、紫雲は帰らせる気はないらしい。祈李に近づくと、身体を少しだけ屈め、それから祈李の口元へ自身の人差し指を持ってくる。煙管を持っていない、左手だった。そして、少しだけ唇に触れるように当て、にこりと微笑んだ。
祈李はそれがすごく恥ずかしくてたまらない。顔を背けたいのに、身体が動かずにいた。
一方、紫雲は楽しそうに笑っているだけである。余裕そうにしているその姿が、祈李からすればなんとも腹が立つところである。
祈李はしばらくして何とか顔を背けた。すんなりと彼の手が離れていく。それにほっとしたのと同時に、何故だか寂しくも感じてしまった。
そんなことを考えていれば、図書館の扉が重々しい音を奏でて開かれる。
紫雲は扉を見ていた。
「来たかい」
祈李もその言葉に促され、扉のほうへと視線を向ける。
扉の先には、少年が佇んでいるのであった。
Ⅲ
「こ、ども……?」
祈李は不思議に思った。というのも、祈李や前回訪れた叶織は、中学生や高校生であったが、目の前にいるのはどう見ても小学生だ。確かに、悩みや迷いがあるのは年齢に限らないとは思うが、小学生の子どもまでここに来るのか、と思ってしまったのである。
だが、祈李の言葉を聞いて、紫雲はくすりと笑った。
「祈李も子どもだろう?」
「……紫雲、喧嘩売ってるの?」
「私からすれば、どちらも変わらないよ」
紫雲は詫びる様子もなく、淡々と告げるだけであった。祈李はそれに対してむすっとした顔を見せ、それから再度扉に目を向ける。
少年は呆然とそこに立っているだけであった。だが、しばらくすると――。
「すっげえ! 何ここ!?」
――大声を上げて、図書館の中を駆け始めたのであった。
ドタドタと大きな足音を奏でながら、中をあちらこちらと走り回る。図書館に訪れていた妖怪たちはしばらく様子を窺っていたが、やがて少年の矛先は彼らに向かうこととなる。
「すげえ、お前はなんて言うの!?」
「ひいっ!」
妖怪たちの悲鳴は、少しずつ大きくなっていった。
――不思議な光景である。
本来、妖怪が人間を脅かすはずなのに、人間が妖怪を追いかけ回しているのである。しかも、妖怪が悲鳴を上げて逃げ回っている始末だ。
祈李は元々妖怪に詳しくはなかったが、この図書館に通うようになって少しずつどんな妖怪がいるのか覚えるようになった。顔なじみになった妖怪も、狐や狸を始めとして、増えていっている。その妖怪たちさえ、追われているのである。砂かけばばあ、獺、傘お化け、毛倡妓……、様々な妖怪たちが図書館の中を逃げ惑う。
祈李はその光景を二階から見ながら、ぼんやりと思った。
こんな光景、あるんだなあ……。
隣に立っている紫雲はやけに静かであった。しばらく黙って見ていたが、やがて小さく「やれやれ」と呟いた。祈李が視線を彼に向ければ、彼はすでに柵に足をかけており、一階に飛び降りていた。二階から飛び降りたというのに、やはり音は一切なく、ふわりと降り立っている。
祈李はそれを見て、慌てて螺旋階段を駆け下りた。そのまま紫雲の元へと向かえば、紫雲はすでに少年を捕まえており、少年の首根っこを掴んだまま、じっと子どもを睨んでいた。対する少年は、逃げようとジタバタと暴れていたが、紫雲の手が緩むことなく、解放されずに暴れ続けている。
「紫雲」
祈李は駆け寄って名前を呼ぶ。だが、紫雲は祈李に対して言葉をかけることなく、少年へ呆れた声音で告げた。
「……まったく、この人の子は。私たちは見世物ではない。図書館の中で騒ぐなど、言語道断だ。どういうつもりだ」
「離せ!」
「……貴様が騒がしくしないと言うのであれば、考えてやらないこともないが、ね」
祈李は驚いた。珍しく紫雲の口調も、声音も冷たい。初めて見る光景であった。妖怪たちの相手をしている時も、そんな声も言葉を使っているところも見たことがない。多少、面倒だと言いたそうな態度でも、ここまで態度が一変したところは初めてだった。
