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第6章  罪咎

第47話  笑者

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 ギリギリで楯で少年を守った直後、バキンと硬質な音が響き。ジョシュアさんの右腕が肘から落ちた。

 俺は霊薬をあおり立ち上がる。

 こちらを向いたジョシュアさんの表情は険が取れ、晴れやかに見えた。

 残りカスの燃料でくすぶすすけた最後の炎。震える身体から残りの力を振り絞り槍杖を構える。

 すると――この闘いで初めて訪れる直観の映像。

 その未来視に俺は驚愕する。

 手が竦む思いがするが、それより早く未来は現実となった。

 右腕と共に剣を落としたジョシュアさんが瞬間移動で俺に突っ込んでくる。

 そして――。


 槍杖で自分の心臓を貫いた。壊乱かいらんひびの入った個所だ。人間を貫く生々しさはなく、鉱物を突き通す感覚。

 ドス黒い血がジョシュアさんの口から溢れた。

 間近で見つめると瞳は、理性と狂気を行き来していた。

「すまん。次に囚われたらのがれられるか分からない。戦士として死なせてくれ……」

 ジョシュアさんが覚悟の言葉を伝えてくる。

 俺はありったけの霊薬をぶちまける。だが、その一切が効果を及ぼさない。すかさず、体内検査魔法でスキャンした。黒いおりを思わせる淀みは全身を覆っていた。

 おらっ! 出て来いよ。クソ蝶! 右手を頭にかざしてカルマ免疫を乱打する。

「ノアです。死の草原で助けて頂いた、あの時の子供です」

「――そうか。大きくなったな」

 余計な時ばかり仕事しやがって、働け! リング! おらぁぁ!

 恩人だぞ! 頼むから力を貸してくれ! なぁ。頼むよ! 俺の何かを捧げてもいいからさぁ!

「あなたのお陰で生きる事が出来ました。エルフの里のゴブリンにも恩を返したんですよ」

 あなたに褒めてもらいたくて。あなたの分も返したくて。あなたとお揃いの自慢のまじないだから。

「――っ。お父様」

 少年がやって来て縋り付く。

「シルビィー。彼を恨むな。母さんを頼んだぞ。――愛している」

 俺は全力のミドルヒールをかけまくった。そして、何か方法が無いか思考を巡らせる。

「ノア。俺は自分の人生を選び取った。だがら、背負うなよ。ありがとう」

 そう言うとジョシュアさんは息を引き取った。その顔には満ち足りた笑顔。少年が泣きながら縋る。

 背負いますよ。ジョシュアさん。一生。

 器用貧モブ乏の俺は立ち尽くす。泣く権利さえない。悲しむ事など論外だ。

 満身創痍で脳は焼き切れそうだ。だから、気づかなかった。

 その時、柔らかいものにそっと背中から包まれた。
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