農家は万能！？いえいえ。ただの器用貧乏です！

第５章 流来

第３２話 諦観

　自重しないノアは倉庫を作り、取り出したフォークリフトを格納する。

　力作業の軽減と作業効率を上げるためだ。

　そして、作業と集積の建物を作り、菌床製造機を取り出しそこへ置く。

　続けて菌床粉砕機と粉砕後の撹拌機もそこに収める。

　ノアが用意したのは菌床の製造から廃棄までをフルオート化した近代設備。

　それを魔道具で生み出した。

　役目を終えた菌床は粉砕し発酵されて、たい肥となり畑へ戻り循環する。

　このシステムの完成を待ってノアはここへ来たのだ。

　その使い方の説明を受け、魔道具を目の当たりにしたベルントはさすがに苦笑いをした。

「ノア君。ノルトライブで教えられて、やっていたことと違うのだけど……」

　ノアが張り切ると犠牲者がでる。いつもの事だ。


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　エステラは暗闇の中スタンピードに向かって千の矢を放つ。

　今回発生したスタンピードは間の悪い事に夜半だった。

　だが、エステラには好都合。

　広範囲が見渡せる上空に留まり、矢を放ち続ける。

　月も無い曇りの夜は真っ暗で、エステラの姿を見る者もいない。

　ただ光る矢だけが上空から流れ落ちる。

　二万に達するスタンピードも二〇回の矢を放てば片付くが、エステラはゆっくりと攻撃を繰り返す。

「――どう？」

（――発見ﾌｧｳﾝﾄﾞﾔｰ）

「――ネット」

（――準備完レディ了）

　視覚に表された赤い点に向けて一本の矢を放つ。

　過たず赤い点を捉えて進む矢は、目標の直前で広がりネットとなり対象を捉えた。

　スタンピードを無視して、エステラはネットへ向かう。


　――監視している人間を捉えるためだ。

　タラリアの機能で飛翔してその場所へ急ぐ。

　エステラがスタンピードの殲滅に来たのはエイルミィのギルド長からの依頼があったからだ。

　それは今日の昼の事だった。


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　エステラはこの頃ではめずらしく上機嫌で包んだピザを揚げている。

　場所は領主館の厨房だ。

　料理長が話しかけて来る。

「先生。それは何ですか？」

「――ピザの具を包んで揚げているの」

「なるほど。そのような調理法もあるのですね。勉強になります」

「――あたしが考えたの」

「――さすが先生です。発想が柔軟だ」

　ピザの変わった調理法を思いついてエステラが試した料理だ。

　そして、ノアに褒められた料理でもある。

　今日がその記念日だと思い出し、エステラはいそいそと準備をし今に至る。

「――たくさん用意したから、みんなも食べて」

　厨房で歓声があがる。

　かわいらしいエステラは厨房の人気者だ。