祈李はそれには触れずに、再度紫雲へ声をかける。
「紫雲、紫雲。とりあえず、離してあげて」
「しかし、祈李」
「これじゃあ、余計に騒がしくなるだけだよ。一度落ち着こうよ」
祈李がそう言えば、紫雲は不服そうに渋々頷いた。少年からぱっと手が離れる。少年は床に落っこちて、小さく「いてて」と呟きながら頭をさすった。
祈李は少年に声をかける。
「……えっと、とりあえず、話をしない?」
祈李と少年の視線が交わる。少年はこくんと頷いてから、祈李にぎゅっと抱きついた。
紫雲はそれにぴくりと反応した。耳がぴくっと反応し、さらに眉が寄せられる。
祈李はそれに気がつくことなく、少年を受け止め、ぽんぽんと頭を撫でてやる。
紫雲がその光景を黙って見ていれば、くるりと頭だけ振り向かせた少年が「べー」と舌を出した。紫雲はそれにカチンと来たものの、グルル……と唸るだけに留める。
祈李はそんなこと露ほども知らずにいたのであった。
Ⅳ
少年を二階に促し、ソファに少年を座らせ、その隣に祈李も座る。紫雲はそれを見ながら不服そうにたしん、たしんと尻尾を床に打ち付けていたが、自分の定位置から離れることはなかった。煙管を口に含み、煙を静かにはきだす。
祈李に促されれば、少年は心陽とだけ名乗った。ちなみに、小学五年生だそうだ。
心陽は祈李に尋ねる。
「なあ、ここはどこなんだ?」
「妖怪たちの通う、『あやかし図書館』だよ」
「すげえ! どうりで見たことないやつらばかりいると思ったんだ!」
「……貴様の遊び場所ではないのだ。勝手なことをしないでくれるかい」
「うるせえ、おっさん」
「っ……!」
祈李は紫雲と心陽の会話を聞きつつ、首を傾げる。紫雲がいつもより口調や言葉が冷たいことから苛立っていることは分かっていた。だが、心陽も苛立っているように見えたのである。
それにしても――。
本当に、珍しい。紫雲が、すごく荒れている……。
口の悪い紫雲を初めて見る。言葉も、口調も冷たく、視線も鋭い。それに、あからさまに機嫌が悪そうなのだ。少年に食ってかかりそうな勢いがある。
珍しい紫雲の姿が気にはなるものの、祈李は本題に入ることにした。このままでは、喧嘩をして時間が終わってしまいそうなのである。
「えっと……。紫雲、ほら、いつものように、ね」
「私が出ることもないだろう」
「紫雲……」
「……」
ふいとそっぽを向く紫雲へ、もう一度名前を呼ぶ。じっと見つめていれば、その視線に気がついた紫雲は煙管を口に含み、煙を静かにはきだす。それから、盛大にため息をついた。
「……祈李に言われてしまえば、仕方があるまい。……心陽、と言ったな。貴様の悩みや迷いはなんだ」
「……そんなもん、ねえ」
「嘘をつけ。でなければ、ここに来ることもないのだ」
「紫雲。……何かなかった、心陽くん」
荒々しい紫雲は、相談相手になりそうではない。そう判断した祈李は、紫雲の名を呼んで制止させる。それから、次いで心陽に声をかけた。顔を覗こうとすれば、心陽はふいとそっぽを向いて顔を見せない。だが、小さく呟いた。
「……別に、少し喧嘩したぐらいだし」
「……喧嘩?」
「言い合いしただけだもん……」
最後のほうは尻すぼみになってしまっていたが、それでも簡単に内容を把握することはできた。心陽の頭を、祈李はそっと撫でる。
紫雲はふーっと長く煙を吐き出した。それから、静かに言葉を紡ぐ。
「……少年、下の階を歩いてこい。その中に、貴様の悩みを解決する策があるはずだ。……祈李、すまないが、付き合ってやってくれ」
「紫雲……」
「大丈夫だ。私はここにいる。何かあれば呼んでくれるかい。……少年、次妖怪たちに手を出したら、どうなるか分かっておるな」
