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第5章  流来

第35話  依頼

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 妻のヘルヴィの問いにガンソは頷いて答えた。

「そうだ。――エイルミィに続いて四件目だな」

「エイルミィの暴走はエステラちゃんが解決したのでしょ?」

「そのようだな。さすが絶界の弟子というところか」

「――協力を仰ぐの?」

「いや。エイルミィのギルド長へ帝国が絡んでいる可能性を示唆した。ティラナ-タの暴走が耳に入れば確証をもって動くだろう」

 ヘルヴィは諭すようにガンソへ話しかける。

「エステラちゃんにしても、ノア君にしても。話せば協力してくれるはずよ」

「それは最終手段だ。我らの諍いに無関係な人物を巻き込みたくはない。あいつらは非人道的な集団だからな」

「エイルミィではエステラちゃんを巻き込んだじゃない」

「ギルドの判断だ。その意思決定に我らは影響を与えていない」

 敵の集団は今は遠く、帝国に守られて手が出せない。

 ガンソ達に出来るのは王都で起こされた工作を、出来るだけ早く感知しギルドに知らせることだけだ。

 そして――大きな兆しを感知すれば、一族を集結させる。

 いずれ起こる、世界を巻き込んだ騒乱に狂乱の一族は姿を現すだろう。

 その時を見逃さず、ガンソの一族の悲願を果たすのだ。

「私たちの代で終われば良いわね」

 そう言ってヘルヴィは、愛おしそうにお腹に手を当てた。

 厳しかったガンソの顔が緩みそれに同意する。

「――そうだな」


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 ユストゥスに連れられてエステラは領主と面談をしている。

 念のためと始めに付け加えて、ユストゥスが説明を開始する。

「ご存じとは思いますが、三年程前に城楯都市ドゥブロベルクで五つのダンジョンでスタンピードが起こりました。それには帝国の工作員が関わっております」

「ドゥブロベルクは冒険者の質も良く、ギルドの管理も行き届いていて五〇〇年の間スタンピードを発生させていませんでした」

「そして――エイルミィのダンジョンも三〇〇年はスタンピードを起こしていませんでした。――先日までは――」

「――スタンピードの発生条件は解明されていませんので、何らかの要因かとダンジョンの調査をしている最中でした」

「そんな折に四〇〇年スタンピードの発生を起こしていないティラナ-タでスタンピードの予兆の示唆です」

「――ドゥブロベルクの時と同じように、帝国の攻撃の可能性が高くなったと考えます」

(差出人不明の手紙で情報を仕入れたとは言えないからね)

(エイルミィでのスタンピード発生の示唆。帝国の介入とティラナ-タでのスタンピード発生の示唆。二回ともスタンピードの予兆の連絡より早く届けられた)

「どうするのだ」

 領主が厳かに問う。
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