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第5章  流来

第33話  提案

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 料理長が目を光らせているので、エステラに話かける者はいないが、全員が彼女の手調理に興味津々だ。

 領主の食事も終わり、厨房は片付けと夕食の下準備の真っ最中。

 賄いを食べるにも良い時間だ。

「先生。頂いても良いですかな?」

「――うん。どうぞ」

 揚げられて半分に切られたピザを料理長は早速頂く。

 カリカリになった生地が歯ごたえ良く。

 熱々のチーズとトマトの旨味が口いっぱいに広がる。

「――最高です。先生」

 ハフハフしながら、料理長が感想を伝える。

「――んっ!」

 それを皮切りに偉い順番に次々と手が伸びる。

 全員が幸せそうに食べる様子に、エステラも薄く微笑んだ。

 これがエステラの上機嫌な笑みだと知る者は少ない。

 エステラはノアの言葉を思い出す。

『農家は食を支えるけど、料理人は食で楽しませる職業だ。誰かを楽しませるなんてすごい才能だな』

 その言葉を聞いた時から、エステラは料理人の自分を誇りにしている。

 そこへ声をかける者がいる。

 ――ギルド長のユストゥスだ。

「なんだか。とても良い匂いだね。――お邪魔するよ」

「――食べる?」

「頂きたいのはやまやまなんだが、どうやらそうもいかなくてね。また、スタンピードの兆しだ」

 エステラの表情が引き締まる。

「――何処で?」

「すこし遠い。だが問題はそこではない。そのダンジョンもスタンピードがあまり確認されていない管理されたダンジョンだ」

「このエイルミィと同じようにね。――ドゥブロベルクの大氾濫と似ていると思わなかい?」

「――どういう意味」

「――スタンピードを扇動している者の可能性だ」

 ユストゥスが説明を始めた。
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