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第6章  罪咎

第84話  原点

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 遠く霞む森の翠は端が捉えられず、何処までも広がっていた。

 可能な限り調べた俺の主観だと、この世界の動物は地球と非常に似通っている。それに意味があるのか。それとも単なる偶然なのかは分からない。だが、一つ言える事は書物による解説だと、この森は独自の動物が多く。それが凶暴だという事だ。

 研究に訪れた者は失踪が後を絶たず。王都では禁忌の地として近づくことを規制している。罰則の無い慣例だ。

 ダンジョンが無い。――とされているので冒険者は近寄らず。中に入った変わり者の手記位しか残されていない。

 曰く。森に入ると襲われるが、外までは追ってこない。

 曰く。襲うのは概ね肉食獣と思われる。

 曰く。森に入る異物を排除しているように感じる。

 まぁ。要は、さっぱり分からないってことなんだが、森の外から一ヶ月観察した物好きの手記では、その間に小動物、草食動物の類を一切目にすることが無かったってのがあった。

 それが本当なら生態系が存在しないと言っているようなもんだ。ここだけ。他の場所と違いすぎるというのが俺の印象。そして、辣腕の冒険者でも跳ね返す程強い動物がいるってことだ。

 だから、気を引き締めて行こう。――大分近づいてきたな。

「――トラ。止めてくれ」

「はい。承知しました」

 制動をかけ緩やかに5km程手前で停車させる。

 俺が降りるとエステラとクラーラも出てくる。

「ちょっと遠いけど。どうしたの?」

「念のため。距離を取りたい。エステラ達はここで待機してくれるか?」

「――ノアは?」

 一人では行かせないという顔で彼女は言った。

「まず。ツンツクに偵察に行ってもらう。あいつなら大概の事は何とかなる」

(ダンナ。出番ですかい? 待ってやしたぜ)

(すまんな。ツンツク。危なくなったら自分の身の安全を優先でな)

(へい。がってん承知の助。森の飛行は十八番おはこでやす)

 俺は張り切るツンツクに苦笑いで返す。

(無理はしなくていいからな。何かあったらその方が悲しい)

「ピーヨロ」(あたぼうでさ)

 はてさて、鬼が出るか蛇が出るか、頼んだぞ。

 ツンツクは一陣の風となり森を目指した。
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