紫雲の言葉は冷たい。視線も鋭く、アメジストが少年の姿を捉える。
「……うるせえ」
心陽はその視線から逃げるかのように、顔を背けたのであった。
Ⅴ
祈李は心陽と一階を歩いていた。静かに歩いて図書館の中を巡る。
先ほどの騒動があったからか、妖怪たちは自分たちを避けるように図書館の中を歩き回っている。同じ方向には歩こうとしなかった。
祈李は苦笑しつつ、心陽に小声で問いかける。
「……大丈夫?」
「……」
心陽から返ってきたのは、沈黙であった。
祈李はそれに肩を落としながら、おもむろに一冊の本を手にした。そのタイトルに、見覚えがあったからだ。祈李たちの世界、つまり人間の世界に売られている絵本。子どもの頃に、よく読み聞かせてもらった絵本であった。
タイトルは、「泣いた赤鬼」である。
妖怪の世界にもあるんだ……。赤鬼、だからかな。意外だなあ、とも思うけど……。
祈李はパラパラと本をめくった。絵本だからか、薄いし、もちろん絵がたくさんある。久しぶりに見る絵本に、自然と頬が緩んだ。手元に影が差したので、顔を上げれば、知らぬ間に心陽も絵本を覗き込んでいた。
その絵本を見ながら、心陽やぽつりと呟く。
「……おれ、なんで怒らせたのか、よく分からないんだ」
「……心陽くん?」
「あいつ、泣いてたな……」
心陽はくしゃりと顔を歪めた。祈李は本を閉じて、心陽の目の前でしゃがむ。視線が交わった。
「……相手は?」
「女、幼なじみなんだ。ずっとついてきてさ、口うるさくて、よく言い合いもするんだけどさ。なんでか、今日は泣いてた。何がダメだったのか、よく分からない」
「……気に、なってる?」
「……別に」
あ、嘘だな……。
祈李は直感的にそう思った。それから、言葉を紡ぐ。
「……すれ違ったままで、いいの?」
「……え」
「この絵本のように、会えなくなったら、嫌じゃ、ない?」
祈李は抱え込むように持っていた絵本を、心陽に見せる。差し出すかのように出された絵本に、小さな手が触れた。祈李は言葉を続けて紡ぐ。
「……この絵本の内容、知ってる?」
心陽はこくんと頷いた。
「泣いた赤鬼」。それは、人間と仲良くなりたがった赤鬼のために、青鬼が協力して自分が悪役になったがために、最終的に赤鬼のことを想って離れてしまうという悲しいお話。赤鬼は離れてしまった青鬼のことを想って泣くのである。
もし、そんなことになったら……。
祈李は想像しながら、言葉を紡いだ。
「……二度と、お話できなくなってしまうかも、しれないよ」
「……!」
「私たちの生活に当たり前なんてない。今の時間も、大切にしていかなくちゃ……」
私だって――。
祈李の口から、その言葉が出てくることはなかった。
だが、心陽にはそれだけで十分だったのだ。彼は俯いていた顔を一気に上げて、はっきりと告げる。
「……おれ、帰る!」
心陽は祈李の止める声も聞かずに、ただただ扉に向かって駆けていく。重たい扉を開け放ち、すぐに姿が消えてしまった。
祈李は呆気に取られる。
「い、行っちゃった……」
「祈李」
いつの間にか祈李のすぐ後ろに姿を現していた紫雲に名前を呼ばれて振り返る。先ほどまでの不機嫌さがなかったかのように、優雅に微笑んでいた。祈李は立ち上がる。
「紫雲……。心陽くん、行っちゃったけど……」
「あの少年はもう大丈夫だろう。目の輝きが違った。意志のこもった瞳だったからね。……ありがとう、祈李」
「私は何も……。というか、紫雲。今回やけに冷たかったね」
「さて、ね。まあ、でも妖怪たちを見て騒がれるというのは、いい気はしないかな」
「そうなの?」
紫雲の言葉に、祈李は首を傾げる。妖怪を見て、喜ぶのは嫌だと言うことなのだろうか。だが、人間の中には、オカルト好きな者もたくさんいる。ならば、紫雲は人間を好かないのだろうか。それにしては、自分に対してそこまで酷くない気がする。
