上 下
204 / 403
第5章  流来

第39話  実験

しおりを挟む
 本では読んでいたが、初めて遭遇する怪物は俺の好奇心をムズムズさせる。

 前からどんなものか色々試してみたかったんだよね。

 ダンジョンを進むと、洞窟を思わせる奥の方からグールが現れた。

 爛れたような皮膚をしているが、不快な匂いはしない。

 俺はさっそく実験に取り掛かる。

 間合いを詰めて、槍で手足を切り飛ばす。

 煙となって消えるそれには気にせずに、光魔法をグールに放つ。

 グールは苦しそうにしているが、――すまんね。

 俺はへなちょこな光魔法しか放てない。

 少し時間はかかるが、最後には浄化されたように煙になった。

 倒すまでの時間で皮膚の表面を触って確認したが、そういう造形で生み出されているらしく。

 例えるなら、特殊メイクって感じだね。

 押すと弾力があるが、表面は固い。

 感触はタイヤくらいの硬さかな。

 ここのより、ずっとノルトライブのダンジョンの怪物の方が、生き物に近かった気がする。

 まぁ。いいや。

 ――実験を続けよう。

 現れる怪物達に硫酸、塩酸、王水、アルコール、火炎瓶と用意したあれこれを投げつける。

 用意してきた数十種類の試薬を投げてみたが、結局は水に光魔法を溶け込ませた、なんちゃって聖水の効果が一番高かった。

 この世界にしかない霊薬の類も使ってみたが、芳しい効果の物はなかった。

 まぁ。効果があるならウェン師が教えてくれたはずなので、さもありなんだね。

 それならばと硫酸へ光魔法を含有させたり。

 色々と試行錯誤した結果、なぜか次亜塩素酸水に光魔法を施した液体に劇的な効果が現れた。

 もう、怪物が爆散するレベルだ。

 初め見たときは焦ったよ。

 なんなのこいつらウィルスか何かなの?

 バイオなハザードなの?

 その割にアルコールは余り効果が無かったが。。。

 解せない思いで俺はダンジョンから戻った。

 ダンジョンを出て集落に戻るとベルントが早速、菌床栽培を手取足取り教えていた。

 ベルントは俺に気付くと声をかけて来る。

「ノア君。この菌床製造機凄いよ。異常に作業が早い」

「キノコの菌は弱い菌だから、品種を変える時の清掃と除菌はしっかりとな」

 同じことの繰り返しだが、ベルントには何度も言い聞かせる。

「分かっているって、失敗の最大の原因なのでしょう?」

 そうだ。分かっているじゃないかベルント。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~

秋ぶどう
ファンタジー
書籍版(全3巻)発売中! 食べ歩きだけが趣味の男、日之本巡(ひのもとめぐる)。 幻の料理屋を目指す道中で命を落としてしまった彼は、異世界に転生する。 転生時に授かったスキルは、どんな味覚でも作り出せる【味覚創造】。 巡は【味覚創造】を使い、レストランを開くことにした。 美食の都と呼ばれる王都は食に厳しく、レストランやシェフの格付けが激しい世界だけれど、スキルがあれば怖くない。 食べ歩きで得た膨大な味の記憶を生かし、次から次へと絶品料理を生み出す巡。 その味は舌の肥えた王都の人間も唸らせるほどで――!? これは、食事を愛し食の神に気に入られた男が、異世界に“味覚革命”を起こす物語である。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...