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第6章  罪咎

第103話  終章Ⅷ ~種は移る~

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 カメラを持ち込んだイーディセルは覗き窓で画格を確認する。

 まだ、あまり慣れていないその作業を、自身と拝像が映り込むように場所を変えては何度も繰り替えす。意味は分からないがノアの真似をして二本指を立ててだ。

 今後ここはエルフの聖地となる。そして、その場を守るゴブリンはエルフの庇護を得た。

 この時の写真が発端でエルフ達の聖地巡礼を促すことになる。


 その秘儀で――


§


 ゴブリンから聖地と呼ばれる場所がある。一年中花が咲き乱れ。冬でも蜜蜂が飛び交う。

 たまに楽しそうな歌声が聞こえるそんな場所だ。

 その森のゴブリンは蜂蜜を愛し、それを齎した友人を敬った。

 よくエルフが訪れるその場所がゴブリンから聖地と言われた理由。

 ゴブリンは雨の日も風の日も早朝の鍛錬を欠かさない。祈るように闘鬼拳を極めその魂を鍛えあげる。これも、連綿と受け継がれてきた仕来りの一つだ。

 何の為か? 徳を積み上げたゴブリンは格が上がる事がある。進化とも言えるだろう。ゴブリンはホブゴブリンに。

 そして、それが集落でも起きた。――爆発的に。

 原因は不確定だが、蜂蜜を摂取した事ではないかと推測されている。その為の聖地。

 その変化は長にも訪れた。ホブゴブリンの長は格が上がった。そして――


§


 シェリルは一ヶ月前の英断を評価する。優秀なノアをこの地に縛り付けることはないと滞在期限を区切ったことをだ。

 彼が王都から許可を得ると王民事業体イーディセルが素早く立ち上がり。代官が治めるこの地が改変されてゆく。

 職業農民が集められ。瞬く間に切り開かれてゆく大地。職業市民の希望者も募りを放した束の間で建物が建設された。

 街の城壁が無くなり、追加されるいくつもの建造物。街の広さは1.5倍になっていた。

 それはシルビニオンの一言から始まった。

「――ん? 治療法を学びたい?」

 ノアが聞き返す。

「はい。――父は身体を患っていました。治癒魔法も効かず。そして、母は光を失っていました。ノアさんのように、それを治療する術を学びたいと思います。幸い僕の職業はそれに向いています」

 ノアはそうかとだけ言い。シルビニオンの頭を優しく撫でた。
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