祈李が思考を巡らせていれば、紫雲はそれに気がついているようで、くすくすと笑う。
「そうだね、私個人の意見だが、見世物にされている気分になってしまうからさ。……私たち妖怪は、人間とはかけ離れた姿をしているものもいる。だが、人間と変わらずに生活をしているのだ。だが、姿や形だけ見られて騒がれるというのは、嬉しいものではなくてね。それに、妖怪の私たちはどちらかと言えば、人間を驚かして楽しむほうだからね」
「……なるほど」
「――祈李。別に私は人間が嫌いなわけではないよ。ただ、妖怪だからとか、姿がどうとか、そんなことでは判断して欲しくないだけさ。私たちも、祈李、君たち人間も変わらない。生きているのだからね」
祈李はその言葉に納得した。こくりと頷く。紫雲はそれに対して、嬉しそうに微笑んだ。
だが、すぐにきらりと瞳を輝かせる。
「さて、祈李。――おいで」
紫雲は祈李の手を優しく引っ張ったのであった。
Ⅵ
何が、起こっているんだろう……。
祈李は思考を停止していた。
二階に戻ってきたかと思えば、珍しくソファに紫雲が座ったのである。呆然とそれを見ていた祈李は、紫雲に手招きされ、近づけばぐいっと手を引かれて膝の上に乗せられ、背中を紫雲に預けてしまった。慌ててどこうとしたが、それを腰に回された手によって阻止され、彼の手の中に閉じ込められる。そのまま、紫雲は祈李の首元へ顔を埋めてしまった。
背後から抱きしめられた状態で、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。祈李の体感時間では一時間をゆうに超えていたが、真実は五分程度である。
たまに首元で紫雲が動く。あまりにくすぐったくて、祈李は身を捩ってしまった。
「……どうしたの、紫雲」
「何がだい?」
「……何か、いろいろといつもと違うような」
「そうかい。……まあ、そうだね。一つ言うとするなら――」
紫雲はくすりと笑って、それから腕の力を少し強くする。さらに密着した状態で、紫雲は囁いた。
「――あの少年の匂いが祈李からするのが、納得いかないだけさ」
祈李はよく分からずに、首を傾げる。だが、開放されることはないと判断し、諦めて紫雲の腕の中に大人しく収まる。
紫雲はそれを見てくすりと笑い、再度彼女の首元へ顔を埋めるのであった。
祈李は本日、紫雲に呼ばれたらしい。というのも、元々前もって呼ばれていたわけではなかったからである。
学校から帰宅し、部屋に入れば、すでに狛犬がベットの上にちょこんと待機していたからである。一枚の紙が飾りの部分に挟まれており、それを読んでみれば、どうやら今日は人間の相談者が来るようであった。
祈李はため息をつく。できれば、当日ではなく、前日までには伝えて欲しいとは思うのである。基本的に予定があるわけではないが、それとこれとは別であった。できれば、できればでいい、前もって連絡が欲しいと思うのである。
だが、目の前にいる狛犬に罪はない。狛犬はきょとんとして、見つめてくるだけであった。
祈李はわしゃわしゃと狛犬を撫でた。狛犬は嬉しそうにされるがままとなっていた。むしろ、ベットの上でころんと転がって、お腹を見せてくる。「もっと撫でて」、そう言っているかのようであった。
祈李はその姿にきゅんとして、さらに撫でる。だが、ずっとこうしていたいものの、そうもいかない。きっと、紫雲は今か今かと首を長くして待っているのであろう。紫雲は意外と祈李が来たのを見ると、ふわりと微笑むのである。それが嬉しいような、恥ずかしいようななんとも言えない気持ちになるのであった。
祈李は着替えを手にし、さっさと着替えを済ませる。狛犬はそれを大人しく待っていた。
祈李は制服のポケットにしまっていた、紫の組紐を手にし、狛犬と共に妖怪の世界へと向かうのであった。
