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第5章  流来

第83話  魂混

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 ――――少し時を遡る。

 ダンジョン深層の管理区域で、神武かみたけはサイネの居ない時を過ごす。

 ――と。不意に報せる警戒音。

 管理区域への侵入を告げる一報だ。

 素早く問題の映像を確認する。

 侵入して来たのは、階層を守るはずのガーディアンモンスター。ルガト。

 巨大な戦斧を担ぐように掲げ、管理区域へと押し入る。

(――何が起きているんだ?)

 神武かみたけは不審に思いながらも、すぐに対処をする。

 ダンジョンの管理者にとってモンスターは、唯の駒だ。

 消去デリートを実行すれば良い。

 その命令により、一瞬で霧散するルガト。

 ――そして、黒い蝶の大群が現れる。

 毒華だいかにおもねる黒蝶は、壁すらもすり抜け目標へと舞い狂う。

 管理区域の防衛システムが、レーザーで、それらを撃ち落とすが、その数が多く全てを捉えきれない。

 それらが、求めるものはヌクレオ迷宮核

 高エネルギー体を察知して、迷わずに殺到した。

 そして、いくつもの蝶がヌクレオ迷宮核に張り付いた。痺れと熱気の内在する痛みが躰を襲う。

 朦朧とする意識の中で案ずるは一つ。


(――サイネ……さま)

 神武かみたけが想ったのは自分の主。サイネの事だった。

 貼りついた蝶が広がるように、ヌクレオ迷宮核は黒く変貌し、神武かみたけの姿が、かき消える。

 そして、暴走したヌクレオ迷宮核は、都市への攻撃を開始した。


§


 青に近い紫色の空間で、神武かみたけは、前世の記憶を取り戻した。

 日本人の守武かみたけであった記憶。ファギティーヴォの暴走が、偶然引き寄せた結果だ。

 正確には、ファギティーヴォが求めた力はヌクレオ迷宮核であり、独立した人格の神武かみたけは異分子であった為に、そこから弾かれた。

 そして、以前ノアを隔離し守った空間が、未だにヌクレオ内に確保されていた為に、前回と同様その空間へと飛ばされたのだ。

 そして、今生こんじょうの記憶と結びつく。

 そこからは、良く知る記憶だ。

 ダンジョンマスターの女性の補佐をするヌクレオ迷宮核として、身を守る為にダンジョンを運営し、三万五千年。

 変化はノアというイレギュラーによってもたらされた。

 暴走兵器ファギティーヴォからノアを守る為に、ツイストバングルがこの空間を生み出した。

 その時にノアに取り込まれていたヌクレオは、不要な日本での記憶として、守武かみたけ人格が弾き出された。

 そのあとは、ノアの上位権限により、人格が容認され、神武かみたけの姿を手に入れるに至った。

 だが、今回は、ツイストバングルが介在していない。

 ヌクレオも暴走状態で、前回は弾かれた前世の人格が、神武かみたけの中で重なり混ざったのだ。
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