上 下
397 / 403
第7章  獄窟

第32話  屯田

しおりを挟む
 辺境都市は帝国との要衝だ。兵力を維持しなければならなかった。当然ながら、軍の運用はとかく金がかかる。

 更に凶悪なダンジョンは、どれほどの冒険者がモンスターを屠っても数年に一度スタンピードを引き起こしていた。

 そうなれば、死傷者が発生し城壁にも被害が出る。不幸を被った者には、都市から見舞金も支払われ、損耗を受けた建物は修繕をすることとなり、財政を圧迫していた。

 この場所は、ダンジョンからの獲得品により冒険者が多く、彼らの羽振りは良いが、反面、その運営には莫大な資金が必要となるのだ。

 王国からの資金援助もあり破綻はしていないがギリギリ。有史以来、火中の栗を拾い続けるのが辺境領であり、その為に絶大な尊敬と発言力を持つ場所でもあった。

 青年の回答を聞いたノアは処置無しとばかりにパオラを見つめた。

「――マスター。無理はいけませんよ」

 パオラがジッと見つめると青年は曖昧に笑うとすすっと視線をそらす。

「しょうがない。ちょっと進捗見にいってくるよ。パオラさんとエステラはどうする?」

「――ん。一緒に行く」

「あたしはマスターがちゃんと休むのを見張っておきます」

 それを聞いてノアがニヤリと笑う。

(最強の一手だね。パオラさん怒ると怖いからなぁ)

 挨拶をしてノアは部屋を出た。

~~~

 ノアが向かったのは王民事業体イーディセルの訓練施設。そこには丁度エーギルもいた。

 そこでは男女問わずに幅広い世代の人間が訓練をしていた。

 辺境都市の状況を鑑みてノアが提案した元ネタは屯田兵政策だ。兵の維持に金がかかるなら緊急時だけの兵隊を生みだそうという発想だ。自警団の方がより近いかもしれない。

 平時も訓練を行い。そのほとんどを農民として生活させる。あるいは、平時は商人でもよい。

 兵としての働きに合わせて俸給を払うことになるが、職業軍人を増やすより安価で大量に生み出す事ができる。

 幸いな事に辺境都市の人々はその環境もあり武張った気質を持っていた。自分の土地を自らの力で守る気概だ。

 半年ほどの訓練で農業を志す者は職業が変化した。多くは農争士に稀に農兵となった者もいる。

 武装も分けて本職の軍人が訓練にあたる。希望した孤児にも簡易の訓練を行い成人後は農地を渡す約束をしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

転生したら、全てがチートだった

ゆーふー
ファンタジー
転生した俺はもらったチートを駆使し、楽しく自由に生きる。

魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する

黄舞
ファンタジー
 魔法に誰よりも強い憧れを持ち、人生の全てを魔法のために費やした男がいた。  しかし彼は魔法の源である魔力を持たず、ついに魔法を使うことができずに死んだ。  強い未練を残した彼は魂のまま世界を彷徨い、やがていじめにより自死を選んだ貴族の少年フィリオの身体を得る。  魔法を使えるようになったことを喜ぶ男はフィリオとして振舞いながら、自ら構築した魔法理論の探究に精を出していた。  生前のフィリオをいじめていた貴族たちや、自ら首を突っ込んでいく厄介ごとをものともせず。 ☆ お気に入り登録していただけると、更新の通知があり便利です。 作者のモチベーションにもつながりますので、アカウントお持ちの方はお気軽にお気に入り登録していただけるとありがたいです。 よろしくお願いします。 タイトル変えました。 元のタイトル 「魔法理論を極めし無能者〜魔力ゼロだが死んでも魔法の研究を続けた俺が、貴族が通う魔導学園の劣等生に転生したので、今度こそ魔法を極めます」

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...