Ⅱ
「来たね、祈李」
ほら、やっぱり。
祈李の姿を目にして、紫雲はふわりと笑った。祈李はそれを見ながら、すぐに話題を切り出す。
「紫雲、お願いがあるんだけど」
紫雲は煙管を片手に、首を傾げた。スノーホワイトの髪がさらりと揺れる。今日は、緑青色の着物に、濡羽色の羽織を肩に羽織っていた。珍しく、黒に近い色の羽織を肩にかけていて、祈李は少しだけいつもより目を惹かれた。
だが、それに触れることはなく、祈李は紫雲の瞳をじっと見ながら告げる。
「できれば、前日までに連絡が欲しいんだけど」
「すまないね。私は予言はできないのだよ。当日にそんな予感がしているだけだからね」
紫雲はにこりと微笑んだ。有無を言わせない雰囲気に、祈李は静かに肩を落とす。残念ながら、聞き入れてもらえないようである。
紫雲はくすくすと笑った。煙管を口に運び、少しして煙をはきだす。
「そう不貞腐れないでくれ、祈李。本日はまた変わったお客さんのようだからね」
「……変わった?」
「ふふ、私も祈李も手を焼きそうな相手、ということだよ」
「……帰っていいかな?」
「駄目、だよ」
祈李は話を聞いて顔を顰めた。すごく嫌である。特に、そんな話をその相手が来る前に聞いてしまったおかげで、余計に帰りたい気持ちが強まってしまった。
だが、紫雲は帰らせる気はないらしい。祈李に近づくと、身体を少しだけ屈め、それから祈李の口元へ自身の人差し指を持ってくる。煙管を持っていない、左手だった。そして、少しだけ唇に触れるように当て、にこりと微笑んだ。
祈李はそれがすごく恥ずかしくてたまらない。顔を背けたいのに、身体が動かずにいた。
一方、紫雲は楽しそうに笑っているだけである。余裕そうにしているその姿が、祈李からすればなんとも腹が立つところである。
祈李はしばらくして何とか顔を背けた。すんなりと彼の手が離れていく。それにほっとしたのと同時に、何故だか寂しくも感じてしまった。
そんなことを考えていれば、図書館の扉が重々しい音を奏でて開かれる。
紫雲は扉を見ていた。
「来たかい」
祈李もその言葉に促され、扉のほうへと視線を向ける。
扉の先には、少年が佇んでいるのであった。
Ⅲ
「こ、ども……?」
祈李は不思議に思った。というのも、祈李や前回訪れた叶織は、中学生や高校生であったが、目の前にいるのはどう見ても小学生だ。確かに、悩みや迷いがあるのは年齢に限らないとは思うが、小学生の子どもまでここに来るのか、と思ってしまったのである。
だが、祈李の言葉を聞いて、紫雲はくすりと笑った。
「祈李も子どもだろう?」
「……紫雲、喧嘩売ってるの?」
「私からすれば、どちらも変わらないよ」
紫雲は詫びる様子もなく、淡々と告げるだけであった。祈李はそれに対してむすっとした顔を見せ、それから再度扉に目を向ける。
少年は呆然とそこに立っているだけであった。だが、しばらくすると――。
「すっげえ! 何ここ!?」
――大声を上げて、図書館の中を駆け始めたのであった。
ドタドタと大きな足音を奏でながら、中をあちらこちらと走り回る。図書館に訪れていた妖怪たちはしばらく様子を窺っていたが、やがて少年の矛先は彼らに向かうこととなる。
「すげえ、お前はなんて言うの!?」
「ひいっ!」
妖怪たちの悲鳴は、少しずつ大きくなっていった。
――不思議な光景である。
本来、妖怪が人間を脅かすはずなのに、人間が妖怪を追いかけ回しているのである。しかも、妖怪が悲鳴を上げて逃げ回っている始末だ。
祈李は元々妖怪に詳しくはなかったが、この図書館に通うようになって少しずつどんな妖怪がいるのか覚えるようになった。顔なじみになった妖怪も、狐や狸を始めとして、増えていっている。その妖怪たちさえ、追われているのである。砂かけばばあ、獺、傘お化け、毛倡妓……、様々な妖怪たちが図書館の中を逃げ惑う。
