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第6章  罪咎

第96話  終章Ⅰ ~種は移る~

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 ――――王都

 エルフが一同に集まり打ち合わせをしていた。司書長のルルが口を開く。

「ウェン。君がパオラを里まで案内してくれるのか?」

「そうね。――ノアの文字も覚えたし、ここでやる事もなくなった。そろそろ大師の元に戻らないとね」

「御使いを導いた功績で精霊授与の試練を受けるのじゃったな。パオラ嬢も息巻いておったぞ。初めてではないが稀なことよの」

 イーディセルがその姿を思い出し慈しむように語った。

「上手く行くと良いわね。――でもウェンがいなくなるのは寂しいわ。メイリンも悲しんでたね。――彼女は弟子ではないのよね?」

 ルルの幼馴染でいつも揶揄うリオンがそう確認した。

「そうよ。彼女はノアの弟子。わたしの孫弟子だから手助けはしたけど。人間界で必要なことは熟せるようになったわ」

 ノアには教えたエルフの秘儀は彼女には知らされていない。

「ルル様も一度ご両親と尊師へ顔を見せられては如何ですか?」

 そう促したのはドリー。尊師とはルルの祖母の事。彼女は巫女を補佐する職業についている。仲睦まじいルルの祖父母はいつも一緒に行動する。祖母に会えは祖父への挨拶と同義だ。

「書は多く。時間ときが足りない。――今は王都での勤めをする時だ。それに宣託を果たしたのか、その途中なのか私でも分からないからな」

 その言葉にドリーはそっと息を吐く。ルルの祖母から内密に彼女が帰郷することをお願いされていたのである。

 空気を変えるべく一番年少のティルが話題を変える。

「ノアさん。東の森に立派な拝像を建てたそうですね。写真がお店に届いていましたよ。幻想的で素敵でした」

「まさに。まさに。――叶うならば是非行ってみたいものだ。――その聖地に」

 イーディセルが前のめりで言葉を繋ぐ。そして、そっと懐を押さえた。今は五種類にまで増えたノアの肖像画ポートレートがそこに大切に仕舞われていた。

「いかんぞ。――イーディセル。長老のお前が勝手をしては示しがつかない」

 今にも飛び出さんばかりの彼をルルが窘めた。

「ほっほっほ。生い先が短い老人が好きに生きずして何とする」

 ノアに関しては行動的な様子に、処置無しとばかりにルルは眉を歪める。彼の目標には肖像画ポートレートへのサインに加え。聖地巡礼が追加された。

 一人静かにその場に座る女性。スィギエティ・リンカーベリリは今日も言葉を発さない。ここに集うエルフ七人がいれば、王都はおろか帝国ですら殲滅可能な戦力だ。

 ベリリの役目は司書の補助と護衛。彼女の職業は精護殺士。七人の中でまごうこと無き最高戦力。武の名門リンカー家の正統後継者である。――影は薄いが。。。
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