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第5章 流来
第38話 動機
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――――ノルトライブ
ダンジョンの深部で神武はサイネに問う。
「ノアさんについて行かなくて良かったのですか? 誘われたのでしょう」
ノアはちょっとした旅行気分で、ついて来るなら連絡をしておくとエルフの里へサイネを誘った。
サイネがノアの家に引きこもるのを心配したのだ。
世界にもっと興味を持つように、そう思い声をかけていた。
明るい表情でサイネは微笑む。
「エルフの里には興味があったけど、ノアの家で遊べれば十分」
「ダンジョンの管理は私が行いますよ?」
「――ノアの家で見た物語で、人のいない空の城を守る人形が居るの。それを見たらなんだか切なくなったのよ」
サイネは言葉を続ける。
「主のいないダンジョンを守るのは虚しい事なのじゃないかってね」
「お気になさらずに、心のままに生きて下さい」
そう言って神武は優しく背中を押す。
生を楽しみ始めたサイネを応援するように。
「それに――目を覚ましてからずっと一緒の頼りになる相棒を一人には出来ないでしょう?」
「――神武。あたしは貴方にずっと寄り掛かって生きて来た。今までそれが当たり前だと思っていた。でも、それじゃ、いけないのよ」
サイネはここで目を覚ましてから初めての目標を立てた。
それはどうすれば叶うか、今はまだ分からない。
(大丈夫――時間は沢山ある)
サイネはそう自分に言い聞かせる。
未だにダンジョンに縛られる相棒を外に連れ出して、自分が知った新しい世界の中を案内したいのだ。
自分が感じた興奮と心震える体験を神武と共有したい。
この世界を二人で楽しむ。
それがサイネの立てた目標だ。
ホンのささやかで、今は決して叶わないものだ。
「――そう決めたの!」
サイネは力強くそう言った。
◇
ゴブリンの集落に施設を建設した翌日。
あとの事はベルントに任せて、俺は近くのダンジョンに来ている。
ベルントは成体でも子供みたいなゴブリンに懐かれていたから大丈夫だろう。
このダンジョンは、ゴブリンが定期的に入って、管理しているそうだ。
ゴブリン達は独自の武術を修めている。
そうね。――なんか空手を思わせる技術だ。
違いは打撃の瞬間に魔法を放つことだね。
――中国拳法の奥義みたいにみえるよ。
これから入るダンジョンは死人のダンジョンと呼ばれていて、所謂そっち系の怪物が現れる。
甲冑を纏った骨と皮だけの騎士とかグールとか、死神みたいなのと言えば良いかな。
本来の名前は違うけど、もうそうとしか見えないから、俺はそう呼ぶよ。
骨だけで動き回るのはいるか聞いたが、そんなのは、いなかった。
どうやって動くのと聞き返されたよ。
まぁ。――確かにね。
この初級のダンジョンに入ったのは、俺が今までそっち系と遭遇したことが無かったからだ。
どうやら光魔法が効果的とのこと。
ダンジョンの深部で神武はサイネに問う。
「ノアさんについて行かなくて良かったのですか? 誘われたのでしょう」
ノアはちょっとした旅行気分で、ついて来るなら連絡をしておくとエルフの里へサイネを誘った。
サイネがノアの家に引きこもるのを心配したのだ。
世界にもっと興味を持つように、そう思い声をかけていた。
明るい表情でサイネは微笑む。
「エルフの里には興味があったけど、ノアの家で遊べれば十分」
「ダンジョンの管理は私が行いますよ?」
「――ノアの家で見た物語で、人のいない空の城を守る人形が居るの。それを見たらなんだか切なくなったのよ」
サイネは言葉を続ける。
「主のいないダンジョンを守るのは虚しい事なのじゃないかってね」
「お気になさらずに、心のままに生きて下さい」
そう言って神武は優しく背中を押す。
生を楽しみ始めたサイネを応援するように。
「それに――目を覚ましてからずっと一緒の頼りになる相棒を一人には出来ないでしょう?」
「――神武。あたしは貴方にずっと寄り掛かって生きて来た。今までそれが当たり前だと思っていた。でも、それじゃ、いけないのよ」
サイネはここで目を覚ましてから初めての目標を立てた。
それはどうすれば叶うか、今はまだ分からない。
(大丈夫――時間は沢山ある)
サイネはそう自分に言い聞かせる。
未だにダンジョンに縛られる相棒を外に連れ出して、自分が知った新しい世界の中を案内したいのだ。
自分が感じた興奮と心震える体験を神武と共有したい。
この世界を二人で楽しむ。
それがサイネの立てた目標だ。
ホンのささやかで、今は決して叶わないものだ。
「――そう決めたの!」
サイネは力強くそう言った。
◇
ゴブリンの集落に施設を建設した翌日。
あとの事はベルントに任せて、俺は近くのダンジョンに来ている。
ベルントは成体でも子供みたいなゴブリンに懐かれていたから大丈夫だろう。
このダンジョンは、ゴブリンが定期的に入って、管理しているそうだ。
ゴブリン達は独自の武術を修めている。
そうね。――なんか空手を思わせる技術だ。
違いは打撃の瞬間に魔法を放つことだね。
――中国拳法の奥義みたいにみえるよ。
これから入るダンジョンは死人のダンジョンと呼ばれていて、所謂そっち系の怪物が現れる。
甲冑を纏った骨と皮だけの騎士とかグールとか、死神みたいなのと言えば良いかな。
本来の名前は違うけど、もうそうとしか見えないから、俺はそう呼ぶよ。
骨だけで動き回るのはいるか聞いたが、そんなのは、いなかった。
どうやって動くのと聞き返されたよ。
まぁ。――確かにね。
この初級のダンジョンに入ったのは、俺が今までそっち系と遭遇したことが無かったからだ。
どうやら光魔法が効果的とのこと。
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