祈李はその光景を二階から見ながら、ぼんやりと思った。
こんな光景、あるんだなあ……。
隣に立っている紫雲はやけに静かであった。しばらく黙って見ていたが、やがて小さく「やれやれ」と呟いた。祈李が視線を彼に向ければ、彼はすでに柵に足をかけており、一階に飛び降りていた。二階から飛び降りたというのに、やはり音は一切なく、ふわりと降り立っている。
祈李はそれを見て、慌てて螺旋階段を駆け下りた。そのまま紫雲の元へと向かえば、紫雲はすでに少年を捕まえており、少年の首根っこを掴んだまま、じっと子どもを睨んでいた。対する少年は、逃げようとジタバタと暴れていたが、紫雲の手が緩むことなく、解放されずに暴れ続けている。
「紫雲」
祈李は駆け寄って名前を呼ぶ。だが、紫雲は祈李に対して言葉をかけることなく、少年へ呆れた声音で告げた。
「……まったく、この人の子は。私たちは見世物ではない。図書館の中で騒ぐなど、言語道断だ。どういうつもりだ」
「離せ!」
「……貴様が騒がしくしないと言うのであれば、考えてやらないこともないが、ね」
祈李は驚いた。珍しく紫雲の口調も、声音も冷たい。初めて見る光景であった。妖怪たちの相手をしている時も、そんな声も言葉を使っているところも見たことがない。多少、面倒だと言いたそうな態度でも、ここまで態度が一変したところは初めてだった。
祈李はそれには触れずに、再度紫雲へ声をかける。
「紫雲、紫雲。とりあえず、離してあげて」
「しかし、祈李」
「これじゃあ、余計に騒がしくなるだけだよ。一度落ち着こうよ」
祈李がそう言えば、紫雲は不服そうに渋々頷いた。少年からぱっと手が離れる。少年は床に落っこちて、小さく「いてて」と呟きながら頭をさすった。
祈李は少年に声をかける。
「……えっと、とりあえず、話をしない?」
祈李と少年の視線が交わる。少年はこくんと頷いてから、祈李にぎゅっと抱きついた。
紫雲はそれにぴくりと反応した。耳がぴくっと反応し、さらに眉が寄せられる。
祈李はそれに気がつくことなく、少年を受け止め、ぽんぽんと頭を撫でてやる。
紫雲がその光景を黙って見ていれば、くるりと頭だけ振り向かせた少年が「べー」と舌を出した。紫雲はそれにカチンと来たものの、グルル……と唸るだけに留める。
祈李はそんなこと露ほども知らずにいたのであった。
Ⅳ
少年を二階に促し、ソファに少年を座らせ、その隣に祈李も座る。紫雲はそれを見ながら不服そうにたしん、たしんと尻尾を床に打ち付けていたが、自分の定位置から離れることはなかった。煙管を口に含み、煙を静かにはきだす。
祈李に促されれば、少年は心陽とだけ名乗った。ちなみに、小学五年生だそうだ。
心陽は祈李に尋ねる。
「なあ、ここはどこなんだ?」
「妖怪たちの通う、『あやかし図書館』だよ」
「すげえ! どうりで見たことないやつらばかりいると思ったんだ!」
「……貴様の遊び場所ではないのだ。勝手なことをしないでくれるかい」
「うるせえ、おっさん」
「っ……!」
祈李は紫雲と心陽の会話を聞きつつ、首を傾げる。紫雲がいつもより口調や言葉が冷たいことから苛立っていることは分かっていた。だが、心陽も苛立っているように見えたのである。
それにしても――。
本当に、珍しい。紫雲が、すごく荒れている……。
口の悪い紫雲を初めて見る。言葉も、口調も冷たく、視線も鋭い。それに、あからさまに機嫌が悪そうなのだ。少年に食ってかかりそうな勢いがある。
珍しい紫雲の姿が気にはなるものの、祈李は本題に入ることにした。このままでは、喧嘩をして時間が終わってしまいそうなのである。
「えっと……。紫雲、ほら、いつものように、ね」
「私が出ることもないだろう」
「紫雲……」
「……」
