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第7章  獄窟

第7話  霊柱

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 その場所は最古の世界樹に程近い場所だった。神聖な樹は大きな影を落とすばかりで近すぎて頂上さえ見えない。

 そして、目の前には仄かに輝く三本の水晶があり、捩じれて支え合い巨大な三角錘を形作っていた。

 三角の底には地下へと続く空洞がある。壁全体が水晶で埋め尽くされ、その結晶を崩さないように丁寧に階段が設けられていた。

 ウェンがいつもと変わらぬ声をかけて先導する。

「――行きましょう」

 その洞窟は天井も高く。三人が横に並んでもまだまだ余裕があるほど幅広い。

 床はエルフの家屋と同じ謎の素材で蛇行しながら続いていた。

 壁一面を大小様々な水晶が乱立して覆い、洞窟内を照らしている。時折、世界樹の物と思しき巨大な根が眼に映るが、この洞窟をけるように横断していた。

 その圧倒的な美しさにパオラは呆然とし、ウェンの後ろを、ただ機械的について歩く。

 言葉も忘れて200m程進むとやしろというには小さく、ほこらというには立派な建造物が見えてきた。そぎ落とされた簡素な造りだが、空気をも清める程、厳かで神聖だ。

 祠の前には純白で長方形の御供物台が備えられる。

「ここからは貴女の試練よ。――手順は覚えているでしょう?」

 ウェンが一歩下がる。そしてパオラを前に促した。

「――はい。……それでは始めます」

 そう言うとパオラは御供物台に近づいた。ゴザに似た質素な敷物を床に敷き靴を脱いで正座した。

 そして、アイテムボックスからそれを取り出す。長三宝ながさんぽう、或いは長膳ちょうぜんと呼ばれる神への御饌みけをお供えする神具を思わせる物だ。

 それには、長方形の縁が付いた白木の低い台で、中には白紙を折った上に白磁の皿が三枚ある。そして、四つ目の白磁の器は、丸い容器の上へ笠に似た三角の蓋が付いている。水玉みずたまと呼ばれる神具に似ていた。

 皿の上には炭、石、榊を思わせる枝葉えだはが載せられ、水玉みずたまの器には水が収められている。

 パオラがそれを恭しく御供物台に供える。

 ――と。忽然とそれは現れた。

 月の慈悲を体現する柔らかな光。視界を覆い、輪郭は遠く覚束ない。そして、それ以上の圧倒的な存在だ。

 その精霊柱せいれいじゅに驚き、暫しの時間呆然としながらもパオラは練習した言葉を紡ぐ。

「諸々の禍事まがつごと、罪、けがれ、有らむをば、みそぎたまひ清めたまへと、もうすことを聞こし召せをば、誠の道に違ふことなく、ひ持つわざはげましめたまひ、世のため人のためにつくさしめたまへと、かしこかしこみももうす」

 ――すると。供えた炭が燃え上がった。
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