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第6章  罪咎

第23話  覇者

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 ジョシュアはゴブリンの仕来りを知る。古代真聖紀より神への信仰を守る彼らの流儀は敬虔で神聖だ。

 祈るように武術に打ち込み。技術を極め高みを目指す。魂を昇華させるかの如く。

「――分かった。村長のところへは俺が行く」

 ホブゴブリンは頭を振る。

「必要ない。我らの問題だ。――人間。家族の側にいてやれ」

 それを聞いてジョシュアは不敵に笑う。

(――生憎。命の借りは命で返すが家訓のバカな一族の出でな。親父も兄貴もそれで亡くなっている。だが、それこそが俺の誇りだ)

「何。ちょっと見に行くだけだ。危なかったら逃げ出すよ」

 ジョシュアは安心させるように微笑んで、その場を後にした。

~~~

 森を奥へと颯のように進むジョシュアは異変を目の当たりにする。

 いつもは穏やかな森に、これ程の動物達がいたのかと感じる程だ。

 それらが辺りかまわず群れをなして逃げ惑っている。

 いや増す不安を抱きながらジョシュアは更に奥へと進んだ。


 ――瞬間

 ジョシュアの広い探知の中に村長を捉えた。

 ――そして、同時に強者の存在感をも。

(あれがこの森の混乱の原因か?)

 その存在が殺意で村長を捉えた。

(――まずい!)

 ジョシュアはアイテムボックスから楯と剣を取り出すとその場へ急行する。

 その存在――大型の虎狼ころうがまさにに村長へ襲い掛かる瞬間。

 なんとか身体をねじ込ませ。虎狼を楯で弾き返した。

「……人間。何故ここに?」

 驚く声にジョシュアは虎狼から視線を切らずに村長へ語りかける。

「ここは俺が何とかする。村長は逃げて皆を率いてくれ!」

「お前こそ逃げろ。そして、他の人間に報せろ。聖獣様が乱心された。森が荒れるぞ。人間にも被害が及ぶ」

「……聖獣? この森のぬしか。道理できつい一撃だった」

「分かったなら早く逃げろ。聖獣様にはとても敵わない。ワシが囮になる。集落の皆には他の場所へ逃れるように伝えてくれ」

 そう言う村長にジョシュアは伝える。

「――これも因果か。……村長。俺はひと足掻きする。もしもの時は外縁で煙を焚けば息子が来る。もし逃げる時には頼ってくれ。心配ない。子供だが頼りになるぞ」

 ジョシュアはズイと踏み出す。

(俺がここにいる意味があるのなら、命を懸けるまでよ。――シェリル。勝手ですまん)

「――ズィルヴァボーォクォ! 頼む! 邪魔だから村へ戻れ!」

 ジョシュアは叫ぶ。何度も練習した村長の真名を。

(――呪われた身体でどこまで闘えるか)

 ある闘いでジョシュアは呪いを受けた。右半身が硬質化する怨嗟の戒めだ。

 右足の膝は曲がりが渋く、利き腕の右手は肘が曲がり難くなり、既に顔に触れることも出来ない。

 使い慣れた蒼いフルプレートメイルを魔法で瞬時に身に纏い。上部は浅い山なりで全体は緩やかな曲線を描くナイトシールドで半身を守る。

 右手には相棒であるバスタードソードを握り森の主へと挑みかかった。

 まさに今。陸上の覇者。虎狼との死闘が始まる。
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