ふいとそっぽを向く紫雲へ、もう一度名前を呼ぶ。じっと見つめていれば、その視線に気がついた紫雲は煙管を口に含み、煙を静かにはきだす。それから、盛大にため息をついた。
「……祈李に言われてしまえば、仕方があるまい。……心陽、と言ったな。貴様の悩みや迷いはなんだ」
「……そんなもん、ねえ」
「嘘をつけ。でなければ、ここに来ることもないのだ」
「紫雲。……何かなかった、心陽くん」
荒々しい紫雲は、相談相手になりそうではない。そう判断した祈李は、紫雲の名を呼んで制止させる。それから、次いで心陽に声をかけた。顔を覗こうとすれば、心陽はふいとそっぽを向いて顔を見せない。だが、小さく呟いた。
「……別に、少し喧嘩したぐらいだし」
「……喧嘩?」
「言い合いしただけだもん……」
最後のほうは尻すぼみになってしまっていたが、それでも簡単に内容を把握することはできた。心陽の頭を、祈李はそっと撫でる。
紫雲はふーっと長く煙を吐き出した。それから、静かに言葉を紡ぐ。
「……少年、下の階を歩いてこい。その中に、貴様の悩みを解決する策があるはずだ。……祈李、すまないが、付き合ってやってくれ」
「紫雲……」
「大丈夫だ。私はここにいる。何かあれば呼んでくれるかい。……少年、次妖怪たちに手を出したら、どうなるか分かっておるな」
紫雲の言葉は冷たい。視線も鋭く、アメジストが少年の姿を捉える。
「……うるせえ」
心陽はその視線から逃げるかのように、顔を背けたのであった。
Ⅴ
祈李は心陽と一階を歩いていた。静かに歩いて図書館の中を巡る。
先ほどの騒動があったからか、妖怪たちは自分たちを避けるように図書館の中を歩き回っている。同じ方向には歩こうとしなかった。
祈李は苦笑しつつ、心陽に小声で問いかける。
「……大丈夫?」
「……」
心陽から返ってきたのは、沈黙であった。
祈李はそれに肩を落としながら、おもむろに一冊の本を手にした。そのタイトルに、見覚えがあったからだ。祈李たちの世界、つまり人間の世界に売られている絵本。子どもの頃に、よく読み聞かせてもらった絵本であった。
タイトルは、「泣いた赤鬼」である。
妖怪の世界にもあるんだ……。赤鬼、だからかな。意外だなあ、とも思うけど……。
祈李はパラパラと本をめくった。絵本だからか、薄いし、もちろん絵がたくさんある。久しぶりに見る絵本に、自然と頬が緩んだ。手元に影が差したので、顔を上げれば、知らぬ間に心陽も絵本を覗き込んでいた。
その絵本を見ながら、心陽やぽつりと呟く。
「……おれ、なんで怒らせたのか、よく分からないんだ」
「……心陽くん?」
「あいつ、泣いてたな……」
心陽はくしゃりと顔を歪めた。祈李は本を閉じて、心陽の目の前でしゃがむ。視線が交わった。
「……相手は?」
「女、幼なじみなんだ。ずっとついてきてさ、口うるさくて、よく言い合いもするんだけどさ。なんでか、今日は泣いてた。何がダメだったのか、よく分からない」
「……気に、なってる?」
「……別に」
あ、嘘だな……。
祈李は直感的にそう思った。それから、言葉を紡ぐ。
「……すれ違ったままで、いいの?」
「……え」
「この絵本のように、会えなくなったら、嫌じゃ、ない?」
祈李は抱え込むように持っていた絵本を、心陽に見せる。差し出すかのように出された絵本に、小さな手が触れた。祈李は言葉を続けて紡ぐ。
「……この絵本の内容、知ってる?」
心陽はこくんと頷いた。
「泣いた赤鬼」。それは、人間と仲良くなりたがった赤鬼のために、青鬼が協力して自分が悪役になったがために、最終的に赤鬼のことを想って離れてしまうという悲しいお話。赤鬼は離れてしまった青鬼のことを想って泣くのである。
もし、そんなことになったら……。
祈李は想像しながら、言葉を紡いだ。
「……二度と、お話できなくなってしまうかも、しれないよ」
