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第6章  罪咎

第59話  獲得

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 少年からの願いを受けて、俺からも提案をした。

「――分かった。将来取り出せるように埋没型の保管庫を設置しよう。その安寧の旅が終われば手元におけるようにね」

 三角のレリーフの頂点に丸い保管庫を設置してそこへと楯を収めた。地中深くにアンカーを打ち込み固定しているから掘ったからって持ち上げる事はできない。

「シルビニオン少年。ちょっとこっちに来てくれ」

 少年を呼び生体登録を済ませる。この子が望めばいつでも取り出せるように。

「ここに手を置いて開く様に念じればいつでも取り出せるからね」

「ありがとうございます」

 共通語と神聖語で最後に祈りを捧げる説明をする。

「それでは、――黙祷!」

 哀悼の意を込めて全員で黙祷を捧げた。


 ――リリーン♪

 おっと! なんだよ。こんな時に。俺はいつものようにアイテムボックスを確認する。この頃は鈴がなっても何も起きない事が多いがな。

 すると。


 ――開墾に成功。

 ――信仰を確認。聖域を取得しました。


 ……開墾? バカじゃないの? 俺は森を切り開いてねぇわ。『集束くん』で樹を薙ぎ払っただけだわ。頼んでも力を貸してくれないのに。本当に使えねぇ。

 それになんだよ! 聖域って? おいおい。ここいら一帯が俺の支配領域になっているよ。どうなってんの?

 聖域を意識しても説明が無い。バージョンアップで使い勝手がよくなり、他のはしっかり説明されるが肝心なものは相変わらず開示されない。カルマ免疫とか聖域とかな。マスクデータかよ。

 俺はキャンセルか拒否をタップ出来ないか探す。だが、いつものようにこの役立た地雷ずは、俺に優しい仕様は用意してくれない。

「ノア。落ち着いたら紹介したいがいるの」

 エステラに話しかけられて頭を無理やり切り替える。考えても無駄だしね。

「紹介したい子? 誰だい?」

「今一緒に旅をしている。クラーラという女の子。料理人でネスリングスの料理を教えているよ」

 そう言ってエステラは背中のバッグを回し中から手の平に収まる深緑の半球体を取り出した。俺はそれが何かを知っている。

「――界域異空イスパシオ。……それもウェン師から?」

 よく見ればトゥミとカルトリを腰に佩いている。トゥミって消滅ノヴァの神器。

 え? メインの得物はヴィジャヤ? それってかの有名な神の弓だぜ。ウェン師。あんた、彼女を人類殲滅の先兵にでもするつもりですかね?

 なんか俺との扱いの違いに笑いしか出ないわ。

 っていうか! ウェン師! ――ずっちぃーの!

「もう安全だとは思うけど。一応何処かの拠点に着くまで待ってくれ」

「――ん!」

 まず俺はシルビニオンを家まで送り、命の謝罪をしなければいけない。
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