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第5章  流来

第95話  終章Ⅵ ~種は目指す~

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 目立ちたくないノアは即座に拒否する。

「もういい加減自覚しろっ! 目にした冒険者も多く隠し切れんぞっ!」

「試験的にこのギルドで採用されたという方向でお願いします」

 マティアスが息を飲み怒鳴ろうとした時。

 部屋のドアが無遠慮に開けられる。

「邪魔するぜ。叔父貴」

 入って来たのは、オリヴェル。

「オリヴェルっ! 勝手に入ってくんなっ!」

 その声を無視して、マティアスの隣に座る。

「よう。あんたがノアか? 俺はオリヴェル。宜しくな」

 首をかしげるように挨拶する。

「あっ。はい。初めましてノアと言います。どうぞ宜しくお願いします」

 マティアスは、諦めたようにため息をつくとオリヴェルの頭を引っ叩いて言った。

「目上を敬う奴はここにはいないのかねぇ?」

 オリヴェルが提案する。

「俺は耳が良くてね。話が聞こえちまった。俺の嫁と娘も世話になったし、あんたの手柄の肩代わり、俺達が矢面に立ってやってもいいぜ?」

「馬鹿野郎っ! 勝手を言うなっ!」

 怒鳴るマティアスを無視して話は進む。

「あんまり目立つと後が大変でしょう? そうして頂けると助かります」

「その代わり、俺と仕合いを立ち会ってもらう」

「……えっ? ――嫌ですけど?」

 ノアのその言葉は叶わない。

 仕合いは行われ、多くの冒険者が絶界の弟子の名を知る。

 その後は、オリヴェルの鶴の一声で、スタンピードの話に冒険者は口をつぐんだ。

 人々を守った光の板とトラクターゴーレム。風颶鳥の話も、精霊を思わせる発光現象も、謎の巨人もだ。

 だが、ノアという名はその心に刻まれた。





 まったく、いい迷惑だ。あのオリヴェルって人。

 師匠のおっさん以外にもあんな変態な剣の使い手がいるなんてな。

 案外世界は狭いのかもしれない。だが、恐ろしい程に深い。

 俺にその底はまだ見えてさえいない。

 よし、切り替えよう。今後の伸びしろに期待だ。

 それよりもこのスタンピードで一番怪しい人物。

 姿を消して、記憶にすら残らないエレオノーラという不審者。

 こいつをどうするかだ。


 ……なんつってね。

 俺は四人の怪しい人物に心当たりがある。

 一人はアネリアさん。もう一人は名前も知らないドワーフの人。もう一人はエレオノーラだ。

 用心堅固ようじんけんごのへなちょこ野郎が、何の仕掛けもしていないはずがないだろう?

 マーキング代わりに俺が用意していたのは、『追跡くん』上空からずっとついて回る魔道具だ。

 残念ながら、距離が離れると方向しか分からなくなるが。

 もう一人の怪しい人物?

 目の前でダンジョンから四角い箱を取り出しているこいつの事か?

 そいつを確保したら、エレオノーラの後を追うぞ。嫌な予感がする。
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