「……!」
「私たちの生活に当たり前なんてない。今の時間も、大切にしていかなくちゃ……」
私だって――。
祈李の口から、その言葉が出てくることはなかった。
だが、心陽にはそれだけで十分だったのだ。彼は俯いていた顔を一気に上げて、はっきりと告げる。
「……おれ、帰る!」
心陽は祈李の止める声も聞かずに、ただただ扉に向かって駆けていく。重たい扉を開け放ち、すぐに姿が消えてしまった。
祈李は呆気に取られる。
「い、行っちゃった……」
「祈李」
いつの間にか祈李のすぐ後ろに姿を現していた紫雲に名前を呼ばれて振り返る。先ほどまでの不機嫌さがなかったかのように、優雅に微笑んでいた。祈李は立ち上がる。
「紫雲……。心陽くん、行っちゃったけど……」
「あの少年はもう大丈夫だろう。目の輝きが違った。意志のこもった瞳だったからね。……ありがとう、祈李」
「私は何も……。というか、紫雲。今回やけに冷たかったね」
「さて、ね。まあ、でも妖怪たちを見て騒がれるというのは、いい気はしないかな」
「そうなの?」
紫雲の言葉に、祈李は首を傾げる。妖怪を見て、喜ぶのは嫌だと言うことなのだろうか。だが、人間の中には、オカルト好きな者もたくさんいる。ならば、紫雲は人間を好かないのだろうか。それにしては、自分に対してそこまで酷くない気がする。
祈李が思考を巡らせていれば、紫雲はそれに気がついているようで、くすくすと笑う。
「そうだね、私個人の意見だが、見世物にされている気分になってしまうからさ。……私たち妖怪は、人間とはかけ離れた姿をしているものもいる。だが、人間と変わらずに生活をしているのだ。だが、姿や形だけ見られて騒がれるというのは、嬉しいものではなくてね。それに、妖怪の私たちはどちらかと言えば、人間を驚かして楽しむほうだからね」
「……なるほど」
「――祈李。別に私は人間が嫌いなわけではないよ。ただ、妖怪だからとか、姿がどうとか、そんなことでは判断して欲しくないだけさ。私たちも、祈李、君たち人間も変わらない。生きているのだからね」
祈李はその言葉に納得した。こくりと頷く。紫雲はそれに対して、嬉しそうに微笑んだ。
だが、すぐにきらりと瞳を輝かせる。
「さて、祈李。――おいで」
紫雲は祈李の手を優しく引っ張ったのであった。
Ⅵ
何が、起こっているんだろう……。
祈李は思考を停止していた。
二階に戻ってきたかと思えば、珍しくソファに紫雲が座ったのである。呆然とそれを見ていた祈李は、紫雲に手招きされ、近づけばぐいっと手を引かれて膝の上に乗せられ、背中を紫雲に預けてしまった。慌ててどこうとしたが、それを腰に回された手によって阻止され、彼の手の中に閉じ込められる。そのまま、紫雲は祈李の首元へ顔を埋めてしまった。
背後から抱きしめられた状態で、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。祈李の体感時間では一時間をゆうに超えていたが、真実は五分程度である。
たまに首元で紫雲が動く。あまりにくすぐったくて、祈李は身を捩ってしまった。
「……どうしたの、紫雲」
「何がだい?」
「……何か、いろいろといつもと違うような」
「そうかい。……まあ、そうだね。一つ言うとするなら――」
紫雲はくすりと笑って、それから腕の力を少し強くする。さらに密着した状態で、紫雲は囁いた。
「――あの少年の匂いが祈李からするのが、納得いかないだけさ」
祈李はよく分からずに、首を傾げる。だが、開放されることはないと判断し、諦めて紫雲の腕の中に大人しく収まる。
紫雲はそれを見てくすりと笑い、再度彼女の首元へ顔を埋めるのであった。
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